Posted on 2016.11.18 by MUSICA編集部

ASIAN KUNG-FU GENERATION、
名盤『ソルファ』を新録リリース!
今改めて新しい魅力を放つ本作の意義と普遍性

新しい王道のロックを打ち立ててやるんだ!
みたいな気持ちが、いろんな挑戦や、音楽的な広がりにも繋がっていった。
状況に対して抗う気持ちっていうのが、あのアルバムそのものを生んだというか

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.76より掲載

 

■新録版の『ソルファ』、本当に素晴らしいです。

「ありがとうございます。自分でもよくできたなって思いますね(笑)」

■そもそも、ベストアルバムの時に『君繋ファイブエム』の全曲再現スタジオライヴをDVDに収録したりもしましたけど、今回『ソルファ』をこのタイミングで再録したいと思った一番の意図はどこにあったんですか?

「『ソルファ』だけは、レコーディングに関して、もうちょっとよくできたはずだっていう思いがずっとあったんですよね。その思いは自分達が進んで行けば進んで行くほど膨らんでいって。他のメンバーはどう思ってたかわかんないですけど、僕の中ではどんどん大きくなってたんですよ。で、一番売れたアルバムなのに、友達とか海外のバンドの人にはあんまり自分から渡さないものになってて(笑)。特にヴォーカルに関しては、当時もう少し時間が欲しかったなっていう思いは何曲かあったんです」

■『ソルファ』のレコーディングの時期は急速にバンドの状況が爆発していった時期だったのもあって、本当に忙しくて、とにかく凄い大変な状況の中で録ってたってお話はよくされてましたもんね。

「そうですね。みんなその時のことってたぶん覚えてないんじゃないですかね、ほんと忙しかったんで記憶にないくらい(笑)。で、『Wonder Future』を作ってる途中で、俺はこのアルバムを作り終わったらバンドをやめようと思ったんですけど、もし今ここまで来てバンドを本当にやめるっていう時に『ソルファ』があのままじゃ悔いが残るなって思ったんですよね。あと、それとは別にもうひとつ、常々『バンドってそんなに新曲いるか?』みたいな気持ちがあって。それは、アジカンに関わらずなんですけど」

■それはどういう意味で?

「たとえばインディのロックバンド、特に若いバンドは、常に自分達にとってベストみたいなセットリストでライヴをやるじゃないですか。で、その中で生き残った曲がファーストアルバムに残ったりするわけで」

■ライヴをやりながら楽曲を育てていく、精査していくという。ファーストアルバムに名盤が多い理由のひとつは、そこにもありますよね。

「そうそう。そういうことを考えると、自分達が今やってる音楽のやり方っていうのは果たして本当にクリエイティヴかどうかわかんないよなと思って。アジカンに関しては割と時間をもらえてるから、のんびりやらせてもらってコンセプト立てたりしてできますけど、仮に自分達が1年に1枚出さなきゃいけないような状況になった時に、そういうルーティンみたいな楽曲の作り方ってどうなんだろうなっていう気持ちがあって。実際、『ソルファ』の話とは関係ない時に、メンバーに『もうそんなに曲作らなくていいんじゃない?』って言ったことがあるんですよ。『ツアーだけやってればいいんじゃない? アルバムは5年後だっていいじゃん』みたいな」

■The Rolling Stonesとかはそういう形で延々と世界を周ってますしね。

「そうなんですよ。ストーンズも新譜の曲やらないじゃん、だからそうなるよっていう話で。マネタイズみたいな考えで言っても、もはやこの時代において新譜を作り続けることが重要か、それで勝っていけるかと言えば、それもわからないよねっていうこともあるし」

■それを言った時、メンバーはなんておっしゃいました?

「『新曲作らないバンドはやったってしょうがないじゃん!』みたいなことを山ちゃんが言ったのを聞いて、俺の言ったこと全然通じてねえなってびっくりしちゃって(笑)。いや、そうじゃないんだけど。新曲はもちろん作るけど、そんなにたくさん作らなくてもいいんじゃないかっていう話なんだけどって(笑)。……たとえばクラムボンやハナレグミの永積(タカシ)さんが一時期、新曲を作らないでカヴァーばかりやっていた時期があると思うんですけど、その気持ちは俺も凄くよくわかるんだよね。実際、よっぽど昔のバンドを掘って聴いたほうが感覚的に新しいものに出会えたりもするし。つまり今作れば新しいかって言ったら、音楽って必ずしもそういうものじゃないんじゃないかって。そういう思いと、自分のもの足りなさを晴らしたいっていう思いと、あとは“リライト”や“ループ&ループ”って今でもOAしてもらう機会がよくあるんですけど、その時に一番新しいものを流して欲しいなっていう思い――ずっと、ライヴ盤のテイクのほうが自分達の演奏がいいと思ってたので、せっかく流れるんだったら最新の僕らの音でその曲達を聴いて欲しいっていう思いが複合的に盛り上がって、今回の再録に向かっていった感じでしたね」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.18 by MUSICA編集部

OGRE YOU ASSHOLE、待望の新作『ハンドルを放す前に』。
孤高のロックバンドが描いた新境地に迫る

何か起こる寸前って、本来は感情が一番昂ってる
状態だと思うんですよ。ほんとはそこがピークなんです。
で、そのピークをちゃんと対象化して表現するっていうか。
………俺、感情とかはどうでもいいんですよね

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.84より掲載

 

■『homely』、『100年後』、『ペーパークラフト』の3部作以前と以降でOGREの音楽的なアイデンティティはガラリと変わったわけですけど、それを経て今回はファーストアルバム以来となるセルフプロデュースということで。

出戸学(G&Vo)「まぁでも、ファーストは『CD作る?』『あ、作りたいです』みたいな感じでスタジオ連れてかれて、ほんとに何が何だかわからない状態でやってたから。しかも連れて行かれた先が小室哲哉のスタジオだったんで」

■え、マジで? そうだったんだ?

