Posted on 2016.10.18 by MUSICA編集部

キュウソネコカミ、伝家の宝刀を抜いた
最高の新曲『わかってんだよ』誕生!
ヤマサキセイヤとのタイマン取材で名曲を解く

自分でもわかってるやろ? お前は普通なんや!
って思ってるんですけど、諦められんくて悪あがきして。
脇役やって気づいてるんやけど、でも主人公でいたい

『MUSICA 11月号 Vol.115』P.92より掲載

 

■インディーズ時代から何回も取材してるし表紙も飾ってもらってるけど、実はセイヤくんとサシでインタヴューするのは初めてなんですよ。

「そうですね。やっぱ緊張しますね(笑)」

■(笑)。今回の“わかってんだよ”はキュウソの本質、そしてセイヤくんの本質が表れていると思うので、サシでやりたいなと思って。

「はい、確かに“わかってんだよ”はそういう曲ですね」

■本当に名曲が誕生したよね。これはキュウソネコカミ、そしてヤマサキセイヤというロックの一番の本質であり一番のダイナモを直球勝負で曝け出す、本当に見事な名曲です。

「嬉しいっす。でも、『自分の曲』過ぎて、最初は自信がなかったんすよ」

■それって、前号で話してくれた、沖縄でのツアーファイナル前日夜中にひとりホテルでこの曲ができて、「すげぇ曲できた!」と思って翌日の本番前のリハで歌ったらメンバーの反応がなかったってのも関係してるの?

「はははははははは。そうそう、すげぇいい曲できたと思って嬉しくて翌日のリハで披露したらめっちゃ無反応っていう(笑)。ま、反応がなかったのは、前日のスタジオで“こみゅ力”をボツにすることが決定して、メンバー内の雰囲気がめちゃくちゃ悪かったからなんですけどね」

■セイヤくんが歌った時にメンバーそれぞれ心の中では「すげぇ曲できてんじゃん!」と思ったけど、とてもじゃないけどそれを言える雰囲気じゃなかったってみんな言ってたよね(笑)。

「そうなんすよ。実は『おいおいおい! こいつ昨日の今日ですげぇの持ってきよったわ! さすがやわ!』って思ってたらしいんですけど」

■これはマジで名曲。メロディもいいし、何より言葉の威力が凄い。めちゃくちゃ生身の心情吐露なんだけど、もう心が苦しくなるくらいぐーっと掴まれて、どうにも泣けてしまう。こんなに直球で泣ける名曲は、今までのキュウソにはなかったよね。

「実は僕も、スタジオで練習しながら何度か泣いてんすよね。出てくるんですよ、何かがバーッて。これ作った時も傷心やったんで、メロディとかでもポロリと来るんですよ。ただ、その涙も、自分のことを歌ってるから泣いてるのか、純粋に曲で泣けてるのか……要は共感がある曲なのかがまだちょっとわかんないんですよね。だから、早くみんなに聴いてもらいたいんすよ。『自分は凄い泣けるんだけど、みんなはどう?』みたいな」

■改めて、どういう経緯から、沖縄でこの曲が生まれたんですか?

「あの頃、僕の中では完全に“こみゅ力”をシングルにするつもりやったんですよ。でも(ツアーで)あんまウケもしないし評価もされなくて、メンバーにも『他に新しい曲ないの?』みたいなこと言われて、それでも『いや、俺は“こみゅ力”をシングルにするねん!』ってかなりガチガチになってて。ほんと“こみゅ力”と“俺は地球”に何曲分ものエネルギーを注ぎ込んでやってたんですけど。で、その状態のまま沖縄に行って――」

■で、ツアーファイナルとして沖縄に行ってるにもかかわらず、現地で曲作りのためにスタジオに入り。

「そう、で、そのスタジオで“こみゅ力”は完全に却下ってことになって。そんなふうに却下されたの初めてやったんで、もうめっちゃ凹んだんですよ。そんでホテル帰ってメールのチェックしてる時に、そう言えばはいからさん(名物マネージャー)から『映画の主題歌の話が来てます』ってメール来てたなぁ思って、スクロールして探したら脚本がついてたんで、やることもないし脚本読もうと思って読んだら、『これ、今の俺とめっちゃリンクするやんけ!』って思ったんですよね。ボロッボロの主人公の被害者意識とか被害妄想みたいなんが、その時の俺の心情にすげぇ重なって。……キュウソって自分はダメや!って追い詰められることに喜びを感じるタイプなんですよ。卑下するタイプなんですよ、凄く」

■うん、その自虐性は改めて言われなくても明白です。

「完全に自虐から始まるバンドのフロントマンなんで、脚本読んだ時に『うわ、これめっちゃわかる!』って思って。友達だと思ってた奴とか後輩やった奴にどんどん抜かれていく感じとか……自分もインテックスと幕張のチケットが売り切れなかったとか、“こみゅ力”がウケてない、挙句にメンバーにも却下されたとかいろんなことが重なって、もう心がグァーッ!ってなって。それで機材車からギター下ろしてきて一気に作りましたね。なんかね、やっぱ心がガンッ!ってなってる時に作る曲って、めちゃくちゃ早くできるんすよ。“何も無い休日”とかもそうやったんですけど」

■まさに“何も無い休日”以来だなぁと思いました、こんなにもやるせなさやぐじゃぐじゃな想いを赤裸々に吐露する曲は。

「ほんまに気持ち入ってますからね、これは。曲を書こうとして書いたもんじゃなくて、もう魂で書いてるっていうか。<ボロボロになってやっと気付いたよ ボロボロになってやっとわかったよ/あぁ僕はただ生きているだけだった 主人公気取りの脇役だった>っていうのも、その時に書いてますし……ほんまにねぇ、俺、主人公気取りの脇役やったと思い知ったんすよ!!! ほら、ちょっと前の連載で『主人公になるにはどうしたらいいですか?』って投稿があったじゃないですか」

■あったね。

「あの時はカッコつけて『俺はずっと主人公やったから、脇役の気持ちとか知らねぇ!!』とか言いましたけど、実はここで1回負けてるんですよね(笑)。その沖縄の夜に『俺は脇役やって気づいてるんやけど、でも主人公ではいたい!』って思って、そこから曲が生まれてるんで。……やっぱりインテックスと幕張で、心のどこかで傷ついたんですよ。そもそも2デイズずつやるって決めたのは、チケットが取れないお客さんがたくさんいるから『絶対埋まらない会場でやろう!』ってことやったんですけど――」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.115』