Posted on 2016.09.17 by MUSICA編集部

1マイク1ギターのリアルファイター・MOROHA、本誌初見参!
特大の愛情と野心をラップする、ふたりの生き様に迫る

逐一自分の中にある言い訳とか自己防衛に向き合って、言い訳を殺すことで、
そこに生まれるのは人との出会いなんですよ。
人と出会っていくことで、自分の世界に新しい何かが生まれていくんです

『MUSICA 10月号 Vol.112』P.92より掲載

 

■周囲の人と日常に対するラヴソング、そうして大事なものがあるから闘うべきなんだという極端な闘争ソング、夢や希望を手放さないための人生への敬意を歌う歌。それらが、この1マイク1ギターっていう素っ裸のスタイルから放たれているから胸にブッ刺さると思っていて。おふたりにとっては、MOROHAの音楽をどういうふうに捉えてるんですか?

UK(G)「自分にとってのMOROHAっていうのは、まあ、本来やりたいと思ってなかった音楽ではあります(笑)。元々はバンドでやりたくてギターを始めたんで。だから敢えて言うなら……不本意ではあります!」

AFRO(Vo)「ははははははははは!」

UK「でも、同じ感覚を持って聴いてくれている人も増えてきて。それに応えられるようになってきているのは、誇りに思ってますね」

■じゃあAFROさんはどうですか。

AFRO(Vo)「自分がどんなヤツなのかっていうことを伝えていって、それを人に伝えていく過程だからこそまた自分が変わっていく――それを音楽でやってる気がします。そのためにラップをやって、こうして隣でギターを弾いてくれるヤツがいて。それがMOROHAなのかなって思います」

■UKさんは「不本意だ」と冗談半分でおっしゃいましたけど、実際、おふたりはどういう部分がハモったから一緒にやっきててるんですか。

AFRO「元々は高校の同級生で、仲がよくて。そこで、UKのバンドも活動が止まって、俺も一緒にやってたラップの仲間の活動が緩やかになって、せっかく仲いいんだし1曲作ろうよ!って言ってUKとやってみたら、初めて音楽で褒めてもらったんですよ。それが始まりで」

■その時から、この1マイク1ギターっていう編成のもの珍しさにも自覚的だったんですか?

AFRO「そうですね。なんていうか……何に対しても逆らいたい!っていう時期でもあったし、何にしても『お前、それ本当にカッコいいと思ってるのか?』『それって本当に大事?』って言いたい自分がいたんですよ。周りに流されて同調して――っていう当時の周囲の雰囲気が嫌だったし、一方で、俺がカッコいいと思ってるヒップホップはどうなんだ?っていうことも考えたら、やっぱり俺は、ヒップホップのカルチャーだったり空気感だったり、その中にいる自分が好きなだけなんだ!って気づいたんですよ。じゃあ自分の弱さとか情けなさも本当のこととしてラップしていきたいと思ったし、もっと言えば、低くて太いビートじゃない方法で音楽をしようと思ったし。そうやってカウンターを打つ意識があったと思うんですよね。『みんなが大事にしているもの』に対して逆行くぞ!って感じで。だけど俺は『ラップ』っていう手段は好きだし、それをやりたいと。なら、これが王道だ!と言われているようなヒップホップのフィルターを全部外してラップしようと思ったんです。それが、こういう編成に繋がった気もします」

UK「やっぱり、AFROは周りのヤツとはちょっと違ったんですよ。……AFROは、特別ラップが上手いとか、歌が歌えたとか、そういうところじゃなかったんです。でも、そういう技術的なものだけが大事じゃないんだ!っていうことをお互いに自覚してたんでしょうし、そういうパッション先行なところが光ってたんですよ、AFROは」

■AFROさんのラップって、ラップっていう形を目的化してないですよね。メロディとか音で誤摩化したり美しくしたりするんじゃない、自分を素っ裸にする覚悟としての手段でラップを捉えてると思うんですけど。

AFRO「ああ、そうだと思いますね。でもね、それこそ最初は、ファッション的なリリックも書いたりしてたんですよ。だけど、THA BLUE HERBと出会ったことによって、意識がガラッと変わったんです。あれはデカかったなぁ……。たとえば、THA BLUE HERBの歌詞に<欲しいのは金だ 食ってく為さ>(“Supa Stupid”)っていうのがあるんですよ。それを聴いた時に『完全に本当のこと言ってるわ!』って思ったんです。そこで、俺がラップっていうものに惹かれたのは、こういう本当のことを表現できるからじゃないか!って思って。そこから変わって、弱さとか、情けなさとかも引っ括めて歌にしていこうと思ったんですよ」

■でも、おっしゃる「本当のこと」がご自身の弱さとか愚かさみたいな部分になってくるのはどうしてなんですか。“三文銭”もそうだし、MOROHAの真ん中には必ず、どこか弱い自分を暴露しながら進もうとする歌が多いと思うんですけど。

AFRO「……UKと一緒にやろうと思った時も、『ギターが上手かったから』みたいな理由じゃなかったんですよ。じゃあどういうものが大きかったのかって考えると、何もかもかなぐり捨ててでも本気で音楽をやれるヤツなのか、言い訳なく音楽に人生懸けていけるヤツなのかっていう部分だけだったんです。たとえば周囲にも『将来音楽やりたいな』って言ってるヤツはたくさんいましたよ。だけど、それぞれに『家族がどう』『仕事がどう』って、みんな真っ当な言い訳を持ってたんですよね。なおかつそういうヤツを見たことで、同じように言い訳だらけだった自分自身も実感したんですよ。それをなんとか乗り越えたいと思ったし……逐一自分の中にある言い訳とか自己防衛に向き合って、その言い訳を殺していくことで、自分の生き方を筋の通ったものにしたかったんですよ。だから、俺の歌は全部自分に対してなんですよね。たとえば『なんでMUSICAは取材に来ねえんだよ! こんなにいい作品出したのに!』って言ってても、『結果出してないから取材に来ないんだよ!』ってだけじゃないですか。それに『じゃあ、直接作品を渡しにいったのか』って話じゃないですか」

■実際、『MOROHA Ⅱ』が出た後、夜の編集部に直接いらっしゃったこともありましたね。

AFRO「そうそう。で、あの日があったからこそ今日の取材に繋がってるんじゃないかって俺は思ってますし。結局、何かが叶わないのも、最終的には自分が言い訳して諦めてるだけだし、MOROHAは『飛び道具だ』っていうイロモノ扱いのままなのも、もっと純粋に『音楽』として聴かせられる力が俺らにないだけだから。そういうクラスまで行かないとダメだって思うし、なんなら俺は、この編成、この音楽でミスチルクラスになりたいんです。MOROHAでは、自分のアングラ思想さえもひっくり返したいんですよ」

(続きは本誌をチェック!

text by矢島大地

『MUSICA10月号 Vol.114』