Posted on 2018.10.22 by MUSICA編集部

25周年を超えたMr.Childrenが放った
強靭なる挑戦作にして衝動作『重力と呼吸』!
確信をもって新たにしたロックバンドとしての本能と覚悟を
桜井和寿、静かに熱く語り尽くす決定版インタヴュー!

 

撮影=佐藤航嗣(UM)

怒りでも悲しみでもない、これは喜びの叫び

『MUSICA11月号 Vol.139』より引用

 

(前略)

■実際にこのアルバムを作り始めたのはいつぐらいからなんですか?

「3年ぐらい前ですかね。2015年の年末とかには、デモがちらほらできてました」

■今日のインタヴューは『ヒカリノアトリエ』の取材以来になるんですけど、あの取材は2017年の12月の終わりにやっていて。その時にはすでに“ヒカリノアトリエ”とか“こころ”とか“お伽話”といった、当時新曲あるいは未発表曲としてホールツアーでやっていたもの、あるいはホールツアーでの自分達のモード自体に対して桜井くんは「もう飽きている」という言葉を使ってたんですけど(笑)。で、そこから飛び出して動物的なMr.Childrenというものに変わりたいと思っていて、まさにあの取材の日に「生き方を変えました」というメールと共に新曲のデモをみんなに送ったという、そういう日だったんですけど。

「ああっ! それはね、“himawari”ですね。“himawari”のアレンジをもっとロック寄りに変えていったんですよ。それこそ“こころ”とか“ヒカリノアトリエ”と同じ、いやもっと前から“SINGLES”とか“addiction”もあったんじゃないかな。“ヒカリノアトリエ”とか“忙しい僕ら”とか“こころ”は、いろんな曲がある中からホールツアーに適してるなと思って選んでホールツアーでやってたんで」

■ということは、そのくらいの時期からこのアグレッシヴで直球で勝負していくMr.Childrenというイメージは桜井くんの中にあった、と。

「いや、そこまでは明確ではなくて。でも……たとえばこのアルバムに“ヒカリノアトリエ”と“こころ”と“忙しい僕ら”があったら、たぶんいつも通りの、いろんなことができる、ヴァリエーション豊富な良質なポップバンドの新しいアルバムとして受け取られたと思うんですけど、敢えてそれをしたくなかったのは、たぶん『世界』というものがなんとなく自分の中にあったからなのかも。2020年の東京オリンピックの時に日本を代表するミュージシャンとしてもし僕らの名前が挙がった時に、じゃあその最新アルバムを聴いてみようってなって誰かが聴いて、『ああ、いろんなことをやるポップバンドなのね』って思われるよりも、一番名刺代わりとなる音にしたかったっていうのがあったんだと思います。明確に思ってたわけではないけど、でも僕の意識の中では結構な強さで思ってたと思うんですよね」

■なるほど。

「世界が東京に目が向く時に、『じゃあ日本のアーティストって誰がいる?』ってカタログで並んで、端からONE OK ROCK、B’z、サザンオールスターズって聴いていった時に、そこにMr.Childrenがいたとして『この人達ってこういうバンドね』って明確にわかるようなものにしたかったんでしょうね」

■それはとても興味深い。今の話を聞いても思うのは、『REFLECTION』の時期から小林武史と別れ、セルフプロデュースに変わっていったわけですが、あのアルバムは『{Naked}』という作品が一番よく表してると思うんですけど、なるべくプロデュースしないということがあの時期のプロデュースだったのかなと思ったんですね。それでいくと今回は10曲に絞ったということが何よりもそれを表してる気がするけど、ある意味、『重力と呼吸』というこのアルバムはMr.Childrenが初めてMr.Childrenをがっつりプロデュースした作品として位置づけられるんじゃないかと僕は思っているんです。プロデューサー・桜井和寿として、その辺はどうなんですか?

「『REFLECTION』というアルバムは、初めて小林さんとやらなくなったアルバムなので。たぶん僕の自意識としては、小林さんがいなくなったからMr.Childrenの音楽って引き出しがなくなったよねって思われることが僕にとって一番の負けだったから、すべての引き出しを全方位で出すっていうのが僕なりのプロデュースだったんですよ。で、あれから時間も経った中で、今はもう小林さんがいたらとかいなくなったからとかは誰も気にしてないし、今回はより明確にMr.Childrenというものを打ち出したいっていうのはあったと思います」

(続きは本誌をチェック!)

text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.139』