Posted on 2016.02.15 by MUSICA編集部

KANA-BOON、4人揃い踏みで踏み出す『Origin』を、
全曲解説で徹底追撃!

“スタンドバイミー”がなかったらアルバムは完成してないし、今の自分達もいない。
今まで詞を書いて自分が救われるっていうことはありましたけど、
バンド全体が救われたっていうのは初めてのことやった(谷口鮪)

『MUSICA 3月号 Vol.107』P.50より掲載

 

■まずは、完成直後だった前号の取材から3週間ほど経った今、改めてこの作品に対してどんなことを感じているか?から教えてもらえますか。

小泉貴裕(Dr)「最近、レコーディング直後とは音のカッコよさがどんどん違って聴こえてきて。自分ではパワー感のことばかり思ってたんですけど、その中にも繊細なタッチを使ったところが凄い出てるなぁって。本当にいろんな曲があるし、新しいって思うこともたくさんあると思うんで、反応がほんとに楽しみです」

古賀隼斗(G)「僕は……なんかこのアルバム、セルフスルメがあるじゃないですか」

■セ、セルフスルメ!?

古賀「スルメ曲かどうかを自分でわかる時というか」

飯田祐馬(B)「また新しい言葉出たで(笑)」

古賀「このアルバムはセルフスルメ感が凄い強くて。最初は世に出すのが結構不安な自分もいるっていう話を前にしたと思うんですけど、時間が経つと自信になってくるというか、それが楽しみになってくるというか。別にスルメ曲ってわけじゃないんですけど」

谷口鮪(Vo&G)「え、今全部ひっくり返した?(笑)」

飯田「セルフスルメやっぱ違ったってこと?(笑)」

古賀「………スルメ曲じゃないけど、自分の中でじわじわ自信がついていくことをセルフスルメって言ってもいいですか?」

谷口「知らんよ、そんなの!」

■(笑)ちなみに、古賀くん的にセルフスルメ度が一番高い曲ってどれ?

古賀「一番高いのは“オープンワールド”ですね。“オープンワールド”から“机上、綴る、思想”の流れが凄いセルフスルメです」

■なるほど。じゃあ飯田くんは?

飯田「古賀の後って嫌やな(笑)……でも古賀の言ってるセルフスルメ感って、俺、ちょっとわかって」

谷口「わかるんか(笑)」

飯田「うん(笑)。聴けば聴くほど感みたいなんは僕の中でもあって。“オープンワールド”は特に、できた時は別に珍しい曲でもないという感じやったんですけど。でも聴いていくにつれて堂々としてるっていうか、表情とか開けてる感じとか、歌詞の言い回しとか凄い新しいなと思って。この曲の歌詞って、この曲調じゃなかったらもっと尖って聴こえるはずやのに、この曲のメロディとか構成のおかげで受け手に対して棘のない状態でちゃんと伝えることができてるっていうか。そういうんはこの曲だけじゃなく、どれも1曲1曲どっしりしてるし、ちゃんと音楽を届けられるようになってるのかなって思いましたね。何回も聴いていくうちによりそう思うようになったし、自分でも気づくことができました」

■鮪くんはどうですか?

谷口「僕は今のところはまだ変わらないですね、前のインタヴューで話した時と。曲の感じ方も、今回は『この歌詞がこういう意味を孕んでた』みたいなことが理解できてるアルバムというか、自分でもそこら辺のちゃんと理解が進んでたから。『TIME』の時は、できてからの取材とかで『なるほど』って思うところがいろいろあったんですけど、今回はあんまりそういうのがない、イコール、そこに関して自分でちゃんとコントロールしながら作れてたんやなっていうのは思います」

■明確に想いや意味を昇華しながら歌詞を書けてた、と。

谷口「はい、そう思います。たぶんアルバムが出てみんなに聴いてもらったら自分の気持ちも随分変わるんやろうし、ツアーでアルバムの曲をやるようになったらもっと曲に愛着が湧いてくると思うんですけど。だから早くツアーに出たいなって思ってますね」

■OKです、では早速1曲ずつ紐解いていきましょう。

全員「よろしくお願いします!」

 

01. オープンワールド

 

■アップテンポで明るい、目の前の景色を切り開いていくような楽曲なんだけど、今までのKANA-BOONのそういうタイプの楽曲とは明確に違う、非常に新鮮な印象を受ける楽曲です。

谷口「アルバムに向けて、既存の曲を並べつつ作り始めた中の1曲ですね。この曲は最初のイントロのドラムパターンをやりたかったっていうのが一番デカくて。あと、サビのメロディに関しては僕がヴォイスメモで残してあったもので。だからイントロとサビっていうのが最初にあって作っていった曲。アルバムの1曲目っていうのは最初からイメージしてましたね」

小泉「こういう始まりで8ビートに戻るっていうのは僕も新鮮でした。最初はもうちょっとスーッと走って行くようなビートだったんですけど、作った段階で鮪に『パワーが足りない、もっとどっしりしたビートが欲しい』って言われて。その時、鮪に例として聴かせてもらったのが僕の中にはないビート感やったんで、結構難しくて。今回のアルバムは、まず鮪からパワー感が欲しいっていう提案があって、よりパワー感を出すためにドラムの音を変えていったり、(スティックの)振りを変えていったりってことが多かったんですけど、その始まりになったのがこの曲やったと思います」

■このドラムセットは――。

小泉「これグレッチですね」

■やっぱりそうなんだ。今まではYAMAHAメインだったけど、今回からグレッチも使い始めたんだよね。

谷口「やっぱグレッチよかったな」

小泉「ハマったな。僕の中ではこの曲みたいなキラキラした感じってYAMAHAのイメージだったんですよ。でも確かに、鮪のイメージのビート感にはグレッチが相当ハマッて。パワーはあるけど締まった音も出るし」

■同じパワー感でも、『TIME』1曲目の“タイムアウト”の重戦車のようなパワー感とは明確に違うよね。

谷口「『TIME』の時とは違うロックバンド感みたいなものは求めてました。勢いで前のめりでガーッて感じじゃなくて、もうちょっと動かない感じというか、山の如し的な感じでどっしりしたものを思い描いてましたね。他の曲もそうやけど、今回はやっぱりいろんなことしたいっていう気持ちが強くなってきたというか、それが一番の要因としてありました」

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text by有泉智子

『MUSICA3月号 Vol.107』