Posted on 2018.03.16 by MUSICA編集部

デビュー31年目に世に放つ超ド級の名曲“Easy Go”!
構想2年、この名曲はいかにして生まれたのか。
宮本は今、何を想うのか。
ツアー&紅白振り返りも含めすべて語り尽くす表紙巻頭特集

僕はもっともっと凄いものだっていうふうに誤魔化してたというか、
凄いっていうふうに思いたがってたんだと思う。
でも、それを今、30周年のツアーで私は心の何かを白日の下に曝け出した。
心の何かを、自分が一番大事にしている部分を曝け出すことができたんです

『MUSICA 4月号 Vol.132』より引用

 

(前略)

■先ほどから“ファイティングマン”という言葉が何度も出てきておりますが、実際にこの曲の中からは新・ファイティングマン感がもの凄く感じられますし、1番のAメロでは<行け男よ>という言葉が出てくることも含め、エレファントカシマシの本っ当の真ん中が歌われてますし、今宮本さんが話してくれた通り、非常に4人感がハンパない、つまりは獰猛なロックバンドサウンドになっている。エレカシは、EPICソニー時代を終えてポニーキャニオン時代に入って以降、どれだけ自分達の歌が「いい歌」にして「大衆的な歌」となり得るのかという部分で試行錯誤をしてきたと思うんですが、ここまで世の中や状況を顧みずにエレファントカシマシはエレファントカシマシでいいんだ!と突き抜けた気持ちでやっている曲は、とても久しぶりな感じがするんですよね。

「はい」

■たとえば“ガストロンジャー”という曲も、ポップであることや大衆的であることよりも、宮本さんがやりたいことに突っ切っていった時期の楽曲であり、ロックバンドとしての獰猛性が強く出てる曲なんですけど、でも実はあの曲の成り立ちは、バンドというよりも宮本さんのソロ的な要素が強かったわけで。つまり“ファイティングマン”を更新する音楽として4人の生々しいバンド感を迸らせる楽曲は、EPICソニー時代以降、初めてと言ってもいいんじゃないかと思うんです。

「あー…………………これは我々のというよりも、私の技術の進歩としか言いようがないというか………バンドというものの見せ方というかですね………いや、見せ方っつうとアレだな………諦め、ですかね。これまたテンションが下がるって言われちゃうけど」

■(笑)。

「要は、無理に………………………………こないだ僕ね、億万長者のなんちゃらみたいな本を読んでたんですよ。たとえばですよ、ビル・ゲイツには8兆円の資産がある。対してポール・マッカートニーは1,000億だか2,000億だかの資産がある。その話は気になってはいたんです。夏目漱石も、なんで俺はこんなに金持ってねえんだ!っていうニュアンスのことを言ってたんですけど、俺もやっぱり………まぁロックミュージシャンってそんなに金持ちかって言ったらいわゆる実業家と比べたら大したことないし、大金持ちは金が好きな人がなるものなんだなとは思うんだけどさ、ただ、ビル・ゲイツの発明と俺の発明とどっちが上だ?って考えて夜中に眠れなくなったりももちろんしてるんだけど……それは置いといて。私は歌が一番の得意で、人前で歌うことも得意で、だから自分には一番向いている仕事だと思ってやってます。で、“男は行く”を作った時も“ガストロンジャー”を作った時も、もっともっと凄いものだっていうふうに誤魔化してたというか、凄いっていうふうに思いたがってたんだと思う。でも、それを今、30周年のツアーで私は心の何かを白日の下に曝け出したんです。心の何かを、自分が一番大事にしている部分を曝け出した。それはみんなの前で“悲しみの果て”を歌いながら涙を流すっていうことではなく、4人でやってる中での自分の一番大事な何かを曝け出すことができた。しかも紅白歌合戦でも、みんなが観てるテレビの中でそれを曝け出すことができたんです。そうすると何かこう、自分っていうのは………お前は自分を天才だと思ってたのかと言われたらその通りなんですけど、もの凄い天才的な技術を……それこそ(葛飾)北斎じゃないけど、ようやく私は51になって自分の音楽を正統に評価すると言いますか、自分が求められていること、エレファントカシマシが求められていることをそれなりに理解したんだと思います。それって鹿野さんが言った『バンドを認めることができたんですね』っていうのに近いと思うんだけどさ、そういうことだと思うんです。で、そうなったからこそ、この曲も4人でやってるエレファントカシマシという見せ方を上手くできたんだと思う。だから何がなんでもこの4人でのバンド演奏にこだわったし」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.132』