Posted on 2016.07.16 by MUSICA編集部

SKY-HI、幸福なヴァイブスを持つ
新曲『ナナイロホリデー』リリース。
彼のアーティストとしての性と確信を再び問う

エンターテインできる曲じゃないと嫌なんです。
ディズニーランドとかマイケル・ジャクソンとか、
ポピュラリティの象徴に対する戦闘意識というか、
そことちゃんと張り合ってたいんで

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.72より掲載

 

■売れる気しかしないですよ、この“ナナイロホリデー”は。

「あー、もう報われます、そう言っていただいただけで。“愛ブルーム”っていうメジャーデビューシングルは結構まぐれで生まれたんですけど、 “スマイルドロップ”以降自分に感じている可能性の1個は、“ナナイロホリデー”みたいな売れそう、広がりそうな曲が、コンスタントに作れるってことで。個人的にもあとはきっかけひとつでいくんじゃない?って思うんですけど(笑)、なかなかまだまだ渋くてですね」

■ははははははは、正直だね今日も。これはサマーアンセムを作ろうと思ったんですか? 

「ディスコっぽいシングルが最近なかったから……“アイリスライト”、“クロノグラフ”も、『カタルシス』もそうですけど内容が初期段階からシリアスだったんで、そろそろ無条件に気持ちがいいものを作ろうっていうのはあって」

■非常に明るくて開放的な曲を敢えてSKY-HIでやるのは、『カタルシス』では生きることを歌い、バラード調のラップにも挑戦してきた。その中で自分の音楽的な懐を見せられたことが嬉しくて、こういう曲を今俺が出してもいいんじゃないかっていうロジカルがあったりするんですか? 

「完全にないとは言い切れないんですけど、そこはあまり大事にはしてないですね。純粋に音楽でメッセージを届ける以上、エンターテインできる曲じゃないと嫌だなって思うんですよ。それが15分のショウケースでも2時間のショウケースでもちゃんとメッセージを吐き出す瞬間を作りたいからこそそれだけで終わらせたくないし、ちゃんと楽しませたくて。ディズニーランドとか、マイケル・ジャクソンとか、ポピュラリティの象徴みたいなものに対する戦闘意識というか、そことちゃんと張り合っていたいっていうのが基本的にはあるんで。今回は徹底的に楽しい曲を、と思って作り始めたので、完成盤は「幸せ」を詰め込んでるんだけど、デモの時は「楽しい」に寄ってたんですよね。ちょっとセクシーな感じだったり、ビートもコードも一緒で展開もほぼ一緒だけど、メロと歌詞は全然違うものを最初作ってたんです。……その後、4月に喉の手術をして1ヵ月くらい歌えなくて。最初2週間は歌えないことがツラくて何していいかわかんないし、情緒不安定ぽくなって5キロくらい太っちゃって。今までの人生でそんなことある!?って感じでした(笑)」

■この時期じゃないとスケジュールも上手くいかないから、今手術しようってくらい準備万端で、心の準備をして臨んだんだよね? 喉は。

「そうだったんですけど……実際歌えないし、不安にもなりましたね。『本当に(調子が)戻るのかな?』っていうのもあったし、そんな時も容赦なく仕事は入るし。でも、後ろ向きになってばっかりいるわけにもいかないので、気を紛らわそうと思って。歌えないって何がツラいって、曲を作ることもできないんですよね。それなら逆に今までできなかったことやろうと思ってギターを買いまして、真っ赤なグレッチを手に入れて」

■昔のドラマー気分を思い出して楽器欲が復活したみたいな? 

「むしろ新しいほうかもしんない。新しいドア開けよう!みたいな。鍵盤はなんだかんだ制作しながら触ってたから、6割くらいの力で弾けちゃうんです。でもギターは10でやるからツラさを忘れられるんですよね。で、自分の曲をいろいろ弾いているうちにだんだん楽しくなってきて、そんななか去来するものは今年のホールツアーとかで。『カタルシス』出してからのホールツアーは自分の中で大きかったっぽくて。ひとつの出口だったというか、普通に音楽を作って、こんなんじゃダメだってやり直して、認められた、認められてないっていうのを繰り返してアルバムが出て、それなりにこれは評価もらえたんじゃないか?とか、ホールツアーは絶対にいいものにできる、これは完璧だ!って思えるものを手術前は当たり前にできてたなぁって。スタートはひとりだったのが、こんなに仲間増えたんだなぁって実感しましたね。今年はコーラスがふたり増えたのもあって、仲間が増えてく様は『ONE PIECE』みたいで凄い楽しくて(笑)。自分のやってきたことをWikipedia見て感じるのではなく、自分の周りにいる人のおかげで積み重ねたものを感じられたことが凄く幸せだったし、『今は歌えないけど喉が治ったらもっといい状態でこの体験をもう1回できる、こんな幸せなことはない!』って言い聞かせて“ナナイロホリデー”を作り直しました。この曲、<“最高”を始めよう!>から<何度でも続けよう!>になって、<“最高”を届けよう!!!>で終わるんですけど、これはずっと楽しくなれる音楽だなって、幸せな曲になったんです」

■「大丈夫」とか「It’s all right.」って言葉は世界中多くの歌に使われてると同時に、ある種の極端な人間には致命傷とも無責任な言葉とも言われていて。でもきっと今日もポップミュージックでは不特定に向けて、不特定多数の人が歌ってる言葉だよね。日高くんの<It’s Alright>はどういう気分なんですか? 

「“カミツレベルベット”の<Everything’s gonna be alright>の時に僕は、それまで1番嫌っていた単語を使ったんですよ。<Everything’s gonna be alright>って単語が自分の口をついて出た瞬間、自分が一番驚いたみたいな(笑)。で、そんなこと思える日が来るんだなっていう“カミツレベルベット”を越えて“ナナイロホリデー”を歌う今の自分は、根拠はないけど自信はあるんです。それこそ一寸先は闇じゃないけど喉も治るかわかんないし、自分の音楽を聴いたことで聴いてくれた人が幸せになる保障はないんですけど————聴いて欲しいと思う以上は傲慢になっちゃいけないし、聴いてくれる対象をずっと意識したいと思ってて。聴いてくれる人にとって自分の音楽が幸せとか最高とか言い切る根拠はないけど、<It’s Alright>って言い切れるっていう……根拠のない自信がここに表れてる気がします」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.112』