出戸「そうなんですよ(笑)。だから、僕らとしてはロックをやってるつもりなのに、録ってみたら飼い慣らされた感じのポップスの音色になっちゃって。その頃はUSインディみたいな音が好きだったんで、なんでこうなるんだろう?と思って。エンジニアさんもポップスの人だったから今考えれば当然なんですけど、当時はなんでそんな音になってるのかワケがわからなくて(笑)。そういう状態だったから、言ってみたら今回が初めてのセルフプロデュース・アルバムなんです」

■凄い面白い話をありがとう(笑)。では初プロデュースにあたり、自分達ではどういうイメージでこのアルバムに向かってきたんですか。

出戸「その3部作はそれぞれ最初に割とコンセプトをはっきり立てて、そこに向かって行く作り方をやってたんですけど、今回は逆にコンセプトは立てず、1曲1曲好きに作ろうっていうことになって。下手したら完全にバラバラで、アルバム1枚としてまとまらなくてもいいやぐらいの気持ちで、とりあえず自分がいいと思う質感のものを並べていこうっていうところから始まったんですよね。で、俺と馬渕がそれぞれ作って」

■ふたりも各々勝手に作っていく感じ?

馬渕啓(G)「勝手に。ほんとバラバラですね」

出戸「特に言葉もなく、好きに作ったよね。で、できた順に音を渡し合っていって」

■なんでそういう作り方をしたかったの?

出戸「コンセプトを立ててやるってやり方をもう一回するよりも、なんか違った感じでやりたかったっていうのが一番ですかね」

■逆に言うと、3部作をやりたかったのはどうしてだったの? そもそもこのバンドって、その「なんか違った感じ」を常に開拓していきたい気持ちがあるバンドだと思うんだけど。

出戸「3部作の最初の『homely』がそれまでの作品からあまりにも変わり過ぎて、そこでまたすぐ次で変わったら意味わかんないなと思って」

馬渕「1枚だけだと、ただ単に『やってみました』みたいな感じになっちゃうから、説得力ないじゃないですか。そういうバンドって多いと思うんですけど、そうはなりたくないっていうのはあって」

出戸「うん。あと、自分達でも捉え切れてない部分もあったしね。そこはもう2枚ぐらいやらないと周りもわかんないだろうし、自分達の中にももっと取り入れたい要素があったから、それをするためには3枚作る必要があったって感じですね」

■ということは、今回そのやり方を変えたのは、3部作を作ってる間にライヴの形態も変わったこと含め、自分達の新しい音楽の肉体みたいなものをちゃんとビルドアップできたっていう実感があったからこそでもあるんだ?

出戸「そうですね。3部作で学んだことは結構あったんで、それを踏まえてまた新たにっていう。でも、今回はほんとに全部自分達で決めて作った、今までよりも自分に近いものだから。だから今まで以上に評判が気になります(笑)。みんなに『どうだった?』とか訊きたくなる」

■いや、ほんとに素晴らしいよ。

馬渕「ああよかった」

■OGREの作品は毎回素晴らしいけど、『homely』から『ペーパークラフト』まででやってきたものが、ちゃんと血肉化されて、オリジナルな形で昇華されたなってことが凄く感じられるアルバムだと思う。オリジナリティっていう意味では、一番強く出てるアルバムなんじゃないかと思います。

出戸「それは嬉しいですね」

馬渕「正直、やる前は不安な部分もありましたからね。石原さんがいなくなって、やっぱOGREはプロデューサーの力だったんだって言われるのも嫌だったから。かなり緊張はしてたよね」

■コンセプトに縛られないで曲を作っていこうってなった時に、それぞれどんなことを思いながら曲を作っていったの?

出戸「俺は完全に自分の好きな質感とか、そういうのだけですね。言葉とかじゃなくて、手触りとか。でも、最初はちょっと身動きができない感じがあった。コンセプトがあるってことは拠りどころがあるってことだから、迷った時にそれを基本に考えると発想もしやすかったりするんですけど、今回はそれがないから逆に難しくて。やっぱり発想って、何か制限があったほうがどんどん出てくるんですよね」

■確かにそうだよね。完全な更地に立ってフリーハンドでやるってなると、逆に難しいよね。

出戸「そうそう。でも曲数が増えてくると、なんとなく後は何が必要かっていうのが見えてきて、制限が出てくるから。だから後半はどんどん出てきたんですけど、エンジンかかるの遅かったですね。馬渕のほうが先にいろんな曲持ってきて」

馬渕「俺は割といつもそんな感じで作ってるからね。いいアイディアが浮かんだら、それを試してみるっていう感じだから。僕はメロディは作ってなくて、最後に出戸がメロディを乗せるんですけど、出戸が歌うであろうということを想定してどんな感じがいいかなって考えながらやってて――」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.17 by MUSICA編集部

Mrs. GREEN APPLE、自身の音楽をより自由に開花させた
シングル『In the Morning』発表!
ティーンポップを打ち鳴らしていく決意を大森元貴が語る

今も昔も多感であるのは間違いないと思うんだけど、
今はその多感さを自分で理解してあげられるようになって。
当時は理解してあげられなかったんですよね。
だからもがく中で曲を作っていくしかなかったし。
でも、そんな劣等感の中で「音楽をやるしかなかった自分」から、
「音楽をやりたい自分」にやっと変わっていった

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.66より掲載

 

(前半略)

■そんな中でシングル『In the Morning』が出ます。相変わらず非常にポップなんだけど、“サママ・フェスティバル!”とはまた違ったタイプのポップソングですよね。これはどんなふうに生まれてきた曲なんですか?

「自分的には“サママ~”を作ったことで、模索しながら答えを見出していくモードが一旦終わったんですよ。“サママ~”は自分達の中で凄い振り切った曲だから。“StaRt”や“Speaking”もそうだけど、メジャーデビューしてからシンセや同期の音を入れるようになったり、EDMの要素とか海外の音楽からのインスピレーションを自分達の曲に入れてみたりってことをやってきて。いろいろ模索しながら、挑戦しながらやってきたんだけど、それが“サママ~”まででひとつ区切りがついたというか。で、今回は二十歳になって一発目ってことで、自分のスタンスとしては変わらないけど、でもやっぱり二十歳って世間的にも節目になる歳だし、聴かれる印象も変わるんだろうなぁって思ってたので、そこは“In the Morning”を作る時から意識してました。逆に言えば、このままの印象でずっとミセスをやっていくことはできないだろうなとも思ってたんで、二十歳をきっかけにもう一度自分らのやりたいことを見返してみたというか。……僕、結成当時から、二十歳になった時に自分らの音楽性は1回振り出しに戻るんだろうなぁって漠然と思ってたんですよ」

■それは、何がそう予感させていたんですか?

