Posted on 2016.06.21 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、新代表曲『だいじょうぶ』誕生。
その闘争と新フェーズを田邊と語り合う

「ギリギリの状態でも少しずつ夢を叶えてきたんだ」ってところを
全部見せてこられたし、それを積み重ねてきた上での今なら、
後先考えずに思ったことを
アウトプットしていけばいいんだって思ったんです

『MUSICA 7月号 Vol.111』P.62より掲載

 

■この“だいじょうぶ”、もの凄い曲ですね。

「わ、嬉しい! ありがとうございます」

■“HANDS”や“もっと光を”といった、ブルエンの真ん中・背骨にある熱いメッセージソングを今のものに更新していくような曲だなと思いました。同時に、合唱曲のようなメロディも含めて、2ビートで走っているのにスケール感と温かみがあるという新しい聴き応えも感じて。ご自身は、どういう実感を持たれてる曲なんですか。

「まさに言ってもらった通りで、2ビートなのに温かみとスケール感があるなって、自分でも思いますね。そもそもはと言うと――このシングルを出そうとなった時に、今年のリリースを振り返ってみたんです。『はじまり』というバラードを出して、春には『Survivor』という、『はじまり』と真逆のガッシリした四つ打ちナンバーを出して。その上で、上半期だけで3枚もシングルを出させてもらえるなんていう機会を今回もらえたのなら、なおかつ“もっと光を”が自分達とお客さんの間で大切な曲に育ってきた実感があった上で武道館ワンマンまで半年を切った今なら、今までの代表曲を超えて行くものを作ることが次のステップだって思ったんですよ。……でね、実は、この“だいじょうぶ”は2年前くらい、それこそ“もっと光を”を作った時に同時に作った曲なんですよね」

■そうなんですね。メジャーデビュー以降の自分達の真芯を食うメッセージソングを作るタイミングで、すでに生まれてきていた曲だったと。

「そうそう。その時に何曲も作ってた中の1曲としてオケもできあがってて、メロもほぼ今の状態で乗ってて。それでプリプロもしてたんです。で、一番最初の<あなたを待ってた/ぼくらを待ってた>っていう詞もできてたんですよ。その歌詞は、本当にふっと出てきただけだったんですけど――でね、実は高校サッカーの応援歌の時も、『≒』の時も、“だいじょうぶ”を出したいっていう話はしてたんです。だけど『いや、違う』ってなってて。『入れたい』『違う』が2年間ずっと続いてた曲なんですよね」

■この曲を自分達でどういうものだと捉えてたから、「いや、違う」になってきたんだと思います?

「それがね………わからないんですよ。歌詞も<あなたを待ってた/ぼくらは待ってた>しかできていなかったわけだから、曲とメロディそのものが帯びてた魔力が凄かったとしか言えないんですけど。……ただ、それくらいの曲だからこそ、みんなが全員揃って『今出したい』って言えた時に出そうっていう話になったんですよね。もちろん、1月から3月くらいの間にも、さっき言ったような『自分達の新しい代表曲を書きたい』っていう想いでたくさん曲は作ってたし、今回3曲目で思い切り青春パンクをやってる“GO!!”もその中の曲で、みんなで『この曲はヤバい!』って言ってたんですけど。ただ、“GO!!”はもう少し『起爆剤』的な立ち位置の曲だなっていう感触があったし、俺がMCでガーッと言いたいことを言ってから雪崩れ込んでいくような、そういう曲ではないなと思ったんですよ」

■“GO!!”は1番バッターには適任だけど、4番打者ではないなっていうことですよね。で、今の話で言えば、やっぱり自分達にとっての4番っていうのは、田邊さんのMCをそのまま叩き込んだようなメッセージソングであるっていうことを改めて実感したっていう。

「ああ、まさにそうです。そう考えたら、やっぱり“だいじょうぶ”が自分達の中ではもの凄い力を放っていたし、なら、もうこの“だいじょうぶ”を出すしかないっていうふうになったのが今なんですよね。それで、いよいよだと思ってこの“だいじょうぶ”に取りかかったんですけど……もう曲もでき上がってて、<あなたを待ってた/ぼくらを待ってた>っていうアタマも決まってるのに、とにかく歌詞に時間がかかって。俺、そういう癖があるんですよ。何かがスムーズにいった分、どこかで『家が近い子ほど学校に遅刻する』みたいな油断があるというか(笑)。で、今回も歌詞が書けないまま『TOUR 2016 THANKS』が始まってしまいまして――最初の3公演でSUPER BEAVERと一緒に回って、その後、京都でアルカラ先輩、大阪でヒトリエと一緒にやって、神戸でLONGMANとやってから、移動日を合わせて2日間空いて。そこで『ここで書くしかない』となったんです。そしたら不思議なことに、“S.O.B”と“GO!!”の歌詞は3時間で書けたんですよ(笑)。で、そこから“だいじょうぶ”の詞にとりかかったんですけど……最終的には、BLUE ENCOUNT史上一番時間がかかっちゃったんじゃないかなぁ。俺、いつも歌詞は早いほうなんですけど」

■ライヴのモードに入って“S.O.B”と“GO!!”がスパッと書けた中でも“だいじょうぶ”の歌詞が難航したのは、何故だったんですかね?

「やっぱり、アタマの<あなたを待ってた/ぼくらは待ってた>っていう部分から書いていくのが凄く難しかったんですよ。そのアタマの歌詞は、曲を作った時にポンと出てきた言葉ではあったんですけど、<待ってた>っていう言葉以上に刺せるワードってなんなんだ?とか考えてしまって――やっぱりブルエンって、“もっと光を”とか“DAY×DAY”とか“Survivor”とか、聴く人の頭に残らせようと必死な言葉を歌ってきたバンドだと思うんです。そもそも自分達が音楽にしてきたのも、『回りくどいから今ストレートに言うわ!』っていう想いばっかりだし、だからこそ、『待ってた』っていう言葉以上の一撃必殺ワードが何なのか凄く悩んでしまって。で、あれはYON FESの日かな。俺らのライヴが終わった後にメンバーみんなで言葉を出し合ったんですけど、結局どれもハマらなくて。だから1回原点に戻って、俺がこれまでライヴで言ってきたMCを振り返ることになったんです。でもそこで同時に考えたのは――やっぱりライヴのMCって、前後の流れや空気感、そこにある熱量があって初めて成立するものじゃないですか。最近は、いろんなバンドのMCがTwitterで拡散されたりもしているけど、文字だけじゃ、人を傷つけたり意味がまったく違う言葉になっちゃったりするのがMCってもんで。……だからこそ、自分達がいつでも言い続けてきたことや、伝え続けてきた言葉ってなんだろう?っていうことを探していったんですよね」

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text by矢島大地

『MUSICA7月号 Vol.111』