Posted on 2015.06.17 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。、
明確なモードチェンジの裏側に潜む覚悟と展望とは

昔は後世に残る名曲を作りたいっていうのは特になかったんですよ。
でも今は、ミスチルの“Tomorrow never knows”みたいな曲を
このバンドで作りたいなって思います

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.94より掲載

 

■ついに政界にまで進出して、びっくりしました。

川谷絵音(Vo&G)「そこからですか(笑)。僕も突然でびっくりしました」

■初めて野音やったら、そのまま国会議事堂まで行けちゃうとは。

ちゃんMARI(Key)「あぁ、場所が近いから(笑)」

■悪法かどうかは置いておいて、なかなか凄いところで話題になりましたが。

川谷「ほんとどうなんですかね? でも“私以外私じゃないの”っていう言葉が時代を先取りしてたんだなっていうふうに思いましたけど。制度がどうのこうのというよりは、言葉の強さみたいなものを感じました(笑)」

ほな・いこか(Dr)「私も母から『とうとう政治にまで!』みたいなメールが来て。友達とかからも凄い来てたんですけど、歌ってるところのURL送りつけてくる人までたくさんいて。無視しましたけど(笑)」

■今回のシングルの3曲目で<気付いたら透明なガラスケースの中に俺はいて 表情がない政治家みたいな/政治家じゃない奴らに囲まれてたんだ>って歌ってますけど、見事に楽曲が政治家に囲まれましたね。

川谷「(笑)そうっすね、だから、これも先見の明というか」

■ははははははは。

川谷「でもそもそもは“ロマンスがありあまる”っていう曲を出すために“私以外私じゃないの”を作ったんで。そのための前段階って思ってたら、コカ・コーラのCMでいろんな人に広がって。自分が最初に思ってたよりはかなりの反響が……。やっぱり言葉がよかったんだろうなって思います」

■世の中の風みたいなものも今までと違うものを感じたりするんですか?

川谷「そうですね、『しゃべくり007』の影響もデカかったし、僕らのことをあんまり知らないライトな人達が増えたっていうか。ライヴも家族連れがほんとに増えたし、この前も岡山のホールでツアーファイナルやったんですけど、後ろのほうで親が子供を肩車してライヴ見せてるとか。どんどんマスな方向に来てますよね。もちろん、自分が目指してる方向ではあるんですけど。なんか急に変わったなって思います」

■課長も状況の変化に驚いてダイエットを始めっちゃったり?

課長(B)「いや、そこはあんまり(笑)。別に僕、痩せようが見てくれで勝負できないんで、体調管理的に痩せたほうがいいんじゃないかというメンバーからの思いやりです」

川谷「成人病とかね(笑)」

課長「そうそう(笑)。今回のツアーに関して真面目に話すと、音楽を聴いてくれてるお客さんが増えたなっていうのは凄い感じます。サビで盛り上がったり、その盛り上がり方もビートに身を任せてるっていうよりは、耳で聴いて楽しんでるっていう雰囲気があって、そこは凄くいいなと思います」

■そういう絶好調な状況で出る新曲なんですが、本当に勝負曲で。

川谷「そうですね。今回は映画のタイアップなんですけど、内容に沿わなかったら映画をぶち壊しちゃう可能性もあるし――」

■映画に合う音楽を作らないといけない。

川谷「そうですね。でも、映画の脚本読んでも映像で観ないとわからないなと思ってたんですけど、途中で“ロマンスがありあまる”って言葉が浮かんでからは、割とそのまま作っていって。“ロマンスがありあまる”という言葉自体は映画の本質的なテーマではないんですけど、単純に僕の中でキラーフレーズだったというか。で、僕の中で映画との世界観的なリンクがあったというか。この曲自体、映画というより結構自分のことだったりするんですよ。実はこれ、“私以外私じゃないの”よりもレコーディングしたのが早くて、去年の『魅力がすごいよ』ってアルバムが出た後に、これからどうすればいいんだろうって悩んでた時に作った曲でもあったんで。僕の中でどうにもならないなっていう感情の延長でもあって。『魅力がすごいよ』を作ったことによってまた生まれたフラストレーションみたいなものを歌詞に書こうかなって思ってたら、若者が悩んでる映画の世界観とリンクして。だから結局、映画のセリフとかは使ったりしてるんですけど、ほとんど自分の世界の歌っていう」

■そうですよね。ゲスの極み乙女。って、最初は凄く無機質であり、無表情な中から生まれてくる不思議さとかカオスさっていうものが音楽の中にあったし、それはどこかバンドの音楽性のコンセプトにもなってたんじゃないかなと思うんですよね。ただ、『魅力がすごいよ』を出した辺りから、どんどん表情とか感情が音楽の中にメロディアスに入ってきて、今回このサビ始まりの曲になってるなっていうふうに思うんですけど。その辺、プレイヤーとして自分の変化みたいなものは感じてるんですか?