「なんだろう、わかんないけどそう思ってた(笑)。……でも、バンドってストーリーだと思うんで、それをよりワクワクするものにしたいっていうのは昔から思ってて。たとえば漫画でもストーリーがしっかりしてるとワクワクするじゃないですか。それと同じことがバンドという生命体で起こったら絶対に楽しいと思うし。それはバンドならではじゃないですか」

■バンドストーリーというもの自体に、人は魅せられるからね。

「そうそう、本当にそう思うので。その中で二十歳になった時に一度また新しい始まりを迎えるというのは、なんとなくイメージにあったんです。ちょっと話がズレちゃうかもしれないけど、メジャーデビューして僕が髪にパーマをかけたり、“サママ~”の時に茶髪にしたりしたのも、二十歳になった時にストレートの黒髪で自分がドシンといるイメージがデビューする当時からあったからなんですよね」

■マジで!? 最初からそこまで考ええてたの?

「マジで(笑)。それこそディレクターに『え、茶髪にすんの?』って言われたんですけど、その時に『二十歳になった時に黒髪にして1回振り出しに戻りたいんです』ってちゃんと話もしていて」

■………なんか凄いね。

「そもそもドラムは女の子がいいとか、キーボードはしっかりした人がいいとかも、自分のヴィジョンにあったものだし。その延長線上に二十歳という節目があって。……バンドとしてストーリーを描いていきたいという意識があるからこそ、Mrs. GREEN APPLEはずっと変わり続けるし、曲もずっと同じ方向性ではダメだと思ってるところはあります。なんか、バンドとしての進化ってとても人間味があるなぁと思うんですよ」

■そういう意味では、10代の期間に辿ってきたミセスが描いてきたものは、自分ではどんな物語だったと思う?

「さっき言った模索と挑戦の物語というか。自分自身と向き合う、自分自身がやりたいことと向き合って、それを模索しながら1個ずつ提示していった期間だったと思います。まぁ20代になったからといって何かがガラリと変わるわけじゃないんですけど、でも今振り返ってみると、自分の10代の活動は今後のMrs. GREEN APPLEとしての活動の土台を作っている期間だったんじゃないかと思いますね」

■16歳でバンドを始めてからの3~4年というか、もっと遡れば元貴くんは12歳から音楽を作り始めてるわけですけど。でも、それこそこの1年くらいで、元貴くんはそのワクワクや楽しさを、それこそ理屈としてではなく、実感として音楽にできるようになってきたと思うんです。安易な言葉で言っちゃうと、リアル青春期/思春期だったバンド結成時よりも、よっぽど今のほうが青春してるなって思うんだよね。

「もうそれは絶対に間違いなくありますね。昔のほうが難しいこと歌っていたりもしますし。でもそこは、純粋に人間としての必然的な成長だったなと思いますね。僕は、今も昔も多感であるのは間違いないと思うんだけど、ただ、今はその多感さを自分で理解してあげられるようになって。当時は理解してあげられなかったんですよね。だからもがく中で曲を作っていくしかなかったし……それこそ最初のインタヴューで言ったと思うんですけど、昔の自分は凄く劣等感があったわけで。そういう劣等感の中で『音楽をやるしかなかった自分』から、『音楽をやりたい自分』にやっと変わっていったところが、自分の中では一番大きくて」

■確かに、それはめちゃくちゃ大きいよね。

「めちゃくちゃ大きいです。だから今がめちゃくちゃ楽しいんですよ」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.17 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、シングル『LAST HERO』を発表!
バンドの現在地と本質を田邊と徹底討論

ネガティヴな気持ちさえなけりゃいいこと言えるし、
いいライヴができるのにって思った時もあって――
でも、そういう気持ちもここで改革を起こさないと、
BLUE ENCOUNTとして次の1年を走れないなって思って

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.60より掲載

 

■とても忙しそうですね。スケジュールを取るのに苦労したみたいで。

「いやいやいやいや! まぁ忙しくはさせてもらってます(笑)」

■それは自ら仕事で隙間を埋めるという、隙間恐怖症みたいな強迫観念があるからなんですか?

「いきなりこじ開けてきますね(笑)。まぁそうなったってことなんですかね。デビューした時とかインディーズの最後らへんとかは時間がいっぱいあって、それこそ“もっと光を”を作ってた時期は3ヵ月で100曲ぐらいできてたので。その時は楽しいなっていう反面、空き時間に何しよう?って感じだったんですけど、今は逆ですね。『明日休みです』とか言われたら、『そんなんいいんで、スケジュール入れてください』って感じになってるかもしれないです。常にフルスピードで行ってるっていうことには慣れたし、楽しいんですけど……今年はさすがに厳しかったです(笑)」

■ははははは。本当に勝負の年だったもんね。

「勝負の年だったし、いろんなところに僕らの音楽が広まっていった年だったので。でも、さすがにツアーやりつつ制作もやるって――今年は4枚シングル出したし、それプラスアルバムの制作もあったし、さらに33ヵ所のツアーもやったりしたんですよ。それで喉もガッツリ疲れちゃいまして、夏フェス終わりぐらいに結節ができちゃいまして。それで9月に入ってから1週間お休みをいただいたんですよ。その1週間はひと言も喋らずに、呼吸しかせずに過ごしたら、奇跡的に結節がなくなって、万全の態勢で武道館に臨めたんです。だから、単純に今走り回ってるっていうのは、1週間の休みのスケジュールのしわ寄せがグッときてるっていうのもあるんですけど(笑)」

■バンドの調子がいいことやスタッフの尽力も含めて、このバンドの場合はシングルにタイアップがつくわけで。シングルとしての機能をことさら意識するメンタリティも持たれてるだろうし、それどころじゃなく自分達は勝負の年だから、それを自分達の武器にもしなくちゃいけないよね。それを4発やって、そして年明けにはアルバムが出て、しかもそのタイトルが『THE END』って――これ、完全に解散するバンドの流れだよね。

「あはははははははははははははははははははは!」

■何笑ってんだよ、俺は真剣に訊いてるんですけど。

「いや、絶対鹿野さんそう言うだろうなって思ってました(笑)。でもそうですよね、生き急いでるってことですよね。1月、3月、6月って上半期だけでシングルを3枚出してるんで、『あ、もう俺死ぬな』って思いましたよ。『THE END』って別に解散って意味ではないんですけど、単純に『死ぬな』って意味は実は入ってます(笑)」

