Posted on 2017.02.15 by MUSICA編集部

SHISHAMO、完全無欠のポップアルバム
『SHISHAMO 4』リリース!
宮崎朝子のサガを紐解く、初の表紙巻頭特集!
そして、人生初の描き下ろし漫画『恋』も掲載!

幸せな人に向けて音楽やってるわけじゃないので。
私は悲しい時に音楽を聴きたいんですよね。
私のこの気持ちをわかってくれたり
共有してくれる人なんて絶対いないじゃないですか。
それを曲を聴いて賄うことが昔から多かった

『MUSICA 3月号 Vol.119』P.16より掲載

 

■記念すべきアルバムと、記念すべき表紙です。

「嬉しいです、よろしくお願いします!」

■SHISHAMOは1枚目のアルバムからずっとその時の自分達のベストな音楽、そしてベストなソングライティングをしてきたんですが、今回の『SHISHAMO 4』も、さらにそれができているアルバムだと思います。それによって目ざましくアレンジが広がった作品になったなと思う。自分的には今回はどんな作品を作れたらいいなと思って始めたんですか?

「今までのアルバムとは違うものにしたいなと思ってたんです。今までと同じやり方じゃダメだなと思ってて……今までっていうのは、リード曲があって、シングル曲が入って、アルバム曲が入ってて、みたいな感じのアルバムというか。今までは私の中でも、この曲はアルバム曲だっていうのがあったりしたんですよね(つまりは1曲として際立って聴こえる感じではなく、周りの曲との雰囲気で聴けたり、他の曲を引き立てる曲のこと)。でもそういうのじゃなくて、全部がリード曲になるようなアルバムを作れたらいいなっていうのは前から思っていて」

■つまり全曲シングルで構成されているようなアルバムだよね。そういうふうに作ろうとすると、曲を作る段階から自分のギアの入れ方が変わるの?

「そうですね。私は元々シングルを作る時とアルバム曲を作る時と作り方が違くて。なので今回はシングルを作る気持ちで全曲作りました」

■宮崎の中で、シングルを作る時とアルバムを作る時のソングライティングの違いってなんなんですか?

「シングルを作る時は、誰に届けようっていうことをちゃんと考えながら作るんですよね。で、アルバム曲は自分の好みとか、自分が好きなほうに好きなほうにっていう感じで楽しく曲を作ることが多かったんです。でも今回は、どういう時にどういう人に聴いてもらうみたいなことをいろいろ考えながら作った曲が多いですね」

■過去の宮崎語録を僕なりに意訳していくと、「私はとてもマイノリティだし、マイナーな音楽が好きなんですけど、SHISHAMOは違うんです。SHISHAMOはもっと大きくてみんなに聴かれるべきものなんです」と言っていたと思うんですけど――。

「いや、マイノリティだとはあんまり思ってないです(笑)、聴く曲とかに関しては。私、本当になんでも聴くんですよ。このバンドを応援しようと思ってそのバンドの曲をいっぱい聴くっていう感じではなくて、どんな顔のどんな人がやってるかわかんないようなものを聴いたり。このバンドは1曲しか好きじゃない、でも凄い好き!とかもあるし。そうやって自分の中であんまり制限をしてないというか、純粋に好きな音楽だけを聴くっていうふうにしてるのは昔から変わらないんじゃないかなって」

■雑食系で、いいものはいい、悪いものは悪いという感じだ。

「そうですね。同じバンドでも悪いものは悪いと思うし」

■そういう意味で言うと、今回のアルバムは誰が聴いても全部の曲をいいと思えるようなものが理想型だったの?

