Posted on 2017.09.19 by MUSICA編集部

純粋な音楽愛と魂がスパークするアルバム『熱唱サマー』。
大きなターニングポイントを迎えた赤い公園の、
決意とまだ見ぬ未来を津野米咲と語り合う

ずっと正直に、正直にやりたかったんです。
今回は本当にそれができた。余計なことを考えず正直に、
自分達の本質で真っ向勝負できたんです。
それは4人でやるのが最後だったからこそだとも思います

MUSICA 10月号 Vol.126P.112より掲載

 

(前半略)

■まず、12曲中8曲がセルフプロデュースです。アルバム曲でいうと、9曲中7曲がセルフで。こういう形になったのは何故なんですか。

「正直、もっとプロデュースをお願いしたい気持ちもあったんですけどね。でもスケジュールの兼ね合いもあって。頼みたいプロデューサーさん達が全然スケジュールが合わなかったんですよ(笑)」

■ははははははは、そこか。でも、このアルバムはセルフプロデュースだからこそ、これだけ素晴らしい作品になったんだと思いますよ。

「でも、これも逆説的な感じになるんですけど、今回のアルバムはとにかくどんどんポップにしていきたい、ポップに挑戦していきたいっていうところから始まっていて。そのポップっていうのを、曲全体のパッケージとして考えるんじゃなくて、骨のみで考えるっていうことを初めてやってみたんですよ。要は、歌詞とメロディのみでポップスを目指してみるっていう、自分のこだわりをそれのみにしたんです。要は、その骨を神経質なまでにしっかり作って、もう演奏は何をやってもいいし何もやらなくてもいいっていう状態をまず最初に作ってみたんですよね。その結果、より思い切ることができたっていう。だから音の使い方は全然違うんですけど、アレンジというか、曲の持っていき方はデビューしたての頃に近いなっていう感覚があって。『公園デビュー』とか『猛烈リトミック』の時の感覚にようやく久しぶりに会えたっていう感じかなって思います」

■よりポップにしていきたいというのは、何をどういうふうに考えたところから出てきたの?

「『猛烈リトミック』はとにかく全体的に派手、猛烈だっていうコンセプトで作って、次は素直に作ってみようと思って『純情ランドセル』ができて。で、その次は普通にみんなが覚えられて、より多くの人が歌えて、より多くの人が愛してくれるような、かつ自分も好きな歌謡曲であるっていうことをやる以外に思いつかなかったんですよね。それを目指すのは一番ラクじゃない選択ではあったんだけど、でも一番必要な選択だと思ったんです。それは『純情~』を出したすぐ後ぐらいからスタッフとも話してて。全部サビがみんなで歌える曲にしよう、と。遊びの方向性とか闇の方向性みたいなものは勝手に出てくるだろうからそこは敢えて考えずに、とにかくポップな歌を、誰もが歌える歌謡曲を作ろうって」

■そういう考えに至ったのは、それこそSMAPに提供した“Joy!!”だったり、自分が作った曲が実際にJ-POPの真ん中で日本のポップスとして鳴り響いたっていう経験だったり、そういう手応えを得ていく中で意識が鮮明化していったところもあったりするの?

「いや、それとはちょっと違ってて。というのも、特に“Joy!!”はSMAPが歌うからこそ、あそこまで行けた曲だと思ってるんですよ。何故ならあのメロディとかは赤い公園の今作よりも全然難しいし、誰でも歌える歌じゃない、SMAPだからこそ歌える曲だったと思うんですよね。だから正直に言うと、あの曲は自分にとってはあんまり歌謡曲ではなくて。で、その他の提供曲とかも、むしろ自分達の作品よりも無理をさせていただいている感じがあるので(笑)、そういう意味では自分のメロディのポップさみたいなものはあんまり信用してないんですけど、ただ、曲を提供する場合ってアレンジャーさんが入ることがほとんどだし、そのやり方も、コミュニケーションを取らずに、私が作った骨を渡して後はお任せしますっていう形でやってもらってるのがほとんどで。で、それをアレンジャーさんがアレンジしてくださって、会ったこともないミュージシャンの方々が演奏してくださるわけですけど、そうやってでき上がったものから自分の作ったデモを引いてみると、残ったものは何かわかるじゃないですか」

■自分が作った骨に何が加わってポップスになっているかがわかる、と。

「そうそう。その中で、自分の中で凝り固まっていた、リズミカルな隙間のあるリズムのサビでは何かの楽器が長い音を鳴らしていよう、みたいな、なんとなく培った気でいたポップスのルールみたいなものが大胆に崩れ去っていったりして。むしろ、そんなルールなんてないんだよっていうことを学んできた感じは凄いあるんですよね。その結果、たとえば今回の“セミロング”は、アレンジとしてはずっと地味だけど、でもちゃんと世界が成り立ってる。これが前作までだったら、どこかに思いっ切りエレキギターを入れてたと思うんですよ。でも、そこをグッとこらえてみるっていうことができて、その結果とてもいい曲になったなと思ってて」

■要するに、ポップスにするにはアレンジ的にこうでなければならない、こういうアレンジをしたらポップス然とするぞ!みたいな概念が取り払われた、だからこそ芯の部分=メロディと言葉に集中しようと思った、と。

「そうですね。最初に骨で勝負するぞ、もうそこから逃げないぞ!みたいな大げさな腹の括り方をしたのがよかったんだと思います」

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text by有泉智子

『MUSICA10月号 Vol.126』