■終わりという名の「死」ね。

「もう人生のエンドが来るんじゃないかと。だって1月からツアーファイナルでZepp2デイズやらせていただいて、『ミュージックステーション』に出させていただいて、埼玉スタジアム(第94回全国高校サッカー選手権の決勝戦前のライヴパフォーマンス)で歌わせていただいて――1年でやることを1月に全部やらせてもらうぐらいの感覚だったんで。で、1月だけで燃え尽きんじゃねぇかってみんなで話してたら、ありがたい話、2月や3月もいろんなスケジュールとかタイアップの話をいただいて、そこからずっと走り続けてたんですよね。………実は、さっき言った33ヵ所ツアーファイナルのワンマンシリーズが(新木場STUDIO)COAST、名古屋のElectricLadyLand、大阪のBIG CAT、(地元の)熊本のワンマンだったんですけど、俺、名古屋のライヴ終わった後に倒れたんですよ。それぐらい自分の中では気張ってました。その後病院行ったら、『すべての疲労が出る時があるんだ』って言われて、それがその時だったらしくて。僕自身もその時に『あ、死ぬな』っていうのは予期してたんですよ。本当に1年いい流れで動いたっていう実感があったからこそ――それこそ喉に結節ができた夏の終わりとかも含め、僕の中での『THE END』感が凄くて(笑)。貴重な体験をさせていただいてる反面、体が追いつかなかった部分も正直ありましたし。僕、策がない人間で、常にその場勝負ですからね。なので、その都度力を出していけば出していくほど、次にどんなことを出せばいいのか不安になった時期もあったりして」

■今日は訊きたいことがひとつあるんですよ。今言ってくれた通り、田邊は貯金をしないタイプじゃないですか。

「はい、まさにそうですね(笑)」

■でも、その場しのぎではないし、素晴らしい活動をしてるし、素晴らしい音楽を作られると思うし、それがちゃんとストーリーになっていると思うんですよ。ただ、言いたいことはすぐに歌詞にする、言いたいことはすぐMCで言う、やりたいアレンジは1曲に全部詰め込む、やりたいライヴはそこに凝縮させるっていうことを全部やっていった上で、今年に関しては隙間がない活動をしているじゃない? この「貯金をしよう」っていう発想がないのは何故なんですか?

「……それは単純に4人共々不器用だからってことだと思うんですけど。僕らの場合、その場で思った時に言わないと、衝動感がどんどん薄れてきちゃって、言いたいことに対して理屈が入ってきちゃうんですよね。それこそ去年ツアーの時とかって、ツアー前にMCの内容とかをいっぱい考えて、それを言おうとしたんですけど、去年のZepp Nagoyaの初日で『あれ? 俺、嘘っぽい?』って思っちゃったんですよ。だから、そこで『ごめん、ちょっと待って』って言って、その場で言いたいことを変えたんです。昔からそうなんですけど、僕らは考えると何も生まれないバンドで。それは別に音楽とかじゃなく、パッションの部分とかエモの部分に関してのことなんですけど。曲はもちろんみんなで考えてますし、その中でいいものを目の前に出すっていうスタンスは変わらないんですけど、だからこそ伝えたい衝動に関しては浪費し尽くさないとって思ってて。で、ありがたいことに、浪費し続けたその先でいいものが生まれてるんで、これが枯れた時にどうするのかっていう不安はあるんですけど――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.16 by MUSICA編集部

RADWIMPS史上最も強い光と肯定を放つ『人間開花』。
メンバー全員&野田単独取材の2本立てで、
その軌跡とすべてを紐解く
――Interview with 野田洋次郎

もう一回、自分達でちゃんと納得したかったんですよね、
バンドをやっている意味を。
俺らはなんでロックバンドをなんでやってたの?っていうことを。
それを納得した上で、また当たり前の顔してやりたかった

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.28より掲載

 

■『人間開花』に至る過程や全体に対する話は3人でのインタヴューでも話してもらったんですけど、ここからはさらに洋次郎くんひとりで、今回のアルバムに対する話を聞いていきたいなと思います。このアルバムに至るにあたって、智史くんのこと、そして『君の名は。』はとても大きなことだったという話は3人インタヴューで聞いたんだけど、そもそも、楽曲自体は前作が終わってから作り始めていたんですよね?

「うん、そうですね」

■そもそも洋次郎くんの中で、『×と◯と罪と』を作った後、次のアルバムに対するイメージや音楽的なコンセプトみたいなものは、何か浮かんできていたんですか?

「うーん………いや、そういうのはいつも通りないまま始まったかな。やっていく中で『君の名は。』で作ってた曲が何曲か入るだろうっていうのはイメージしてたし、バンドをできる喜びっていうのも最後にまとめてグワッときた感じだったけど、そもそもいろんなことが起きる前、一番最初に作ってた段階では “棒人間”とか“週刊少年ジャンプ”みたいな、言葉をメインに伝える曲がイメージにあって。そういうピースは早い段階で何個か既にあったんだよね。で、『君の名は。』をやって、あの曲達がだいぶ明るく開けたほうにこのアルバムを持っていってくれるだろうっていうのがわかったから、じゃあ最初にあったピース達とその空気感をひとつの作品にするためにはどっちに行こうみたいなことで、残りの曲達がどんどん固まっていったっていう感じはあるな」

■“週刊少年ジャンプ”と“棒人間”は、曲調は違えど、どちらもほぼ歌一本で勝負するような曲だもんね。音像自体、歌をいかに聴かせるのかってことに意識が向かっていて。

「うん、結果的にアレンジもそうなりましたね。だから最初の段階から実は結構割り切ってたというか、ギミックを廃した方向にはなってたのかもしれないな。この2曲は前回のアルバムが終わってすぐ、3年前とか2年前ぐらいには原形ができてた曲だったんで。その時からアレンジをどうしていこうかみたいなのは結構いろいろ考えてはいたんだけど、いざ録ったのは今年の頭だったから、もう智史がもう抜けた後で。だから余計に、たとえば“~ジャンプ”は元々ドラムを入れるアレンジだったんだけど、もうそれもなくしてしまおう、歌を伝えるためだけの曲にしよう、みたいなベクトルに進んで。“棒人間”もどんどんアレンジがシンプルになっていったしね。だからそういうイメージはあったけど、いろんなことが起きていく中で実際に作っていくうちに、どんどんそっちに振り切っていった感じだったんじゃないかなと思う」

■歌声自体もめちゃくちゃソウルフルだよね。

「そうですね(笑)。ミックスから何から、とにかく歌を伝えようっていうことになっていったし………作っていくうちにどんどん、じんわりやんわり、余計なものを削ぎ落とす方向にはなっていった」

