Posted on 2016.02.17 by MUSICA編集部

flumpoolが3年半ぶりのアルバム『EGG』 で完全脱皮!?
メンバー全員インタヴューで劇的な飛躍を果たした要因に迫る

クソみたいな友情や愛情はいらねぇよっていうところをはっきりさせないと、
表側のストレートなものも響かないんじゃないなかって思って。
みんなにいい顔して、いいことばっかり並べてるって思われたくないし(山村)

『MUSICA 3月号 Vol.107』P.60より掲載

 

■非常に異色な作品だと思いました。3年半振りのアルバムで、とても新鮮でもあると思うんですけど、まずはそれぞれ思うところからお聞きしていきたいんですけど。

阪井一生(G)「いやぁ、3年半って凄いなって。いい意味で30代の感じが出たアルバムだなと思うし、この3年半って個人的にも大きく変わったんで。デモを作る段階にしてもサウンドプロデューサーに任せるんじゃなく、こっち側で100%作ったもので足りないところを助けてもらったりしたんで、やりたいことを100%出せましたね。“夜は眠れるかい?”って曲があったからいろんな曲ができたっていうのもあるし、凄い自信作です」

尼川元気(B)「異色作っていうのは凄くわかります。……個人的にはこんなアルバムになるとは1年前は思っていなかったなって(笑)。少なくとも『FOUR ROOMS』の時は、自分達のルーツに根ざしたアルバムを作るんだろうなって思ってたんですけど」

■歌の力が強くて、生音を中心にした楽曲を集めたアルバムになるだろうと思っていたんだよね?

尼川「そうですね。原点に帰る1年にしようっていうのはあったんで。でもまぁ、結果的にはこういう逆なものになったんです(笑)。……『FOUR ROOMS』が原点の部分だとしたら、“夜は眠れるかい?”のような飛び道具的なところに凄く引っ張られたんですよね。それが結果的に人間っぽい音楽になっていったっていうか。たぶん、“夜は眠れるかい?”で『亜人』のタイアップがなければこのアルバムは絶対にできていないと思うんで。そういう人間っぽさを出せるバンドになったなっていう感じですかね」

山村隆太(Vo)「自分が思い描いていた30代の1作目とは真逆にいったなっていうのは、まずありますね。本当に真逆だなって(笑)。ずっともがいてるバンドだったけど、30代になったら落ち着いていくのかなって思っていたんで。でも、実際の俺らはそうじゃなくて、今でも楽しく音楽にトライできてるっていうのはあって。そういう地に足が着いていないハラハラする感じに自分達でもワクワクしたりするし。下手に丸まらなくてよかったなって。だから異色作って言ってくれるのも凄くわかるし、エラいもんできちゃったなっていうのが、正直な感想ですね」

■それは隆太自身が望んで突っ込んで行ったのか、もしくは結果論的にこんなのになったっていう部分が多いのかで言ったらどうなの?

山村「どっちなんだろうなぁ……凄く衝動的な部分はあったんで、それで言ったら結果論なんかなぁ。“とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill ~”とか(のポップなバラード)も入ってるんですけど、アルバムに入れようか迷ったんですよね。今回のモードとは全然違っているんで。もちろん、根っこに流れている音楽としてはあるんですけど、それを今の時代が求めているのか、本当に今の自分達が鳴らしたい音楽なのか、って訊かれると、あの曲の世界のように穏やかでいられないことが多いしね。いいニュース/悪いニュースで言ったら、悪いニュースのほうが多かったし。なんかここで故郷のよさとか、そういう美徳を歌うのは違うのかなぁって考えたし。人とのつながりひとつにしても、理想とはかけ離れている気がして。そういうことを思っている中で鳴らす音楽って果たしてこのままでいいのかなっていうのがあったんです。社会や世間、友達との関係を見ててもクソみたいだなって思う時もあるし、そういう怒りのほうにベクトルが行ったんですよね。そういう感情の起伏というか、自分達からそういう感情を解き放ちたいっていうのが、このアルバムでは前に出たんで、全体像としては凄くロック寄りのものになったのかなって」

■これ、アルバムタイトル『EGG』っていうのは隆太がつけてるんだよね?

山村「そうです、僕がつけました。いいでしょ?」

■凄くいいと思う。決して丸くないアルバムが『EGG』っていうタイトルになっていることになんとも言えない感覚があって。

山村「そう、それが狙いです。誰もが知っていて、イメージできるものがいいなって。ただ、見方によっては『生命力』とか『殻に閉じ込められている』って意味もあるし、何が生まれてくるかわからないっていうのもあると思っていて。一生がいろんなことを楽曲でやっている分、入り口は広くとってあげたほうが押しつけがましくないのかなって」

小倉誠司(Dr)「今までのアルバムの中では一番好きなんです。今までのflumpoolって、明るくてきらびやかな作品が多かったと思うんですけど。この作品は、服を着ておしゃれをさせた感じではなくて、人間味の中での芯の強さを詰め込めた作品だと思うんで力強いアルバムになったなって。最初に一生が言ったように、自分達がやりたいことが形にできるようになってきたっていうのが発信源だと思うんで、そこからは雰囲気だったり、レコーディングの現場でそれを積み上げてきた感じですね」

■このアルバムはflumpool初めてのロックアルバムだと思うんですよね。たとえば、前のアルバム(『experience』)のインタヴューの中で、誠司が「この曲はロックふうに~」って言っていたりしていて。僕はこのバンドのスタンスはそういうことだと思っているんです。基本的にはポップミュージックを基準としているバンドで、アレンジとしてロックが入ってくる、何故ならばバンドだから。そういうのがこれまでの作品の構造だと思っていて。でも、このアルバムは基準値がロックアルバムで、そのロックアルバムをどこまでポップバンドとしてやり切れるかっていう作品なんじゃないかなって思うし、現実的に1曲目(“解放区”)と2曲目(“夜は眠れるかい?”)がきて、そして3曲目(“World beats”)はEDM要素が基本にある。それがこのアルバムを決定づけてるよね。

尼川「そこは一生のモードだな」

山村「元々一生は、イエモン(THE YELLOW MONKEY)が好きなんですよね。そういう一生の根本がプロデューサーだったり、俺の声だったりっていう事情で丸め込まれていたところはあって。その我が出せるようになったのは大きかったんじゃないかな」

阪井「別にロックが作りたいってわけではなかったんですけど。どういうアルバムにするか考えた時にアップテンポな曲とかを入れたいなって考えてはいて。……まぁでも、“夜は眠れるかい?”で自分のスイッチが入って、モードがそっち寄りになったっていうのはあるんかなぁ」

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text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.107』