Posted on 2016.11.18 by MUSICA編集部

ASIAN KUNG-FU GENERATION、
名盤『ソルファ』を新録リリース!
今改めて新しい魅力を放つ本作の意義と普遍性

新しい王道のロックを打ち立ててやるんだ!
みたいな気持ちが、いろんな挑戦や、音楽的な広がりにも繋がっていった。
状況に対して抗う気持ちっていうのが、あのアルバムそのものを生んだというか

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.76より掲載

 

■新録版の『ソルファ』、本当に素晴らしいです。

「ありがとうございます。自分でもよくできたなって思いますね(笑)」

■そもそも、ベストアルバムの時に『君繋ファイブエム』の全曲再現スタジオライヴをDVDに収録したりもしましたけど、今回『ソルファ』をこのタイミングで再録したいと思った一番の意図はどこにあったんですか?

「『ソルファ』だけは、レコーディングに関して、もうちょっとよくできたはずだっていう思いがずっとあったんですよね。その思いは自分達が進んで行けば進んで行くほど膨らんでいって。他のメンバーはどう思ってたかわかんないですけど、僕の中ではどんどん大きくなってたんですよ。で、一番売れたアルバムなのに、友達とか海外のバンドの人にはあんまり自分から渡さないものになってて(笑)。特にヴォーカルに関しては、当時もう少し時間が欲しかったなっていう思いは何曲かあったんです」

■『ソルファ』のレコーディングの時期は急速にバンドの状況が爆発していった時期だったのもあって、本当に忙しくて、とにかく凄い大変な状況の中で録ってたってお話はよくされてましたもんね。

「そうですね。みんなその時のことってたぶん覚えてないんじゃないですかね、ほんと忙しかったんで記憶にないくらい(笑)。で、『Wonder Future』を作ってる途中で、俺はこのアルバムを作り終わったらバンドをやめようと思ったんですけど、もし今ここまで来てバンドを本当にやめるっていう時に『ソルファ』があのままじゃ悔いが残るなって思ったんですよね。あと、それとは別にもうひとつ、常々『バンドってそんなに新曲いるか?』みたいな気持ちがあって。それは、アジカンに関わらずなんですけど」

■それはどういう意味で?

「たとえばインディのロックバンド、特に若いバンドは、常に自分達にとってベストみたいなセットリストでライヴをやるじゃないですか。で、その中で生き残った曲がファーストアルバムに残ったりするわけで」

■ライヴをやりながら楽曲を育てていく、精査していくという。ファーストアルバムに名盤が多い理由のひとつは、そこにもありますよね。

「そうそう。そういうことを考えると、自分達が今やってる音楽のやり方っていうのは果たして本当にクリエイティヴかどうかわかんないよなと思って。アジカンに関しては割と時間をもらえてるから、のんびりやらせてもらってコンセプト立てたりしてできますけど、仮に自分達が1年に1枚出さなきゃいけないような状況になった時に、そういうルーティンみたいな楽曲の作り方ってどうなんだろうなっていう気持ちがあって。実際、『ソルファ』の話とは関係ない時に、メンバーに『もうそんなに曲作らなくていいんじゃない?』って言ったことがあるんですよ。『ツアーだけやってればいいんじゃない? アルバムは5年後だっていいじゃん』みたいな」

■The Rolling Stonesとかはそういう形で延々と世界を周ってますしね。

「そうなんですよ。ストーンズも新譜の曲やらないじゃん、だからそうなるよっていう話で。マネタイズみたいな考えで言っても、もはやこの時代において新譜を作り続けることが重要か、それで勝っていけるかと言えば、それもわからないよねっていうこともあるし」

■それを言った時、メンバーはなんておっしゃいました?

「『新曲作らないバンドはやったってしょうがないじゃん!』みたいなことを山ちゃんが言ったのを聞いて、俺の言ったこと全然通じてねえなってびっくりしちゃって(笑)。いや、そうじゃないんだけど。新曲はもちろん作るけど、そんなにたくさん作らなくてもいいんじゃないかっていう話なんだけどって(笑)。……たとえばクラムボンやハナレグミの永積(タカシ)さんが一時期、新曲を作らないでカヴァーばかりやっていた時期があると思うんですけど、その気持ちは俺も凄くよくわかるんだよね。実際、よっぽど昔のバンドを掘って聴いたほうが感覚的に新しいものに出会えたりもするし。つまり今作れば新しいかって言ったら、音楽って必ずしもそういうものじゃないんじゃないかって。そういう思いと、自分のもの足りなさを晴らしたいっていう思いと、あとは“リライト”や“ループ&ループ”って今でもOAしてもらう機会がよくあるんですけど、その時に一番新しいものを流して欲しいなっていう思い――ずっと、ライヴ盤のテイクのほうが自分達の演奏がいいと思ってたので、せっかく流れるんだったら最新の僕らの音でその曲達を聴いて欲しいっていう思いが複合的に盛り上がって、今回の再録に向かっていった感じでしたね」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』