■『×と○と罪と』までで、自分達の音楽的な達成感と、音楽として本当にオリジナルなものを作れているっていう確固たる自信ができたからこそ、次のステップとしてそういうシンプルな方向に目が向いたのかもしれないなと思ったりもするんですけど。そこはどうですか。

「そうだと思います。だから極めて真っ当なプロセスだなと思いますね。曲単位でも今までそういう行程を繰り返してたし、複雑なものへ振った時の反動でシンプルなほうに行ったり。明暗もそうだし。でもやっぱり前回までの手応え含め、あの先をどう突き詰めるかはだいぶ見えづらいものだったから。だから凄く冷静な判断の中でこっちに行くべきだなっていうのはあったし。そういう感覚は自分で自信があるというか。その直感の正しさを信じてるんで」

■ただ、世の中的に洋次郎くんは言葉のイメージも強い人だと思うんだけど、でも実は、歌と言葉をメインで伝えたいっていうことが音楽を作る最初の動機としてくるっていうのはもの凄く珍しいことだよね。

「ほんとに珍しい。だって、今回のミックスの最終チェックの時にみんなで笑いながら話してたけど、『今回は歌がデカいね』っていう話をまずして。昔は本当に――『アルトコロニーの定理』の辺りがピークかな――ミックスのたんびに『歌もっと下げて、もっと下げて』って言ってて。だから歌を上げたいディレクターとの闘いが凄かったんだけど(笑)。歌はほんとにひとつの要素でしかないっていう意識だったからね」

■音のひとつというか、他の楽器と同じ感覚というか。

「そう。言葉なんて嫌でも入ってくるんだから、歌を上げる必要はないってずっと言ってた。で、ディレクターに『いや、もうちょっと歌を聴きたい』って言われる、みたいな。本当にその闘いだったんだけど、今はちゃんと歌を歌として大事にできるようになったというか。それこそ歌のためにオケをシンプルにしてみたり、歌のために音がどういるのがいいのか?っていうのは、今回のアルバムでは凄いテーマだったんだろうな。その辺は前回のアルバムからちょっとずつ変わってきてはいたと思うんだけど――だからこそ“週刊少年ジャンプ”や“棒人間”ができたんだろうけど、でもやっぱり、“前前前世”みたいな歌ができたことで、その部分がより前に前に引っ張られていったんだろうなとは思いますね」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.16 by MUSICA編集部

KEYTALK、珠玉の新曲『Love me』完成!
時代の中心へと躍り出ようとする
彼らの「今」を全員取材で紐解く

向かうべき道はひとつじゃないってことが改めてよくわかりました。
そこに向かう術として、いろんな道筋があるなって
改めて気づいた1年だったかなって思います(小野)

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.54より掲載

 

■(唐突に)今回のシングル、ほんと素晴らしいです。びっくりしました。

全員「………(約5秒4人で見詰め合い、調子合わせて)あーざーっす!!!」

■何なんだ、この微妙な間は(笑)。いや、本当に素晴らしいです。表題曲の“Love me”もとてもいいんだけど、3曲通してパッケージとしての完成度が高くて。なんでこんなに素晴らしいシングルができたんですか?

寺中友将(Vo&G)「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいですね」

小野武正(G)「奇跡的な1枚ですね」

■その奇跡の裏には何があったんですか?

小野「やっぱり血と涙と努力の結晶ですかね。ツアーと、日々の練習と、そして日々の飲みですね」

■ははははは、やはり飲みか。でも、それはこれまでも延々と続いてきたことじゃない? ずっとライヴをたくさんやってきたしたくさん酒量も摂取されてきたと思うし、その積み重ねを否定するつもりはまったくないんですけど、でも今回は一気にドガッと来たなって感じがするんですよね。

小野「うーん……ちょうど鹿野さんにフィットしたんですかねぇ?」

■いやいや、俺の後ろ側には2億6千の瞳があるよ?

小野「…………(無言で鹿野の後方を見つめる)」

■本当だって(笑)。

全員「はははははははは」

■ではまず、今回の作品ができるきっかけはなんだったんですか?

寺中「前作、前々作と、4人全員がそれぞれ作詞作曲するっていう作品が2作続いて、それが凄く個人的には大きかったというか。初めて自分で作ったメロディに八木くんに歌詞をお願いしてみたりだとか、そういうことをしたことで、お互いの信頼関係みたいなものが強くなったと思うんです」

■その信頼関係って、もう少し具体的に言えます?

寺中「4人それぞれの曲に対して、いちリスナーとして3人の曲を聴いてそれぞれの完成度の高さだったりを感じたし、こういう作り方、こういう歌詞、こういう言葉があるんだなっていう、自分にはないものもたくさん感じ取って。そういう自分以外の3人の個性————この人はこういう曲を作るんだ、こういう曲が得意なんだっていうイメージが自分の中にできた、というか、元々あったイメージがより濃く浮かんでくるようになったんですよね。だから今回も素直に、“SAMURAI REVOLUTION”は八木くんに歌詞を書いて欲しいっていう案がスッと出てきたりだとか」

八木優樹(Dr)「“Love me”に関しては、今までやってきた爽やかな曲達はいっぱいあるんですけど、その中でも、歌詞が明るいわけではないのにハッピー感が強くて。パーティー感、お祭り感みたいなのがKEYTALKのパブリックイメージとしてあると思うんですけど、そういうところとはまた違う楽しさみたいなことが表現できてよかったかなって思いました」

■その辺は、ご自分の中では意識していたことだったんですか?

八木「義勝がデモを作ってきた時に楽しい感じを凄く感じて……その時はまだ歌詞はついてなかったんですけど、これはたぶん爽やかなメロディだけど楽しい曲にしたいんだろうなって。だからドラムもあんまり切迫感が出ないようなフレーズにはしたつもりですね。

首藤義勝(Vo&B)「4月、5月と連続でシングル出しましたけど、ここまでは結構シンプルで無骨に攻める感じの曲が多かった気がするんですよ。でも今回の楽曲は、ポップセンスに深みが増した曲になったと思っていて」

■本当にその通りだと思うんですよね。それは、どのくらい意識してやって、どれくらい自分達が実現できるようになった感じなんですか?

首藤「……自然と、って感じですかね。僕個人としては、直近の自分達の作品を何回も聴き返している中で、自然と『この曲はこんな要素をプラスしたらもっと面白くなるな』って考え始めて。ちょうどその頃に新曲を作る時期になったので、深みが増したものが作れたんじゃないかなって思うんですけど」

■“Love me”は首藤くんの作詞作曲ですが、この曲ができた背景には、明確に自分の中のポップソングランキングを超越したいとか、そういう意識や目的もあったんですか?

