Posted on 2016.07.15 by MUSICA編集部

10-FEET、遂に渾身の新曲『アンテナラスト』が完成!
暗中模索を極めた4年をTAKUMAと共に振り返る

曲できひんって思ってる時、
去年死んだばあちゃんのことずっと思い出してて。
小さい頃「ばあちゃんなんか嫌や、お母さんがいい」とか
酷いこと言った時もずっと変わらず愛してくれて。
僕もそういう優しさとか覚悟を含んだ愛を持てたら、もっと……

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.48より掲載

 

(前半略)

■この曲には楽しさもあるし、やるせなさもあるし、盛り上がれるし歌えるし、まぁラジオでオンエアしたリアクションみればわかるように泣けるし全部の要素が集まったからこそ最良であり最高の新曲になったと思うんだよね。そんな中で、“1sec.”のようなカーッと盛り上がる楽曲をひとつ作ろう。でも心の中で今解決できないけど歌にしたいことはまだあって、それをもう1曲8分の6拍子の重いワルツとかで作って、これをダブルA面で出したら今の10-FEETの光と影って形になるじゃないかってことも考えたと思うんですよね。

「………うん、あらゆることは時間があったので考えては回っていたと思います。僕は音楽を作る側でもあるんですけど、いろんなバンドとかアーティストのファンで、聴く側の人間でもありますんで。作り手の気持ち知ってるくせに、今までコンスタントに出すアーティストが4年も空けて出してきた曲やったら『お前それなりの答えあんねやろな』って思って聴いてまうと思うんですよ(笑)。まさにそのタイミングだったと思うんです。ただその時に、『あ、そうきたか』って思わせてくれる……あのバンドが〇〇系に走ってた時ね、とか、あのバンドが結構ストイックな時期ね、とかパリピにいっちゃった時期ね、とかみんなから思われるような音源を出し続けても衰退しないアーティストって凄い人ばっかりやなって。桑田佳祐さんとか凄い泣けるラヴソング出したと思ったら、『ん、これ下ネタ? え、下ネタちゃうんか? やっぱ下ネタやん!』みたいな曲出して、しかもヒットしたり。そう考えた時に、うちらに求められている音楽の幅、曲の範囲ってめっちゃ広いわけでもないけど狭いわけでもない。そんな状況の中で所謂ど真ん中の曲出すんやったら……気絶してしまうくらいいい曲じゃないと意味ないなって、結果自分を縛っていたと言っても過言ではない時も長かったと思ってます。そんな曲ができたら出したらええし、そうじゃないんだったら今の10-FEETのライヴ感が投影されてるような楽曲でも凄い意味あるなとは思ってたので。…………だから“シガードッグ”とか“風”とか“蜃気楼”がなかったら“アンテナラスト”はシングルになってなかったかもしれないかなーとかも思いますね」

■彷徨った気持ちを、自分も弱いけどみんなも弱くて、だからゆっくりと現実見つめて、頑張らなくてもいいけど結果前へ進まないと日々が来ないってことをロックバンドバラードにしてゆくような歌たちがあったからこその“アンテナラスト”なんだ。

「そう、でも『そんなんよりもっと激しい曲やってよ』とか言われてもおかしくないし、最初は実際に言われてましたから。でもね、そういう曲をずっとやり続けてきたり、『TWISTER』くらいから日本語で伝える曲を表現してきたことによって、これもありやなって思ってもらえるようになったかなって思うんです。そういう意味で今の10-FEETのライヴ感があるって言ってもいい曲になったと思うんです」

■たとえばイベントとかフェスに出てどんどん目の前の景色が凄いことになってきているのを見て、「俺達の“マンPのGスポット”(サザンの名曲です)を目指して新しい曲を作ってみよう、今後もライヴでアンセム化する曲にもなるし、スタッフ含めてみんなが盛り上がるのもいいじゃないか。『thread』で相当魂は灯したはずだから、ノリを重視した曲をここで作ってもいいじゃないか」っていう発想は、“アンテナラスト”を発表するまでの長い長い期間に1回もならなかったんですか? 

