Posted on 2017.07.19 by MUSICA編集部

『XXL』でオリコン週間チャート2位を獲得。
さらなる猛威をふるう岡崎体育が本誌初登場!
音楽家としての本性と意地と野望をガチで問う!

「こんなん芸人やん」とか「ただのユーチューバーやんけ」
っていう言われ方に、僕は凄く憤りを感じてたので。
ネタの上に曲が乗ってるんじゃなくて、
曲の上にネタが乗ってるんだぞっていうことを、
このアルバムで提示したいと思ってました

MUSICA 8月号 Vol.124P.98より掲載

 

■本日はDEAD POP FESTiVALで、ここはそのバックヤードなんですけど。MCでも言ってましたけど、岡崎くんはバンドではなく独りきりだから一緒に喋り合うメンバーもいないし、さぞかし寂しいだろうと思って、インタヴューの機会を設けさせていただきました(笑)。

「(笑)。ありがとうございます。ちょっとでも人と触れ合う機会を設けてくれて」

■とはいえ、今日のステージではSiMとのコラボレーションをしましたね。しかも、SiMは演奏せずに完全にエアー、つまり金爆状態での参加で。

「はい(笑)。SiMのメンバーを背負って“感情のピクセル”という曲をやったんですけど」

■今年の5月に彼らの対バンツアーにお呼ばれして北の大地で2マンを繰り広げたわけですけど、その時に綿密に打ち合わせしたの?

「そうですね。その打ち上げとかで、なんとなく『“感情のピクセル”とかできたら面白いですね~』とか言ってたら、SiMが『俺ら後ろであてぶりでよかったら、全然やるぞ』って言ってくれて。最初は社交辞令というか、その場の雰囲気で言ってくれてるんかなって思ってたんですけど、結構本気で言ってくれてる感じが伝わってきたんで、『これはマジでできるんかな!?』って思ってたら、だんだんマネジメント同士が動き出してくれて。今日、遂に実現しましたね」

■あのバンドは頭の90%が徹底的に固いんですけど、残りの10%が徹底的にアホみたいに柔らかくて。その10%の部分がちゃんと出たっていうのが得策でしたよね。

「ファンの人とか観に来てる人も、きっとSiMが出てくることを知らなかったんで。出てきた瞬間に雪崩のように人が前に来て。いやぁ凄かったです、本当に……伝説的なライヴ。そもそも、たぶん僕があの曲をライヴでやることはほとんどないので」

■そうなんだ。

「ひとりでやるとどうしてもカラオケになってしまうから、ヴィジュアル的にもあんまり楽しくないんかなって思ってたんで。でもこうやって、実際にSiMのメンバーがあてぶりをしてくれたことで、お客さんも凄く喜んでくれたかと思うんで。よかったですね」

■あの光景を見ながら、“感情のピクセル”をやりたかった理由はまさにこれなんだなって思って。これから夏にいろんなところでこういうコラボをやり続けて、そのパフォーマンスでより多くの人を口説き落としていくんだろうなって思ったんだけど、そういうわけじゃないんだ?

「本当はやりたいんですけど、今回はオーガナイザーのSiMが僕のことをよく思ってくれていて、『やろうよ!』って言ってくれたからできたことなんですよね。今後バンドがオーガナイザーをやってるイベントにまた出れたら、こういう面白いこともしていきたいなとは思ってるんですけど」

■というか、今の話だと、“感情のピクセル”ってそもそも、こうやってフェスとかライヴ用に作ったってわけじゃないってことだよね。

「そうですね、もう映像作品として完結させてるようなものだったので。実はデビューアルバムのリード曲“MUSIC VIDEO”も、去年のライヴで50本中4本くらいしかやってなくて。YouTubeで見れる岡崎体育のひとつのアドバタイズというか、宣伝のために打ち出した曲なんで、フェスでやることをまったく意識せずに書いた曲なんですよ。で、“感情のピクセル”もそれと同様で、映像の中で完結してたものだったので。でもこうやって実際にライヴでやってみて、バンドを背負ってやらせてもらうとこんなに盛り上がる曲だったんだなってことは改めて実感しましたね」

■“MUSIC VIDEO”って、ユーチューバー的なスキルがわかりやすく随所に盛り込まれてるじゃないですか。それがブレイクに繋がったと思うんだけど。でも“感情のピクセル”って、岡崎体育っていうキャラクターがエモをやってるから面白いんであって、別に普通にやればまったくもって普通にいい曲だし、普通のMVなわけじゃない? そんな中で、この曲で勝とうと思ったのは、どういう考えがあったからなんですか?

「うーん……僕ってミュージシャンっていうよりはエンターテイナーに近いと思ってるんですよね。世の中の音楽シーンにひとりで活動している人ってたくさんいると思うんですけど、その中でどうやって目立つかって言ったら自分が道化になり切るしかなくて。そういう意味では、本来はカッコいい音楽をやりたいなっていう気持ちも強いんですけど、こうやって感性が若いうちに、今の若い子達と近い年齢のうちに、できるだけピエロになって自分の活動に目を向けてもらえるようにって意識はしてます」

■今の話から、岡崎体育は20年、30年としっかりソロ活動や音楽活動を続けていく心構えだということがわかるんですけど。それにあたって、今回のアルバム『XXL』がオリコンで2位になり、かつ売り上げも『BASIN TECHNO』よりもかなり増しているという事実はどう感じているの?

「自分がデビュー前からやってきた施策というか宣伝が、徐々に積み重なっていってる証拠だと思っていて。それに付随してお客さんもどんどん増えてきているってことなんですけど。ただそれを差し置いても、今回の“感情のピクセル”と“Natural Lips”っていう曲は“MUSIC VIDEO”とは違った視点の面白さもあるかなって思ってるんです。“MUSIC VIDEO”は『映像ありきで、音楽単体で聴いても面白くないやんけ!』って言われたりもしたんですけど、今回の“Natural Lips”はラジオとかで流れたほうが面白い曲だなって思っていて。だってあの曲、映像がなくて音だけ聴いてたら、ホンマに英語にしか聞こえへんわけで。だから、また別の打ち出し方ができたんじゃないかなって思ってますね」

■昼の11時頃にFMでかけられる曲を作りましたね。むしろ岡崎体育というクレジットがないほうが機能する曲かもしれない(笑)。

「そうっすね(笑)。ランチ時に聴いたら爽やかな洋楽かと思うような曲ができたんで、それは前作の“MUSIC VIDEO”に比べると、1ランク高尚なエンターテイメントができたのかなって思ってます」

■要するに、YouTubeの世界でバズって、それがちゃんと人気とセールスに結びついたのが『BASIN TECHNO』だったわけですけど。その上で、YouTube超えをどこまで自分の音楽でしっかりやっていくかということを、『XXL』を作る段階でちゃんと考えていたってことなんですか?

「そこはとても考えてました。前作が映像ありきだったことに対する反響とか評価、もっと言うなら批判は、出した瞬間から結構あったので。なので、『そう言うんやったら、音だけで聴いても面白い曲作ってやるわ!』っていう意気込みはありましたね。それはもう去年のリリース直後くらいから考えていて。1年後にセカンドアルバムを出そうと思っていたので、そういう意識を持って12ヵ月の中で作っていったアルバムが今作ですね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.124』