Posted on 2017.05.22 by MUSICA編集部

ぼくのりりっくのぼうよみ、
シングル『SKY’s the limit/つきとさなぎ』を発表。
社会に対する問題定義を積極的に続ける、彼の思惑に迫る

これまでの僕は「何か大きな目標を達成することが尊い」と
思ってた節があったんですけど。
でも今は一周回って、今が楽しければいいっていうか。
誰かに赦されるために生きてるんじゃないんだよっていうのを凄い意識していて

『MUSICA 6月号 Vol.122』P.96より掲載

 

(前半略)

■で、アネッサのCMソングとして書き下ろした“SKY’s the limit”は、クレジットを見ないで聴いたらぼくりりだと気づかないかもしれないくらい、アッパーに振り切れたサマーチューンで。歌詞を見るとぼくりりくんらしいんだけど、聴感としてはバリバリのでパーティチューンですね。かなりびっくりしました。

「そうですね、CM100%寄せてみました。そういうふうに踏み切ってみたキッカケとしては、さっき話した『Noah’s Ark』を出してみた結果、『ストーリーとか全然聴いてねえな』って思ったところで。これは全然悪い意味じゃなくて、単純に『ここに注目してるぞポイント』が自分が思ってたのと違ったなっていうことなんですけど。だから気にしなくていいや、と思って作ってみた感じですね」

■自分の中では完全に戦略的なものなんですか? それとも、実はこういう音楽って楽しいなという快楽的な側面もあって、それをここで差し込んだ感じなんですか?

「スタートの時点では100%戦略的だったんですけど、作ってみたら、意外といい曲だし聴いてて楽しいな、みたいな。しかも初めて応援歌を作ったんですよ。Instagram系女子への応援歌なんですけど、応援歌作ってみようと思って、やってみて。だから1番ではInstagram上の世界を歌っていて、2番ではその裏側を歌っているっていう」

■<画面越しの世界だけ/愛を愛を/虚構のままで踊る>、<“本当は”なんて意味無いよ/太陽浴びて i gotta post my picture>という歌詞もありますけど、Instagram系女子への応援歌って言ってくれたように、この曲の歌詞はつまり、虚構の肯定だと思うんですけど。

「ガッツリそうです。嘘世界って幸せですからね。たとえば、普段のこの歌の人は満たされてなくてカップラーメンしか食べてないけど、月1で美味いもの食いに行くんですよね。で、その一瞬を写真に撮る。その写真に写ってる私が、<この一瞬の私がすべて>なんですよ。でも、それって別にいいことだなって思うんですよね」

■で、少し前のぼくりりくんだったら、虚構的なる世界をここまで肯定はしなかったんじゃないかなって思うんですけど。

「確かに。でも、あの世界ってみんな一生懸命自分を演出してるわけじゃないですか。その一生懸命さは偉いなと思って。たとえば、楽しそうにしてる人達に対して、カウンターとして『そんなことすんなよ』っていう人達が現れることって多いじゃないですか。でも、そのうちにそうやってカウンターを打つことにもみんな飽きてくる。今ってそういう流れがいつもあって。で、今だったらたとえばSNOWみたいなアプリがあって『盛るな、嘘つくな』って言われてるわけですけど、それを第三者的な立ち位置で肯定するゾーンってまだないなぁって思ったんですよね。で、それをやるか!と思って書いてみたんですけど」

■こういう、音楽的にも歌詞的にも、これまで自分が作ってきた世界観に対するカウンターを自分で作るということには意識的だったの?

「そうですね。ボツにした曲で『方舟とかぶっ壊そうぜ』っていう歌詞もあったんですけど、ちょっと伝わり辛そうだなと思ったのでナシにして。ただ、そうやって更新していきたい欲はあります。まだアルバムを2枚しか出してないのに『こういうの書かないよね』とか『これ、ぽくないよね』とか言われるのは癪だなって思って、だったら早めにいろいろやっとくか!と思って、やってみました。でも、この曲はいい曲だなって思います。お金も稼げそうだし。あと、やってて普通に楽しいし」

■ぼくりりくんは、お金を得て何がしたいの?

「だって、この生活をキープしていくためには、よりお金は必要だし。もちろん音楽をやりたくないわけじゃないですよ。自分が一緒に音楽を作りたい人と曲を作りたいっていう欲はあるんです。ただ、それが第一目標ではないっていうか。人生を満たすためのひとつの手段として、漫画を読んでるのも楽しいし、ドミニオン(ボードゲーム)をしてるのも楽しいし、音楽をいろんな人と作ってるのも楽しいっていう。だからオプションですよね。音楽のために生きるっていうのが全然ないというか」

■というか、そういう意識はそもそもあんまりなかったよね。

「そうですね。それが確信に変わった感じですね。だからいつ音楽を辞めてもいいんだなとも思いますし。なんなら、生活保護を受けてドミニオンをやる生活でもいいわけですし」

■それでもいいんだ!?

「え、よくないですか? ドミニオンやったらこの気持ちわかりますよ! “SKY’s the limit”はいい曲だしドミニオン楽しいし。僕は今、幸福感に満ち溢れてるんですよ! 最高!」

■まあ、そんなのは長く続かないだろうと思っちゃう私もいますけどね。

「そんなこと言ったら、全部が全部そうですよ。そうやって消費してコロコロ変えて生きていけばいいんですよ。マンネリ化してきたら、新しい目標をブチ上げればいいっていうか。自分の欲望をどれだけ上手くコントロールするだけっていう感じですね」

■とはいえ、ぼくりりくんの場合、半年後に話したら全然変わってる可能性もあるよね。

「確かにそれは全然あります。まったく違うこと言ってるかもしれない。『マジで目標ないヤツはクソです。今の僕には大いなる目標があって音楽をやっていて』とか言ってる可能性は全然あると思いますよ」

 

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text by有泉智子

『MUSICA6月号 Vol.122』