Posted on 2017.09.19 by MUSICA編集部

世界の舞台にも挑み闘い続けた10年を超えて、
coldrainの最高到達点たるフルアルバムが完成。
『FATELESS』のすべてを5人全員で語り尽くす

今までの俺だったら、メロディを任せるなんてできなかったんですよ。
だけど、「ひとりで作ってないんだな」っていう、当たり前だけど
大事な気持ちを持てた。自分を自分で作るんじゃなくて、
仲間によって「coldrainのMasato」がいるんだなって(Masato)

MUSICA 10月号 Vol.126P.106より掲載

 

■約2年の本格的な海外活動を経て、改めて日本のシーンで明確に勝つことを視野に入れた作品だと思いました。それは特に、メロディの起伏の豊かさから感じたことで。素晴らしい作品ができた手応えは、5人自身も感じられてると思うんですけど。

KatsumaDr)「前作『VENA』もそうでしたけど、10年やってきた今、最初にバンド始めた時みたいに純粋にやりたいことを再現できた気がしていて。音数はシンプルになりつつ、だからこそ11曲に自分達の熱が入ってて。今回はさらにそこを更新できたと思うんですよね」

RxYxOB)「シンプルって言ったけど、凝縮できたというか、本当に10年のcoldrainが詰まった作品だと思うんですよね。シンプルだからこそ、曲ごとのパワーを今までで一番感じられていて」

■そのシンプルさって、5人がこのアルバムでやろうとしたことが明確だったからこそギュッと束になれたっていうことでもあるんですか。

MasatoVo)「ああ、それはあると思う。たとえば今までなら、日本で根強いメロコアのシーンにこういうラウドな音をどう届けるか、J-POPしか聴かない人にどうやって頭を振らせるか、みたいなテーマでやってきて。そこである程度の手応えを持った上で今度は海外にも行ってみたいと思って、海外でもツアーをやって。その上で、今度は『日本の音楽をどうやったら海外に伝えられるのか』っていう音源作りが始まっていったのが前回までで。そしたら、日本の音楽、日本のメロディがそのまま海外で通用するっていう確信を得られたんですよ。そういう『VENA』までの流れがあった上で、じゃあもっと日本でも行ける場所があるんじゃないか?っていうことを5人で共有できていたと思うんです」

■そこで生まれた意志は、どういうふうに曲に反映されたと思います?

Masato「何が変わったかと言ったら、ずっと俺が書いていたメロディの部分を、大幅にY.K.Cに任せるようになったんですよ。だから僕は、自分のアレンジやエッセンスをメロディに加えて、歌う・歌詞を書く人に回るっていうことができたんですよね。だから、日本人がメロディを書いてるからこその、日本のルーツも注ぎ込まれた音源になってるんじゃないかなって思います。今言った『日本でも行ける場所がまだある』っていうのを曲にする上で、それが一番大きかった気がしていて」

■逆に言うと、歌うこと自体にもっと熱を宿していきたかった?

Masato「そうそう。そういう気持ちがあったからこそ、メロディをY.K.Cに任せたし。海外でも日本のメロディがそのまま通用すると実感したっていう話もあったけど、海外でツアーをやってみて『ああ、お客さんはここで歌うんだ?』ってビックリすることがあったんですよ。決してサビだけじゃなくて、みんながそれぞれ熱くなる部分で勝手に歌う。それを見て、もっと『歌おう!』って思えたんですよね。思い返してみると、俺は昔から歌うことよりも曲を作ることに喜びがあったタイプだったんですけど、今こそ『歌おう』っていう変化をした方がいいんじゃないかと思った。『俺が作らなきゃいけない』みたいなエゴを捨てられたというか」

SugiG)「そうだね。楽器隊も今までになく前に出てるんだけど、それに負けないヴォーカルの力強さが今回は特にあって――ラウドロックやメタル、いろんなジャンルも全部含めて、どこを切り取ってもイエイ!ってテンション上がるような熱がある。そうやって、わかりやすい形で感情を揺さぶれる歌と曲を俺達自身も作りたいと思ったんですよね」

Y.K.Cさんは、ご自身がメロディを作るようになって生まれた変化や、Masatoさんの歌への意識をどういうふうに見てたんですか。

Y.K.CG)「今までも、最後にMasatoが歌とメロディを入れることで曲が仕上がってたわけですけど、言ってみれば、僕が曲を生み出した後にMasatoが曲に入ってくることで、僕が元々見えてた視野から1回外れて、改めてフォーカス合わせる作業だった。だから、個人的には曲を最初から最後まで作って、作曲家として思い描くゴールまで行く結果を見てみたい想いはあったんです。やっぱり、元々泣きのメロディ感のあった日本的な楽曲も、Masatoが歌うとストイックなカッコよさになっていたんですよ。で、そのヒロイックな部分を信頼してるからこそ、今回は『俺に最後まで作らせてくれないか』っていう話をみんなにしたんです。そうすると純粋に、デモの段階から無駄なものを積まなくていいし、今度は素直に『他に欲しいものない?』ってみんなに訊けるようになっていって。そういう意味では、ファーストアルバムの頃――まだ役割分担が曖昧だった頃の、各々が純粋にやりたいことを出せる部分を拾い集めて、10年目の今、それを改めて上手く使えた気がしていて。だからこそ、日本のデカいところでやる自分達を明確に目指して曲を作っていけたと思っていて」

■今回、音のレンジが圧倒的に広いですよね。分離がめちゃくちゃいいし、それが歌やコーラスの抜けに直結していて。たとえば重たい曲だけじゃなくて“FOR THE THOUSAND TIME”みたいな2ビートも、より一層5音の爆走感を感じられる。このサウンドは、元から意図したものなんですか。

Y.K.C「それは意識しましたね。だから今回はエルヴィスっていうプロデューサーに変えて。彼はコーラスワークが凄く上手いし、80’sのハードロックが大好きな人なんで、泣きというか、日本的なアレンジを共有できるんですよ。難しい上ハモもどんどん入れてくれるので、ギターのフレーズを入れなくても音像が広がる。だからこそ、より演奏隊がひとつの塊としてストイックにアレンジすることができて」

Masatoさん自身は、そうしてメロディもアレンジも変わった上で、coldrain自身に何か新しいものを感じられたりはしましたか。

Masato「まず、世界に行ってわかったのは、日本で勝てなきゃ世界でも勝てないってことだったんですよ。別に完璧に洋楽になることをcoldrainは思い描いてきたわけじゃなかったし、逆に、究極の邦楽として枠を超えていきたかったバンドで。メイドインジャパンで世界と闘いたかったからこそcoldrainは始まったし、今回、それを形にできるバンドなんだって思えましたね。こういうヘヴィな音楽性で、しかも英語で歌ってるけど、そこに対して『日本に向かってるアルバムだ』って言ってくれたのは、一番の褒め言葉だなって思いますね。今一度、それをやりたかったんですよ」

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text by矢島大地

『MUSICA10月号 Vol.126』