Posted on 2017.09.18 by MUSICA編集部

シーンの本命となったヤバイTシャツ屋さんが
シングル『パイナップルせんぱい』を発表。
想像の斜め上を行く新曲達に込めたこやまの思惑とは

最近僕、毎日凄い寂しくて、母性を求めてるんですよ。
今までは、ヤバTに弱ってる部分ってなかったんですけど、
こうやって歌詞に書くってことは、ほんまに弱ってるんでしょうね(笑)

MUSICA 10月号 Vol.126P.94より掲載

 

■相変わらず絶好調なようで。

「そう……っすかね?」

2年前と比べて肌の色も全然違うし。日サロとか行ってない?

「いや、全然普通に夏フェス焼けです(笑)」

■という中でシングルが出るんですけど。前作の『どうぶつえんツアー』はメジャーで闘っていくプレッシャーともかち合って、結果的にそこに挑戦していくことへのシナリオがあの作品には入っていたし、特にサビではばっちりヤバTらしさを出そうというバランス感覚もあって、素晴らしいメジャーファーストシングルだったけど。そういう意味では、今回の『パイナップルせんぱい』は、いまいちよくわかってません。

「ははははははは、今日はそういう流れですか(笑)」

■わからないというのは作品としてのいい/悪いの話じゃなくて、意味合いとしてよくわからないんだよね。なので、いろんなことをご教授願いたく、僕は余計な口出しをしないでインタヴューしようと思います。

「はい(笑)。前の作品は“ヤバみ”で新たな一面を見せられたなと思ってるんですよね。で、今回は“ハッピーウェディング前ソング”をリード曲にしてるんですけど、『そこにテーマ設定持ってくるんや?』っていう意外性があるっていう意味では、比較的ヤバTらしい曲じゃないですか。もちろん毎回のリリースが大事なタイミングではあるんですけど、“ヤバみ”を出して、いろんなメディアで『ブレイクすると思う』とか言われてきた中で、僕的にこの“ハッピーウェディング前ソング”はそこに対して攻めたつもりなんですよね。作曲的には王道な作りをしたんですけど、テーマ自体は『このテーマでリード曲にするか?』っていう内容やと思うし。『アルバム曲じゃなくてリード曲でこのテーマやるんや?』みたいな(笑)」

■まさにそこです、僕がわからなかったのは。プラス、「結婚」というテーマとリスナー層がほぼまったく重なってないでしょ。このバンド、別に誰も結婚してないし、むしろ結婚できなさそうだし。

「そうですね(笑)。やっぱ周りで結婚する人が増えてきたなって思ったんですよね。僕の同級生も先輩もそうやけど、結婚式の写真とか見る度にいいなって思ってて。まぁ僕はまだまだ若いうちは結婚しないぞっていうポリシーがあるんです、尊敬するいろいろな諸先輩を見習って。先日とある結婚式を見てて、年齢を重ねてからの結婚というのも幸せそうやなって思ったんで。だから、今までは早めに結婚したいと思ってたんですけど、こうやって大人になっていくにつれて、もっと後でもいいかなって思えてきて」

■…………ということは、自分が影響を受けている先輩の結婚が、この曲を書くきっかけになってるってこと?

「いや、それは違うんですけど(笑)」

■別に本気でゼクシィのタイアップ取りに行ったわけじゃないでしょ?

「全然。今回のリード曲を作るために、初めてひとりで10日間ぐらいスタジオに籠ってみたんです。でも、全然曲ができひんくて。アルバム曲とかリード曲以外の曲やったら、テーマがスラスラ出てくるんですよ。でも、“ヤバみ”の時もそうやったんですけど、リード曲みたいに作品全体のフックになる曲ってなると、結構悩んじゃったりして、その10日間まったく曲できひんくて。他にできそうな曲のテーマを探したり、友達のバンドマンにスタジオまで来てもらって、ずっと喋りながら手待たせをしたり、自分の過去のTwitterを遡って、俺こんなこと考えてたんやって案を出してみたりとかしてて(笑)。それでも思い浮かばなくて悩んでた時に、息抜きに遊びに行こうと思って、友達とか後輩とかと遊びに行ったんですよ。そのメンバーの中につき合ってはないけどいい感じの雰囲気になってる男女がいて。で、♪キッス! キッス! 入籍! 入籍!って言ってたんです」

■はぁ。

「そのふたりを引っつけたくなって、つい(笑)。それが面白いなって思ってメモして、すぐ帰って、バーッと作ったのがこれなんですけど」

■うーん、でも曲のスタートがそこだったとはいえ、なんとなくノリだけで結婚しちゃって、ノリだけでデキちゃって、その後でみんなが不幸になるっていう今の時代感みたいなものをこの曲の中で表してるとも言えるわけだけど、そのテーマに行った理由はなんだったの?

「僕も冷やかしたい気持ちはあるんですけど、こういうタイプってやっぱり2年以内に別れるなって思ってて。そこは自分でもモヤモヤするというか。冷やかしたい気持ちと心配な気持ちがあるんですよ」

■酷い奴だな、お前。

「僕は無責任なんで(笑)、その思ったことはそのまま歌詞にしようと思って。それがヤバTっぽいですし(笑)。でも、別にそこまで社会に対して物申してやるっていう気持ちでは書いてないんですよね。どっちかというと、それは“ヤバみ”のほうが強かったです。やっぱりヤバTって、“あつまれ!パーティーピーポー”が好きなお客さんが多いんですよ。というか、あの曲でヤバTを知ったっていう人が多くて。だからそういう人達に向けて、もう1曲踊れる曲があってもいいんかなって思ってて、これはまさに“あつまれ!パーティーピーポー”が好きな人に向けて作ろうと思って作った曲やって」

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text by鹿野 淳

『MUSICA10月号 Vol.126』