首藤「結構テンポが速くてロックな曲がシングルで続いてたんで、そっちじゃなくてメロ勝負みたいな曲にしたいなってところから始まったんですけど。そこでいろいろ考えて、BPMを落として横ノリな感じで踊れる曲を作りたいなって思ってたんですよ。でもそれが結果、個人的にはグッドメロディランキングではかなり上位に入るものになりましたね」

■このAメロ、秀逸です。素晴らしいですよね。

首藤「ありがとうございます。結構アレンジが何回か変わってて、Aメロも変わったりはしているんですけど……でも言ってもらったような意識や目的があったわけではなく、なんとなくって感じですねぇ(笑)。サビで爆発させたかったんで、音程が上がり切らない歌にしようっていう意識とかはあったんですけど」

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text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.16 by MUSICA編集部

THE ORAL CIGARETTES、渾身のシングル『5150』発表。
自身の王道を更新したバンドの1年とこれから

自分の中に化け物が1匹潜んでて、
シングル書く度にそいつがデカくなってて。
今はそいつをどう手懐けるか割り切れるんで、不安はまったくないな(山中)

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.48より掲載

 

■アルバム『FIXION』以降2発目のシングルです。いろいろな状況の変化と進化から生まれた曲なのはわかりますが、まずは思うことから始めましょう。

中西雅哉(Dr)「確実に新しいTHE ORAL CIGARETTESの新境地というか、新しい武器を手にした強みを感じています。前までリスナーに委ねていた部分があったけど、明確に伝わりやすい曲ができたのでストレートに伝えるアプローチが一番大きいかなって思います。特に”5150”に関してはストレートの中にクセを出したり、どう今までと違うやり方を詰められるかってことを意識的に考えましたね」

■大腸のように入り組んでいたところに個性があったこのバンドの楽曲が、なんでストレートになったの?

中西「大腸(笑)。一番大きいのは拓也の歌詞だと思います。最初に作り出した時にサビのリズムがすぐ出てきたっていう初期衝動があって、それが僕の中でもハマってたし拓也の中でもハマってて。僕が曲づくりの段階で1回フレーズを変えた時、拓也も違和感があったみたいで『最初のイメージでよかったんだ』っていう、初期衝動そのものがよかったんでしょう」

鈴木重伸(G)「前のシングル”DIP-BAP”は結構頭使って、自分にないジャンルをしっかり表現した形だったんですね。今回のシングルは自分の中で原点に帰ったフレーズをつけられているんで長年聴いている人にとっては『あ、オーラル帰ってきたな』ってシングルにもなるんじゃないかなって。まぁもちろん、まさやんが言ったように新しいことをやってはいるものの、自分のギターフレーズとしては”DIP-BAP”以降全然いいフレーズができないなぁって悩んでで。それでふと原点に戻ろうと思って、セッションの中でこの“5150”のリフもできたり、そういう2、3年前の原点の感覚が僕は凄くこのシングルにはあるなぁ」

■悩んだ末の原点回帰に到った部分をもう少し話してもらえるかな。

鈴木「ちょうど1年くらい前のシングルから凄く自分自身がギタリストとしてまだまだ足りないなって悩んでて、いろんな曲を聴いて勉強していて————もちろんそれもいいことだったんですけど、楽しんで作っていけなくなってしまっているなって気づいて。何やっても何作っても自分の中でドキっとするものができなくなってて……。『元々どういう時が一番楽しくできてたんだろう?』って思った時に、やっぱり自然にできてた時が1番楽しいなと思って1回リセットしてセッションしたら本当に上手く行って、心の持ち方ひとつでこの曲のフレーズができたので。みんなに『あ、それいい!』って言ってもらえた感覚も凄く懐かしくて、気持ちも含めていろいろないい意味で原点に戻ったなと思いました」

山中拓也(Vo&G)「僕はこの曲では新しい王道を作り上げれたんじゃないかなってちょっと思ってて。『オーラルのこれぞ王道!』ってことをずっと言い続けてきたけど、その確固たるものが“5150”はちゃんと形になったんじゃないかなと思ってます。今一度“DIP-BAP”って曲で自分達のルーツとかそういう部分をもっともっと深く探って音楽と向き合って、じゃあその次は何をすんねん?ってなったら自分達が提示していくものっていうのは、昔も今も何も変わらずこの場所なんだろうなってことを、この曲で改めて確認しました」

あきらかにあきら(B&Cho)「曲を作っていく時に、まだまだいろんな作り方があるんやなぁってもう1回考えさせられた曲で。みんなと似たようなことですけど、“DIP-BAP”は結構考えて整合性取ったりとか凄い頭を捻って作った曲やなって思ったんですよ、左脳的というか。でも“5150”は拓也が持ってきたフレーズに対して、どうしたらシンプルにそれを活かせられるのか?っていう右脳的なエモさだけで作ったところが大きくて。僕らがここ最近のアルバムを作っている時に伸ばしてきた伸びしろの部分を自然に曲に導入できたんですよね。だから難しく考えずに引き出しの中にあったものでちゃんとフレーズを引き立てられるんだなって思ったし、とにかく自分を信じて直感で作ったって感じなんですよ。『これはいい、これはよくない』って」

■『DIP-BAP』は収録曲3曲がすべてバラバラというか、野球で言うと1曲目がシンカー、2曲目がシュート、そして3曲目がナックルボールくらい不思議な感覚を持つものというか、とにかく3曲とも違うキメ球みたいに聴こえたんだよね。要するに今回の3曲は全部がキラーチューンになっていて、非常に攻めているとも言えるしバンドとして勝ちを獲りにいってるシングルだと思ったんですけど、これは曲づくりをする段階で考えていましたか?

