Posted on 2016.07.15 by MUSICA編集部

スピッツ、約3年ぶりとなるアルバム『醒めない』完成!
ロックへの憧憬と衝動を詰め込んだ、
ロックバンド大作を全員で語り合う!

一貫したストーリーがあるアルバムを作ったら
面白いんじゃないかってなんとなく思って。
で、そうやってストーリーを構築するんだったら
「死と再生」で作るのが今の心境かなって(草野)

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.14より掲載

 

■約2年10ヵ月ぶりになります。

草野正宗 (Vo)「2年10ヵ月?」

田村明浩(B)「何が?」

■アルバムが2年10ヵ月ぶりで、だから取材も2年10ヵ月ぶりです。ここ10年はずっと3年タームですけど、自分達の中で「3年の中で1枚は出そう」みたいなバイオリズムになってるんですか?

草野「そうね(笑)。それが今んとこ落ち着く感覚になってる」

三輪テツヤ(G)「そうだね。『これぐらいだったら無理なく作れるかな』っていうところかな。ツアーもやるからさ、ライヴはライヴで集中したいし作るものは作るほうで集中したいしってなると、このぐらいがちょうどいい。でもたとえば、ツアーの本数が少なくなれば――」

草野「(アルバムのタームは)もっと短くなるかもしれないね。あと、アルバムっていう形態がこれから先意味をなさなくなったりした時に――」

■2枚前のアルバム『とげまる』の時からそういう話はしてたよね。

草野「そうそう。だからたとえば『今回は5曲リリースします』みたいな感じで小刻みに出すっていうふうになってもおかしくないなと思ってたんだけど、でも意外と根強いから、アルバムってなくならないのかもしれないなとも思ったり。そんなにこだわりは強くはないんですけど考えはしますよ、いろいろとね」

■で、今回の作品は非常に元気がいい作品で。もの凄く元気がいいです。

草野「あ、そんな気がする。みんなでも言ってたよね、今回は明るいって(笑)。全部の曲が揃ってから曲順決めようって時にツルッと14曲全部聴いた時に、なんか明るいかもって思って。それまでは気づかなかったんだけど、鹿野くんも言うし、やっぱりそうなんだね」

■間違いないと思うよ。まずは、このアルバムに至る話を具体的に聞いていきましょう。この『醒めない』という作品についてそれぞれ今思うことからお願いします。

三輪「ま、いつも一緒になっちゃうんだけど。最新アルバムが一番いいと思ってるし、今回もそういうアルバムができてよかったなって。でき上がったアルバムを聴くことが楽しいんだよね。チェックという意味もあるんだけど、凄い聴くんだよ。何回も何回も聴くの。で、それが苦にならない。もちろん自分のギターに関して『もうちょっとあそこはああしたほうがよかったな』っていう反省点は毎回残るんだけど、聴いていて凄く楽しい」

田村「俺の場合は今回レコーディングに入る前に、レコーディングができることに対して嬉しいな、ラッキーだなっていう気持ちを持って臨もうと思ったんですよね。もう15枚目のアルバムなんだけど、これをルーティンとは思わずに、現状できることをすべてぶつけてみようって感じでね。自分ができることをすべてやり尽くして、今レコーディングができるっていう状況を当たり前のことと思わずに、バンドとして幸せな状況なんだなっていうことを忘れちゃいけないなって思った」

■それはスピッツでいられること、そして新しい音楽を作れることに感謝したいという想いとイコールなの?

田村「感謝っていうか、自分が元々やりたくてやってることなので。やりたくてやってることができるっていうのはラッキーじゃないですか。……でも、そういう感動を忘れがちなんだよね、長くやってると」

﨑山龍男(Dr)「俺はやっぱり、スピッツで十分に演奏できる充実感、責任感を感じながら演奏に込めた曲達が集まったなって思ってて――」

草野「ふふふふふ」

■ん? なんで笑ってんの?

草野「いや……なんか、みんな上手くまとめてんなって思って(笑)」

三輪「うん、既に終わろうとしてるから」

■いやいや、ここからかなり長く行くから! 﨑ちゃん続きを。

﨑山「はい(笑)。でも今回、自分達のキャリアを感じつつ、他のバンドの人達と話したりしながら、今のスピッツの在り方を見つめたりしながら、思いっ切りできることをやるっていうことを心がけましたね。いろいろみんな思うこともあるんだなと思うと同時に、スピッツでいられることの喜びって、現実誰も他の人は味わえないわけで、そこに自分がいる不思議さもあるけど、それをドラムというものでちゃんと形にしないと、とは 今回思ってました」

■素晴らしいメッセージをありがとうございます。マサムネくんは?

草野「……『おじさんの等身大のアルバム』って感じですかね(笑)」

全員「はははははははははははははは」

草野「もうあんまりカッコつけなくていい感じになってきて。それは長くやってきたバンドっていうこともあるかもだし、歳食ったからっていうのもあるんだけど。急にじゃなくて、徐々にそうなってきた感じなんだけどね。30代くらいのほうがもうちょっと悪あがきというか、香水振ったりする感じがあったと思うんですよ。加齢臭を消そう、みたいな」

■(笑)そうだろうね。あの頃のスピッツに加齢臭は危険だったし。

草野「あはは、でもそういうのはちょっとなくなってきましたね。石鹸の匂いぐらいはしてるかもしれないけど(笑)、過剰に香水振ったりはしてなくて。自分達が持ってるものだけでいいものが作れるんじゃないかっていう。それがちゃんと形にできたかなって。で、その結果、かえって若く感じるアルバムになったかなと思う」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.112』