「……そうでもなかったすね。ありました。実際にそういう曲もあります。でも今はそうではないんじゃないかって確信はあったんです。……俺達がやろうってなったのは、アップテンポなマンPじゃなかったんです。たぶんそれだけの差ですね、“アンテナラスト”と、その盛り上がりそうな曲の違いは。そっちもまた、どっちみち想いを伝えきるのには時間かかるもんやなと思ってたとこもありますし」

■実は今回のシングルの前に去年、2回ライヴで聴いたバラード的な新曲(京都大作戦、RISINIG SUN ROCK FESTIVALで披露された未発表曲)がありましたよね。あれはいかにして大切に育てていった曲なんですか? そもそもシングルにしたかった曲なの?

「あの時はシングルにしたかったんです。仮で“君の声”ってタイトルつけてるんですけど————その時はよくわからないけど寂しいみたいな時期が結構続いてたんかなぁ。寂しい時に寂しさを歌ってはる曲を聴いても寂しくはならないんですよ、僕は。『わかってくれる人がいた、ここにもこんな人がいた』って思えるからなのかもしんないんですけど、そういう想いであの曲を当時は見てた気はしますね。寂しい時にこういう曲あったらいいなー、どうしようもない時にこういう曲あったらいいなーみたいな。で、ほぼほぼでき上がるとこまで去年いったけど、あと一息ってところで詰め切れへんくって。続きは一旦またライヴとツアーやってからって、レコーディングが後ろ倒しになったんですよ。それでツアーの空き日の期間を丸ごと作曲期間にして、またずっと新たなものを考えてたんですよね。で、いろんな曲がちょっとずつ出るようになってきて、凄い速い曲とか、もっとストレートにアツい曲とかミクスチャーロックみたいのとかもありました。というか、今もあります。で、この“アンテナラスト”もできて。あとの流れはもう……先月の(MUSICAでの)鹿野さんのレヴューが当たってますわ」

■急にその期間に曲ができたっていうのは、TAKUMAの中で俗に言う覚醒したみたいな感覚があったんですか? 

「うーん……覚醒とまでは言えないですね。1回くらい覚醒ってものを感じてみたいですけどね(笑)。……でもなんか、今までと同じような感じで曲がまた作れるようになってきたなって感じっすね。この1年、2年前くらいからかな? 作曲する時に、10-FEETでできひんようなかけ離れた曲でもいいから、とにかく枠組みを決めずに作ろうってやってたんです。別にソロをやりたいわけじゃなかったけど、でもとにかく曲ができひんと進まないから。10-FEETの曲作ろうとして何にもできないくらいやったら、役立たへん曲でもいいからせめて曲作ろうみたいに思う時があって、それを始めてからほんまにいろんな曲がたくさんできたんですよ。しかもそれがまた楽しかったんですよね(笑)。それを経て、10-FEETの曲作りをまたやったら3、4曲できたっていう」

■最終的に仮題“君の声“がシングルにならなかったのは、10-FEETに求められているものとあの曲の乖離している部分が余りにも大き過ぎて、自分が10-FEETのファンだったら正直戸惑うなって思ったりしたの? 

「いや、そこまでのことじゃなくて、これを出したら少なからず戸惑いはあるやろなぁとは思ってたんですけど、かと言ってダメなラインのものではないと思ってましたね。上手く言えないですけど、ほんっとに些細なことやったんですけどね。そのまま押し通しても何にも問題なかったと思うんですけど、チームのみんなから『せっかく期間もあることだし、もう1回いちから作ってみませんか?』って言ってもらったんで、まあ新しく作るにしろ作らないにしろこの曲が候補に挙がってんねやったらいっちょやったろかいなと思ってまたいろいろと曲を作り始めたんですよ。曲を出さなかったけど、曲を作るのが嫌だったわけではないし、むしろ逆でしたから」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.112』