Posted on 2017.10.16 by MUSICA編集部

10-FEET、5年ぶりのアルバム『Fin』は
キャリア最高にしてロック史に刻まれる大傑作!
真っ向から問うTAKUMAの本音と真実

認められることって、生きる理由になるぐらい嬉しいことだと思うんですよ。
でもイコール、それがないことは凄く悲しいことで。
その認められへんとか、そんなふうに誤解されるんやとか、
そういう思いを素晴らしい音楽にしたかった

MUSICA 11月号 Vol.127P.32より掲載

 

■まずはおめでとうございます。これは久しぶりにアルバムが出ることの「おめでとうございます」じゃなく、こういう作品が世の中に出たことがおめでとうございますという気持ちを込めて言わせていただきます。

「ありがとうございます。今の段階でやれることはできたんじゃないかなって思ってます。前まではいろんな自分にできることがある中で、その一つひとつが成熟した形でないと音源として出したくなかったんですよね。でも今回は成熟しててもしてなくても、あるものを全部その時その時のベストで、60ぐらいの成熟度でも60がベストならそれで出したいっていう。前まではそういうのは出したくなかったんですけど、今は持ってるものを一番ベストな形であればそれが100点で出せるぐらいの気持ちでやれたっていう。そういうふうに思えてできたのがよかったと思います。今回のテーマづけっていうのが、『音源制作はこれが最後の作品になるかもしれないという気持ちでどれだけ向き合えるか?』やと思ったので、そう思うといつかできるようになったらとか、次とか、そういう選択肢がきれいになくなって。今出せるものを全力で出すのが世に出すべき姿なんじゃないかなって思えて」

■もしかして今、質問する前にアルバムタイトルの理由を言ってくれちゃってます?

「いや(笑)、そこにも結びついてますけど、今回の制作を始めた時からずっと思ってたんで。タイトルにもそういう意味合いは入ってますね。これが最後やと思ってやらなっていうのはずっと思ってて」

■一応手続きとして確認しますが。別にこれで音源レコーディングをやめるわけでもないし、バンドが長期休むわけでもないですよね。

「はい、そんなことも別に決めてないです。そういう意味のアルバムタイトルではないです。ただ、そういう確固たる覚悟があって臨んだというのはあるんです。活動休止したり音源制作をやめるっていう予定はないですけど、結局これが最後や、今日が最後やっていうのはどこまでいっても今まではポーズやったなと思って。今まで『これが最後やと思って』って口にしてきたことを否定することはないんですけど、でもほんまにこれでやめるぐらいの、これでもう音源が出せないとか出さないとか、そういう気持ちにどれだけなれるかやと思ったんで。ライヴでも普段の生活でもよく『今日が最後やと思って』とか、『明日生きれへんかもしれんのやから』っていう言葉を耳にするし自分も口にしてきましたけど、どっかにそんなことないとか、安心とか安全とかがあるのは普通のことなんですけどね、それをどれだけポーズじゃなくするかというか。これ出してあかんかったらとか、これ出してダメになったらとか、これ以降もう曲が作れなくなったら、それでも飲み込めるようなものというか。あくまでもやめる予定ないですけど、ほんまにこれで最後でもいいという作品を作りました」

■今ふと思ったんですけど、ここ何年間かライヴでよく1曲目で「この曲で終わりです!」ってMCして、「あとはアンコールです」ってやられるじゃないですか。あれ、こっち側としてはずっとギャグだと思ってたんですけど、実は今言ったことと繋がってるし、本気だったの?

「あれはギャグです(笑)」

■はははは、失礼しました。タイトルの話に戻りたいんですけど、まず『Fin』というタイトル先行で世の中に告知され、僕がそれをリツイートした時、「まさかここで終わってしまうんじゃないかという不安でモヤモヤしてるんですけど、鹿野さんどう思います?」みたいなのが何通か来ました。たぶんご自分でもそういう風は感じたと思うんですけど、どう思いました?

「そう思う人はきっといるだろうなと思ってたんで。いつもの自分やったらみんなが勘ぐってしまうようなタイトルは選ばないと思うんですけど、今回自分が音源でやりたかったことのテーマと、ヒレっていう意味合いが凄く気に入ってたので、泳いでかき分けて前に進んだり方向変えたりとか、最初に『Fin』でよぎったのは足につけるラバーのフィンなんですけど」

■ボディボードやスキューバーダイビングでつけるあれ?

「そうです。あれ着けて泳ぐといつも出せへんスピード出せるし、より深いところに潜って行けるし。でも自分で漕がなくちゃいけない、そうしなきゃ進まないし方向転換もできないし潜ることもできない、そういう音源になったらいいなとも思ったし、そういうふうに自分を助けてくれたいろんな人への歌があったし。落ち込んでる時に音楽聴いたら元気出るけど、最終的にはその音楽とか歌ってる人がなんとかしてくれるわけじゃなくて、結局そこでもう1回やってみようとか、負けないぞとか決断したり取り組んでいくのは自分自身なので。そういう気持ちになれるかどうかがすべてを分けるので、音楽、歌って凄いなと思いながら、そういう音源を作りたい、それがヒレというフィンでもあり、これで最後になってもいいという作品を作るというもの凄い覚悟があったんで、少々勘ぐられてもそのタイトルにしたかったっていうのが凄くありました」

■最初にこのアルバムを聴いた時、何が素晴らしいと思ったかというと頭3曲だったんです。頭3曲でこのアルバムがある意味完結している。それは曲順のパワーももちろんあったと思うし、ここまでのシングル3枚とは浴びるテンションが違って攻撃的だったりハイパーだったりするところが、ちゃんとアルバムを届けにきたなっていう。音楽的な話としては今回総じてどういうアルバムを作ろうと思ったんですか? 

「自分がいっぱい詰まってるものでもあり、それイコールみんなが詰まってるものになればいいなと思ったのと、あとは音楽的にスマホゲームとかプレステとか、あとはキャンプとか飲みに行ったりとか、そういうのに負けないぐらい楽しいものになったらいいなとも思ってました。いつもそうなんですけど、楽しいものでもあり思いが伝わるような作品っていうのは着地地点を見ながら作ってもなかなかそうはならへんのかなと。だからアンバランスになってもいいからとにかく全力で作ろうと思って曲を作ってたんです。全力でやったら、10曲ぐらいまったく同じ曲になっても11個伝わるんちゃうかなっていうぐらいの、それぐらい今回制作してる時の自分っていうのは信用できてたかもしれないですね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.127』