いこか「単純にできることが増えてきたっていうところはあるんですけど。最初は別人だったというか。ほな・いこかをやり始めた頃は、どこか演奏してても別人だったところがあって。それが『魅力がすごいよ』からはありのままでできてる感じは、ほんのりあります」

ちゃんMARI「私はあんまり無機的だっていうのは思ってなかったんですけど。歌詞の感じがだんだん違ってきたのかなっていうのは思ってて。前は楽しいな、面白いなっていう感情で。そういうのだけでやってたのが、『魅力がすごいよ』を録り始めた時から歌詞の中身に自然と入るようになってて。演奏も自然とそっちに寄せられていったっていうか。最近はやってる時にちょっと感極まってしまうこともあります」

川谷「だからみんなはそんな変わってないかもしれないですけど、でも俺はひたすらに変わっていってるんですよね。で、さらに自分がどんどん変わっていくのかなって思います」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.17 by MUSICA編集部

LAMP IN TERREN、
より強固になったバンドの絆と人生観の結晶

俺のバンドが俺の音楽より凄くなってきたんです。
今までは「俺が作りました」の一点張りで完結していたけど、
今回はバンドで作ったって言えるし、そう言いたいんです

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.100より掲載

 

■アルバム楽しませてもらった。頑張ったね、バンドとして。

全員「ありがとうございます!」

■今作を作る上で心構えとか、大きく変わったんですか?

川口大喜(Dr)「変わりましたね。歌を本当の意味で出せるようになってきたかなと思います。それぞれの楽器が歌に寄り添うようなアレンジや、サウンドに仕上げることが、初めてできたと」

■今までは、寄り添いたくなかったリズムが響いてたよね(笑)。なのに今回、そういう気持ちになれたのは何故なんだろう?

川口「(苦笑)。寄り添おうっていう気持ちはあったんですけど、結果的に違うところに行ってしまっていたんですよね。元々、歌っていうのは音楽の中でも重要なものだと思っているので、それを真剣に考えることが今作ではできたのかなって思います。あと、前以上に歌詞に共感することが多くなって、自分達の曲を聴く回数が多くなったんです」

松本大(Vo&G)「最近、車でずっと流れてるもんね」

川口「寝る時も聴いてて『普通にいいな、このバンド』って思います(笑)。自分の音楽聴くなんて今までは信じられなかったのに。だからここからがスタートラインなのかなって」

中原健仁(B)「僕はバンドや、ヴォーカルに対して、どうベースを弾いてアプローチをするのかにずっと迷っていて……曲を盛り上げるベースラインっていろんな方法があると思うんですけど、それが今作の中でわかった気がしてます。大の歌詞だったり、曲が変わってきたのもあるし、同じリズム隊の大喜の影響もあって、自分はどう変えてみようっていうのを考えていたのが大きいですね」

松本「僕はこのアルバムで自己紹介をしておきたいと思っていたことは全部終わったと思ってるんで、凄く思い入れはあります。一番納得のいく人生観を歌えたし、そういう曲作りができたかなって思ってます。3曲目の“Grieveman”って曲は19歳の頃からずっとあった曲なんです。この曲ができる前に1曲目の“メイ”のテーマは決まっていたんですけど、曲を書くことが全然進まなくて……“メイ”には歌いたい核はあるんだけど、まわりを固めるものが何もない状態で進んでいて……今回のアルバムで絶対にこの曲を書きたいんだ!って思っていて」

■今22歳だよね?ってことは3年越しの曲なんだね。

松本「そうなんです(笑)。当時は東京出てきて、友達もそんなにいないし、何をしに東京に出てきたのかわからなくなったりもして……でも、ここまで生きてこられているのも、いろんな人に出会えたからだし、こういう考え方ができているのも、歌が歌えるようになったのも、全部自分が通ってきた道があるからだと思っていて。それは自分の証明として形にしておきたかったんです。かつ、もうひとつテーマがあるとしたら、1対1を意識しました。今までの曲は自分から自分へ発信していたので、内向きだったと思うんですけど、今回は人に届けることを前提に曲を書いたっていうのは大きな進歩だったと思ってます」

■歌詞の話は後半で訊かせてもらうので、まずはもう少し音楽的なところを掘り下げたいんですけど。今回のアルバムで曲のヴァラエティ感が広がりました。もっと言うと、このアルバムの中には3曲くらい「ポップス」と呼んでもいい曲がある。これはひとつ大きな変化だと思うんですね。自分の楽曲の幅を広げたいとか、そういうことを考えた?

松本「それはありましたね。挑戦って意味合いもあって、いろんな色を見せたいなとは思ってました。あと、これまで曲を書く時は、こうじゃなきゃダメっていう固定概念が自分の中にあったんですけど、そういう境界線みたいなものがなくなったのは大きかったと思います」

■今までの固定概念っていうのは、3ピースでできるギターロックとか、孤独が似合う音楽であるとか、そういうことだよね?

松本「今までは何も考えなかったんですよね。『俺はこういう曲しかやりたくねぇんだ!』みたいな感じで。でも、今回は自分に制限をかけたくないっていうのが大きくて、もっと自由になりたいし、いろんなことを表現したいなって思ったんです。楽しい曲なのに悲しく聴こえるとか、晴れ渡った空なのに虚しく見えるとか。そういうことを音で表現してみたいなって思って。そういうところから始まったんですよね」

■そういう楽曲の変化や進化は感じたりした?

