Posted on 2018.03.18 by MUSICA編集部

誰かのために歌いたい――真摯な想いの下に生まれた
THE ORAL CIGARETTESの新曲“ReI”。
敢えて無料配信にこだわり、聴いてもらうことだけに賭けた
その奥の奥にある想いをメンバー全員で語る

俺はそもそも、音楽で世の中が変わるなんて
綺麗ごとやと思ってきたんですけど、
“ReI”が『それは違う』っていうふうに番狂わせしてくれたんですよ。
自分も忘れかけていた音楽の力を感じさせてくれた

『MUSICA 4月号 Vol.132』より引用

 

(前略)

■この曲、だいぶ前から完成していたと認識してるんですが、これだけヒットしそうな曲なのに、無料ダウンロードという異常とも言えるリリース形態になっていて。ホームページに載っているメッセージを拝見する限りでは、この“ReI”という曲があっての「ReI project」であると。“ReI”の無料配信だけじゃなく、また新しいことが始まっていくという意識を感じてます。この曲ができたところからいろんなことがスタートした、その辺のことから全部教えてください。

山中「いつもインタヴューでも言ってますけど、僕は自分の心と会話するように曲を書いたり歌詞を書いたりしてきたんですね。それしかしたことがなかった中で、初めてと言っていいくらい、純粋な気持ちで誰かの救いになるような曲を!と思って書けたのが“ReI”だったんです。それが一番デカいんです。だからね、今までやったらこの曲が埋もれてる可能性もあったんですよ。だけどデモでみんなに送った時点で『これで伝わらなかったら、そのレベルの曲なんやな』と思えたんです。で、デモを送ったその日にいきなりマネージャーから電話があって、『この曲は凄い力を持ってる』って言ってもらって。『ちゃんと届いた』っていう確信になったんです。……それに対して、ミュージシャンとして責任を持つっていう意味でのお金の取り方をしてもよかったかもしれへんけど、それ以上に、とにかくこの曲が広がることのほうが大事やったんですよね。それが無料ダウンロードにした理由のひとつ。あと、たとえば熊本の震災が起こった時とかに『大丈夫ですか?』っていう言葉も大切やと思うんですけど、自分は『それよりもやるべきことがあるんじゃないか』って思ってた人間やし、今ならすぐ曲を書いてTwitterに流したっていい時代やと思うんです。それもあって、ただただミュージシャンがやるべきことをやっただけやから、対価も見返りも求めないですよっていう曲ですね」

■自分のためにしか曲を書いていなかった拓也が人のために曲を書くようになったのは、自分のことだけを書く自分が嫌だったのか、了見を広げたかったのか、圧倒的な契機があったのか、どうしてだったんですか?

山中「自分の心を180度変えてくれた人がそこにいて、変えてくれた人がいるなら今度は自分達が返そうっていうギヴアンドテイクの気持ちだけかもしれないです。この曲を作ろうと思ったのは、南相馬に行ったことが大きなキッカケだったんですけど……それまでは、震災、原発、戦争みたいに、自分が体験したことのないものに対してわかったかのように歌うのは無責任過ぎるとずっと思ってきて。で、そういう考えを持っている上で南相馬にライヴで行ったんです――」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.132』