Posted on 2016.04.15 by MUSICA編集部

[Alexandros]、
ニューシングル『NEW WALL/I want u to love me』リリース。
川上洋平、充実と挑戦の「今」を語る

ウチらはロックというひとつのジャンルを
楽しんでるわけじゃなくて、
音楽というもの自体を楽しんでる。
だからこそ、頭に思いついたメロディや音を
具現化するためには方法を問わない――
[Alexandros]はそういうバンドなんだって、
よりクリアになった部分はあるかもしれない

『MUSICA 5月号 Vol.109』より掲載

 

(前半略)

■今回は“NEW WALL”と“I want u to love me”という新曲2曲が世の中に出て行くわけですけど。“NEW WALL”は、年末の幕張メッセで「まだ完成前だけど」と断りを入れつつ披露した曲でもあって。さっき“Girl A”と同じくらいにできたって言ってましたけど、着想としてはどんなイメージだったの?

「マネージャーとあることについて話してる時に、頭の中に<Hello New Wall>っていう部分がふわっと浮かんだんですよ。で、その場で『あ、ちょっと思いついたんで歌ってみますね』って歌ったら、『それよさそうじゃん!』って言われて。そこからすぐメンバーで作って、1週間ぐらいでもうほとんど今の形になったんですよね」

■さっきも少し話したけど、この曲は今までだったらギターがカウンターメロディ弾いてたところをストリングスが担っていたり、アレンジの考え方がストリングス主体になってますよね。そういうサウンドとあのリズムパターンによって――。

「ずっと7拍子で進んでいきますからね(笑)」

■そうそう。で、それによって今までにないタイプの高揚感と祝祭感が広がる曲になっていて。どうしてこういうサウンドになったんですか。

「作ってる時にこれはストリングスがいいなと思ったんですよ」

■それはどうして?

「単純にその時ストリングスモードだったんでしょうね(笑)。『ALXD』で結構ガーッとやってたし、同時期に作ってた新曲が“Girl A”だったから、そういう激しさではなく、もう少し品がありつつも、ちょっと土臭い雰囲気の音を求めてたんだと思います。リフができた時にはもう、頭の中ではそのリフのメロディラインがヴァイオリンで鳴ってたんで。リードギターの歪んだ音だったりピアノのクリア過ぎる綺麗な音よりも、もっと直接涙腺だったり感情を揺さぶる楽器が必要だなと思ったんで。だからいやらしいまでにストリングスでいいと思ってましたね」

■歌詞に関しては、“NEW WALL”というタイトルに示唆されている通り、目の前に立ちはだかる壁に挑んでいく、その意志と、そうやって歩んでいく人生を愛し、肯定する内容が歌われていて。『ALXD』以降の [Alexandros]の新しい一歩として、また決意を新たにしていく宣言のようになってるよね。

「一番最初はそういうつもりで書いてたわけではないんですけど、結果的にそうなりましたね(笑)。だから何をしても、どんなこと書いても、想いがあればそこに繋がるんだなっていうのは実感しましたね。だから不安要素がなくなりましたね。意志さえあれば、自ずとそれが歌に出ていくっていう。そこに対して不安に思うことはなくなりました。……でも話が戻りますけど、この7拍子は俺も最後まで悩んだんですよ」

■どうして?

「僕は凄い好きなんですけど、やっぱりノリづらいですよね(笑)」

■あー、まぁそれはそうかもしれないね。

「この前、大阪と名古屋のライヴで“NEW WALL”を初披露したんですけど、『新曲めっちゃよかったです』って言ってくれた割には、映像見返しても誰もノってないんですよ。新曲だからかなと思ったんですけど、“I want u to love me”はめっちゃノリノリだったから。これからどういうことになるんでしょうね」

■でも、たとえばぴょんぴょん跳ねられないから高揚してないっていうわけではないじゃない? 一緒に跳ねられる高揚感とはまた違う、でも凄く大きな高揚と多幸感が広がる曲なわけで。

「そうですね。だからノリづらくても別にいいんですよね。それにたぶんこの曲のリズム的な部分は、出した後にだんだん浸透していくんだろうなとも思いますし、これ、幕張のファイナルでやった時、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。とにかく自分達自身がこの音を楽しみながらやることができて。我々は今、ライヴでもそこに重きを置いてるなっていうふうに思うんですよね。“ワタリドリ”の時はどんだけ跳ねさせるかとか、そういうことのほうが重要だった気がするんですけど、“NEW WALL”はちょっと違う。どれだけ歌わせるかとか、どれだけこの音に輝きを見出させるかとか、そっちのほうに集中するべきなのかなと思ってます」

■それは凄く意味のある変化だと思う。そういうトライをしていくことってバンドとして次のステージをめざす時にもの凄く重要だと思いますよ。

「確かに。そこは新しい感覚が自分の中で芽生えたかもしれないですね。……今日のインタヴュー楽しいな、自由に話せて(笑)」

■それはよかった(笑)。で、一方の“I want u to love me”は最初に聴いた時、「これは“Dracula La”の続編的な楽曲だな」って思ったんだけど。

「そうそうそう、これはまさに」

■そこは“Dracula La”と同じく『女くどき飯』の主題歌であるっていうことも関係しているの?

「でも、この曲自体は『女くどき飯 Season2』の話が来る直前から作り始めてた曲だったんですよ。で、その時はめっちゃくちゃショボい音源だったんだけど、『なんかこのチープ感いいな』って思って。なんかちょっと情けない感じがするところが凄い病みつきになっちゃって(笑)。で、そんな時にタイアップのお話をいただいて、じゃあこれどうかなと思って作っていったんですけど。どことなく頼りない雰囲気が見え隠れするのはそのせいかもしれない。最初は情けない曲を作ろうと思ってたから」

■なんで情けない曲を作りたかったの?

「その時、バッキバキな曲か、あるいは“NEW WALL”みたいなふわっとした曲を作ってたから、なんか『オモチャの機材しか使ってません!』みたいな曲を作ってみたくなったんですよね。チープな音をどれだけ集められるかって考えてた気がするな……元々のヤツは子供っぽい感じの曲だったから、それでコーラス隊に子供を呼びましょうってことになったんですけど(笑)。10人ぐらいのプロの聖歌隊的な小学生ぐらいの子をスタジオに呼んで、最後のコーラス歌ってもらったんですよね」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.109』