拓也「元々“アクセス×抗体”と“ミステイル”は“DIP-BAP”と同じくらいのタイミングで作っていて、元々はこの2曲のどっちかを“DIP-BAP”以降のリード曲にしようって思ってたんです。今までの自分達だと曲ができたタイミングでリード曲と思ったら1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月経ってもリード曲だって言えたんですけど、今回はできたタイミングではリード曲だって思えたけど、1ヵ月後に聴いてみたらやっぱ違うってなったんです。それが今までにない新しい感覚で、『なんでなんだろう?』って考えたんですが……悪い言い方をしたら『ただのオーラル』だったんですよね(笑)。2曲目も3曲目も今までのオーラルの方程式に当てはめてきた楽曲だし、歌詞の世界観とか今まで自分が書き続けてきた1番やりやすい方法でできた曲だったから、そこまで苦労しなかったし。でも実際自分達の状況は2、3年前とは変わってきてて、今年自分達が何をしなくちゃいけないのかって考えた時にこの2曲はやっぱり違ったんです。もっと覚醒を実感しないと、この状況に見合う曲にならないと思って。とはいえ、その時自分達が今なにを提示しなくちゃいけないのかっていうのも別に見えているわけじゃなくて。だから“5150”を生み出すまでに凄く時間がかかったんです」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.15 by MUSICA編集部

RADWIMPS史上最も強い光と肯定を放つ『人間開花』。
メンバー全員&野田単独取材の2本立てで、
その軌跡とすべてを紐解く

このアルバムは肯定ですね、今までの自分とバンドと人類の肯定。
11年目にこのアルバムを出せるのは、ほんとにデカくて。
この10年間っていう過去を背負ったアルバムでもあるし、
ここから何十年の未来への一番入口の旗な気もする

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.12より掲載

 

(前半略)

■このアルバムに至るまで、つまり前作からの3年間のことを訊きたいんですけど。とはいえ、すでに話に出た通り、やっぱり一番大きな出来事は、何よりも智史くんが病気療養のため無期限休養という形になったということで。

野田「そうですね。3年というか、むしろこのバンドの歴史の中で一番大きいことで」

■休養は去年の9月に発表したわけですけど、無期限休養という結論に至ったのはいつくらいだったの? 前々から考えてたことだったのか、それともまさに発表したあの時期だったんですか?

野田「ほんとにあのタイミング。8月末のSWEET LOVE SHOWERが最後のライヴになったんですけど、あれの1週間前ぐらいだっけ、言われたの」

武田「1週間ちょっと前かな」

野田「SUMMER SONICが8月15日で」

■その1週間後がWILD BUNCHだったよね。

野田「そうだ。……サマソニでのライヴは、僕らの中では手応えがあったんですよ。そこまで数ヵ月、本当に武田とかが智史につきっきりになる形でやってきてたんだけど――」

■ということは、その数ヶ月も、智史くんの状態としては大変な状態だったということ?

野田「はい。それこそリハができる/できない、家を出られる/出られないみたいなのがあって。でも、僕らはサマソニで手応えを感じられたと思ってたんです。そしたら、翌日ぐらいだっけ?」

武田「サマソニの2日後ぐらいだったと思う。次のリハに入った時に、もうできないってなって」

■SWEET LOVE SHOWERで演奏を終えた一番最後に、洋次郎くんが突発的に“トレモロ”を歌い始めたじゃないですか。で、あの頭の部分だけひとりで歌って終わるつもりだったんだけど、智史くんがドラムでちょっと入って。だから結果、4人での最後のステージで最後に鳴った音は、智史くんのドラムの音だったんだよね。

野田「ああ、そうだったね。あの時も頭真っ白になってたね、智史。……本当に限界だったんでしょうね。限界って人それぞれだけど、智史は特にああいう性格だし。俺らは俺らでずっと、側で見ていてどうすることもできないもどかしさと、あと正直、智史の不器用さに対する苛立ちもあって。………どっちかっていうと、あの時は苛立ちのほうが強かったんだよね。あの数ヵ月、俺はある意味ちょっと3人に預けてて。4人全員で智史の病気に対して内側に向かっていくとちょっとヤバいなと思ってたから、俺は俺でなるべく曲作りをやったり、バンドの方向性を考えたり、全体の舵を取ろうっていうふうにやってたんだけど。で、武田がつきっ切りになったり、桑と3人でスタジオ入ったりしてリハビリしてるのを、ちょっと距離を置いて眺めてるっていう感じだったから……だから俺から見ると、余計に桑と武田の絶望は相当なものに見えたんだけど」

武田「うん、本当に絶望でしたね」

桑原「あれからまだ1年ちょっと前か……」

野田「普段はあの時の会話を思い出したりしないもんね、ウチら。実際、あの時どうだった?」

桑原「かなりつきっ切りでやってたよね」

武田「うん。本当にどうにかしよう、どうにかしたいと思いながら、ずっと智史と一緒にやってて」

野田「それが逆効果だったのか?みたいなところまで考えちゃうもんね……」

武田「いや、本当にそれも思った。やっぱりあの時は俺もちょっとまともじゃなかったと思うし」

桑原「武田はプールとかもつき合ってたよね」

武田「そうそう、スタジオに行く前に智史とプールに行って。トレーナーの方に、まず体を疲れさせてからドラムを叩くといいみたいなアドバイスを受けたらしくて、それでプールにつき合ったりもしてたんですけど」

野田「あの時は変な話、『素っ裸でご飯食べたほうがいい』って言われたらそれをやるぐらいのメンタルだったよね。縋れるものには縋りたいっていう、ある意味、宗教的なマインドになってて」

桑原「でも実際、フォームを変えたりとか、何か試すと1日~2日はいい感じになるんだよね。でも、ずっとやってるとまた症状が出てきちゃって。だからあの数ヵ月は、浮き沈みが凄い激しかった。……やっぱり俺もどうしても、あの接し方でよかったんだろうかとかも考えたり、何かもうちょっと言ってあげられることあったかなとも思ったりもして。前に自分がバンドを辞めたいって言った時に智史に言ってもらったことは、今も凄い覚えてて。それと同じようなことを言ったりしたんですけど、智史のほうがヘヴィで上手く行かなかくて。でも、あの時の自分と同じように、智史も『もう1回やりたい』って言ってくるんじゃないかなってどっかで期待してたところはあったんですよね。今のところはまだないんですけど……」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』

Posted on 2016.11.15 by MUSICA編集部

[Alexandros]、覚醒感に満ち溢れる
傑作アルバム『EXIST!』リリース。
メンバー全員による30,000字に及ぶ全曲解説!

