Posted on 2017.08.18 by MUSICA編集部

SUPER BEAVER、ロックバンドの王道をぶち抜く
新作『真ん中のこと』完成!
柳沢&渋谷と胸の内を熱く語り合う

昔から心動かされてきた真っ直ぐで純粋なロックバンド像を、
今オーヴァーグラウンド表現できるのは俺達なんじゃないかなって感じたし、
それがSUPER BEAVERのアイコンになっていくと思ったんだよ

MUSICA 9月号 Vol.125P.66より掲載

 

■作品を再生した瞬間、聴くバンドを間違えたかと思ったんですけど。

渋谷龍太(Vo)「ああ、ど頭ね(笑)」

■そう、初っ端の“ファンファーレ”が、ビーバー史上かつてなくガツンとしたアイリッシュパンクだったので驚いたっていう話なんですけど。で、“ファンファーレ”に限らず、アグレッシヴなリズム展開の曲が際立つ作品になったと感じていて。まず、ご自身はどういう手応えを持っている作品なのかを聞かせてもらえますか。

柳沢亮太(G)「今回はまず、ぶーやん(渋谷)から先に『ライヴを意識して、今までになかったリズムを使ってみよう』っていう提案があって、それが基盤になって始まっていった作品なんだけど」

渋谷「そうだね。今までは、楽曲が並んだ結果として『こういう作品になったね』ってわかる場合が多かったんだけども、今回はもっと、音楽的な重心を上げて、より自由にやってみた作品だと思うんだよね」

■その発想は、今のビーバーをどう捉えたところから出てきたの?

渋谷「今までは、伝えたいことをそれ相応のストレートな手段で歌にしてきたバンドだったと思うんだよね。逆に言えば、強い右ストレートばっかりを磨いてきてさ。その結果として、どのアルバムも重心が低くてドッシリ構えたものになってきたし、特に『27』っていう作品はそういうものだったと思うのね。でも、その次を見据えるにあたって『強く伝えたいことがあるなら、人としても音楽としても、感情の幅が広くて豊かなほうが、核をより強烈に伝えられるんじゃないか』って思ったのが、今回のコンセプトの始まりで」

■フックもキックもあることで、右ストレートがより一層効くっていう。

渋谷「そうそう。やっぱり、いろんな感情を持ってる人のほうが魅力的だし、そういう人が『ここぞ!』で出すストレートのほうが、より一層強烈に効くんだろうなって。それは、いろんなバンドと対バンしている中で考えるようになったことではあるんだけど――ひとつ具体名を出すと、四星球を観た時にそれを強烈に感じてね。あの人達は『コミックバンド』って自称してステージでいろんなことをやってるけど、でも、あの人達には絶対的なメッセージがあって。それを伝え切るために、散々笑いの伏線を張ってこっちをノーガードにしてきて、その最後の最後に、一番大事な言葉がドーンと真っ直ぐ飛んでくる感覚があったんだよ」

■散々笑わせた最後に、日々の悲しいことを乗り越えるための闘い方が笑顔なんだ!っていうメッセージを真っ向から叩き込んでくるよね。

渋谷「そう。パンチじゃない部分があったり、ジャンプできる部分があったり――そういう起伏の核として全力のストレートがあることが、より強さになっていくんだなって。それは音楽として何かをフェイクにするっていう意味じゃなくて、ブレないメッセージをより伝えやすくするために、特にライヴにおける音楽としての役割分担を考えるってことなんだけど。だから、久々にオリジナルCD(プレイリスト)を作って、ヤナギに『こういう発想を取り入れたい』って言って渡したんだよね」

■そのプレイリストにはどういう曲が入ってたの?

柳沢「TURTLE ISLANDとか入ってたよね?(笑)」

■また極端な(笑)。でもTURTLEを入れてたということは、やっぱりリズムに主眼があったんだ?

渋谷「そう、そう。あとはTHE ROOSTERSとかスピッツ、ズボンズも入れたし、LEARNERSも入れて。『あくまでポップにする』っていうこれまでの意識に対してロックンロールのアプローチはやってこなったし、それをヤナギに渡したのも、ロックンロールの鋭角さを出そう!ってこと以上に、リズムパターンの新しさっていう視点だったんだよね」

■今までは渋谷くんのMCを柳沢くんが咀嚼して曲にする循環があったわけだけど、今回はそれとは違うところから音楽が生まれたわけですよね。今挙げてくれたような土着的なリズム音楽や、大文字のロック的な発想からスタートしたのは、具体的にどう反映されていったと思いますか?

柳沢「まあ、それらをまったく通ってこなかったかって言われたら、そうではないんだけど、自分達の曲っていう意味では、引き出しにはない要素だったんだよね。リスナーとしても日本的なポップを好んで聴いてきたし、それが自分達の曲には反映されてきたわけだけど――その上でぶーやんが言いたかったことっていうのは結局、『この曲をそのままやってくれ』ってことじゃなくて、音楽に対する自由な発想や楽しさを取り入れようっていうことだったと思うの。それによって、元々俺らが持ってるポップス的な発想をより一層刺激してもらったような感覚があって。今までは俺が作った曲に対して『もっとこうしたほうがいい』って言い合う作業だったんだけど、今回はそれ以前に、曲の素材の段階から『どれを鍋に入れようかな』っていう意味での広がりがあったし、それが凄く楽しかったんだよね」

■たとえば、“正攻法”のBメロで跳ねたダンスビートになるじゃない? あのビートに対してギターフレーズのループが乗ることで生まれるトランス感がとても新鮮で。あそこまでアッパーに振り切るアクセルの踏み方も、今言ってくれたことが表れたものなの?

柳沢「そうだね。そもそも“正攻法”みたいにサビが2ビートになることも今までなかったし、それも、音楽として楽しいほうに振り切ってしまおう!っていう発想を持てたことの象徴だと思うんだよね。言ってくれたように、『楽しい!』の発想のエンジンのかけ方を、より一層4人で共有できたんだと思う。あのダンスビートがサビじゃねえのかよ!(笑)みたいな展開でサビに2ビートがくるのも、それが重なった結果で。今までは『これを歌いたい』っていう想いを軸にして、『どうやったらその中心をより強くできるか』の肉づけとして音楽を作ってきたと思うんだけど、それと音楽的な楽しさが同時になった、そのきっかけの作品でもあって――」

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text by矢島大地

『MUSICA9月号 Vol.125』