Posted on 2017.09.15 by MUSICA編集部

Mr.Childrenのデビュー25周年ツアー「Thankgiving 25」。
名曲群が百花繚乱した本ツアーを徹底総評!

まさに「これぞ日本のポップ・ミュージックからの心ある感謝祭」だった!
大袈裟でも何でもなく、この後25年間はきっとないであろう「神セトリ」で、
日本中のファンを本気で唸らせ泣かせたドーム&スタジアムツアー。
四半世紀の活動を総括した3時間半のライヴと、
その四半世紀のMr.Childrenという概念を
独自の視点で推敲するロングホットレヴュー

MUSICA 10月号 Vol.126P.32より掲載

 

 このツアーは彼らの活動が25年、つまり四半世紀続いていることを記念して開催されたものである。タイトルの中にある「Thanksgiving」という言葉は感謝祭という意味で、この場合は「バンドからの感謝祭」というメッセージであると思うが、実際には「ファンがバンドに対しておめでとう!という感謝の気持ちを届けに行きたい」という意志に溢れたものとなり、それがこのツアーをむしろ特別なものにしていたことと思う。

 9ヵ所15公演のドーム&スタジアムツアーという、70万人を超えるであろう「ファン」が参加した巨大ツアーである。わざわざファンという言葉をカッコづけしたのは、70万人もいるのに、その大多数がみんなかなりコアな愛情を持ったファンであり、これだけ大きなツアーにもかかわらずツアーのチケットを取れないその類のファンがたくさんいるというのが、Mr.Childrenが抱えている「最大公約数バンドでありながら、同時に様々な世代にコアなファンを持つバンド」という異質性を強調したかったからなのだが、実際に各地で様々な人々が「25年間ほぼすべての時期にお茶の間的ヒットソングを歌い続けてきたバンドの凱歌」を心から楽しむソウルフルな空気が溢れ出ていたツアーだった。

 

 そのツアー「DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」に対して、SNS上で驚きをもって何万回と呟かれていた言葉、それは――

「神セトリ」

 ――という言葉である。

 

 彼らは過去に「POPSAURUS」という、実質ベストアルバムとシンクロしたツアーを2001年と2012年に行っていて(ちなみに2001年はツアー名が『Mr.Children CONCERT TOUR POPSAURUS 2001』で、ここにCONCERTという言葉が組み込まれているのも時の流れを感じる。今はポップスの世界でもコンサートという言葉をタイトルに入れ込むことはほぼないけど、90年代はほとんどそういうものだ)、それは必然的にベスト選曲的なツアーだったわけだけど、それでもここまで望まれるべき曲のオンパレードになったセットリストを用意したツアーはなかったはずだ。自分は東京ドームのライヴは関係者席というより、お客さんのど真ん中に入らせてもらって観たのだけど、その時に斜め前にいた女性3人ほどで来ていた集団が、中盤から「次の曲次第でおトイレに行く」とそれぞれが言いながら、結局、次の曲のイントロが流れる度に「あー、無理! だってこの曲大好き過ぎるから」という喜びのため息をつき、結局最後までトイレに行けずという微笑ましい光景を目の当たりにした。しかも本編終了からのアンコールの合間に行けばいいものの、当の本人達は「トイレに行けないセットリストって凄いよねえ」とすっかり夢中になって盛り上がっているという、わけのわからない幸せな光景は、今回のセットリストの凄さが伝わるエピソードじゃないかと思う。

 Mr.Childrenは去年ぐらいからイベント出演時も今までよりもヒット曲の演奏率が高くなって好評を得ている。きっとそれは事務所を分社化してメンバー自身がいろいろな会議や企画に参加し、改めてMr.Childrenとはみんなにとってなんなのか?という命題と向かい合うことが増えたからなのではないかと推理しているが、もし本当にそうだとしたら、彼らのこれから新しく作り出す楽曲にさらに期待が持てるし、そもそもその成果はすでに“himawari”という大名曲に色濃く浮き出ている気がしている。このツアーの中でも初期の頃は他の名曲に“himawari”はオーラとして負けていたが、後半戦ではしっかりと勝るとも劣らない凛とした表情を浮かべていて、この神セトリによって育った曲とも言えるのではないかと想う。

 

 というわけで、このツアーは各地の最大級のヴェニューで、今までのMr.Childrenのヒット曲やアンセムと共に「悲喜こもごもを分かち合う」というものだった。そこで大きく感じたことがひとつあった。それは、「今までのツアーとは開放感が全然違っていた」ということである。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA10月号 Vol.126』