Posted on 2016.06.17 by MUSICA編集部

UNISON SQUARE GARDEN、
鮮烈なモンスターアルバム『Dr.Izzy』誕生。
そのメカニズムと芯を3人個別取材で徹底解剖
――Interview with 田淵智也

Interview with 田淵智也

音楽市場が向かっている方向に少なからず危機感を持っているので。
だったらせめて僕らは自分らのやり方で生き残りますよ。
ロックバンドとして最後の恐竜みたいな自覚はあるのかもしれない

『MUSICA 7月号 Vol.111』P.12より掲載

 

「最後なんでしょ? 僕が。もうふたりとも終わってるんですよね? どうしよう、メンバーと違うこと言っちゃったら」

■いや、それが個別インタヴューの醍醐味だから、どうぞお好きに。

「誌面に矛盾が(笑)。よし、ちゃんとやろ!」

■じゃあいきましょう。素晴らしい有言実行な最高傑作ができましたね。

「有言実行? 僕なんか言ってましたっけ?」

■前回のインタヴューで「今バンドが凄く楽しくやれてるから、いい曲ができるんじゃないか」って話してくれてたんだけど。見事やりました。

「そうですか? そう言われてよかったなあと嬉しくなるけど、でも今回に関しては自分がどういう思いで作ったんですよっていうのは割とあてにならないなと思ってて」

■どういう意味で?

「今まで以上に聴いた人がどう読み解くかが全部正解だなと思ってるので。そっちの話のほうが聞きたいし、そういうヒントがないとしゃべることがない感じがあるんですよね。今回は今までより凄い俯瞰でものを見て作ったアルバムだなと思うんですよ。『自分は気に入ってるけど、たぶんあんまり人気出ないなっていう曲があるから、その曲以外は頑張らなきゃな』とか、『この曲は人気ありそうだけど俺はあんまり好きなタイプじゃないから、長くするとライヴでやりづらくなるから短くしよう』とか」

■そんな曲もあるんだ(笑)。

「ありますあります。あと一番大きいのはやはり“シュガーソングとビターステップ”が入るので、それ以外をどうやったら自分の意図通り、過大評価も過小評価もされないレベルでできるかなっていうのを、なんの衒いもなく計画できたアルバムなんですよ。だからどこか他人事のように作った感じもあって」

■その辺のプロデュースぶりを細かく訊いていきたいんですけど。まずこの『Dr.Izzy』というタイトルはどういう意味合いなんですか?

「毎回アルバムタイトルは特に説明しなければいけない了見もないんですけど、しいて言えばキャッチにもしてる『UNISONを解剖する』という意味合いで。4枚目と5枚目のアルバムが、僕の中で凄くよくできたアルバムだったんで。それは別にいい意味じゃないんですけど」

■いやいや、いい意味でしょ?

「うーん……今となってはいい意味じゃない、みたいな感じなのかな。作った時はほんと凄いなと思ったし、今聴いてもいいと思うし。でもたとえば、このイメージのままいって先々息苦しくなっても嫌だなと思って。ちょっと知名度が上がってきたり応援してくれる人数が増えてくると、使命を背負わされるでしょ? で、バンドの哲学として『多くの人に認められる』というところとは違うスタンスでやってる場合、使命は背負えば背負うほど重荷になると思うんですよ」

■そうだね、外せない十字架になっちゃうからね。

「そう。それで『私の知ってるUNISONじゃない』とか言われても困るし。男女の付き合いもそうかもしれないですけど、気を持たせてしまって誤解されたら、気を持たせたほうの責任じゃないですか(笑)。それはちょっといかんなと思って。だから、4枚目、5枚目とよくできたアルバムを作ってしまったので、6枚目は敢えてそう構えないでアルバムを作ろうと思ったんです」

■そんなことを言うアーティストは初めてですし、今後もきっとあなただけだと思いますけど。

「(笑)要は、あのよくできたCDの後に『この人達、普通にロックバンドだけやってたい人達なんだな』って思われるものを作っておかないと、この後やりづらくなるだろうなと思ったんですよね。そういう温度感でまとめていった感は強いですね。で、解剖といったら医者か、みたいなところから『Dr.Izzy』っていうタイトルが生まれて。そういう構想です」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.111』