川口「感じましたね。今回叩きやすくなったんですよ。俺と松本は今までいろいろあったけど、必死にコミュニケーションを取ってきて、お互いのことを知っていって。そしたら楽曲も変わってきて、気がついたら叩きやすくなっていったんです。たとえば2年前とかだったら、この曲はこういうふうに叩いたら松本は嫌がるだろうなっていう模索があったんですけど、そういうのが今はなくなって、自分がこうだと思って叩いてみたら松本から『OK!』って言われて。『あ、この感覚は間違ってなかったんだな』って。それで作品を聴いてみると、いよいよ俺しか叩けない楽曲達になってきたなって」

■今、言っていた「いろいろあった」っていうのは、今までお互い勝手にやってきて、それがバンドという音楽として奇跡を呼ぶ場合もあったけど、そこには距離感があったし、それを感じてきたってことだよね。そういう距離感がなくなってきたら、こうも音楽って変わるし、変われるんだね。

川口「漢字でも『聴く』って『心』が入っているじゃないですか? やっぱり、心と音楽って何か通じるものがあるのかなって思います」

松本「僕の場合、昔は自分の音楽にふたりにつき合ってもらっているって感覚が大きかったんですよ。でも“緑閃光”を書いた時くらいからそれが徐々になくなって。今回のアルバムはメンバーに何も言わなかったし、レコーディングをしていく中で、自分が思っていた以上に曲が成長していくので、それは嬉しかったですね。僕の場合デモは、割と完成された状態で渡すことが多いんですけど、余裕でそれを飛び越えてきてくれたんで、『あ、俺が見たかったのはこれだ!』って感覚はありましたね。だから3人で1枚のアルバムを作ったんだって感じが凄くしますね」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.17 by MUSICA編集部

indigo la End、
新体制後初のシングルで鳴らしたニュースタンダード

変わる/変わらないが、同じ流れの中で進んでるのが
カッコいいと思うんです。
バンドにはいろんな運命があるし、
その中でめっちゃ変わることもしょうがない。
でも、このバンドは「ここは変えて、ここは変えない」が
同居して続いてるのがカッコいいんです

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.88より掲載

 

■佐藤くんが入ってから初めてのメンバー全員インタヴューになるんですが。どうですか、居心地は。

佐藤栄太郎(Dr)「めっちゃ楽しいっす(笑)」

■わかりやすく顔に出てるよね、その楽しさが。

佐藤「移動の車の中とかでもめっちゃ喋っちゃうんですよね。とにかくみんな笑ってくれるし、すべったらすべったで面白いし。ツアーでいろいろ会話して、みんなが面白さを追求するから。一緒にいて楽しいっすね(笑)」

長田カーティス(G)「いきなり音楽の話じゃないのかよ(笑)」

■まぁ、中野サンプラザのライヴのMCの感じだと、トークのほうは割とハズし気味だったけど(笑)、このメンバーならそれでも受け入れてくれる、というかスルーする感じがよかったよね。

佐藤「まぁハズしたら『ハズしたね』みたいな感じなんですけど――」

後鳥亮介(B)「栄太郎しか笑ってないけどな、いつも」

佐藤「そうなんです(笑)。自分が喋って、自分でめっちゃ面白いなって思えるんです、ここでは。あんまり気を遣わなくていいっていうか」

■以前から絵音くんと友人だったっていう話は聞いてるんですけど、まだメンバーじゃなかった頃はどういうふうにindigo la Endを見ていて、今回の加入の話が来た時にどう思ったか、教えてもらえますか?

佐藤「カッコいいなって思ってて。聴いてて、絶対にどこかにフックがあるんですよね。いろんなところにそれが散りばめられてて、それはもう1個のゲスの極み乙女。でもそうだなって思ってたんですけど。同い年でこれだけフックを作るディレクションができるのは、本当に凄い仕事しててカッコいいなってずっと思ってました。それで、今回の話が来た時に、『やっといろんな人に自分のドラムを評価してもらえるところに行けるな』って思って、凄く嬉しかったです。かつ、indigoっていうバンドをしっかり聴いた時に、かなり歌に寄り添う音楽だなと思ったんです。まず歌が1個前にあるっていう。ドラムって、そういうところに対する腕の見せどころみたいな部分もあるんで、これから勉強になることがあるなと思いました。実際、やってみると目まぐるしくてやることもいっぱいあるし、今はそう思ってたことも忘れてたぐらいなんですけど(笑)」

■このバンドはメンバーがひとり変わるごとに音楽性が非常にわかりやすく変化を起こすバンドで――人がバンドをやってるんだから当たり前と言えば当たり前なことなんですけど、実際、今回のシングルでも大きな変化が起きていて。

川谷絵音(Vo&G)「そうですね」

■まず佐藤くんは、自分がこのバンドに入ることで、このバンドをどう変えていきたいとか、どう染め上げたいっていうふうに思ってたんですか?

