Posted on 2016.11.15 by MUSICA編集部

[Alexandros]、覚醒感に満ち溢れる
傑作アルバム『EXIST!』リリース。
メンバー全員による30,000字に及ぶ全曲解説!

もっと冒険しないとダメだな、もっとぶつかって得られる何かが
あるはずだなって思って。もっと自分から刺激を求めなきゃいけない、
冒険しなきゃいけない、もっとバカしなきゃいけないんだって。
いざ本領が発揮できるっていう時に守られててどうすんだ!ってことですよ

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.34より掲載

 

■これほど全曲解説しがいのある作品もなかなかないなというアルバムで。前号で先行レヴュー書いたんだけど、ネタバレせずに書くのがほんと大変だった(笑)。

全員「ははははははははははは」

■この号はすでにアルバムが発売された頃に出るので、豪快にネタバレを――。

川上洋平(Vo&G)「もちろん、ガンガン出しますよ!」

■期待してます(笑)。まずはアルバム全体に対するそれぞれの実感を訊いてから1曲ずつ話していきたいなと思うので、洋平くんからお願いします。

川上「本当の意味で充足感を味わうのはこの曲達をライヴでやってからだとは思うんですけど、でも今回は今まで以上に『アルバムを作ったな』っていう、レコーディングに対する充足感が大きくて。というのも、今まではライヴをやるために曲を作っていた感が強かったんですよ。今も基本的にはそうなんですけど、でも今回はアルバムとして1枚の絵を完成させるためにどうすればいいのかを今まで以上に考えたし、家で聴いても楽しめる、聴き心地がいい作品を作りたいなって思ってたから。そういう意味では、非常にいいアルバムができたなっていう素直な感想が出てきますね」

■つまり「作品」を作った実感がいつもよりあるんだ。

川上「そう。前はCDを出す=ライヴでやるからみんな聴いといてねっていう感じだったんだけど――今でもそうなんですよ? そうなんだけど、それとは別にCDはCDですげぇ楽しめるっていう提示を今まで以上にしたかったし、それができてるなと凄く思います」

磯部寛之(B&Cho)「俺は作ってて凄く楽しかったですね。洋平が言ったような部分もありつつ、ライヴバンドとしての成長もしっかり出せたと思っていて。久々に一発録りもやったんで、そのヒリヒリ感も楽しかったし、それこそレコーディングスタジオで作ってそのまま録っちゃえ!みたいなこともやったし……もちろん今回は今回でまた凄く実験的なこともやってるんですけど、でも本能的に作った部分も多かったんですよね。ライヴバンドを謳っている以上ライヴにより近い感覚で作品を残す、それでカッコいいものができるバンドでありたいなとは常々思ってるんですけど、それを体現できた充実感があります。バンドとして順当にパワーアップしてることが実感できたし、これからもパワーアップし続けるんだろうなって改めて思えましたね」

白井眞輝(G)「振り返ってみると、自由度が高い制作だったなって思います。今回は外国の方にミキシングとマスタリングをお願いしたんですけど、それも含めて『音源を作った』っていう感じが前作よりも強くて。もちろんライヴを想定してはいるんですけど、音源でしかできないことも強く押し出すことができたというか。それこそミキシングどうこうっていうのは音源ならではの話ですけど、そういうところにも凄くこだわったんですよね。そういった意味で実験的というか、自分達としては新たな試みがたくさんあったんですけど、本当にやりたいことをやりたいようにできたなっていう感じがします。エンジニアの選出も自分達の自由にやらせてもらいましたしね」

(中略)

庄村聡泰(Dr)「僕は一番最後に加入して、がむしゃらにこのバンドの中に入っていきたいとか、みんなと一緒にやっていきたいという気持ちでやってきて。ぶっちゃけ何回か挫けそうになったりとかもあったんですが(笑)、それでも前述の気持ちが強かったので、そうやってやってきたんですよね。で、やっていくうちに体や感情ではなく頭を使えるようになって、そういう時期にちょうどシーケンスや打ち込みと一緒にリズムを組まなきゃいけない曲も入ってきて、自分の中でも1個の固い方程式みたいな、自分なりのやり方が構築できたんですよ。その上で今回は、その方程式をもまた自分で打ち破ることができて、新しいものを掴めたなっていう印象です。今までは論理的にやってたのが、今回はいい意味でそうではないんですよ。もっと直感だったり、肉体が動いていく感じをダイレクトにそのまま封じ込めることができた。そういう意味でも、このバンドの核に近づいていきたいっていう気持ちでがむしゃらにやっていた時よりも、今はその核にスッと入り込めるようになった印象があります。そこが僕にとっては今回凄く大きいことでしたね」

■わかりました。では行きましょうか、全曲解説。

全員「よろしくお願いしまーす!」

 

 

01. ムーンソング

 

 

■スケールの大きな、気持ちよく夜空を駆けるような飛翔感のある美しいオープニングソングで。Coldpleyのスタジアムアンセムみたいな趣きがあるよね。

川上「自分の中ではColdplayっていうよりは、どちらかと言うとU2とかのほうを意識してましたね。2010年代のスタジアムでやるエレクトロやロックって、四つ打ちでやるみたいな感じがあるじゃないですか。あれはあれで素敵なんですけど、俺はもっと泥臭いことをしたいなって思って。で、エレクトロがなかった時代って何をしてたのかな?って立ち返った時に、U2みたいな――ああいうパンキッシュな世代でデカいスタジアムロックをやってた人達のものを聴き直した時に、割とそのままストレートにやってたんだなって思って。それがヒントになりまして。だからリズムは結構大きく叩いて、ただ、そうすると寂しくなっちゃうんで、その空いたスペースを埋める時にシーケンスではなく、敢えてギターのズクズクズクズクっていう音で埋めようっていうのを思いついて」

■白井くんの凄く細いリフというか、あれは気持ちいし、楽曲の世界観を結構決定づけてるよね。

川上「あの感じが、俺は荒野を走ってる感じでいいなって思ったんですよ。たぶんあれをシーケンスにしたら流星感が出たと思うんですけど、ギターにしたことで地に足着けて駆け抜けてる感が出たなと思って。あれはレコーディング中に思いついたんだよね?」

白井「そうだね。直前とかかな?」

川上「プリプロではもっとギャーンッ!て感じのギターで、なんか全体に[Alexandros]っぽい曲だなって感じだったんですよ(笑)。それがこのズクズクズクを思いついた瞬間に、ウチらにしかできなくて、かつ、今までとは全然違うものにできたなって思いましたね。あと、この曲は最後のほうにできたんですけど、いろんなことやった上で一度原点に立ち返りたいなって思ってた時だったんで、こういうシーケンスの入らない、バンドだけのアレンジに落ち着いたのは凄いよかったです。面白いなと思うのは、実はアルバムの制作は“NEW WALL”から始まってるんですよ。で、“NEW WALL”はストリングスを使ってバンドをどこまで大きく見せられるかっていうテーマでやったんだけど、この曲はバンド自体がどれだけ大きいかってことを確認するための曲で。俺はどっちも好きだし、どっちもやってて面白いんですけど、やっぱりアルバムの1曲目はこういう曲から始めたかったんですよね」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』