Posted on 2017.11.16 by MUSICA編集部

BIGMAMA、初の武道館公演堂々完遂!
メジャー移籍決定、金井の本音を訊いた
後日取材と併せて綴る完全密着特集!

数知れない花束と愛に迎えられ、
数知れない関係者挨拶に明け暮れた、11年目の初武道館。
数知れないほどの演出を込めたステージから、
込めに込めた30曲を浴びせかけ、
しかも聞いたこともない19分間ものMCと、
「引っ越し」と題して伝えたメジャー進出。
何から何まで規格外だった、大きな玉ねぎの下の一日に完全密着。
そして後日寿司屋で語った金井政人の本音

『MUSICA 12月号 Vol.128』P.54より掲載

 

(冒頭略)

 11時10分に金井以外のメンバーが。その10分後に金井が入ってきて、まずは真っ先にステージへ向かう。この日のために用意されたステージの見事さと豪華さと、様々なデザインによる仕掛けの多さに、まずは自らが改めて驚き、そして手綱を引き締めている。ステージの両袖の部分などを右に左に何度も歩いたり、時にスタッフと記念撮影をしたり、記念日の始まりを、みんなで堪能している。

 楽屋に戻ると、たくさんの仲間からの祝いの花やスタッフからのケーキが陳列されていたが、どれを取っても愛に溢れているのを、しきりにカッキー(G)が感謝している。いや、あなた達がそういう人だからこそ、この節目の日がこうなってるんだよと話すと、若干照れている。実際、この日は決して天気のいい日とは言えなかったが、朝早くから自分の祝日のような心持ちと表情を浮かべながら多くのファンが集まり、グッズ購入の列に並んでいた。

 楽屋ではメンバーとスタッフでリハーサルの段取りの確認をしていた。リハーサルだけで2時間ほどの時間がかかるかもしれないことが告げられる。特別な演出、様々なコンセプトによる背景映像、収録班も多くのカメラを構え、その段取りとチェックが続くのだ。ちなみに一昨日、これもまた伝説のライヴ級に素晴らしいライヴを、同じUK.PROJECTの銀杏BOYZが果たした。てっきり流れで武道館を抑えたのかと、場合によっては前日にゲネプロを武道館内で行ったんじゃないかとさえ思ったが、実際には、銀杏とMAMAの間の日にはしっかり「武道」が入っていて、この建て込みに驚くほど時間がかかりそうなステージは、前日の24時を過ぎた瞬間からスタッフの献身的なハードワークにとって設営された。メンバーはそういったことをわかった上で、この日の武道館の中心にいた。

 12時からサウンドチェック。

 ステージ上で真緒ちゃん(Vi)とカッキーが金井を真ん中にして細部にまでデザインが施されている繊細なステージの上でどう交錯するか?などを神妙に話し合っている。この日のライヴにあたり、4日間どっぷり本番を意識したリハーサルをスタジオで行い、演奏のみならずアクションもイメージしたようだが、やはり実際に武道館の、しかもデコラティヴなステージに降り立ってみると、シミュレーションとは違う部分も多々あるようだ。

 サウンドチェック前に楽屋にいるメンバーにしっかり寝たか?と訊くと、リアド(Dr)と安井くん(B)が真っ先に「そりゃもう」という安定感ある答えをくれた。でも金井だけは絶対に寝れてないよね?と話すと、みんな静かに笑いながら頷く。そこにちょうど金井が戻ってきたので、寝てないでしょ?と訊ねると、1.5秒ほど何故バレた?という顔をしながら、「はい(笑)」と答える。そんな彼の目は若干赤くなっていた。

 サウンドチェックが済んだ後、リハーサルに入る前に武道館名物である正面入口の看板前で雨の中、メンバーによるサプライズ撮影大会が行われた。物販待ちの長蛇の列が驚きとそれ以上の喜びや歓迎をもって手を振りながら、触れ合いの時間を楽しんでいる。

 そして12時58分、リハーサルが始まった。

 このライヴの中での音楽的な最大の演出は「ストリングス部隊」の導入であった。8人ものストリングスチームによる音の威力が凄い。ライヴという衝動的な概念と、鑑賞会という厳かな概念が、メンバーの真下に位置したオーケストラピットから響く秩序に満ちた音の絡み合いの中で、渾然一体となってゆく。

 教会や美術館や宮殿の門のようなステージデザインと、真緒ちゃんと8人によるバイオリンやチェロのストリングスサウンドをリハーサルで浴びながら、ふと考えてみた。彼らは確かにデビュー時からまずはメロコアシーンの中ではっきりとしたポジションを獲得し、しかも途中からは音楽性を拡大解釈してポップスとしての機能も増し、フェスなどでは武道館以上のキャパシティでライヴを披露するバンドになったが、その一方で未だ彼らは「インディーズ」である、少なくともこの日までは。たとえば一昨日の銀杏BOYZや[Alexandros](当時は[Champagne])、あるいはKen Yokoyamaなどの例もあるが、よく考えるとインディーズで武道館ライヴというのは希少な出来事だ。

 リハーサルの後半で“Sweet Dreams”を観ていた時に気づいて少々驚いたことがあった。僕は今のBIGMAMAのスケール感を決定づけたのはこの名曲だと確信しているし、彼らがメッセージバンドとして説得力を持ち得たきっかけになった曲だと思っているが、ことライヴに関しては、バンドにとっても曲自体にとっても何故か居心地が悪そうだと思っていた。しかし今日、初めてこの曲がライヴという聖地で居場所を見つけたようにリハーサルにもかかわらず思えたのだ。これはある意味、武道館というスケールでBIGMAMAがライヴをやる理由そのものなのではないかとさえ思った。本番はどうなるのだろう?

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.128』