もっと冒険しないとダメだな、もっとぶつかって得られる何かが
あるはずだなって思って。もっと自分から刺激を求めなきゃいけない、
冒険しなきゃいけない、もっとバカしなきゃいけないんだって。
いざ本領が発揮できるっていう時に守られててどうすんだ!ってことですよ

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.34より掲載

 

■これほど全曲解説しがいのある作品もなかなかないなというアルバムで。前号で先行レヴュー書いたんだけど、ネタバレせずに書くのがほんと大変だった(笑)。

全員「ははははははははははは」

■この号はすでにアルバムが発売された頃に出るので、豪快にネタバレを――。

川上洋平(Vo&G)「もちろん、ガンガン出しますよ!」

■期待してます(笑)。まずはアルバム全体に対するそれぞれの実感を訊いてから1曲ずつ話していきたいなと思うので、洋平くんからお願いします。

川上「本当の意味で充足感を味わうのはこの曲達をライヴでやってからだとは思うんですけど、でも今回は今まで以上に『アルバムを作ったな』っていう、レコーディングに対する充足感が大きくて。というのも、今まではライヴをやるために曲を作っていた感が強かったんですよ。今も基本的にはそうなんですけど、でも今回はアルバムとして1枚の絵を完成させるためにどうすればいいのかを今まで以上に考えたし、家で聴いても楽しめる、聴き心地がいい作品を作りたいなって思ってたから。そういう意味では、非常にいいアルバムができたなっていう素直な感想が出てきますね」

■つまり「作品」を作った実感がいつもよりあるんだ。

川上「そう。前はCDを出す=ライヴでやるからみんな聴いといてねっていう感じだったんだけど――今でもそうなんですよ? そうなんだけど、それとは別にCDはCDですげぇ楽しめるっていう提示を今まで以上にしたかったし、それができてるなと凄く思います」

磯部寛之(B&Cho)「俺は作ってて凄く楽しかったですね。洋平が言ったような部分もありつつ、ライヴバンドとしての成長もしっかり出せたと思っていて。久々に一発録りもやったんで、そのヒリヒリ感も楽しかったし、それこそレコーディングスタジオで作ってそのまま録っちゃえ!みたいなこともやったし……もちろん今回は今回でまた凄く実験的なこともやってるんですけど、でも本能的に作った部分も多かったんですよね。ライヴバンドを謳っている以上ライヴにより近い感覚で作品を残す、それでカッコいいものができるバンドでありたいなとは常々思ってるんですけど、それを体現できた充実感があります。バンドとして順当にパワーアップしてることが実感できたし、これからもパワーアップし続けるんだろうなって改めて思えましたね」

白井眞輝(G)「振り返ってみると、自由度が高い制作だったなって思います。今回は外国の方にミキシングとマスタリングをお願いしたんですけど、それも含めて『音源を作った』っていう感じが前作よりも強くて。もちろんライヴを想定してはいるんですけど、音源でしかできないことも強く押し出すことができたというか。それこそミキシングどうこうっていうのは音源ならではの話ですけど、そういうところにも凄くこだわったんですよね。そういった意味で実験的というか、自分達としては新たな試みがたくさんあったんですけど、本当にやりたいことをやりたいようにできたなっていう感じがします。エンジニアの選出も自分達の自由にやらせてもらいましたしね」

(中略)

庄村聡泰(Dr)「僕は一番最後に加入して、がむしゃらにこのバンドの中に入っていきたいとか、みんなと一緒にやっていきたいという気持ちでやってきて。ぶっちゃけ何回か挫けそうになったりとかもあったんですが(笑)、それでも前述の気持ちが強かったので、そうやってやってきたんですよね。で、やっていくうちに体や感情ではなく頭を使えるようになって、そういう時期にちょうどシーケンスや打ち込みと一緒にリズムを組まなきゃいけない曲も入ってきて、自分の中でも1個の固い方程式みたいな、自分なりのやり方が構築できたんですよ。その上で今回は、その方程式をもまた自分で打ち破ることができて、新しいものを掴めたなっていう印象です。今までは論理的にやってたのが、今回はいい意味でそうではないんですよ。もっと直感だったり、肉体が動いていく感じをダイレクトにそのまま封じ込めることができた。そういう意味でも、このバンドの核に近づいていきたいっていう気持ちでがむしゃらにやっていた時よりも、今はその核にスッと入り込めるようになった印象があります。そこが僕にとっては今回凄く大きいことでしたね」

■わかりました。では行きましょうか、全曲解説。

全員「よろしくお願いしまーす!」

 

 

01. ムーンソング

 

 

■スケールの大きな、気持ちよく夜空を駆けるような飛翔感のある美しいオープニングソングで。Coldpleyのスタジアムアンセムみたいな趣きがあるよね。

川上「自分の中ではColdplayっていうよりは、どちらかと言うとU2とかのほうを意識してましたね。2010年代のスタジアムでやるエレクトロやロックって、四つ打ちでやるみたいな感じがあるじゃないですか。あれはあれで素敵なんですけど、俺はもっと泥臭いことをしたいなって思って。で、エレクトロがなかった時代って何をしてたのかな?って立ち返った時に、U2みたいな――ああいうパンキッシュな世代でデカいスタジアムロックをやってた人達のものを聴き直した時に、割とそのままストレートにやってたんだなって思って。それがヒントになりまして。だからリズムは結構大きく叩いて、ただ、そうすると寂しくなっちゃうんで、その空いたスペースを埋める時にシーケンスではなく、敢えてギターのズクズクズクズクっていう音で埋めようっていうのを思いついて」

■白井くんの凄く細いリフというか、あれは気持ちいし、楽曲の世界観を結構決定づけてるよね。

川上「あの感じが、俺は荒野を走ってる感じでいいなって思ったんですよ。たぶんあれをシーケンスにしたら流星感が出たと思うんですけど、ギターにしたことで地に足着けて駆け抜けてる感が出たなと思って。あれはレコーディング中に思いついたんだよね?」

白井「そうだね。直前とかかな?」

川上「プリプロではもっとギャーンッ!て感じのギターで、なんか全体に[Alexandros]っぽい曲だなって感じだったんですよ(笑)。それがこのズクズクズクを思いついた瞬間に、ウチらにしかできなくて、かつ、今までとは全然違うものにできたなって思いましたね。あと、この曲は最後のほうにできたんですけど、いろんなことやった上で一度原点に立ち返りたいなって思ってた時だったんで、こういうシーケンスの入らない、バンドだけのアレンジに落ち着いたのは凄いよかったです。面白いなと思うのは、実はアルバムの制作は“NEW WALL”から始まってるんですよ。で、“NEW WALL”はストリングスを使ってバンドをどこまで大きく見せられるかっていうテーマでやったんだけど、この曲はバンド自体がどれだけ大きいかってことを確認するための曲で。俺はどっちも好きだし、どっちもやってて面白いんですけど、やっぱりアルバムの1曲目はこういう曲から始めたかったんですよね」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』