Posted on 2017.01.19 by MUSICA編集部

10-FEET、ありのままの人間性がそのまま昇華された
新作『ヒトリセカイ×ヒトリズム』。
確信の歌に込めた想いに迫る

もっと普通のことを題材にして、ウワァッと
血液になる曲を作るのが目標で。今はまだ割と
大きなことが題材になってるけど、誰にでもあることを
当たり前に聴かせてくれる歌を作りたい

『MUSICA 2月号 Vol.118』P.98より掲載

 

■やったね。これが10-FEETだという、しかも新しい新鮮さを感じる最高のロックアンセムができました。

「鹿野さんにそう言ってもらえるのは本当に有り難いです。ありがとうございます」

■“アンテナラスト”が過去最大のチャートアクションを起こしたんだけど、その時からこの曲はあったけど敢えて完成させなかったし、レコーディングしなかったという話があったよね。

「はい、まさにこの曲です」

■前回インタヴューした時に、ライヴで盛り上がる曲、構成が複雑な曲、いろいろあるんだけどシンプルでパーンとひとつの世界で貫く曲をどこか自分の中で待っているし、そういうものが書けたらいいって強い願いを持ちながらやっているって話をさせていただいたと思うんです。

「はい。今もその気持ちは強いですし、“ヒトリセカイ”に関しては、それができたというか、凄くストレートなんじゃないかなと思います」

■そうだね。で、前回リリースした“アンテナラスト”は3年10ヵ月ぶりだったんだけど、その時から頭の中にはあった曲なんですか?

「そうですね、リリースが長引いた中で唯一長いことトライしていた曲ですね。サビのちょっとだけ形が違うやつ3パターンくらいトライして作っていたんですけどね」

■どういう曲を作りたいなって思って浮かんできた曲なんですか?

「あの時はもう………腹が据わっていた感じがしますね。うまく言えないけど、この曲が自分の中でカッコよくて激しくて気持ちいいのは確かやっていうのがずっとあって。……ただ、そう思える表現、自分にとって熱くてカッコよくて気持ちいいって純粋に思える表現っていうのは何パターンか方法があるんですけど、それを揃えることだけで10-FEETやっているわけじゃないじゃないですか。もうひと味、ふた味足す難しさを達成していくのが10-FEETやと思ってたから。でも、この曲にふた味とか足してったら、生まれてきた主旨が変わってきてしまうんちゃうかな?って考える部分があって、ずっと悩んで時が過ぎていきました」

■この“ヒトリセカイ”って、とても荒削りなフリをしているけど、実はとても丁寧な曲ですよね。Aメロとサビを聴くと、繋がらなそうな感じがするんだけど、そこを見事なBメロが繋いで素晴らしく通りのいい曲にしたり。あまりたくさんのリフとか展開を入れ込んでないんですけど、それはきっといろいろ試して1周考えられた上での「この曲はこのシンプルな強さでいいんだ」的な確信が見えて、凄く丁寧な曲だと思ったんです。

「あぁ、そう感じてもらえるのは、きっとこの曲にとって幸せなことだと思います。元々はギターを弾きながらバラードっぽく弾き語ってから入る曲やったんですけど、Aメロをバラードっぽく歌って、サビをジャカジャカ弾く曲に変化したんですよね。それは“アンテナラスト”からの流れもあって、あれあの曲もちょっとバラードアカペラから入ったりしてたじゃないですか? それと似ている感じになるのももったいないし、よりこの曲に似合うイントロ探しをして、こういう割と正攻法の曲になったんですよね」

■TAKUMAの作る曲には弾き語りにできそうな曲もあれば、バンドで初めて成立するロックンロールもあれば、いわゆる現代ミクスチャーロックな複雑な展開が含まれている曲もあるじゃない? その上で、今こういうメロディが最も強いロックソングになったのはどういう理由なんですか?

「……あくまでその曲のいいところを聴いてもらうのが目的なので、曲の原型というか、この曲が持っているいいところを、いいとこ分だけ全部聴いて欲しいっていう想いはずっと強いんですね。で、この曲の場合、それがメロディだったのかなあ?」

■“アンテナラスト”の前にシングルになり得る曲があったけど、でも久しぶりのタイミングで敢えてああいうシリアス曲にしたっていう話で、この“ヒトリセカイ”がまさにその曲なんですよね?

「(頷く)」

■なのでもっとスカっとして、お得意のスカやダブだったりが入っているんだと思っていたらm、そうしたらこれだけ凄くシンプルで、しかも歌を聴かせる曲だったから。意外だったんですよね。

「これができた時、ほんまにカッコいいなって思ったんですけど、だいぶ前だったんでよくわかんなくなってたんですよ(笑)。そういうもんですよね?」

■いや、そういうもんじゃないでしょ(笑)。

「ははははははは! 楽曲って、できた時に凄いのできたって思ってそれをアレンジしてまたカッコよくなって、そこでいよいよレコーディングになるじゃないですか。もうね、そこまでも何回もトライして、何回も聴く頃に、やや嫌いになるんですよ。これ、冗談でも逃げでもなくホンマの話なんです。で、レコーディングが終わった頃ってもうその曲が大嫌いになるぐらい聴いてて、新鮮さを失うんですよね。それでトラックダウンのダウン作業が終わった頃に、達成感からなのかな? 『いやぁ、やっぱりいいな』、『いい曲ですね』なんて言い合いながらマスタリングでちょっと音が変わってちょっとだけ新鮮さを取り戻して……そのへんがきっと一番よく聴こえる時期なんですけど、それを越えてマスタリングから2、3日経ったくらいが一番フラットに聴けるっていうか。で、今度ライヴでやり出したら、大抵の場合は曲が難しくて、それが慣れてきた頃にまた『あ、やっぱいい曲やな』って思えてくるってパターンが多いんです(笑)。でもね、今回は毎日くらい聴いてるんですよ、今も。……何よりそれが練習のために聴いてるのとはちゃうってことは確かで。バカみたいな答えで申し訳ないんですけど、聴きたいんですよ」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA2月号 Vol.118』