佐藤「やっぱり歌モノっていうイメージが世間にあると思うんですけど、音をどんどん礎にしていきたいなと思ってて。メロディもよくて構成も歌モノ然としたものだけど、録り音なりアレンジが『ちょっとおかしなことになってるな』ぐらいの感じでどんどん捩らせていきたいなと思ってました。たとえば椎名林檎さんを録った時の井上雨迩さんの音像みたいな感じで。だから、録ってる時も割とシンプルに、あまりブレないようにしっかり叩くっていうのは意識して叩きましたね」

■後鳥さんは、割と早く新しい後輩が加入されたわけですけど、今回の『悲しくなる前に』を聴いていても、リズム隊としてひとつの音の形ができ始めてるなって思うんです。その辺は、援軍ができて嬉しいとか、自分の中でやれる可能性も広がったとか、思うところがあるんですか?

後鳥「彼(佐藤)とは純粋に会話のキャッチボールが凄いできるんですよね。あと、ドラムだけじゃなくて音楽全部に目が広いんで、周りを見ながら演奏できるのが強いと思ってて。だから、ライバル感はありますよね。もちろん援軍っていう意味でも心強いし、一緒に闘っていけるんですけど、俺も負けないようにしようっていう気持ちがあって」

佐藤「あ、それは俺もあるかもしれない」

後鳥「うん。そこで凌ぎ合ってる感じがするなって思います」

■オリジナルメンバーとして、カーティスはどうですか? このバンドの場合、状況的にもメンバー的にも変化まみれの1年の中で、これがindigo la Endのスタンダードな形になっていきそうな感じもあるんじゃないかなと思うんですけど。

長田「そうなるといいですよね。今、バンド以外のところでの空気もいい感じにできてると思うし、サウンドもだいぶ固まってきたんで」

■雰囲気もサウンドも、以前のindigo la Endと比べると非常にアクティヴだしエネルギッシュになってると思うんですけど。そういう意味では、新しく加入してきたリズム隊の人達からのケツの押し方がハンパない感じもあるのかなと思うんですけど。

長田「そうですね。そこは(ふたりが)頑張ってますね、きっと。俺、常日頃考えてるんですけど、バンドにギターってあんまり必要ないと思ってるんですよ」

■ん? ギタリスト発の言葉としては斬新過ぎて、その真意がまったく噛み砕けないんですが。

長田「ですよね(笑)。最終的に行き着くところとして、バンドにギターって必要ないなって常日頃思ってて――だって、結局バンドをやるにおいて絶対に必要なのはリズムで、そうなるとベースとドラムが確実にあればいいんですよ。で、うちのバンドに関しては特に歌がしっかりしてるんで、最悪そこだけで全然成り立っちゃうですよね、だから俺、何しようかな?って考えることが結構多くて。いいドラマーが入ってしまったせいで、さらにどうしよう?って悩むことが最近、凄くあるんです(苦笑)」

■そういう中で、カーティスはこのindigo la Endの中でギタリストとしてどういう立ち位置を見出したいなと思ってるんですか?

長田「言葉じゃわかりづらい表現なんですけど、バンドの外周の上のほうの、ほんのちょびっとぐらいの存在でいいんです。バンドの雰囲気を決めるものになれればいいなっていう感覚ですね」

■ファッションで言うと、最後につける強力なアクセサリーみたいな。

長田「そうですね、そういう感じで頑張りたいです」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.16 by MUSICA編集部

BRAHMAN、結成20周年にして
不惑と変革の中で辿り着いた無二のバンド道

言ってみれば「なんとなく」っていう、
全然面白くない言葉に全部表れてるんだと思う。
実体がないけどみんなが持ってる確信――
たとえば「じゃあ明日ね」っていうなんとなくの約束や希望があって、
「明日会える」って思うから続けていられるんだよ

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.70より掲載

 

■だいぶご無沙汰です。今年20周年っていうこと、そのタイミングでシングルが出ること、そのシングルの曲が『ブラフマン』っていう映画の主題歌になること。いろんなことを情報としては伺ってるけど。まず、シングルの『其限~sorekiri~』(それきり)は、『ブラフマン』っていう映画が先にあってのものだったのか、20周年っていうことがあっての流れになっているのか、どんな感じだったんですか?

TOSHI-LOW(Vo)「そもそも、この映画がいつ決まったものなのか、俺らがよくわかってないんだよね(笑)。ただ、実際にいろいろ始まったのは今年からだと思う。で、映画を撮ります、映画には主題歌が必要です、では主題歌を作ります、っていう流れでこの『其限~sorekiri~』を作って」

■じゃあ映画に関しては、送り手っていうより受け手に近い気分なんだ?

TOSHI-LOW「だって作るのは自分達じゃないからさ。そこに介入してもしょうがないじゃん。あとは、今までにスペシャとかでもBRAHMANのドキュメントはやってるわけだから。だから、何も介入せず空気のように箭内(道彦:監督)がそこにいるっていうのが何日も続くっていうだけ」

■自分達で「節目だから」って言って始めた映画かもしれないと思ってた。

TOSHI-LOW「まあ、節目じゃなかったらやってないとは思うけどね。ただ、自分達で『映画化してください!』っていうのは別にないじゃん?」

■じゃあ『其限~sorekiri~』は、映画の主題歌だっていうのは別にして、そろそろ新しい曲を届けたいっていう気持ちがどれくらいあってのシングルなの?

