Posted on 2016.06.21 by MUSICA編集部

フレデリックの決定打たる新曲『オンリーワンダー』。
バンドの肝を握る三原康司を徹底取材

「楽しさ」を求めるシーンを悪いことだとは思ってないんですよ。
でも、その時だけですぐ過ぎ去ってしまうことに対する恐怖はあるんです。
自分達がそのシーンにいるからこそ、自分達の手でその次の一手を提示したい

『MUSICA 7月号 Vol.111』P.68より掲載

 

■今回のシングル曲“オンリーワンダー”、めちゃくちゃ素晴らしいです。

「ふふ、ありがとうございます!」

■“オドループ”でジャンプアップしてからのいろんな作品や経験が見事に昇華されて、フレデリックのど真ん中を担う曲が遂に生まれたなぁと思うんだけど、これは自分でも手応えは感じてるんじゃないですか。

「感じてます。今まで書いた曲の中で一番しっくりきたっていう感触がもの凄くあるんですよね。自分の中では“ハローグッバイ”とか“FUTURE ICE CREAM”と、“オドループ”とか“オワラセナイト”ってまったく別の曲だったんですよ。“オドループ”や“オワラセナイト”は自分達が大事にしてきたリズムやビートを強化して持っていった楽曲で、“ハローグッバイ”や“FUTURE ICE CREAM”はメッセージを放っていくことに重きを置いた曲で……という感じだったんですけど、でも今回はその両方をちゃんとやり切る曲ができたなって思っていて。正直、今まで曲を書いてきた中で一番迷いましたけどね。めっちゃくちゃ大変でした(笑)」

■それはどういう部分が?

「いつもだったら曲を作る時、言葉を放っていて『口気持ちいいもの』をずっと探してたんですよ」

■発語感だったり響きだったり、言葉のリズム感だったりね。

「そうです。“オドループ”とかもその口気持ちいいものから素直にでき上がっていったものだったんですけど、この曲が最初にできた時、今とは全然違う歌詞で。メッセージは似通ったものがあったし、自分としては凄く気持ちいいものができたけど、でも凄く弱かったんですよ。曲としては凄く気持ちいいものではあったんですけど、歌詞を聴いた時に、これはたぶん気持ちよくないだろうなと思ったというか」

■要するに、音としての歌という意味では気持ちいいけど、メッセージとしてはまだちょっと奥歯にものが挟まってるような感じだったってこと?

「まさにそういう感じですね(笑)。まだ一歩抜けてないっていう感じが凄くあって、そこが今回一番闘った部分でした。本当にずっとずっと悩んでしまって……歌詞の気持ちよさっていう部分で絶対に抜きたくない言葉とか、僕、そういうこだわりがめちゃくちゃあるんですよ。音楽ってやっぱり、たったひとつの言葉が変わるだけででもまったくもって景色が変わるんで。その中で今回は自分の言葉でどういう景色に持っていくのか、どういう景色に持っていきたいのかっていうところまでを凄く考えました。今まではそういう作曲の仕方をしたことがなかったんで大変でしたね。……やっぱりずっと、一歩次に進みたいという気持ちは強かったんだと思います。昔からやりたいことは変わってないんですけど、でも自分がやりたかったことって、自分が今まで思っていたよりも音楽的に凄く難しいことだなっていうことを感じたりもしてたんですよ。言葉のリズムを気持ちよく乗せながら、同時に自分が感じていること、伝えたいメッセージがしっかり伝わるものにするっていうのは――そういうメッセージと言葉とリズムのマッチングって難しいっていうより、もう奇跡というか(笑)。でも今回はそれをやらなきゃダメだって思って。そうしないと次に行けないっていうのは、凄く感じてたんですよね」

■前作はkaz.くんの脱退もあって、自分の素直な心情が自然とストレートに曲や言葉の中に出て行ったって話をしてくれましたけど――。

「あの時期はそういうパターンが多かったですね。自然と出てきました」

■そうやって曲の中に自然と出てきた自分の想いがきっちり伝わっていったという体験をしたからこそ、自分の中にあるメッセージをどうしたらもっとヴィヴィッドに、かつ人を選ばない形で響くのかっていうことに意識的になり、挑戦をしていったというところもあったんですか。

「それは凄くあったと思います。僕らは昔から『みんなに届けたい』っていう言い方をすることが多かったんですよ。でも、その『みんな』って一体誰なんだろう?っていうことを最近凄く考えるようになって。去年フレデリズムツアーでいろんなところに行ったんですけど、インディーズで大阪でライヴをやっている時からずっと、わざわざ新潟から来てくれてた女の子がいて。その子が昔から『いつか絶対に新潟にワンマンで来てください』って言ってくれてて、僕らもいつか絶対にその夢を叶えてやりたいなっていう話をしてたんですよね。で、やっとフレデリズムツアーの時に新潟でワンマンができることになって、それが凄く嬉しくて……このひとりの女の子がそうやって言ってくれたからここが繋がったんだろうなって思ったし、その瞬間に、ソールドアウトの新潟RIVERSTに来てくれた一人ひとりも、その子と同じ気持ちを持って僕らに対してきてくれてるんだろうっていうのを凄く感じて――それで、誰もが特別な一人ひとりなんだなっていうことを強く思ったんですよね。で、結局みんなを楽しませるっていうか、幸せにできるかどうかは、ひとりに対してどれだけ愛情を持って接することができるかどうかにかかってるんだって気づいたというか」

■漠然とした「みんな」じゃなくて、他の誰でもない「ひとり」の集積が「みんな」であるってことに自覚的になったんだ?

「まさに。そこが変わったところが強かったなって凄く思います。今思うと、前は誰に届けたいんだろうっていうのが漠然としてたなって。『みんなに届けたい』っていう言葉に頼ってた部分は絶対ありました」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA7月号 Vol.111』