Posted on 2017.04.20 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、渾身のバラード『さよなら』を発表。
アルバム『THE END』から3ヵ月、
本作に込めた想いと確かな自信を田邊が語る

1年前と比べたら、MCの量が全然減ってて。
自分の中でも「あ、俺歌いたい」ってなってる。
曲でも多くやらせてくれって。
とにかく音楽に埋もれたいなっていう気持ちがめちゃくちゃ強いんです

『MUSICA 5月号 Vol.121』P.92より掲載

 

■『THE END』の取材以来なんですけど――。

「アルバムのインタヴューが大晦日でしたもんね(笑)」

2016年の大晦日の、しかも夜に取材するっていうね(笑)。

「あの後、Zepp(カウントダウンイベント「GT2017」に出演)に行って細美さん(細美武士)とベロベロになり(笑)。いい大晦日でした。細美さんに初めてちゃんとライヴ観てもらって、『お前ら超いいライヴしてたね』って言ってもらって。その後もラジオとかで『東北をあいつらと一緒に周りたい』って言ってくれたりして、凄い近くなれた日でしたね。で、年明けてから正式に『ラストコップ THE MOVIE』の主題歌のお話をいただきまして」

■あ、ということはアルバムリリースしてから作ったんだ。映画主題歌ってかなり前から制作してる場合もあるけど、これは『THE END』後のブルエンが作った楽曲なんだね。

「そうですね、だから最新の僕らですね。昨年、『ラストコップ』の打ち上げがあったんですよ。僕らも僭越ながら出させていただいて、“LAST HERO”をアコースティックで歌わせていただいて、そこで『映画版もBLUE ENCOUNTでご用命お願いします』って言ったんですけど――」

■よ、営業上手!

「そしたら本当に1月にお話をいただきまして。ただ、その話以前に、今回はブルエンの中でも絶対バラードだなっていうイメージはあったんですよ」

■それはどうして?

「やっぱり“LAST HERO”っていう曲はBLUE ENCOUNTのイメージをさらに強くするきっかけになったと思うんですよ。あれでミュージックステーションも出させていただいたし、世の中的にはエモくロックをするバンドだっていうようなイメージが強くなったと思うんですよね。で、そこからすぐに出した『THE END』は、そういうパブリックイメージを壊しつつも、エモーショナルっていうことに対する僕らなりの解釈を噛み締めてやれたアルバムだったと思ってて。それが今まで以上にCDもいろんな人に届いてるなってう反響もあったし――実際、今やってるツアーでも、初日に思わず4人で顔を見合わせたぐらい、もう1曲目から『あ、この人達、このアルバムをちゃんと聴き込んでる』って思うような反応があって。だからこそ、次の一手って考えた時に、自信を持ってまた裏切ることが大事なのかなと思って。だからこそバラード一択だなっていうのはみんなの中に凄くあったんですよね。あとはもちろん、映画の最後にパンと流れた時、映画で描かれたストーリーの先にあるもうひとつのドラマを作りたかったというのもあって。脚本を読ませていただいたら、今までの『ラストコップ』になかった切ない結末だなと感じて……脚本を読み終わった時にパッと浮かんだ言葉が『さよなら』だったので、それをテーマにしたいなと。『LAST HERO』、『THE END』、『さよなら』って、どんだけ終わらせたいんだみたいな感じですけど――」

■ははははははははは、まさに。

「ただ、そこに乗ってる気持ちは結構違ってて。『THE END』の時期は、バンドとして何を打ち出すのかっていうこと含め、自分達のイメージとか終わりを壊すっていう意味合いで『THE END』とか決別っていう言葉を大事にしてたんですけど、アルバムでその答えが出たからこそ、今回は純粋な気持ちのさよならからの一歩みたいなものを書けたなとは思いますね。個人的にもちょうどその前後で別れが結構続いたんですよね。ウチのチームに長くいたスタッフマネージャーさんが別の部署に移ったり、僕がめちゃくちゃ仲よかった親戚のおばあちゃんが亡くなってしまったりってことがあったんですよ。寿命だったんですけど、小中学校の時とかしょっちゅうお世話になってた人が亡くなってしまって……そういうタイミングだったこともあって今回は別れっていうものと向き合ってみようと思って。で、そういう曲だからこそ、ちゃんと真横で聴く人の体験に寄り添いたいし、切ないんだけどブルエンらしい温かさをまとってたいなとも思ったし。ちょうど1年ぐらい前に“はじまり”っていうシングルを出したんですけど、あれは応援歌っていう感じのバラードだったじゃないですか。でも今回は、これを応援歌と取ってもらってもいいですし、ただただ悲しさを抱きしめる曲になってもいいと思うっていうぐらい、ちゃんとリスナーに委ねられる曲になったと思います」

■このバンドはアルバムにバラードが入ってくるバンドだし、確かに“はじまり”もバラードだったけど、ただ、ここまでポップス性の強いバラードをシングルとして切るのは初めてで。

「ここまで明確にしたのは初めてかもしれないですね」

■『THE END』は、“city”みたいな曲が入っていたことも含め、BLUE ENCOUNTの音楽的なイメージをより明確に広げてみせたアルバムだったわけですけど、あのアルバムを作り上げたからこそ、ここまで歌メインのアレンジに行き切れたっていうのもあるんですか?

「やっぱり凄く自信がついたっていうのがデカいかもしれないですね。前回のインタヴューでお話した通り、昨年はバンドとして方向性を迷ってた時期が結構あったんですけど、やっぱり『THE END』で自分達の中にある方向性をすべて出したことによって、怖さがなくなったっていうのはあるかもしれない。今また新曲を作ってるんですけど、どう思われたいっていう感覚がなくなったんですよ。今まではいかに泣き虫から脱却するかとか、あるいはMCの強みとかからも脱却するかみたいなところが凄くあったんですけど。そういうことじゃなくて、単純に自分達がその時に鳴らしたい音を鳴らすことが、バンドとして一番エグみのない強いものになるんだなっていう自信がついたと言いますか。だから“さよなら”も裏でシンセサイザーを入れたりして、どバンドサウンドよりは歌を前面に押し出すことをキーワードにすることができたし。でも、この前、幕張メッセのワンマンの時に初めて披露したんですけど、歌ってて結構ロックだなって思えたんですよ。音の厚さとかじゃなくて、その曲をバンドがどう大切に扱うかで音の質量が変わってくるんだなってことを実感したし、たぶんこれが今のブルエンがやりたい音の厚さなんだなって思って……なんか、音ってこんなにも自分達が出るんだなっていうのが凄くわかりましたね」

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text by有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.121』