Posted on 2017.07.19 by MUSICA編集部

毎年挑戦的なサマーアンセムを作り続けてきた
SHISHAMOから、シングル『BYE BYE』が到着。
確かなる成長と変化を、宮崎朝子、赤裸々に語る!

ちょっと前だったらバンドシーンから抜け出したいって
思ってるところが少なからずあったんですけど、
今はあんまり気にならなくなりましたね。
今はもう抜け出た場所にいるというか、前にいた場所とは違う場所に感じます

MUSICA 8月号 Vol.124P.104より掲載

 

夏のシングルが出ます。表題曲の“BYE BYE”は進研ゼミ中学講座のCMソングになったんですが、あれはサビが流れるんですよね?

「サビが流れます」

たぶんCMでサビだけ聴いてた人からしてみたら、まったく予想外な曲調のイントロ〜AメロBメロになっていて。

「そうですね(笑)」

サビ以外の部分はクールでアグレッシヴなジャズファンクとでも呼ぶべき曲調で、サビだけがいきなり超キャッチーなJ-POPという、かなり斬新な構造の曲なんですけど。SHISHAMOは毎年夏にシングルを出してますが、2015年の夏が“熱帯夜”、2016年の夏が“夏の恋人”、そして今回がこの“BYE BYE”。これ、夏のシングルは攻めるって決めてるの?

「攻めるっていうより、最初に出した“君と夏フェス”がネックになってるというか。“熱帯夜”を作った時は“君と夏フェス”でSHISHAMOを知ってくれた人が多かった時だったんで、その次の年の夏のシングルだからって思っていろいろ考えた結果、何故か“熱帯夜”みたいな曲になって(笑)」

ある意味、“君と夏フェス”でできた自分達のパブリックイメージに対するカウンターみたいな感じでしたよね。

「そうですね、カウンターというか、今ならこれをやっても大丈夫なんじゃないか、みたいな。でも“夏の恋人”は、そうやって“熱帯夜”を出した時とは全然違くて、もういい音楽を出すだけで絶対に大丈夫だってわかってやったものだったんで。で、今回は夏のシングルをもう何曲も出してきて、今までやったことがないものにしようって思った時に、バンドとしてカッコいいシングルが出せたらいいなと思って作ったんです」

これまでのディスコグラフィと照らし合わせても明らかに音楽的な飛躍の幅が大きい、SHISHAMOとして新しい音楽性に挑戦した楽曲になったと思うんですけど。こういう曲調になったのはどうしてなんですか?

「自分の中で最初に決めた『カッコいいSHISHAMO』っていうところから自然に出てきたものかなって思いますね」

何故このタイミングでカッコいいSHISHAMOを見せたいと思ったの?

「普通にまだやってないことをやりたいっていうことと、あとは“明日も”でSHISHAMOを知ってくれた人が多いなと思って。ということは、みんなの中では次に出すシングルが“明日も”の次の曲になるだろうなと思ったので、その時にどういうふうにSHISHAMOを見て欲しいかなって考えたら、バンドとしてのよさを出せる曲がいいなと思って。“明日も”っていう曲はみんなに好きになってもらったんで、またそういう曲を作ることも簡単だとは思うんですけど。でも、これから先もいろんな音楽をやらないといけないので、そうすると今かなっていう」

“明日も”は、アルバムが完成した時のインタヴューで話していたように、朝子ちゃんの中では、これをSHISHAMOとして出すのはどうなんだろう?っていう疑問と抵抗が大きかった曲じゃないですか。

「そうですね。曲自体は元々好きじゃなかったんですよ。どっちかっていうと嫌いくらいの感じで、アルバムにも入れたくないし、ライヴでも歌えるのかな、みたいな気分だったんですけど」

って話してたよね(笑)。そういう曲がSHISHAMOの曲としてこれだけ愛されてるっていうのは、自分の中ではどう受け止めてるんですか?

「それが、自分でも嬉しいんですよね(笑)。3月からツアーを周ってきてこないだ終わったばっかなんですけど、“明日も”をやった時のみんなの表情が全然違くて。泣いてる子とかも凄いたくさんいて。そういうのを見て、お客さんのおかげで私もあの曲を好きになれたなっていうのはあります」

朝子ちゃんは、そのたくさんの泣いてる人達を見てどう分析したの?

「結局、“明日も”がこうやって聴いてもらえてるっていうことは、みんなが生活して生きてる上でこういう曲に助けられることが凄く多いんだろうなと思って。今までは私が欲しい曲をっていう気持ちもあって曲を作ってたと思うんです。私がこういう時はこういう曲を聴きたいと思うなっていう想像だったり。でも、“明日も”はサッカーの試合を観に行って、サポーターの人達を主人公にしてサポーターの人達の気持ちになって書いた曲だったから、それとはまたちょっと違くて。だから正直、あの気持ちとか感覚は私にはわかんないんですけど、でもみんなはたぶん、1週間頑張って土日にこうやって私達のライヴを観に来て頑張ってるんだなっていうのが伝わったし、そういう人がほとんどなんだろうなって思いました」

今回のシングルっていうことだけじゃなく、その“明日も”の経験で朝子ちゃんがSHISHAMOで書こうと思う曲って変わってきたりしてるの?

「いや、それはないですね(笑)。やっぱり基本的に恋愛の曲を書くのが好きなので、それは変わらないかなと思います」

話を戻すと、“BYE BYE”はSHISHAMOの音楽的バンド力がここまで培われてるんだぞっていうのを見せつける曲にもなっていて。この曲、演奏がとても難しいじゃないですか。こういう曲になったのは、今のリズム隊だったらこういう曲もできるなと思ったからなのか、このハードルを設定することでバンドを1個上のレベルに上げたいという思いがあったのか。

「どっちかっていうと後者ですね。今のバンドでできることの中で考えていくと、いつまで経っても変わらないじゃないですか。そういう考え方は昔から同じですかね。今の自分達よりもちょっと上のことに挑戦していった結果、ここまで来たと思ってるんで」

ちなみにこの曲を提示した時、メンバーはなんて言いました?

「若干青ざめてる感じでしたね」

そうだよね(笑)。この1年くらいのライヴを観ていて、吉川ちゃんは本当にドラムが上手になったなって思うし、さらにはこの曲を聴いて松岡ちゃんの成長にも驚くわけですよ。その信頼がないとこういう曲は作れないんじゃないかなって思うんだけど。

「いや、信頼とかは特にないです」

ないのか(笑)。

「そこを考えて曲を作るのは違うっていうか。曲を作る上では演奏する側の事情で縛ってしまわないほうがいいなと思って。いい曲っていうのが大前提なので、あくまでいい曲であるためのアレンジであるべきなんですよね。『自分達ができるアレンジ』ってことで考えてしまったら、曲がもったいないんで。ただ、できるだろうなっていうか、できないとは思ってないんですけど……でも『まぁ、やってくれよ!』ぐらいの感じでやってます」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.124』