Posted on 2017.10.19 by MUSICA編集部

止まることなく快進撃を続けるSHISHAMO、
早くもシングル『ほら、笑ってる』をリリース。
初の劇中主題歌を手掛けた宮崎の胸中とは

他のバンドよりも経験してないことのほうが圧倒的に多いので、
そういうコンプレックスは3人とも持っていて。
でも、今はもうそんなこと関係ないなって思えてきました

『MUSICA 11月号 Vol.127』P.112より掲載

 

(冒頭略)

■今回のシングル『ほら、笑ってる』は――通常パターンで言うと、10ヵ月後くらいのスタジアムライヴを発表して、そこへのカウントダウンシングルみたいな形で、まずは第1弾としてこれを切りましたっていうパターンが多いんですけど、この曲はあんまりその匂いを感じないんですよね。

「そうですね。これは『ミックス。』っていう映画の主題歌の話をいただいて、そこから作った曲で。映画の映像をいただいたり、台本をいただいたりして書いていきました」

■完璧に映画のための書き下ろしなんだ。SHISHAMOの今までの曲もご自分のノベルを書き下ろすように作っていたけど、今回のように映画の書き下ろすっていうのはどういう違いがあったんですか?

「お話をいただいた時は、今までの作り方含めて自分の得意分野なんじゃないかなと思ったんですけど……大変でした(苦笑)。自分だけのヴィジョンじゃないというか――SHISHAMOの曲ではあるんですけど、SHISHAMOだけの曲じゃなくて、映画のためにある曲だし、その作品を司る曲になるので、私のしたいようにするだけじゃ完成しない曲だなって思って。だから大変だったし、別の曲もだいぶ作りました」

■それは音楽として大変だったの? それとも、歌の内容を作るのが大変だったの?

「うーん………全部ですね。映画を観てくれた方から『この曲しかない』って思ってもらえるものにしたいなと思ってたので。でも、やっぱり大変だったのは気持ちの部分ですかね」

■でも、宮崎はある意味職業作家的なところがあるし、自分としてもそういうことをやりたかったわけじゃない? で、実際に映画に合う音楽を書き下ろしてみて、案外難しいなと思ったのはどういう感覚なの?

「作ること自体は難しいことではなかったんですけど、気持ちの面でのプレッシャーが今までの曲とは違うわと思って、そこで悩んでましたね。気合いの入れ方が違うというか……曲を作ってもまだ探っちゃう、みたいな。実際に映画で流れる映像を観ても、なんか変な感じがしました。この映画を観に来た人達が全員これを聴くのかと思うと、なんか恥ずかしくて(笑)。なんかね、映画館で聴くのって音量が違うんですよ(笑)。それに一番ビックリしちゃって」

■そこか(笑)。

「こんなに爆音で自分達の曲を聴いてもらえるんだって思って。そんなことって、まずないなって思いました。あと、SHISHAMOを知らない人も絶対に聴くことになると思うので、それを想像した時に嬉しいなって思いましたね」

■ではその映画との機能性は置いて、SHISHAMOとしてのシングルの流れとか、この曲に込めたものっていうものはどういうものがあります?

「SHISHAMOとしては、『こういうものをこの時期に出そう』っていうことはそこまで考えてなかったですし、さっきも話しましたけど、川崎でのライヴへの流れとかも一切ないんです。ただ、いい曲を作るっていうことを大事にしてるバンドなので、どんな曲を出しても大丈夫だなって思ってたというか。映画の書き下ろしの曲がこの時期に出たとしても、そこはブレてないんで」

■僕はこの“ほら、笑ってる”は、とてもソロ色が強い曲だと思ったんです。でも、この曲で急にそうなったっていうわけでもなく、“熱帯夜”以降、宮崎の歌の世界がじんわりと表に出てくる曲が出てきてはいたんですけど、これはまさにその発展形だと思いました。

「なるほど」

■“明日も”という曲でポップをバンドでやったし、この前のシングル“BYE BYE”は、久しぶりにダイレクトなロックをバンドでやったっていう感覚が非常に出てました。そして今回は、ソロ的な要素をバンドでやったと。いい音楽を作るだけというには、とても必然的な流れがあるなあと思ったんですけど。

「言われてみるとその通りですけど、でもそこは本当に決めてないですね。これからどういう音楽をやっていくか、みたいなのは全然なくて。それこそ前回“BYE BYE”を出した時も、今までのSHISHAMOとは違うってみんな思ってたとは思うんですけど、私は常にそう思われるような曲が作れたらいいなと思ってるだけなので」

■歌の内容に関しても、“明日も”ほど設定も内容も露骨ではないけど、実は聴き手を励ましている楽曲にも聴こえる。そこが全面に出ているわけではなく、さりげなく人を励ましている。そういうところもここ最近の楽曲の中で経験したものが出たんじゃないかと思うんだけど。

「あー。そこは本当に映画の主人公の気持ちになって最初から最後まで書いたっていう感じですね。主役が上手くいかない描写が多い映画なので、綺麗事じゃなくて、上手くいかないところをたくさん描いたほうが、聴いてる人にも伝わりやすいんじゃないかなと思ったので。だから『大丈夫だよ! 頑張ろう!』みたいな励ましよりも、上手くいかない日々を送っている人に寄り添う曲のほうがいいのかなって」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.127』