TOSHI-LOW「新しい曲を届けたいって常に思ってはいるけど、そんなに曲を作らない、作れないので。今回の主題歌みたいに『課題』があって作ることは少ないバンドだしね。少しずつ作って、アルバムになりそうだと思ったら大掛かりに作っていくっていうのをいつも4、5年かけてやってるからさ。こういう宿題みたいなものをもらってやるってことに対しては、『やるしかないよね』って、いつもとは違う感じだったと思う」

■じゃあ『超克』からいつもと同じような4、5年を過ごして行く過程で曲を作っていて、その上で20周年っていうエポックメイクなタイミングがあったからこうして形になったっていう感じだったの?

RONZI(Dr)「曲は……まあ、曲のパーツとかフレーズとかはちょこちょこ作ってるっていうくらいだったのかな?」

TOSHI-LOW「こういうのやりたいな、っていう話をして、そこでみんなのアイディアとかフレーズが出て、『やっぱりまとまんない』つって、それで1年くらい放ったらかしになってたりとか。そういうのはあったかな」

■でも、まとめたいじゃん。

TOSHI-LOW「そりゃそうさ。でもまとまらない時もあるじゃん(笑)。誰かがデモを作ってそれをコピーするバンドじゃないから。だから二転三転するし、最初に『こういうの』って言ってた部分がいつの間にかなくなっていても、最終的によければいいって感じだから、時間はかかるよね」

■そっか。今回の『其限~sorekiri~』を聴いても、『超克』の中の数曲を聴いても思ったんですけど、この3、4年、歌が凄く強くなってるんですよ。

TOSHI-LOW「でも、それもパートの1個だからね。その使命は果たしたいなとは思ってるし、それくらいなんだけど――」

■たとえば、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDを始めた頃に、TOSHI-LOWと「歌うことの意味」っていう話をさせてもらったこともあるんだけど。ただ、それだけじゃなくて、歌うこと・言葉を発することに対して以前と違う部分って今あるの? それは、震災があったっていうことを抜きにして。

TOSHI-LOW「うん、震災を抜きにしても歌とは向き合わざるを得なかったからね、個人的にも。それは自分の音楽人生として、そろそろやるのか、やらねえのかって決めなければいけない時だったから。それがあった上で、ちゃんと歌と向き合える自分に気持ちが向いたので今があるよ。だから、ヴォーカルっていうパートとしては『まだ伸びんじゃねぇかな』っていう部分を自分でも感じているんだけど」

■そういうヴォーカリストの心境の変化は、BRAHMANのメンバー全体にも何か変化をもたらしたんですか?

KOHKI(G)「変化……。僕、曲はそんなに変わらないと思うんですけど、歌う人が変わったのなら、それは変化してるんじゃないですかね。まずメロディが変わるんでしょうけど。――っていうのも、僕は曲がグルーヴを持っているとは思ってないから」

■人がグルーヴを持っているっていうこと?

KOHKI「そうです。だから、変わったんでしょうね。やっぱり、TOSHI-LOWくんが前よりも歌を大事にしている印象は自分も受けるから。何よりもそれでバンドは変わったと思います」

TOSHI-LOW「まあ、やっぱりみんな頑張ってるしさ。たとえば、ふとスタジオに行ったらRONZIが何時間も叩いてるとかね。俺はそれを横目に見ながら挨拶もしないで帰るんだけど、そういうのはお互いに見てるし、今もお互いにそういう関係や努力はあると思ってるので」

■でも、そういうストイックさは、昔からBRAHMANっていうバンドは潜在的に持ってるものじゃない?

TOSHI-LOW「でもさ、きっと昔からBRAHMANとしてのパフォーマンスには突出したものがあったと思うんだけど、各個人が音楽家としてどうなのか?っていう部分には、それぞれそんなに触れてこなかったと思うんだよ。それが弱点だとも思ってなかったしさ。だけど近年、『自分のパート』としていろんなセッションやいろんな人に呼んでもらったりすることがそれぞれ増えて、みんなが自分のパートに対して詰めなくちゃいけなくなってきて。それもあって、バンドだけじゃなく、いちギタリスト、ドラマー、ベーシスト、ヴォーカリストっていう部分にも向かわなくちゃいけなくなったんだと思う。で、それがまた楽しさを生んでいくと思うし、実際、そうやって他のパートが深くなっていくのを見てると『楽しそうだな』って俺も思うんだよね。それに『こいつ上手くなったな』って思うと、こっちも頑張るじゃん? そこに差があるとバンドの中でガタガタになるし、『頑張ってる』っていう質に関しては、『お前が5時間やってんなら俺も5時間やるよ』みたいな(笑)、自然な張り合いが生まれ続けてるんだと思う」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.16 by MUSICA編集部

Ken Yokoyama、8年ぶりのシングルで
闘いの果てに強き笑顔を掲げたその真髄を問う

今までは裸で見せていた乳首を、
すました顔でシャツを着たまま見せるようになったんですよ!
それって凄く大胆なチャレンジだったりするんです

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.62より掲載

 

■新曲聴きました。久しぶりのシングル、とってもフレッシュです。

「わおっ!」

■どれくらいフレッシュかって言うと、チャップリンの映画『モダンタイムズ』のカヴァーである4曲目の“Smile”が一番健くんらしいくらいフレッシュだなぁと思いました。このフレッシュ感は自分でも感じてたの?

