Posted on 2016.08.17 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、日産スタジアム公演に完全密着!
バンド初のスタジアムツアーを徹底総括

70,000人を前に、この20年間の孤高の理由をすべて歌い鳴らし切った、
最高のライヴ、最高のフィナーレ。
アリーナバンドになって11年半、スタジアムバンドになって3年、
日本最大収容スタジアムにて
「BUMP OF CHICKENという宝石が鳴った日」に完全密着!

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.50より掲載

 

(前半略)

11時2分、4人揃って会場入り。チャマはここに来る前に身体でも動かしてきたのだろうか、いつもより並外れて血色がよく、テカテカしている。フジは喉の奥に蒸気を当てる小さなマシーンを口にふくみながら出てきた。そう、今日のライヴは2日続きの2日目なのだ。

 そのまま4人共楽屋に入るや否や、すぐに舞台監督が来て、昨日の終演後の反省会の課題を確認し、それを含めたリハーサルでやる曲を決めようとしてる。どうやら細かい反省点を全部網羅してリハを行うと、時間的に大きく膨らんでしまうことになるので、その辺りの取捨選択をしているようだ。あらためて、どの曲が課題があるのか、どれが不安だからこそ念入りにするかを、楽屋入り口付近で車座になって確かめ合う。たとえば「そうだね、では“ray”は大丈夫だと思うんだ、俺らもスタッフのみんなも締めてかかれば100点取れると思う。だからリハはなしにしよう」など、テキパキといろいろなことが決まり、楽屋は4人(杜僕)だけになり、ご飯を食べることになった。

 ここでリハーサル曲の次に問われ悩んだのが、「牛丼の具」についてである。

 牛丼の具、つまりすき焼きのようなものをご飯の上にのせるか、もしくはご飯とは別盛りにして食べるか? 間髪入れずに増川は別盛り!と、リハ決めと同じテンションでいたって真面目に返し、むしろその真面目さがおかしくて愛らしい。しばし考えてこれまた別盛りにしたフジは、楽屋内にヨガマットを広げ、早速ストレッチを始めた。

 11時15分。「ご飯ご飯!」と、今まで聞いたことのないメロディに乗せてフジが強い声で歌いながらソファーに座り、増川と同じく別盛りにした牛丼を食べ始める。もうこの牛丼ソングを聞いただけでわかる。彼は2日連続の2日目でありながらいたって絶好調だ!

「いや、だって今日でツアー終わるんだよ? しかっぺ、何本来たっけ? え、全部!? ありがとう(笑)。だったら一番わかるでしょ? こんなにも楽しかったんだよ、ツアーが。なのに疲れてるとか、そういうのもう関係ないでしょう。何でも前向きに考える人がそういうのはわかるかもしれないけど、俺だよ?(笑)。俺がこう言ってるんだから、楽しかったってことが本物だってことだよ(笑)。今日もよろしくね」

 と、ゆっくりと牛丼を口に運びながら確かな気持ちを伝えてくれる。

「でもだからといって快調な朝を迎えたかというと、それはまた別物で(笑)、朝方の5時10分までずっと寝れず、頑張って寝ようと安静にしたけど無理で。じゃあってホテルのバスに湯をはって足湯したりして、でも逆に足湯しながら覚醒しちゃってさ(笑)。したら友達からメールで『ごめーん、こんな早くに。今日楽しみにしてる』と言われ、もう完全に寝れねーなと思っちゃって(笑)。………だからさ、今は3時間は寝たと信じてる(笑)」

 さらに「メシが美味い」と笑顔でつぶやき、前で食べている増川が静かに頷く。ベッドにまで完全密着するのはどうかと思うので、どれだけ本当に寝たのかはわからないが、少なくとも朝ご飯で彼らは充分エネルギーをチャージしていたことは、ここに記しておく。

 

 ちなみに今回、最初の構想では17時から開演する予定だった。遠くから来る方が帰れる時間というのがその理由だが、結果、それが30分ディレイして17時半開演となった。理由は「日差し」である。17時から始めると、本当の後半戦まで殆ど照明やLED映像の演出の効果が弱まる。つまり「夜」がほとんど来ないで終わってしまうのだ。

 しかし日産スタジアムは音止め推奨時間があって、それは20時である。それまでにライヴを終わらせなければいけないギリギリを考え、30分後ろ倒しの17時半開演にしたのだ。

 11時23分、「昨日の予報だと今日は大丈夫らしい」とフジがみんなに言う。一昨日のこともあるから、天気、特に降雨に関してはそれなりに神経質になっているのだろう。フジが話すには、一昨日金曜のゲネ日もそんなに強い雨ではなく、実は建て込み日の木曜から入ってたんだけど、その日のほうが凄かったんだという。実際にゲネプロとしての通しリハこそできなかったが、新曲の“アリア”を含めた気になる曲はほとんどできたから、準備不足とかでそんなに心配でもなかったんだよと話してくれる。

 その後は「これ、うめえな、何だ?」とふたりでしばし悩み、メニューが貼ってあるのを見て、「イカだ! イカの南蛮漬けだ!」と気持ちが小躍りしているフジと増川、そしてそれをゆっくり部屋を歩きながら笑って見つめるチャマ。升はいつものように、きっとステージのチェックに行っているのだろう。

「そういえばさ、本当に秀ちゃんはああいう言い方をしたんだっけ?」と、昨日のMCで話した思い出話シリーズを回想しながら、増川がフジを相手に話し出す。まずは、この後の会話を理解してもらうためにも、前日のこの部分のMCの概略を記す。

 

チャマ「中2のある時に、秀ちゃんがフジくんの胸ぐら掴んで『ロックを変えようぜ!』って言ったことがあって。フジくん、実際、胸ぐらつかんでそんなこと言われてどうだったの?」

フジ「………もっと普通に言えないのかなって思った(笑)。その日、ヒロと秀ちゃんと3人で帰ってて、どうやらふたりとも『あの分かれ道のところで(フジにバンドやろうって)言おうぜ』って示し合わせてたみたいでさ、そこが近づいてくると無駄にすげぇ歩みが遅くて『早く行こうぜ』って思ってたんだけど(笑)。で、ヒロと秀ちゃんが『言うぞ、言うぞ』ってモジモジしながら言ってて――まぁ結局ヒロは何も言わなかったんだけどさ(笑)」

 

「そもそも秀ちゃん、『ロックを変えようぜ!』とはっきり言ったんだっけ? もう少し違う言い方だった気もするんだよね」と増川が言ったところで、ちょうど升が入ってくる。まさにフジが「そこまではっきり言ったかどうか自信がないまま、実は昨日は話しちゃったんだけど」と話しているところに、升が「それ、言ったよ。だって、わざとそう言おうって前日に頑張って台詞を考えて、それをフジくんに言ったんだもん」とあっけらかんと言い放ち、みんなで大爆笑。

「よかった。大体全部合ってたわ」とフジが笑ったのが11時33分。「物事って、言ったほうよりも言われたほうが覚えているもんだよな」と升とフジが言い合っている。このツアー恒例の思い出話MCタイム、今日はどんな話をするのだろうか?

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.112』