Posted on 2016.06.20 by MUSICA編集部

UNISON SQUARE GARDEN、
鮮烈なモンスターアルバム『Dr.Izzy』誕生。
そのメカニズムと芯を3人個別取材で徹底解剖
――Interview with 鈴木貴雄

人間が生きてる意味って大層なものではないと思ってるんですけど、
それでも自分がドラムを一生懸命叩いた時に喜んでくれる人がいたり、
メンバーと一緒にいい音楽を作ることに
凄い喜びがあるのは本当に幸せなことで

『MUSICA 7月号 Vol.111』P.12より掲載

 

■名作誕生おめでとうございます。

「いやいや、そんなことないですよ。いつも通りです」

■なんだそれ(笑)。まあでも、そうだね。ここ2枚含め、ずっと名作アルバムを作り続けているバンドだと思います。その上でのこれっていうか。

「ありがとうございます。毎回アルバムの特色っていうのは、僕が語るべきではないと思ってるんです。それは基本的に田淵のイメージがあって、その上がってきた曲に対してどういうドラムを叩くかっていう、言ってみれば職人的なところに僕の役割があるからなんですけど。なのでディレクターでもプロデューサーでもない自分が、作品そのものに対して思うとこはあんまりないです。なので『いつも通り』っていうことですね(笑)」

■ちなみに斎藤くんはこの『Dr.Izzy』ってアルバムを、「初めて肩の力をちゃんと抜くことができた、今までとはそういう意味で大きく違う作品だ」、というお話をしてくれて。そういう部分に関して言えば、鈴木くんはどう思いますか?

「ああ、それに関しては僕もそう思います……ただ、各々いろんな意見があると思うんですけど、僕はこの12曲を並べて聴いた時にいいアルバムだなとは思いつつ、なんて言うかな……『盗りに行かない』曲っていうんですかね。人の心を盗りにいかない、完全に泣かせにいかない、そういうある種『狙い過ぎてない』曲が結構あるなと思ったんです。で、最初はそれがちょっと物足りなく感じた瞬間もあったんですね。サラッとしてんなって。でもその話を田淵にしてみたら、そのサラッとした部分をむしろ狙ってるんですって」

■それは凄くわかります。

「その中で今作で盗りにいく曲は、たとえば“アトラクションがはじまる(they call it “NO.6”)”、“オトノバ中間試験”、“パンデミックサドンデス”、“mix juiceのいうとおり”、そしてもちろん一番が“シュガーソングとビターステップ”だと思うんですけど、でもそれ以外は敢えて力を抜いたようなんですよ。でも僕はその話を聞いて凄く合点がいったんです。12曲をツルッと聴けちゃって。メインディッシュとメインディッシュの間にサラダやスープがあるというか、それだけでお腹いっぱいにならない間の曲がしっかりあって。それを受けた上で、自分自身も力を抜いてるけど手は抜いてないような、そんな曲達で構成されたアルバムを作れたなって思いました」

■本当にフルコースのディナーですよね。各曲に異なる表情と役割がある。僕は今おっしゃってくれたとのすべてが、このアルバムでは功を奏してると思うよ。それ自体がアルバムとしてこの12曲を聴かせるっていうことへの、巧みなプロデュース力を感じるからなんですけどね。

「わかります。本当に彼(田淵)は名プロデューサーですよね」

■その中で鈴木くんの、今作においてのご自身のプレイヤーとして、また技術屋としての部分はどうでしたか?

「ドラムの音に関しては正直自信があります。最近は自分が思った音を出せるようになってきたなって思ってて。レコーディングでもそうですし、ライヴでも、ライヴハウスによって全然違う鳴りをしている中で、イメージと技術がリンクして自分の力でスッと対応できるようになってきてるなって。音もフレーズもそうなんですけど、なんかがむしゃらに『いいものにしてやりたい!』って思ってやってたような昔のものではなくなって、今はイメージ通りに音もフレーズできるようになってきた実感もあって。この歳になって、自分のなりたいドラマー像っていうのが自分自身の中に明確にできてきたというか」

■今お話ししてくれた、会場に合わせて自分がどうすべきかっていうことがわかってきたっていうのも、ある種ご自分とご自分の太鼓っていうものの定点――つまりはドラマーとしての体幹がわかってきて、そこを基準に状況に対してどうすればいいのかっていうことがわかってきたってことだと思うんですね。これをもっと人間的な話にしていけば、自分っていうものを知れたからこそできるようになった、ってことだと思うんですよ。

「その通りだと思います。自分を知れたってことと、じゃあそれをどう見せたらいいのか?っていう技術的なところのふたつが、全部リンクしたんだと思いますね」

■なんでご自分を知れたんだと思いますか?

「僕、基本的には人間が生きてる意味って、そんな大層なものはないと思ってるんです。でもそんなあまり意味のない生の中でも、やっぱり少なからず自分がドラムを叩いて一生懸命やった時に喜んでくれる人がいたり、メンバーと一緒にいい音楽を作ったりするってことには凄い喜びがあるし幸せなことで。だから音楽を作って演奏する中で人に希望を与えていって、そして逆にその人達からも僕自身が希望をもらってっていうような、そういうふうに生かし合っていくものだと思いながらやってるんですけど。今はそういうサイクルの中で、自分自身の人生とかドラムとかでやるべきこと、やりたいこととの全部がハッキリしたんだと思います」

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text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.111』