Posted on 2017.10.19 by MUSICA編集部

UNISON SQUARE GARDEN、
3ヵ月連続でのメンバー個別連載取材を敢行!
ユニゾンの頭脳・田淵と交わすロック論考談義

もしメンバーにアニメ嫌いがいて、タイアップ毎に
そいつの精神が病んでいくのなら、そりゃやらないですよ(笑)。
だけどそういう空気はないし、目に映る範囲のみんなが楽しめていれば、
楽しくロックバンドを続けられる

『MUSICA 11月号 Vol.127』P.92より掲載

 

(冒頭略)

■今回、3ヵ月連続で3人それぞれにソロでご登場願うんです。それぞれのタイミングで作品と個々の話を聞くというテーマで掘り下げたいんですが、ブチくんに訊きたいのは、ご自身はツンデレな人なんですか?

「ツンデレ……? 何をもってそんなこと訊くんですか(笑)」

■意地もあるし捻くれている部分もあるのに、音楽にもバンドにもファンにも圧倒的なサービス精神を持っている。それが混在していることによって、結果的にわかりにくいと言えばわかりにくいんですけど、それがあるからこそユニゾンの音楽になっているわけじゃない。“fake town baby”の話でいけば、同じアニメのタイアップだった“シュガーソング~”を意識しなかったと言いつつ、しっかり<甘いか苦いかは君が決めろよ>っていう歌詞があるじゃないですか。ちゃんと“シュガーソングとビターステップ”を意識したキーワードを入れるわけですよね。

「ははははは」

■これはきっと、それを喜んでくれる人の顔が見えているからだと思うんです。そういうめんどくさい両面性みたいな部分が面白いと思うんだよね。

「まあ、これも見方によれば、『昔出した曲と同じ言葉を使った語彙のないヤツ』って思われる可能性もありますけど――」

■ちょっと待て、そんなこと誰も言わないだろ(笑)。

「いや、ユーザーっていろんなタイプがあるから(笑)。僕が『これが正しい』と思っていることでも、それが嫌でファンを辞めた人だって絶対いると思うので。でも、やっぱりどういう時も『僕がユーザーだったらどう思うだろう』っていうのを基準にしてる気はするんです。たとえばミステリー小説の流儀で言えば、前のシリーズの登場人物が続編の意外なところ出てきたら、俺だったら少なくともニヤリとするなあっていう。だから全部においてのモデルユーザーは僕自身なんですよ、結局はね。で、それがもし鹿野さんが言うところのデレならば、もしデレ100%に見られたらクソダサいとも思うわけです」

■そういう田淵くんがバンドを組んだのは、バンドのどういうところがいいなあと思ったからなんですか。

「当時は、バンドやれてれば毎日が楽しい!みたいな感じで何も考えてなかったと思いますけどね。当時から、売れたい思うより、とにかくバンドができていればよかった感じでしたね。で、THE HIGH-LOWSのドキュメンタリーDVDを観て、そこで、ブレないバンドってカッコいい!っていうロックバンド憧れが生まれたのはデカかったと思うし。そのHIGH-LOWSのスタンスが、今の自分に近かったと思うんですよ。曲を作れてライヴできればいいんじゃん?みたいな。で、そういうバンドを自分ならできそうだった感じがしたと言いますか……それにベースだったら、別に努力しなくてもベースを弾いていること自体で上手い人っぽく見えると思ったんです(笑)。いい曲を作るために努力するぞとも思わなかったし。『これなら努力しなくてもできる』っていう分野だったから始めたのかもしれないですね、バンドを。そこから斎藤くんにオリジナルバンドをやろうと誘われたわけですけど、オリジナル曲をやるとなると、やっぱりニョキニョキと湧いてくるものがあったわけですよ(笑)。それで作ってみたら、実際に曲も量産できちゃった。その頃があったことによって、今の自分ができ上がっているところはあって。だから、今こうして作曲の立場にいられているのは、『元々努力しなくてもできたから』っていうのが大きい気がします。メジャーデビューすることになった時も、プロになるつもりでやってたわけじゃないから、『これでいい曲だって言ってもらえるんだ!』って普通に思っただけで、ヒョイと入っていったし」

■プロにならなくてもよかったっていうのは、社会人やりながら趣味としてバンドを続けているのでもよかったっていう意味なの?

「いや、そういうわけでもないかなあ。認められてなかったら、それはそれで飽きてたとは思うんですよ。どうしても就活の波はきたし。ただ、僕は当時から自分の曲が超好きだったし、僕がいいと思うものをメンバーもいいと言ってくれたし、変な大人の人が『君達のバンドはいいよ』って言ってくれたから、これでいいんだ!と(笑)。それでフラーッと流れていっただけで。まあ、順番はどっちが先かわからないけど、とにかくバンドが好きでバンドがやりたかったから、努力しなくてもできる分野がバンドの中にあったんです。僕だったら作曲や作詞ですよね。自分にそういう才能があると思ったから続けてきたので」

■自分自身に才能を見出したのは、曲作りの部分なのか、ベーシストとしての自分になのか、もしくはバンド全体の核としてなのか。

「うーん……ベースの才能でないのは確かですね。今に関して言えば、身の丈に合ったバンドの続け方に対する嗅覚が自分の才能だと思っていて。で、そういう才能に気づけているから、お茶の間にウケない曲を書いていても『俺、天才』って言えるわけですよ(笑)。だって、僕がもし『お茶の間にウケたい人』だったら、こんな曲書いてちゃ才能がない人になるんですよね。お茶の間にウケる曲を書きたいと思っているのに、実際に書く曲はお茶の間にウケないわけだから。だけど、僕が僕に才能があると思えるのは、お茶の間にウケない曲を書いていても、この分野だったら勝てるっていう感覚に気づけたってことだと思うんです。それがバンドを長く続けるための重要なファクターだし、そのための選択ができるセンスも立派な才能なんだと思ってます」

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text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.127』