Posted on 2016.10.18 by MUSICA編集部

フレデリック、
集大成的ファーストフルアルバム『フレデリズム』リリース。
3人取材でその特質を紐解く

本当はこういうことを歌いたかった。
もう遠回しに言いたくない、
俺らは真っ直ぐ前に進みたい気持ちやから、
遠回しに言うのは逃げだなと思うようになった(健司)

『MUSICA 11月号 Vol.115』P.86より掲載

 

■遂にフルアルバムです。考えてみたら溜めに溜めたねぇ。

三原康司(B)「ははははははは、溜めに溜めましたね(笑)」

■このアルバムの中には2011年末の自主盤『死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない』に入っていた“バジルの宴”と“ふしだらフラミンゴ”もリテイクして収録されているわけで。そう考えると、5年越しのファーストフルアルバムって言っていいよね。

赤頭隆児(G)「5年! そんな経つんや……」

■“オドループ”、“オワラセナイト”、“ハローグッバイ”、“オンリーワンダー”という代表曲が全部入っていること含め、集大成的な作品でもあるし、“オドループ”以降のフレデリックをここで改めて再定義するアルバムでもあると思うんですが。直近のシングルである“オンリーワンダー”以降の曲だけでアルバムを作るという選択肢も普通にあったと思うんですけど、どうしてこういう形になったの?

康司「単純に曲が好きだからなんですよね(笑)。ファーストアルバムだから好きな曲を入れたいなっていう気持ちが凄く強くて。それ以上は理由はないかな(笑)。自分は曲書くのが凄く好きなんで、聴いて欲しい曲が昔からたくさんあって。そういう気持ちが凄く出てるなって思ってます」

■だって15曲入りで68分くらいあるわけで。今日日、こんなにフルヴォリュームのアルバムはなかなかないですよ。

康司「初回盤のDVD含めると、24曲ありますから(笑)」

■ははははははははははは。

康司「やっぱり僕ら、めちゃめちゃ伝えたいんですよね(笑)」

赤頭「ここにもう2曲ぐらい入れるつもりやったんですよ(笑)」

■まだ増やそうとしてたのか(笑)。

康司「そうなんです(笑)。でも本当に、今までやってきたことのひとつひとつのステップが気持ちと共に詰まった作品になったなと凄く思います」

■健司くんは、このアルバムに対してどういう実感を持ってます?

三原健司(Vo&G)「『フレデリズム』っていう言葉は昔から言ってる造語なんですけど、フレデリックにとって肝になる言葉だなって思ってて。で、何を入れてもフレデリズムっていうコンセプトの下にいいアルバムになるなって思ってたんですけど、ある程度の想定の中ではやってたんですけど、実際1曲1曲枝分かれしていって、全然違う位置に立っていくのを見ると、自分の想定を超えたアルバムになったなって改めて感じましたね」

■健司くんの想定ではどんな感じだったの?

健司「『フレデリズム』っていうタイトルもそうですけど、このアルバムでフレデリックがわかるやんっていう作品になってるなというのは想定内だったんですけど、でも実際は、自分が思っていた以上に楽曲一つひとつのインパクトが凄くて。『これ、シングルでもよかったんじゃないか?』っていう曲があったりとか、これまで発表してた曲も『この歌詞はこういうこと言ってたんや』って改めて思うことがあったりしたんですよね。ということは、聴いてくれた人の解釈によって、また違う広げ方が生まれる可能性が凄くあると思うんです。そういう意味で想定を超えてるなって」

■隆児くんはどうですか?

赤頭「インディーズの時の曲もあるし、メジャーデビューしてからの曲もあるから、その時その時でいろいろ悩んで考えた曲とかもあって……1枚ずつ作品を出す度に成長していったっていう、それが全部詰まってるアルバムやなって思ってます。今までのフレデリックが全部入ってますね」

■このアルバムは“オンリーワンダー”で始まるんですけど、“オンリーワンダー”、“オドループ”、“オワラセナイト”、“ハローグッバイ”という明確に外に向かっていく攻めの楽曲達が並んでいると共に、アルバムでの新曲では、このバンドの持っていた歌謡性がブラッシュアップされたポップス然とした曲や、ブラックミュージックやニューウェイヴをフレデリックのリズムに昇華する多彩なリズムアプローチの楽曲が収められていて。いざアルバムに向けて新たに曲を作っていく時に、どんなことを考えながらここに向かっていった感じだったんですか?

康司「活動やライヴを続けていく中で『僕らのテンポで遊びましょう』と言うようになったんですけど、じゃあフレデリックでどんなふうに心躍らせられるかな?って考えた時に、やっぱり新しい提案をしたいなって思ったんです。たとえば“サービスナーバス”とかはまさにそうで。でも、サウンド感はラテンノリというか、カーニバル的な感じで――」

■ちょっとトロピカルな感じだよね。

康司「そうなんですよ。なんですけど、ドラムはタイトめにやってたり。これまでとは違った踊らせ方したいなっていう、その提案をしたいっていうことには意識を置いてましたね。“レプリカパプリカ”も、80年代っぽいシンセの感じとバンドの黒いサウンド感が合わさった時に、独特のホワイトソウル感が出せたと思うし。そういう、フレデリックならではの絶妙なケミストリーを考えながら作りましたね。新しいアプローチと今までのフレデリックらしさを融合していくことを考えたというか――」

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text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.115』