Posted on 2017.11.16 by MUSICA編集部

UNISON SQUARE GARDEN連載企画第2弾、
新潟LOTS公演密着&鈴木貴雄ソロインタヴュー。
独自の美学でバンドを支える鈴木の脳内に迫る

画一的にされることが凄くストレスだったんですよね。
そんな自分がもし今日のライヴに来ていたとしたら、
その人生を肯定してあげたい。俺もあんなふうに
自由に生きていいんだって思ってもらえるドラマーでありたい

『MUSICA 12月号 Vol.128』P.44より掲載

 

■3ヵ月連続でユニゾンのメンバー一人ひとりに話を聞いていくんですけど、前月はシングルのダブルリリースの件を主眼に田淵くんに話を聞きました。今日は新潟でツアー密着をさせていただいたもので、ライヴの話からいろいろ聞いていきたいなって思うんですけど、今日はいかがでした?

「今日に限らずですけど、メンバーと共にライヴをやれたり、スタッフも優秀なのはもちろん、熱を持って工夫して臨んでくれるし、その中で自分がドラムを叩けて、お客さんがそれを愛してくれることまで含めて、すべてが幸せ過ぎるっていう日々がずっと続いてますね。いつが特別だったっていうのはなくて、いつもライヴが幸せだなって思います。メンバーと過ごしててもわかるんですけど、各々が本当に幸せにできているなって思います。これが10年前だったら、そんなことはなかったです」

■貴雄くんの中で、ライヴ、ツアー、チームがそういう存在だなって思えたきっかけはいつ頃からあったんですか?

「鹿野さんは若いバンドとのつき合いも多いでしょうから、大変そうだなとか、メンバー同士で上手くいってないなとか、見ていてわかると思うんですけど、僕らもそういう時もあったし、特に若い頃はそうで。ライヴやってる時は最高なんですけど、ライヴやってない時にあまり最高じゃない時期っていうのが結構長かったんです。それぞれ問題意識を持ちながら、このままじゃいけないって思ってるんですけど、だからこそぶつかる時もある。若さと言ってしまえばそういうことなんですけど、そこからちょっとずつ改善されていった感じだと思うんですよね、今は」

■このバンドってそれぞれがフロントマンだと思うんですよね。田淵くんはソングライターとしての役割を司ってると思うし、宏介くんはシンガーとしての役割を司ってると思う。その中で、このバンドはリズムから伝わる気分が大事なバンドで、それをひとり後方から司ってるのが貴雄くんで。3人それぞれが主役だと思うんだよね。だからこその難しさを今話してくれたのかなっていう気がするんだけど、その難しさも心地よさも、このバンドを組んだ時から全部感じていたんですか?

「確かに最初からそこが悩んでたポイントですね。俺がドラムヒーローでなきゃいけないし、前のふたりがカッコいいっていう印象だけだと魅力的じゃないなって思っていたんです。『斎藤の歌いいよね。田淵の曲いいよね。でもドラムも超ヤバいよね』って言われるようなバンドじゃないといけない。ドラムはただ支えてるだけだなっていう3ピースのバンドは個人的にはあまり魅力的に思えないから。だから、ふたりが言うことに何でもかんでも納得してはいけないなっていう危機感は、若い時は特に思ってました。凄いふたりだし、頭もいいし能力もあるし、僕はふたりに比べたら能力もないほうだけど、かと言ってそこで負けちゃいけないなって思って尖って、それによってぶつかるっていうことも結構あったと思います。今だったらもう少しいい意味で譲れる部分もあるんですけど。ここは譲りたくない!って言う時は、バンドをよくするために、ある種尖ってはいけない部分を守るためにぶつかっていたところもあるんですよね。『ここを譲ったらカッコよくならないな。このバンドはダメになるな』っていう危機感があったからこそ、ぶつかっていたんだと思います」

■誇りを失わずに尖るっていうことが必ずしもいいことじゃなくて、お互いに溶け合うということもロックバンドとして楽しいことなんだなって思えてきたのは、どういう心境の変化があったからだと思いますか?

「尖ってばかりいると、本当に尖っていなければいけない部分が尖れないっていうか……尖るためには、丸くなるところは丸くならなきゃいけない。自分が尖りたいところを尖らせてもらうために、逆に相手が尖りたい部分に対してこっちが丸くなってやろうというか。普通に仕事してる人とかでも、普段感じることだと思うんですよ。こういう仕事をしたいけど、ここは相手の言うことを聞いてやろう、みたいなことって。一言で言えば、聖徳太子の『和を以て貴しとなす』なんですけど(笑)。ロックをするために尖るためには、和が必要なんだなってことは学んでいったし。笑顔でライヴできてる時は単純に最高だから、そのためには丸くなる部分が必要だなって、ぶつかりながら学んでいったんでしょうね」

■たとえば“flat song”を叩いてる時の幸せな表情とか、“オトノバ中間試験”の最後に3人でドラム台に上がり、椅子から離れスタンディングで叩いてる時の恍惚感とか、表情豊かなドラムが最近の貴雄くんなんじゃないかなって思うだけど。

「3人でライザーの上に乗って叩いてる時なんて、ほんと感謝してますね。メンバーに対しても、自分に対しても、お客さんに対しても。メンバーと目合わせて演奏してる時っていうのは、凄くありがてえなって思うんです」

■今日リハが終わってからステージの上に登らせてもらって、遠くから見ている時は、音数の割にオーソドックスなドラムセットなのかなって思ってたんですけど、カウベルの位置が実は不思議なところにあったり、タムのセットの広がり方とか、かなり妙な感じで。なんか不思議だなって思ってローディの方に話を聞いたら、「変則的過ぎて凄く組みにくいんですよ(苦笑)」って言ってました。どうしてああいう組み方になってるの?

「いろんなバンドのドラムのセッティングを見るんですけど、その人その人の美学が全部詰まってるんですよね。ひとつとして同じセットがない。そこに『コイツっぽいな』っていう人間味を感じるんですけど。僕の場合は、一つひとつの太鼓の場所が全部理に適っていて。たとえば人と一番違う点で言うと、普通は『タカ・トン・トコ・トン』ってやる時のタムが目の前にあるんですよ。それを僕は横に並べて置いている。何故かと言うと、お客さんに自分のリズムを視覚的に見てもらうためなんですね。僕の目の前に太鼓を置いてしまうと、『ド・ド・タン・ド・ド・タン』の動きが全部隠れちゃうんですよ。だから、自分の表情や動き、発したい気持ちがよりストレートに伝わるように、横に置きたいと思うようになって。本当に演奏しづらいんで、それ相応の練習が必要なんですけど(笑)。目立ちたくてやってるとかではなく、自分の中ではそのセットが理に適ってる。教科書には、背筋を伸ばして重心を腰に置いてブレないように叩きなさい、って書いてあるんですけど、僕はまったくそうは思わなくて。背筋を曲げて、首も落として、音楽に合わせてブレるように演奏してるんで」

■割と前のめりですよね。

「完全に前のめりです(笑)。ふたりが前のめりに演奏してる時に、僕だけ淡々とやってたらつまらないじゃないですか。もっと転がっていきたいから」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.128』