Posted on 2016.03.17 by MUSICA編集部

20周年を超えたBRAHMAN、
名曲“天馬空を行く”を発表した一方、
TOSHI-LOWの胸に横たわる不安の影とは

今年入ってから、ずっと偏頭痛があるんだよ。
『A FORLORN HOPE』から『THE MIDDLE WAY』
になる時もそうだったし、震災の前もそうだった。
何かが変わる大きなタイミングの前は、痛みが伴うんだよね

『MUSICA 4月号 Vol.108』P.92より掲載

 

■今日は、過去、今、新曲、そして未来について、全部訊いていきたいんだけど。まずは去年、BRAHMANは20周年イヤーという特別な1年を過ごされましたけど、振り返ってみてどういうふうに感じてますか。

「オファーされるものに関してはすべて断らないっていうスタンスの1年だったんだよね。基本的に、『20周年だね』ってやってくれるものに関しては、『いや、いいよ』って遠慮するのはナシにしようかなと思って。『そっか、20周年って言って、やりたい人もいるんだ。じゃあ、やろうか』みたいな。だから忙しかったんだけど、どこか冷静なところもあったというか、真ん中でスッと引いて見てた自分もいたんだよね」

■そうしてスッと引いてたのは、BRAHMANの20周年に沸いてる周囲に対してってこと? あるいは、20年を迎えた今の自分達に対して?

「どっちに対してもちょっと引いてたっつーか。どちらにせよ、渦中にいる感じじゃなかったんだよ。敢えてやらされてる部分もあったからさ」

■その「やらされてる部分」っていうのは、どういう感覚だったの?

「まあ、周りが『20周年!』って言って神輿を担ぎ上げるわけだから、そこには敢えて『乗ろうかな』って思ったんだよね」

■そっか。BRAHMANの20周年って、ある意味「BRAHMAN達」にとってひとつの象徴的な出来事だったと思うんです。具体的に言うと、去年の11月に幕張でやった「尽未来際~尽未来祭~」の1日目に出ていた面々全体の歩みを表すものでもあって。そういう、周囲の20年も含めての象徴になっている感触はあったのか、もしくは、その実感がなかったなら、こう言われてどう思うのかを教えてもらえますか?

「自分の20周年っていうものを受け入れたことによって、他の人の歴史も同じように感じるっていう部分はあったよ。だってさ、自分達の20年がこれだけ大変だったんだから、他のバンドも大変じゃなかったわけがないんだよね。で、それによって、同世代の人達に対して、もっと信頼というか――深い意味での友達感覚みたいなものが生まれた気もするし、その中でもちろん『ありがとうございました』っていう気持ちもあったし。でも、『20周年で楽しかったなー!』っていうのは全然なかったかな」

■神輿に敢えて乗ってみたっていうことを置いといて、純粋にBRAHMANを20年続けてきたことに対してはどう感じたの?

「たとえば、一人前になるまでに10年とか言ったりするけど、20年って、その倍でしょ? そこで『一人前の倍って何なんだろう?』って考えることもあったし。そもそも、自分がお客さんとして観てたバンドが20年を超えた時の凄さも知ってるわけだよね。そういうものを観てた時の、『得体が知れなくなっていく』みたいな感触――それをグルーヴって言うのかオーラって言うのかはわかんないけど、上手いとか下手とか、合ってるとか合ってないとか、そういう次元じゃないものが出ちゃうのが20年なんだなっていうことは実感したかな。あとは、今までみたいにとにかく目の前のことから逃げずに、その都度クリアしていけば何かが見えるっていうこともわかった。……まあ逆に言えば、ここからまた30年目まで頑張ろう、みたいなことを考えたら、『ここからまた10年か』ってむしろウンザリしちゃった面もあるんだけど。だって、よく『人生山あり谷あり』って言うけど、本当は谷ばっかりだな!っていうこともさすがにわかったわけで(笑)。いいことと悪いことは全然半分半分じゃないし、最終的には悪いことが8で、いいことが2くらいのもんだなって。だから、『生きてくのってしんどいなあ』っていう面も同時に見えたところもあって。…………ただ、こんなこと言いながらも、人生で一番、音楽を一生懸命やってるのが今なんだけどさ。『この楽器習ってみたい』とか、『音楽やりたいな』って思ってる自分がいて。今までは『バンドやりたい』だけだったけどね」

■俺はアーティストでもなくミュージシャンでもなくバンドマンだって言い続けてきたのが、ずっと根底にあったよね。

「今もその根底は全然揺るがないんだけど、一方では『音楽やりたいな』って凄くピュアに思えてる俺がいて。もちろん、今までもピュアだったんだよ? バンドに対しては。だけどもっと自分個人として、今は音楽に対してピュアになりたい。そう考えてみると……20年かけてきた『バンド』っていうものに意味がないわけじゃないけど、そこにこだわり続ける必要もなくなっちゃう部分もあるのかなって思ったし」

■今の話って、20年やってきたことで5周も6周もしてきた周期としてのことなのか、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDもやってるってことも含めての意味合いなのか、もしくは全然違う意味で音楽に捧げたいっていう新しい気持ちのか、どういう感じなの?

「バンドやってきて5周も6周もしてるから、それもきっとあるんだけど――だけどその周期で、その都度居心地の悪さは出てくるなって思うんだよ。たとえば20周年は終わったのに、今こうして20周年のことを取材で話してるじゃん? だけど『21年目の新しいBRAHMANについて話してください!』って言われても、『ねぇし』みたいな感じになるし(笑)。元々そういう年月でバンドを区切ることなんてしてなかったわけ。だけど自分達でその神輿に乗っちゃったもんだから、『そういやあ、切ってねえこと切っちゃったな』って――そんな感じだから、今後どうしていくか?っていうことに対しても、全然言葉がないんだよね」

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text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.108』