「いや、それは難しいんじゃないかなと思います。私自身も聴き手としてそういうアルバムってあんまりないから。アルバムの中でもこの曲は聴かないなっていうことがたくさんあるし、凄い難しいことだと思ってて。それに、別にそうでなきゃいけないとも思ってないんですよ。SHISHAMOを聴いてくれる人に対して、全部を聴けよとか、全部をちゃんと好きになれよとは思ってなくて。私自身がそういう音楽の聴き方だからなんですけど、みんなそれぞれ自由に好きになってくれればいいと思ってるので。だから今回もみんなが好きな曲を見つけて聴いてくれたらいいかなって」

■何を訊きたかったかというと、『SHISHAMO 3』ってあらゆる意味でこの作品へのウォーミングアップだったんだなと思うんです。それは音楽性としてもそうだし、歌詞としてもそうだし。たとえば歌詞で言えば、前作は大人になり始めた時期の、大人になりかけている人の視点で書かれたものが多かったと思うんです。でも今回の作品は、明らかに「大人になった人」の視点で書かれている、つまり「女の子」じゃなくて「女性」の歌だなと思う。宮崎は作家として音楽を書いているし、常々「歌の主人公は私ではないし、私の等身大の視点でもない」というようなことをおっしゃってますし、その通りだとは思うんだけど、ただ、この変化は自分のどういう変化によって起こっているんだと思います?

「自分では、今も昔も、自分の置かれている状況とか年齢とかは曲に反映されてないと思ってるんですよね。自分のことを書いてるわけじゃないので。ですが完成してこのアルバムを聴いてみると、確かに1個1個、主人公の女の子が大人になっていってるなとは思います。……でも、今回の変化は、歌詞の変化ではないような気がしてるんです。もちろん歌詞は変わってはいるんですけど、ずっと同じものを書いてるなと思ってて。ただ、やっぱり音楽面というか、曲がよくなってるなっていうのは凄く思いますね。できた後に聴いて、曲のレベルが上がってるなっていうのは自分でも思ったんです。自分でも聴いていて楽しい曲になってきてるなっていう」

 

(中盤略)

 

1好き好き!

 

■イントロのギターの感じも含め、ジャクソン5のような黒いファンキーなリズム感で始まる新しい予感を感じさせる曲ですね。この曲はどういうふうにできたんですか?

「この曲はアルバムの最後に作った曲で。今回レコーディングが結構大変で、全然間に合ってなかったんですよ。いつもだったら結構前からアルバムに向けて曲を作り溜めて、その上でレコーディングっていうふうになるんですけど、今回は曲がまったくない時点で『来月からレコーディングです』みたいな感じになって。だから凄い短い期間で作ったんですけど」

■なんでそうなっちゃったの?

「なんでですかね……なんか計算違いだったのかもしれないですけど」

■どういうこっちゃ(笑)。SHISHAMOの場合、ちょうど1年ごとぐらいにアルバムを出してるし、そのサイクルは宮崎の中でも自覚してるわけで。でも今回そういう状態になったのは、忙しかったからなのか、それとも曲のクオリティ設定から来るものなのか、どういう感じだったんだろうね?

「忙しさを言い訳にするようなギリギリの感じではなかったんですけど……確かにクオリティの問題もありますね。曲を作ってなかったわけではないので。作ってたけどアルバムに入らなかった曲は今回たくさんあったし。で、最後の1曲が全然できなくて、無理だ無理だできるわけないってなりながらツアー中に作ったのが、この曲なんです。熊本で録音する機材(MTR)を買ってホテルに戻って、どうしようってなって……それで1日で作って、次の広島で3人でスタジオに入って練習して、すぐ録って。イメージでいうと、“僕に彼女ができたんだ”を作ろうと思って作ったんです。何も考えないでいい曲っていうか。あれは歌詞を吉川が書いてるんですけど、あの曲って歌詞がくだらないというか、歌詞に中身がないんですよ(笑)。だからこそいい曲なんだろうなって思ってて。ああいうふうに何も考えないで聴けるような、で、ハッピーな感じの曲が1曲あったらいいなっていうイメージはありました。今回バランス的に悲しい曲が多かったんで、それも含めて」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.119』