Posted on 2017.07.15 by MUSICA編集部

UVERworld、3年ぶりのアルバム『TYCOON』完成!
傑作のすべてを解き明かす2本立てインタヴュー!
――Interview with 信人、彰、克哉、誠果、真太郎

正直、作っても作っても形にならなくて
一生アルバムできないんじゃないかって思ったくらいで。
世の中的な「ロックは古い」っていう空気を感じて、
だけど一方では、ストレートにやりたい気持ちもあって……
何やってもアカンのちゃうか?みたいな時期もあった

MUSICA 8月号 Vol.124P.30より掲載

 

(前半略)

TAKUYA∞とのインタヴューでも「これがUVERworldのベストアルバムだと思います」と申し上げましたが、名作が完成したと思います。

彰(G)「直接言われると嬉しいですね(笑)。正直、振り返る余裕もないままツアーが始まって、しかも既に次の音源制作も始まろうとしてるので、ゆっくり思い出すことはあんまりなかったんですけど――でも、改めて振り返ると、前作からの3年分がしっかり詰まってるなって思います。個人的にもかなり右往左往して苦労した作品ですし、そういう意味でも思い出になる作品だと思っていて」

■とにかくヴォリューム感が半端ないアルバムなんですけど、彰くんは、極限までの曲数になった理由はどういう部分にあると思ってるの?

彰「『Ø CHOIR』の後に『次はどうしよう?』って考えた時、当然、前回を超えるものを作ろうと思ったわけです。そしたらまず、メンバー内の曲のハードルがどんどん上がっていって。しかも、『普通じゃダメ!』みたいなワケのわからないハードルの上がり方で――全員がその深みにハマってしまった時期が長くて。そんな中、時間を置いて半年前のデモを聴き返して『これはいい』って言って曲が復活したり。……それを繰り返して曲が溜まっていった結果、収録曲がこれだけ多くなったんですけど」

真太郎(Dr)「僕、アルバムが出るたびに『超大作』って言ってきたんですよ。だけど今回は、内容的にもヴォリューム的にも、過去の作品を超大作と呼んだのがもったいないくらい、本当の超大作だなって思っていて」

■今後は言葉の使い方を気をつけないとね。

真太郎「ははははは。前作から3年空いたのはデビューしてからは初めてのことでしたけど、振り返ってみればシングルも凄くパンチのあるものを出してきたし、そこに収録してきたカップリング曲も凄く個性的で力強いもので。新曲だけじゃなくて、そうやって積み重ねてきたんだなっていう部分に『3年経ったんだ』っていうことを実感しているんですけど」

■曲が多いことも含めての「ヴォリューム感」ではあるんですけど、それに加え、今回はいろんなBPMの曲があって、このバンドとしては異色な緩やかな曲のバランスが多いですよね。そういうテンポの種類の多さは難しい半面、ドラマー冥利に尽きる部分でもあったと思うんですけど。

真太郎「(BPM200とか140辺りのテンポ感が多いのは前作くらいの時から感じてたんです。だからこそ、今回180くらいの意外とやってこなかったテンポを叩くのが気持ちよくて。それは新鮮というより、懐かしさに近かったと思うんですよ。昔からいろんな曲をやってきましたけど、今回は『最近なかった』っていう感覚が蘇ってきて、そこに楽しさとか気持ちよさがありました」

■リーダーはいかがですか?

克哉(G)「3年かけた甲斐があった作品だと思いますね。まあ、お客さんからしたら『3年も何してたん?』って感じだと思うんですけど――」

■いやいや、十分ライヴやってましたよ(笑)。

克哉「まあ、そうなんですけど(笑)。つまりは、3年間常に、ライヴとスタジオを行き来して音楽に触れ続けてたんですよ。スタジオで煮詰まったと思ったらライヴがあって――ライヴは常に本気だし原点であるのは変わらないし、つまりは『もっと新しいものを作るには?』っていう制作の葛藤と自分達の原点を行き来する日々を3年間繰り返してきて。で、今回の作品はその原点と新しさのちょうどいいところに行けた気がするんです」

■リーダーは朝早くからスタジオに入って音のレンジをひとりで作ってたっていうタレコミが、先にインタヴューした方からあったんですが(笑)。

克哉「確かに(笑)。以前は夜通し作業して朝の6時に帰ったりしてたので、前日作ったものを聴き返す作業があまりできなかったんです。だから今回は、その分朝早くスタジオに行って改めて見返す作業を大事にしてましたね。長い期間をかけて作っていくと、俯瞰することを忘れがちやと思うので。たとえば車の中で聴いたりとか、一歩離れたところで聴いたりっていうことは凄く意識してやってました」

信人(B)「……でも正直、作っても作っても形にならなくて『一生アルバムできないんじゃないかな』って思ったくらい長かったんですよ。年単位で深みにハマったというか。だから、今はホッとしてるっていうのが一番で」

■でもね、この3年間の取材でほぼ毎回おっしゃってきた「制作が長くかかって苦しかった」っていう感覚が、実はよくわかってないんです。何故かと言うと、実際はコンスタントにシングルを出されているし、そこにはタイアップもついていて状況も悪くない。かつ、ライヴもあれだけやっていて、「男祭り」ひとつとっても、いろんなバンドが憧れるような景色を作れていたじゃないですか。この3年には、ちゃんと充実したものが詰まっていたと思うんですよ。だからこそ、このアルバムを出せなかったことに対する「苦しかった」っていう想いがそれぞれにあるのが不思議でね。

信人「そう言われたらそうかもしれないんですけど――たとえばライヴはブレずにやってこられましたけど、こと制作においては、何かに飽きたり、逆にカッコつけたりすることをたくさん繰り返してきたし、ずっとグルグルしてたんですよ。でも最終的にはそれも抜け出して、自分達の『ええやん!』っていう感覚に還っていったからこそでき上がった作品でもあると思うし、それがよかったと思うんです。だから、この3年っていう長い時間も今思えば必要なものやったと思えるんですけど」

■具体的に訊くと、今作に向かう中でハマっていった負のスパイラルは何によってもたらされていたんですか。

信人「うーん………世の中的な『ロックは古い』っていう空気を感じたことで、自分も『確かに今の時代はそうかもな』って思ってしまったことがあったんです。だけど一方では、ストレートにやりたい!っていう気持ちもあって。そこでグルグルと考え込んじゃったんですよね。それに、リリース予定が延びていくほどファンに対して自分達の責任感が重くなっていって。さらに正解がわからなくなって、着地できなかったことが一番大きいかもしれないです。もしかしたら今まで通りやればよかったのかもしれないけど、『何やってもアカンのちゃうか?』みたいな時期もあったし――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.124』