「感じてましたね。実は、今回のレコーディングで15曲録ったんですよ。そこからシングルと、アルバムに振り分けるって作業をしたんです。だからシングルだけの狙いがあってこういうふうにでき上がったっていうのは意外とないんですよね。ただ、そのふたつを分けて話すのが難しくて(笑)」

■もちろん、このインタヴューが終わったらアルバムの音源もらえて、発売日とかも教えてもらえるんでしょ?

「うっ……も、も、も、も、もちろん……教えられますよー……。鹿野さんに聴いてもらわないで、誰に聴いてもらうんですか? ねえ?(とマネージャーのほうを泳いだ目で見ながら視線を外す)」

■くくく。健くんが問題ないなら、アルバムの話も踏まえて話をしてもらっても構わないんで、いろいろ聞かせてください。

「そうですね、トコトン話しましょう! ここ2年間くらいの話なんですけど、自分のポイントを音楽そのものに向けてみたんです」

■……えっ?

「あはははは! まぁ、ミュージシャンだから当たり前のことなんですけど(笑)。実はギター変えたんですよ。今まではレスポールとか、ESPから出している『助六』っていう自分のモデルを使ってたんですけど、そういうギターから『箱もの』って言われているギターを使うようになって」

■フルアコ(フル・アコースティック・ギター)とか、セミアコ(セミ・アコースティック・ギター)とか?

「そうです、そうです。それこそGibsonとか、Gretschとか。そういうのをここ2年間くらいで弾くようになったら、やりたいことが増えちゃって。それを今回盛り込んでみたんですよね」

■そういうギターを弾くのが楽しいと思えたのは、成熟なのか、変化なのか、どっちだと思う?

「それがね、わかんないんですよ……でも、20代の頃に箱ものを手にしていたとしてもハマらなかったと思うんですよね。40代になって、いろんなものを聴いて、結局俺がやるのはこれだ!ってアウトプットをしているけど、今はそれ(箱ものギター)を受け入れられる自分っていうのが、変化なのか成熟なのかっていうのがイマイチまだわかんないんですね」

■箱ものって「渋い」って感覚に繋がっていくよね、たとえば先日亡くなったB.B. Kingが彷彿とされるような。でも、今回の4曲はギターのフレーズで言えば、2曲目(“I Won’t Turn Off My Radio”)とか、3曲目(“Never Walk Alone”)とかは凄くジューシーに聴こえてくる印象を持ちました。さっきしてくれた話と今作ってどう繋がっているんですか?

「B.B. Kingって箱ものの代名詞じゃないですか? で、箱ものを手にして弾く前はなんとなく聴けてたんですけど、弾くようになったら今度はコピーしたくなったんですよ、ブルースの神様のギターを(笑)。何故こういうフレーズを作って、どんなマインドで弾いていたのかってところまで掘り下げて、一旦着地したら、今度は自分の曲にどう落とし込むのかにトライしてみたんです。だから機材の変化で渋くなったってことはないんですよ。僕の人間性自体がそもそも渋くないから……まぁ、よくも悪くもですけど(苦笑)。なんだろうな……僕って、枯れた感じはないじゃないですか?」

■そうだね。表向きギタリストとしては、光合成バツグンだね。

「(笑)でも、箱ものがもたらしてくれたのって、自分にとっては全然別世界だったんですよ。だからそれをどう出すのかっていうのは、去年くらいはずっと悩んでいましたね」

■爪弾くギターが変わったことによって、ソングライティングも明確に変わったってことなのね。

「そうです。今までだったらナシのものも、アリになってきたんですよね」

■僕は今作を聴いていて、健くんが久しぶりに肩の荷が下りた曲を作ってきたなって感じたんです。この感覚は間違ってる?

「ああ、なるほど……でも、曲を作っている時は、今までよりも自分を追い込んでたんですよ。やっぱり今まで手を出していなかったところに手を出すのは難しかったし。……正しいたとえかわからないけど、性格俳優の人っているじゃないですか? その人が今までとは別の演じ方を身につけて、どう今までの癖と合致させようかって考え出したら、結構大変な作業だって想像できますよね? 今回はそれをやった気がするんですよね。あんま好きな言い方じゃないんですけど、努力とか、勉強とか……その辺が……あれ? なんでこんな話してるんでしたっけ?(笑)」

■いや、簡単に言うとさ、乳首が立ったら単純にシャツを脱いで見せちゃえば乳首が立ったことが誰でもわかる。でも、今回はシルクのシャツを着て、その立っている乳首を敢えてシャツの上から見せるみたいな。そういうやり方のほうが猥雑だし面白いんじゃないかって思ったんだよね?

