Posted on 2017.06.16 by MUSICA編集部

旺盛な音楽的好奇心でポップスの海原を旅するsumika、
ファースト・フルアルバム『Familia』をリリース。
初のバックカバー特集で大祝撃!

 

ここまできたら妥協ゼロでやり切ろうと思って。
制作が押しといて何なんですけど、清々しいですよ、
作ることにここまで嘘がないレコーディングは(笑)

『MUSICA 7月号 Vol.123』より掲載

 

■まだ完成していない曲が多数なのにわざわざお呼びして取材というのも何でしょうが、とにかく最高のアルバムができつつあります。

「いやいやこちらこそすいません。でもありがとうございます! 今日もジャケット撮影したりいろいろあったんですが、勇気が出ます!」

■状況、そしてアルバムの内容、全部含めて賽は投げられたと思い、バックカヴァーでの特集を組みます。よろしくお願いします!

「はい! 本当に嬉しいし、お話するのを楽しみにしてましたので、頑張ります!」

■まずは、この『Familia』というアルバム、7月12日発売ですよね。で、今日が6月4日です。僕が知る限りで、発売の1ヵ月前に全部の作業が済んでいるっていうのが発売日死守のギリのラインだと思うんですけど――。

「まさにそうです(苦笑)。なのに、まだラフミックスの音源ばっかりで本当にすみません。でもここまできたら、本当に妥協ゼロでやり切ろうと思って。制作が押しといて何なんですけど、清々しいです、作ることにここまで誠実で嘘がないレコーディングは(笑)」

■日ごとに少しずつ曲が更新されて、まるで伝言のようにメールで届き続ける日々で。非常に楽しいことになってます(笑)。これまでミニアルバムを5枚、シングルも含めると二桁に近いくらい作品を重ねてきて、ようやくのファーストフルアルバムですよね。sumikaのポップな音楽性から考えても、もっと早くアルバムを出してもよかったと思うんですけど。ここまで引っ張ったのは、何かこだわりがあったんですか?

「やっぱり、僕自身が『音楽を聴く』っていうことに対してミーハーな心を持ち続けていたいっていうのが大きくて。というのも、年々『アルバムを通して聴く』っていう集中力が薄れてきてる気がするんですよ。それは自分も、世の中もなんですけど。iTunesを象徴に『1枚通して作品を聴く』っていうニーズ自体がなくなってきた気がしていて。だから、集中力が続くヴォリュームとしてミニアルバムがベストなのかな?と思って音楽人生を歩んできたんですが――ここにきて『自分の音楽人生にとって今がベストだ』と思えるのはまさに今なんじゃないかと思ったんです。これからもそのピークを更新していきますけど、そういう今ならば、フルアルバムを作ってもいいんじゃないかなって思えたんですよ」

■具体的に、ご自身のどういう部分に対して「今だ」と思えたんですか?

「まず『Familia』っていうアルバムタイトルは、7年前から『ファーストアルバムを作るならこのタイトルだ』って決めてたんです。『家族』にもいろんな意味がありますけど――自分も人も、人間は必ず人から生まれているわけだから、生まれながらにして家族が存在するじゃないですか。だけど歳を重ねると、結婚したり、子供ができたり、自分で選べる家族も増えていく。そう考えた時に、バンドメンバーやスタッフっていうのは自分で選べる家族だし、そうやって自分が音楽をやっていく中で出会った周囲の人に対して『家族だ』って思える瞬間がきたら、その名前でアルバムを出そうと思ってたんです。それで、自分が倒れて(片岡の体調不良により、2015年の8月から11月末までsumikaはライヴ活動を休止した)復帰した時に『この人達は最強の家族だ』って実感して『アルバムを作ろう』って思えたんですよね。この家族に出会うために俺のこれまではあったんだなって」

■たとえば結婚って、よく言えば約束、悪く言えば契約で。そこから「子供」が生まれるわけですが、男性目線で考えると、僕らは子供が誕生する時にお腹を痛めないからこそ、そこに衝動と神秘を感じるんです。それで、よく音楽家の方が「曲は自分達の子供だ」って言われますけど、バンドっていうのも、よく言えば約束、悪く言えば契約ですよね。だから、そこに意味と神秘と宇宙性を持たせているのは「子供」である楽曲だと思うんです。その楽曲を「消費物」ではなく子供とか神秘と捉えた時に、バンドは家族や愛になるんだなって思うんですよね。

「ああ、面白い話ですね! 僕も、曲は自分の子供だなって思うんですよ。先ほども言われたように男は物理的に人を産めないですけど、楽曲っていうのは唯一、僕が産める子供で。……実際の人間で言っても、子供への評価から親の育て方が想像できることがあるじゃないですか。『親の育て方がよかった』って言われる子供もいれば、逆に『親のしつけが悪かった』って言われる子供もいて。要するに、楽曲で得た評価が自分達に今返ってきていて、その子供達に確信を持てたからこそ、『sumikaはもう既に結婚してたんだな』っていう感覚を持てたんですよ。俺達の結婚は間違ってなかった!って(笑)、子供が思わせてくれた。曲とメンバーとスタッフへの確信全部が、『Familia』ってタイトルにしっくりきた要因だと思うんです」

■このアルバムの制作自体は、ご自身の中ではいつくらいから始まった感覚なんですか。

「今年の初詣から……ですかね(笑)。というのも、sumikaは、メンバーとスタッフ全員で地元の川崎大師に初詣に行くのが毎年の恒例行事になっていまして」

■律儀だね。

「はい(笑)。みんなで引いたおみくじに大吉が出て、手相も見てもらったら『あなたはそろそろ勝負していいですよ』っていう話だったので、『やっぱりこれは間違いない』と思って。それで『よし!』と思ってデモを作る期間が始まって。それが今回の制作の始まりだったと思います。それで新曲の制作も1月前半にガッツリできたし、それ以前に、過去に2回作った『Dress Farm』っていう価格設定自由の作品シリーズも今年はやりたいと思っていたので、それとアルバム用の制作、両翼で動かしていきました」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.123』