ぶっ飛んだセンス、鉄壁のグルーヴ、不敵なムード――
圧倒的な説得力で急速にその勢力を拡大するKing Gnuが
この夏投下したふたつの新曲“Flash!!!”、“Prayer X”。
次代への風穴を開けた革新犯、その現在地を探る!
撮影=中野敬久
世界的にみたらミドルテンポの曲でもハードコアな要素っていうかエッジの
効いたものってのは山ほどあって。
アップテンポだろうがミドルテンポだろうが、常に凄いパンチのある
エッジな表現ではありたいなと思ってる
(前略)
■曲の話からは離れるんですけど、そもそも常田くんってなんでバンドをやろうと思ったんですか? つまりバンドって世界的に見たら衰退してるし、常田くんはトラックメイクもできるわけで、現実的にKing Gnuの音源もかなり作り込んでるわけで、ひとりでやるほうが自由度が高いわけじゃないですか。でも、今この時代にバンドをやりたいと思うのは、そこにどんな勝算だったりロマンがあるからなんですか?
常田「バンド衰退っていうか、バンドが凄い乗り遅れてる原因として、こんだけ早い音楽の流れというか進化の中で、バンドっていうのはどうしても動きが重いし、音楽も平均値的になっちゃいがち。各々の裁量でプレイしていくからよっぽどメンバー全員で到達したい音楽像が共有できてない限り、ヌルくなるっていうか。変なバンドはね。で、正直、ヒップホップとかもそうだけど、生バンドよりもビートの効いたイカつい打ち込みのトラックが聴きたい事もあるし。……っていうのは確かにありつつ」
新井「うん、わかる」
常田「でもKing Gnuにおいては、最初に俺がガーンと出したヴィジョンへの共感と、各々へのリスペクトでの自然な形でのプレイっていうのが、King Gnuの前提になってるから。だからさっき挙げたようなバンドのストレスはない。そういう意味でその辺のバンドとはちょっと違うのと、あとはやっぱり、ライヴにおける身体性っていうのは絶対になくならないことだと思うんですよね。だからバンドが衰退してる原因は、俺は単純に音楽の進化の遅れだと思う。単純に一個人が新しい音楽を作り出してくスピード、『あれ新しいじゃん!』っていうスピードにバンドは今ついていけてないからヒップな印象がないっていうのがあると思うんだけど。でもバンドのカッコよさって絶対普遍的なものだと思うんで、そこにバンド勢は自信を持っていいんじゃないかと。かと言って、音楽的な発展が今のスピードのままでいいかって言われたらそれは別ですけどね。でもなくなんないと思いますよ、バンドのカッコよさって。バンドっていう見え方だからこそのエネルギーは絶対あると思います」
■話をちょっと戻すと、4人の平均値になってヌルくならないために、このバンドは具体的にどうしてるんですか?
常田「………(考える)……3人が、俺が最終的に描くサウンドヴィジョンを信頼してくれてるっていうのは大きくある。だからトライしてくれるっていうのはあると思うし、だからこそ『これ、バンドなの?』っていうエッジなトラック感があるバンドになってる。ビートメイカーのstaRoさんが“McDonald Romance”聴いた時に『バンドでこれやられたら勝ち目ないよ』って言ってくれたらしいんだけど、そういうことがちゃんと起こり得るっていうか。あれを普通に生のドラムでセッション感覚でや作りあげたらああはならないし。あと、このメンバーを決めるにあたって、各々の魅力っていうものをリスペクトした上での完成図なので。だからじゃないですかね」
新井「ある種無責任というか、頓着しないから。自分のプレイに納得してたらあとはなんでもいいよっていうところがあるんですよ。少なくとも俺は結構ある。それがいい作用になってるんじゃないですかね。なので、急に構成が変わっても全然いいし。各々自分ができることを最大限やる。あとは見えてる人に投げるっていう」
常田「みんな音楽の完成形・至上主義だから。俺もそうだし。完成形がカッコよければ俺がギター弾かなくてもいいし、和輝も別にベース弾かなくてもいいと思ってると思うし。そこへの執着はないかもしれないですね」
新井「そこは俺の場合は、元々バンドマンじゃなかったからっていうのもあると思いますね。ライヴミュージシャンではあったけども、ジャズやスタジオ・ミュージシャンもやってて、渡されてすぐ曲やって終わりみたいなのをやってたので。そこでは、その時に起こってることに対して自分の音をどう鳴らすかってだけなんですよ。そういう下地があって今やってるんで。で、King Gnuのライヴの強さっていうのは、俺と遊がそういうところでずっとやってたっていうのも大きいと思うし。そういうフィジカルの強さみたいなものは俺らにあって、一方で音楽のコンセプトとかサウンドの全体像は大希が先頭切ってやってくれてるっていう。そこでの両立が、結果、King Gnuの強さになってるんだと思いますね」
(続きは本誌をチェック!)
text by有泉智子