「ははははははは! 相変わらず凄いたとえ。でもそうかも(笑)。元々それができていた人もいたけど、僕はそれを今までやってこなくて。でも、今回はそれをやってみた!  シルクを着てみた!って感じですね(笑)」

■で、シルクの着心地はどうたったの?

「まぁ、見た目にはゴージャスに見えるし、すましているように見えるかもしれませんよね。でもそれを着ている本人にとっては凄く大胆なチャレンジだったりするわけで――」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.14 by MUSICA編集部

[Alexandros]、
MUSICA恒例の全曲解説で『ALXD』を徹底解明!!

余計なモノがなくなったのかな。余計な力というか。
ウチらはもう備わってる部分で
十分カッコいいはずだから、変な鎧を全部剥がして、
筋肉だけで強さを表現できるなっていうことに気づいたっていう

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.46より掲載

 

■前号の表紙巻頭特集は、“Famous Day”――その時はまだ“Gratest Night”という名前だったけど。

川上洋平(Vo&G)「そうだった(笑)」

■その曲、つまり今回のアルバムのレコーディングにおける最後の歌入れを終えた日の午後にインタヴューをしたわけですが。

川上「俺、たしか寝ないで行ったんですよね(笑)」

■はい(笑)。あれから約1ヵ月が経ち、その後マスタリングも済んでいよいよリリースを残すのみとなったわけですが。まずは改めて、自分達にとってどんなアルバムになったのかをそれぞれ教えてください。

川上「充足感で満ち溢れてますね。今までの達成感とは違う、ちゃんと自分達がやりたいことを理解して、それを作品として全部落とし込むことができたっていう満足感が今回はもの凄くあって。勢いと計算の両方で成り立ってる作品になったなっていう感じですね。そもそも、そういうやり方をしたいって思いながら臨んだ制作ではあったんですけど」

■それが完遂できた、と。

川上「そうですね、できたと思います。去年の前半にデモを作って、後半はそれをちゃんと見直しながら、最後まで1曲1曲きっちり作れたので。『自分達がこのバンドのファンだとして、本当にお金を出して買いたいと思えるのか』っていうくらいまで、自分達自身でもちゃんと1曲1曲を俯瞰で見ながら作業をしていけたんですよ。そこは今までと違いましたね。あと、今回は僕の中のモードとしてとにかくいい曲を作りたい、いいメロディを押し出していきたいっていうのが強くあって。そういう部分と後半に出てきたこの4人のロックバンド感を強く出したいっていう部分も含めて、凄く上手くいったんじゃないかなと思いますね。だから本当に満足してます」

■ヒロくんは?

磯部寛之(B)「俺も手応えありますね。今回は自分達の中でカッコいいと思うものをただやるだけではなく、それをどうやったらより広く、より大きな場所でちゃんと自分らのカッコよさとして伝えられるのかを意識して作ったアルバムで。だから今回満足しているのはもちろん、次以降に繋がる作品になったなって思います。今回の制作を通して俺らの中で培われたものが間違いなくこの音楽の中にあるんですよ。だから、手応えプラスこの先に向けての確信を改めて感じたアルバムになりました。次作がいつになるかはまだ全然わからないけど、すでに俺はそこが楽しみ」

■白井くんは、前回の取材時はまだ達成感がやってこないって話をしてたんですけど。

白井眞輝(G)「でしたね(笑)。でもやっぱりマスタリングが終わって、全行程が終わった時に満足感とか充足感、安堵感がドドドッてやってきて……フルマラソン走り切ったような感動がありましたね。1個の仕事が終わったっていうよりも、凄くいいものを作り上げられた充足感というか。で、それから2、3週間経って、やっと最近フラットな状態で聴けるようになってきたんですけど、本当にいい曲が揃ってるなと思うし。今回は音質も凄くいいし、そういった観点から見ても、凄い聴き応えのあるものになったと思いますね」

庄村聡泰(Dr)「達成感という意味で言うと、俺自身は今回は凄く健康的な達成感はありますね。今まではやっぱり、終わった後にかなり肩で息してた感があったんですけど(笑)」

■というか、今までは録ってる最中からそういう感じがあったよね(笑)。

庄村「そうっすね(笑)。でも、今回はそういう切迫した感じとはまた違う、凄くフラットな感覚の中でいいものができたなぁという達成感があって。気合いは入ってるんですが、でもある意味ではカッコつけてない感じがあるし、自然体なアンサンブルでもあるような気もしますし……やっぱり温かみがあるんですよね。今まで以上に我々の姿が見えてくるんじゃないかっていうのは自分でも感じます」

 

1.ワタリドリ

 

