Posted on 2016.08.17 by MUSICA編集部

[Alexandros]、シングル『Swan』リリース。
自由に音楽の旅を続ける今と、来たるべきアルバムの展望

必ずしも今みんなが盛り上がるような曲ではなくて、新しいもの、
自信を持って「これがいい音楽とされるべきなんだよ」と言い切れる曲っていうか。
そういうものを作っていかないとダメなフェーズに、ウチらは入ってる気がする

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.72より掲載

 

■前回インタヴューしたのは表紙を飾ってもらった『NEW WALL / I want u to love me』の時だったんですけど、その時に、ここ最近はソングライティングにおける自由度が今まで以上に増しているっていう話をして。で、その背景には、『ALXD』という極めてジャンルレスな作品をメジャー1発目で提示できたことで [Alexandros]というバンドの持つ音楽的な自由度がしっかり認知されたということ、そしてプラス、洋平くんのみならずメンバー全員がより楽曲至上主義になれていることがあるんだっていう話をしてもらったんですけど。

「うん、そうですね」

■そういう中で今回のシングル『Swan』は、表題曲にしてもカップリングの“Newe, Newe”にしても、曲調は違えどどちらも壮大で王道的なメロディが響く、歌がとても強い作品だなと感じて。自分ではどうですか?

「“NEW WALL”もそうだったんですけど、今回の曲はメロディから作っていった曲なんですよ。だからそう思われるのは当然だなと思います」

■“Swan”はピアノとエレクトロビートの静かな世界で始まるから、一瞬“In your face”みたいにポストダブステップ的な曲調かと思いきや――。

「ね(笑)。そこからドーンって一気に変わりますよね」

■間奏はこのバンドが得意なメタルパートのアップデート版みたいになってるしね(笑)。つまり、打ち込みは混ざってはいるけど、久々に衝動的で切迫感のあるバンドサウンドがキーとなるタイプの曲になりましたよね。

「そうですね。実はこの曲、最初は全部バラードだったんですよ。完全にバラードっていうほどじゃなかったんですけど、でも割とゆったりしたビート感がずっと続いて、2番でちょっと四つ打ちが入るぐらいの、静かなタイプの楽曲で。それはそれでよかったんですけど、もしかしたらBPMを変えたらよりいいものになるのでは!?というアイディアが浮かんで。で、ちょうど同じ頃にメンバーからも『これはもうちょっと表舞台に立たせる用のアレンジにしてもいいんじゃないか』っていう意見が出てきたので、試してみたんですよね。とはいえ、単純に全体のBPMを上げるだけだとつまんないなと思ったんで、最初はゆっくり始まって、途中から速くするっていう方法をとったら割とハマりましたね。最後まで悩んだんですけどね、ゆっくりのところは要らないんじゃないかとか。でも、ここがあったほうがこのメロディを立たせることができるなって思ったので」

■最初がバラードだったのは、そういうモードだったんですか。

「いや、単純に何も考えないで作ったデモがそうだったからです(笑)」

■なるほど(笑)。

「デモを10~20曲ぐらいバーッと作ってた時期があって、その時に作ってた中のひとつなんですよ。バラードを作りたいなという意識は特になく、純粋にその時に思いついたメロディがこういうものだったって感じ。エンジニアさんと一緒にスタジオでデモを作ってたんですけど、かなりラフなやり方——本当にその場その場で作っていくというやり方をしてたんですよね。スタジオに行く時に思いついたことを形にしたり、スタジオでだべってる時に『あ、ちょっと思いついたんで、こんなビートで作りましょうか』って言ってリズムパターンを作って、それを流しながら歌ったりとか。もちろんネタはなんとなく持ってるんですけど、でも基本的にはその場の思いつきで作るっていうやり方をして」

■瞬発力で作曲してたんだ。

「そう。そういうことを、スケジュール的に余裕があるうちにやっておいたほうがいいかなって思って、やってた時期があったんですよね。ドラマのお話をいただいた時、他にもいくつか曲はあったんですけど、その中でこの曲を気に入っていただいたので。なので、そこから歌詞を書いて、仕上げていった感じでした。ただ、デモの段階からもう既に<愛を>という言葉はありましたけどね」

■ほぉ。なんで<愛を>っていう言葉が浮かんだんだと思いますか?

「なんでだろう……たぶん歌いやすかったんでしょうね(笑)」

■(笑)。

「メロディが出てきた時に適当に言葉をハメて歌ってたんですけど、その時に<愛を>っていう部分が出てきて。で、そこから紐解いていく感じで歌詞を書いていったんですけど……この曲って、踊り子さんがそのダンスによって人々を魅了していく話なんですよ。女性目線だったり男目線になってたりするんですけど」

■はい、魅了する側と魅了される側の目線が入り混じってるよね。

「そう。で、これは自分も芸の世界に入ってそういうことを目の当たりにする中で、いつか書いてみたいなって思ってたテーマだったんですよね」

■ちなみに、ドラマもそういう話なの?

「いや、まったく違います(笑)。ドラマは猟奇的殺人の話で。だから歌詞は直接的には繋がってないんですけど、でも雰囲気の部分でエグい部分はなかなか当てはまるんじゃないかと思うんですけど」

■確かにこの曲、愛を歌ってるんだけど、内容的にはかなりエグいんですよね。<愛を歌うそぶり魅せつけながら/僕はまた騙され>というフレーズがあるけど、愛に惑わされていく残酷さと狂おしさが描かれていて。

「そうなんですよね。僕のために踊ってるんじゃないってことはわかっていながらもハマっていく、『誰かのために踊ってるんだろうな。でも別にいいや』みたいな、『俺のことをちゃんと愛してくれてないんだろうけど、それでも食われよう』っていう――惑わされているということをどこかでわかっていながら、それでもそこに自分の弱さを預けるみたいな、そういう情景が書きたいなって思ってたんで。実は最初はもっとさらにエグいラヴソングだったんですよ(笑)。でも、もうちょっとラフなほうがいいなと思って少しフィルターを差し込んでボヤけさせていった感じ」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.112』