Posted on 2017.07.15 by MUSICA編集部

ライヴ活動を封印していたマキシマム ザ ホルモンが
「耳噛じる真打TOUR」にて完全復活!
暴飲暴食復活劇を完全レポ!

ブランクはあった、歳もとった、
随分と痩せた輩もいれば随分と太った輩もいた―――。
それでもホルモンは未だ日本のロックの真打だったのか!?!?
その結論をここに書いたら、この後の文章インタヴューじゃないし誰も読まないし、
でもツアー初日の殺人酸欠八王子、中盤の麺カタこってりの本場福岡、
そしてファイナル新牙スタジオコースト3箇所、
しかと出張ってきました。マキシマム ザ ホルモン復活劇、お読みくださいっ。

MUSICA 8月号 Vol.124P.42より掲載

 

 ロックバンドとは何か?を理屈で言うのは容易い。しかしそれ以上に容易いのは「ロックとは人生だ」と答えることである。何? ロックが生き様だというメッセージをお前は否定するのか? いやいや、そうではない。むしろその通りではあるのだが、そのロックとは生き様であるというのは言葉にするまでもない当たり前というか、焼きそば弁当に中華スープがついてくるようなものであって、それはもう語る前にそのまま存在しているのである。

 大切なのは、その生き方であるロックを、どうやって生き方に匹敵する凄いことにしてやるのか? その内容が、ロックとはなんなのか?の答えであるはずなのである。

 僕はロックとは「発狂」だと思っている。バランス感覚、批評性、時代との距離感、そういうものもロックという「マーケット」にとってはとても大切なものだし、生み出した音楽の育ち方としても大事なものだが、すっげえロックは、いつだって超越していたし発狂していた。

(中略)

その発狂をどこまでとことん高められるのか? それはもう、脳内麻薬まで自分でコントロールできるほど、発狂という状態を自己コントロール下に置くための鍛錬に鍛錬を積み重ねるしかないのである。以前、マキシマムザ亮君とのインタヴューで彼がどれだけ鍛錬を積んでいるのかの流れでこう語ってくれたことがある。

「毎朝、髪の毛を洗って、その髪を僕はドライヤーで乾かさない。ベランダに出て、この長髪が完全に乾くまでヘッドバンキングし続けるんです。それで鍛えた首があのライヴをさせるんです」。

 言葉を失う。

 耳も疑う。

 しかし。前述したように、ロックの超越を模索し続けるホルモンなら、これぐらいのことはやりかねない。何故ならば、彼らはよくできた音を鳴らしたり曲を作ったりライヴをしたりしたいわけじゃない。むしろ逆。まとまるよりは爆発したい、自然の摂理に任せるより乱れに乱れたいからである。マキシマムザホルモンは吠えるだけ吠えて、鳴らすだけ鳴らして、蹴散らすだけ蹴散らして、それを取り憑いたかのようにやりまくり、度を超えてやり切った者だけが得られる興奮と恍惚と笑いと刹那な幸福を、そのままフロアにぶん投げるライヴバンドなのである。

 そんなバンドがライヴで世の中に出てこなくなって2年。妊活と出産活動を終え、めでたく第二子を世の中に産み落としたナヲを除いたマキシマムザ亮君、ダイスケはん、上ちゃんはいつものように人知れずマキシマムザホルモンとして個人練、3人練に明け暮れていたのか? この2年間のシーンの変わりようは激しかったが、彼らはその新しきシーンに何を思い、どんな「石」を投げつけてくるのか? 遂に現れたニューホルモンの復活ツアーを今回は3ヵ所、観せてもらった。その3ヵ所のライヴレポを合わせながら、今回のライヴ復活のホルモンを迎撃しよう。

 

520日 八王子MATCH VOX

 

 嫌な予感はしていた。彼らのホームライヴハウスで、しかも初日を観られるのは幸せなことだが、ツアー初日をここで観るのは3回目。一度もまともな自分として終演を迎えたことがない。今回はその中でも最悪な最後を迎えるライヴとなった。

 ハコの中に入ると、もう客の「やる気」が気ではなく有機物のように目に飛び込んできて染みる。その染みた目をこすりながら開演を待つ間にBGMSoundgardenという、グランジロックの元祖にしてこの5月にあろうことかヴォーカルのクリス・コーネルが自殺を遂げてしまったバンドのものが続いていることに気づく。彼ららしい押しつけ一切なしの哀悼の意を感じながら待つと、この日の対バンであるKen Yokoyamaが登場した。復活を祝しながら腹ペコ!を連発して煽りながら、一気に25分ほど全力で浴びせかけるライヴだったが、相手が横山であることも含め、腹ペコはホルモンが選んだ相手に一切の妥協をしない。よって既に酸素は相当薄くなった中、彼らのライヴが終わった後で、ステージに幕が張られフロアから見えなくなる。なんらかの演出があるのだろうことはわかったが、静かにその時を待つ。

 この日はいいポジションを取った。前述したように以前、10-FEETとの対バンツアーの初日のここではまさに地獄絵図のような光景の中で撮影まで自分でこなし、挙げ句の果てにほとんどがレンズが曇ってまともに撮れていないという「惨事」もあったので、今回は久しぶりの4人の調子をなるべく冷静かつ情熱的に見たいと、モッシュエリアから1段登った部分の最前、つまりは全体を見渡せるポジションをゲットすることができた。さあ、新生ナヲが還ってきたホルモンを遺憾なく目撃しようと思う中、遂に黒幕が降り、いつものSEが――ん? 流れない。照明も煌々と焚かれない。その黒ずんだステージの真ん中には、これを隠すためにわざわざ黒幕を張ったのかと開いた口が塞がらない、ハリボテの大きな炊飯器がひとつ。そしてその炊飯器がなんと、喋り出したのである――。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.124』