Posted on 2016.06.18 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、「BFLY」密着連載第2回!
名古屋公演レポート&福岡公演密着で、
幸福な一期一会を綴る

5月8日愛知ナゴヤドーム、
そして5月22日福岡ヤフオク!ドーム。
巨大スタジアムツアーならではの、ライヴに対する飢え、
そして愛しさの結晶を観た!

『MUSICA 7月号 Vol.111』P.32より掲載

 

(前半略)

5月22日 福岡ヤフオク!ドーム

 

 海沿いに位置し、心地よくも強い風が吹いているスタジアム周辺を感じながらバックエリアに入る。10時11分に升が入ってきて、よっこいしょとリュックをソファーに降ろした。どうやらチャマも一緒に入ってきたようだが、早速どこかに行ったようで確認できない。そして34分に、フジと増川がいつものようにのそっと入ってきた。

 そのフジは楽屋に入るなり、何体もの今回のグッズのニコルのぬいぐるみに服を着せ始めている。今まで見たことのない光景だったので、「もしかして毎回やってたの?」と聞くと、「まあね(笑)。今回、ニコルがグッズになったからさ、ありがとうという気持ちも込めて、責任取んなきゃなと思ってこうやってスタッフが特別に作ってくれた服を着せてるんだよ」と、笑みを浮かべながら淡々と一体一体に丁寧に服を着せてゆく。そして45分から、増川とフジで向かい合い、ふたりでゆっくりとご飯を食べ始めた。

 11時になると、何処かへ行ってた升がいつもの「男マリア」のような懐の広い笑みを浮かべながら戻ってくる。

 その升に「大丈夫?」とフジが真っ先に言う。なんのことだかわからなくて目を丸くしている僕に、升とフジが説明をしてくれたが、どうやら升は一昨日から軽く発熱したらしく、薬を飲んでるのだという。心配気なフジに対して、当の升は「もう大丈夫だよ、薬を飲み忘れそうになるぐらいの感じだから」と、笑いながら返事をしている。少しでも心配を払拭し、完全なコンディションでライヴに向かいたい升は、早く来て別室でマッサージをやってもらったらしく、「身体のダルさはまったく見受けられないから心配しないで」と僕にもリラックスした表情で話してくれた。

 と同時に、升と一緒にスタジアム入りしていたチャマが、いつものようには快活に握手を求めてきた。これにていつもの4人が揃い踏み。中でも一番快活なチャマが、忙しなく楽屋の中を歩いているので注視すると、「寒い寒い」と言い出す。さらに「なんとかせにゃ」と言いながら、空調がオフになってるのを見て慌ててつけながら「オフやないかい!」と連呼している。朝からテンション高めだなと思うと共に、そうか、きっと升を心配してるんだなということに気づく。

 11時25分、楽屋でひとりになったチャマが喉を転がしながら、アコギと共に発声練習をゆっくりとしているので、「今回のツアーは随分とインターバルが空くけど大丈夫?」と訊くと、こう話してくれた。

「確かに人前に出るインターバルはツアーとしては空いてはいるけど、でも俺らの中でのインターバルは空いてないんだよ。何故ならば、まったく休めてないから(笑)。まず、ずっと週3で練習してるんだよね。それ以外にも時間空けば、それぞれが個人練やってるしね。フジくんもいろいろあったり、曲が出てきたりしているみたいだし。スタジアムツアーに関しても、一つひとつのライヴの反省点をじっくり話し合ったり考え合ったりする時間もあるから、それをじっくりやってさ。むしろ今まで以上に頑張り過ぎて、身体が壊さないよう注意し合ってるんだよね(笑)」

 さらにこうつけ加えた。

「それに、そろそろこれからのバンプをどうするか、考えないといけない時期だしね。『20』とかスタジアムツアーとか、ここ最近ずっと特別なことが多過ぎたから(笑)、それを踏まえてこれからいろいろなやり方があるじゃない? それも考え始めてる。それがとても楽しいんだよ」

 そのチャマが11時49分にステージへ向かっていった。サウンドチェックのためだ。しばらくベースの音の調整をPA達とした後、お互いの調子を確かめるように、升のドラマとぶっとい音とビートをでかいステージの上でずっとぶつけ合いながらセッションしている。さっきまで楽屋ではずっと寒い寒いと話していたチャマだが、今度はステージ上で暑い暑いと言っている。つくづくいろいろと忙しい男だ。今に始まったことではないが。

 12時5分にはステージに増川が入ってきてギターのサウンドチェック。リズムもののチェックが終わり上音ものが始まったので、升がステージから降りて客席にあたるグラウンドの散歩をゆっくりとゆっくりと始める。その間、フジは楽屋でひとり、綺麗なアルペジオをギターで爪弾きながら、ほっほっほと時折声出しをしていた。とても流暢なギターと声だ。「今日はどれにしようかね?」と独り言のようにつぶやきながら、ステージ上のギターアンプの上に乗せるニコルをどれにするのか、しばし迷っている。

「バンプのファンは年齢層が広いから、難しいよね」という声が廊下から聞こえてきたと思いきや、その声の主のチャマが、フジと一緒にニコルについて悩む。結局、ベースボールキャップに黒Tのニコルを大事そうに持ち、行ってきますと言い残してフジが12時22分にサウンドチェックのために楽屋を出て行った。チャマはまだ、舞台監督と楽屋の空調が寒くてグラウンドがあんなに暑いのは何故だ?と不思議がっている。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.111』