Posted on 2016.02.17 by MUSICA編集部

夜の本気ダンス、『DANCEABLE』でメジャーデビュー!
その源にある「妄想」を紐解く初のロングインタヴュー

妄想というか、想像だけで終わらせたい自分もいる。
というか、たぶんそっちのほうが勝ってる。
自分の中での妄想っていうものが
ピークになってるんじゃないかってどっかで気づいてるんですよね

『MUSICA 3月号 Vol.107』P.68より掲載

 

■完全に状況が沸騰してきてる中、セカンドアルバムにしてメジャーデビューという重要なタイミングでリリースされるアルバムです。前半はアグレッシヴに踊らせる勢いのいい曲が並びつつ、全体通して見ると前作よりもニューウェイヴ/ポストパンク色の強いクールでタイトな楽曲も多いし、抑制されたダンスビート感や音圧勝負とは異なるグルーヴィな音像含め、今の邦楽フェスシーンとは違う、このバンドの洋楽的なルーツを感じさせる作品になったと思うんですけど。ご自分ではどうですか?

「全体を通してクールめな印象はあるかなって思いますね。作ってる最中はそうでもなかったんですけど。もうちょい楽しい感じの曲というか――」

■はっちゃけた感じの曲?

「そうですね、かっ飛ばす曲みたいなのが増えるかなとも思ってたんですけど。だから別にそういう曲はダメっていう感じでは作ってなかったんですけど、結果的にこういう感じのアルバムになって。このアルバムの中で言ったら“Crazy Dancer”が一番全体に向けたというか、キッズに向けてる曲ではあると思ってて。“Feel so good”も自分の中ではそういう気持ちもあるんですけど。でもクールな部分っていうのをバランス的に多めに入れてるっていうのは、全体を通してあるかもしれないです。8曲目の“Logical heart”なんかは、自分の中では一番ポストパンク・リヴァイヴァル時代の影響を出せてるんかなって思いますし、6曲目の“escape with you”や7曲目の“Feel so good”の感じはロックンロールが出せてるんかなって。元からそういう要素もあったとは思うんですけど、最近そういうところがやれてなかったっていうのがあって、そういう要素も今回出せたらなっていうことで6、7曲目は考えました」

■でも“escape with you”はかなり変態的な曲ですよね。ややアウトローなロックンロールが展開してるのに、サビはいきなりめちゃくちゃポップス性の強い、J-POP的なメロディがキラキラ羽ばたくという。

「そうですね、バッと変えるっていう(笑)。この6~7曲目はどっちも、僕がライヴでギターを持たずにピンヴォーカルでやれるようにっていうのを考えながら作ってて。9曲目のもそういう感じがあるんですけど」

■“Dance in the rain”ね。これはバックビートのセクシーな曲で、今までになかった要素ですよね。

「そうですね。これに関してはこういう曲をグルーヴィにできればこの先が広がっていくんじゃないかっていう、次の課題的なところもある曲で。今は作りたい曲で言ったら、こういうファンク的な感じが強いんですよ。リズムも単純な4つで打つ感じ以外も増やしていきたいなっていうのはあります。だからこの方向をもっともっとイメージした通りにやっていきたいなっていうのは思ってますね。だから最近はまたFranz Ferdinandぐらいの世代のバンドのCDを買い漁って、その当時聴いてなかったやつを全部買って聴いてたり。……前の健司くんとの対談(前号に掲載したフレデリック三原健司との列伝対談)の時も話したんですけど、フェスとかでもピンヴォーカルでのカッコよさっていうのを出せたら、僕らはもっとよくなるんじゃないかなって思ってて。そういうことを曲作りの時からちょっと考えてました。岡村(靖幸)ちゃんもそうだけど、たとえばイエモン(THE YELLOW MONKEY)もピンでやられてたじゃないですか」

■THE YELLOW MONKEYでの吉井さん(吉井和哉)はステージアクションも大きかったし、そこに華があったからね。

「“escape with you”はそういう感じもちょっとイメージはしてました」

■なるほど。この尖った洋楽ロック性とポップス性の融合というのは、確かにTHE YELLOW MONKEY的であるという言い方もできますね。

「はい。だから最後、アウトロの感じはちょっとイエモンっぽくしたい、みたいなところもあったし(笑)。自分達もどんどん大きいステージでやっていくようになって、そうなるとそういう見せ方が必要なんじゃないかなっていうのは最近よく思ってて。岡村ちゃんの影響ももちろんありますけど、ただただギターを持って歌ってるよりは、自分が自由に動き回る方向で見せていけたらもっと広がるんじゃないかなっていうのはあります」

■この1年でこのバンドを取り巻く状況は大きく変わったわけですけど、その中でメジャーデビュー作を作るというのはひとつ勝負のタイミングなわけじゃないですか。そういう意味において、そもそもどんな作品を作りたいっていう青写真やテーマはあったんですか?

「そこまでテーマは明確にはしてなかったんですけど、ただ、自分の中でのフルアルバムってこういう感じやろっていうイメージがざっくりとあって。それは音楽的なテーマというよりも曲の流れっていうか。最初はかっ飛ばして、間にちょっと違うタイプのポップな曲がありつつ、落としめというかクールダウンした曲もあって、最後また明るい曲で終わりたいっていうざっくりしたものはあって。で、そこにハメ込んでいったというか」

■今ってアルバムというものをさほど重視しない、自分達のベストアルバム的なものを作るっていう意識のアーティストもいるけど、米田くんはこだわりたいタイプなんですか?

「そうですね、『DANCE TIME』の時もそういうのは考えてて。でも絶対そうじゃないとダメみたいな100%理想みたいなのは全然なくて、目標としてそういうのをイメージするという程度ですけど。だから結果的に今回はこの感じに収まったっていう感じなんですよね。でも、『DANCE TIME』の時とフルアルバムに対するイメージは変わってないんですけど、また全然違う感じになったなっていうのは自分でも思います」

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text by有泉智子

『MUSICA3月号 Vol.107』