Posted on 2018.01.19 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、「PATHFINDER」完全密着第3弾。
2017年最後のライヴとなったアスティとくしま公演に潜入
1年の総決算たる1日を肉声と共に完全ドキュメント!

「みんな全員大吉、来年は全員大吉です!」
20周年イヤーのスピリットと責任を引き連れながら、同時に振り解き続ける
ツアー「PATHFAINDER」。恒例のBUMP完全密着シリーズ第3弾は、
ツアー終盤戦突入にして年内最後のライヴとなったアスティとくしま編!

『MUSICA 2月号 Vol.130』より引用

 

 

 徳島なのに寒い――という言い方が果たして正しいのか単なる物知らずなのかはわからないが、空港に降り立って、そのまま徳島ラーメン(豚骨ベースに、甘く煮た豚肉と生卵が乗っかっているご当地ラーメン)の名店「いのたに」に駆け込んだ時まで、とにかく寒い。四国に来れば暖かな風が吹いてるという錯覚を持ってしまっていたが、実際にこの日は東京より2度気温が低かった。

 川沿いにあるアリーナ「アスティとくしま」に12時30分に着いたと同時にメンバーも入って来たが、とりあえず「寒いよね」という言葉が挨拶代わりになる。今日も彼らの楽屋はとにかく暖かく、そしてとにかく加湿されていて、特にこのような日には格段に居心地がいい。

 いつものように、荷物を置いただけで早速テーブルを囲み、舞台監督とこの日のセットリストを決める。「年内最後のライヴだから、とにかく悔いのないセットにしような」とか、「でもいつも悔いないセットでやれてね?」とか、「そうだね、でもやっぱり今日はあれをやりたいよな」とか、4人共様々なことを言い合いながら、この日なりの最高のセットリストが組み込まれてゆく。そのミーティングの後半にチャマがこう言った。

「でもさ、そうは言っても年内最後のライヴだし、盛り上がって踊って終わるより、みんな藤原基央の歌をちゃんと最後に聴いて帰りたいと思うんだよね。俺らもそうじゃね? 今日はフジくんの歌がじっくり聴ける、その余韻が残る曲で終わろうよ」

 この意見に升もヒロも同調した。当のフジはこういう時に必ずするはにかんだ顔をしながらも否定をしない。というわけでセットリストが完成し、これまたいつものように升以外の3人によるご飯会が始まり、升は場内散歩に出ていった。

 その後、チャマがいつもより早くベースを担いで、ミニアンプにシールドを刺した。そして小気味いい音を出しながら、8ビートのシンプルなストロークを続けている。そのチャマをサウンドチェックのために舞台監督が呼びに来たのが14時15分。その後14時33分にも再び舞台監督が現われ、今度は赤いストラトを手にして練習をしようとソファーに座った途端のヒロを、容赦なくステージへと連れ去っていった。

 サウンドチェックが終わったチャマが再び楽屋に戻って来て、またアンプにベースを繋いで練習を始める。今度は“スノースマイル”である。

 ん? このツアーのウインターソングは“Merry Christmas”だったんじゃないの?と思い、楽屋を出てスタッフにどうなってんの?と訊くと、「鹿野さん、大丈夫ですか? クリスマスはもう終わったじゃないですか。メンバー自ら自然と決めてたみたいですよ、クリスマス終わったら“スノースマイル”だって」と笑いながら話してくれる。機転が利かない自分を恥じながら、再び楽屋に入るとチャマがコーラス部分を何度も何度もハモりながら練習を繰り返している。

「今日が初めてなんだよ、“スノースマイル”」

 今度はフジがアコギを持ってイントロ部分を爪弾いている。楽屋はなおも暖かいんだけど、それでもこの曲が流れるだけで、もう完全に素敵な冬景色です。本番が本当に楽しみだ。

 全員がステージに揃ったのが15時ジャスト。すぐさま今年最後のステージリハーサルに移った。

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA2月号 Vol.130』