■これは直近のシングルになった曲ですが、1曲目に持ってきた意図を含めて、改めて思うところを。

川上「最初はイントロっぽい曲を1曲目に持ってこようと思ってたんですけど、さっき話した『いいメロディを押し出していきたい』、自分が表現したいのはそこなんだっていうモードから考えると、一発目からそこを提示する、ドーンと強いメロディを持ってきたほうがいいなって考えるようになって。で、“ワタリドリ”ができた瞬間に、これは [Alexandros]がこれからどこかに向かう時の突破口になるような曲になるのかなって思ったんですけど、であれば、シングルだけじゃなくてアルバム1曲目として持ってくればいいんじゃないか、それこそ名刺代わりになるんじゃないかと思ったんですよね。で、これを1曲目に置いて流れを想像した時に上手くいったので。イメージとしては、U2の“Beautiful Day”で始まるアルバム(『All That You Can’t Leave Behind』)。あのアルバムもまず何よりも曲がドーンッ!と来て、これからU2がやりたい方向を提示するっていう――あの時って、U2が原点回帰した時なんですよね。それまでいろいろ勝手なことやってきた中で、メロディに帰っていったっていう時期。それが今のウチらと凄い似てるなと思ったんですよね」

■ただ、いいメロディを出したいっていうのは、それこそ前作でも言ってたことだと思うんだけど。改めて今回そう強く思ったのはどうしてだったんですか?

川上「……余計なモノがなくなったのかな。余計な力というか。ウチらはもう備わってる部分で十分カッコいいはずだから、変な鎧を全部剥がして、筋肉だけで強さを表現できるなっていうことに気づいたっていう。あとは自分達が持ってる脆さみたいなものだったり、そういう部分の表現をもっと打ち出してもいいのかなって思ったんですよね。だから、たとえば前作で言うと“Rise”とか“Stimulator”って今でもライヴでやっててめちゃカッコいいし、このアルバムにもそういう部分はあるんだけど、でも一番大事なものを一番最初に持っていくっていうシンプルなことを今回はやりたいなと思って。“Rise”もメロディはいいけど、やっぱりイントロ長いから」

■アルバムのオープニング、プロローグ感あるよね。

川上「そうそう。でも今回はそういうの抜きに、いきなり大事なものを打ち出すっていう。それが本当の自分達にとってのオープニングなのかなと思ったんですよね。何が正解で不正解ってことではないけど、自分達にとってはこれが答えだったんでしょうね」

■聡泰くんは今回のタームでずっと、「いろんなこだわりはあるけど、最終的には俺のドラムは聴かなくてもいい。歌を聴いて欲しいんです」ってことを言っていて。それも今の洋平くんの話と繋がってくるよね。

庄村「そうですね。“ワタリドリ”に関しては1グルーヴで押し切ったっていうのも結構デカくて。1グルーヴの中でメロディが縦横無尽に跳ね回るっていうよさに関しては、洋平のメロディに引っ張られた感じが大きかったのかなって。一番聴かせたいもののためにそこまで引き込む術を教えてくれたような大事な1曲です。あと1曲目っていうところで言うと、俺はそもそも自分がアルバムを聴くのであれば、1曲目って自分が聴いたことのないところから幕開けが始まって欲しいと思う派だったんですよ。なんですけど、今の洋平の話を聞いたり、ならびに次の“Boo!”に行く展開を聴くと、1曲目は知ってる入口だけど、そこからとんでもないジェットコースターが始まるみたいな感じがして。そこで腑に落ちた感じがありましたね」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.14 by MUSICA編集部

降谷建志、ひとりの人間として挑んだ
ソロアルバムのすべて

俺はジミヘンにはなれないし、KenKenにもなれない。
でも、そのコンプレックスが今の自分を作ってる。
敗北感を味わってきた自分が、
こうやって全部できるようになって。
それをちゃんと誰にでもわかる形で
提示できたっていうのは、めちゃめちゃ嬉しいね

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.36より掲載

 

■4月号の表紙巻頭でソロ第一声インタヴューをやらせていただいて、何故このタイミングでソロ名義での活動を始めたのか、そこにどんな意図や想いがあるのかという話はたっぷり聞かせてもらったんですが、アルバムが遂に完成して。これは本当に素晴らしい作品が誕生したなと思いました。

「ありがとう!」

■あの時は“Swallow Dive”含めて5曲を聴かせてもらって取材をしたんですけど、「いろんな可能性があったはずだけど、その中でもど真ん中を来ましたね」っていう話をしたんですけど。

「うん、したね」

■それはこうやって完成したアルバムを通して聴いても改めて感じて。オルタナティヴロックを基軸にいろんなエッセンスを取り込んだ音楽性にしても、リリックに綴られた心情にしても、建志さんの人間性や音楽家としてのバックグラウンドがはっきりと浮かび上がってくるパーソナルな音楽であると同時に、自分の音楽とメッセージをちゃんと人に届けよう、伝えようという意志も自覚も強い作品になったなと思ったんですけど。

「言ってみれば、ブログだからね。私的なことを書くけど、でも伝わらないと意味のないもののナンバーワンじゃん、ブログって。空想で書かないでしょ? で、これは本当に俺版ブログみたいなもんだからさ」

■ただ、ひっそりと想いを綴るブログっていうのもあるじゃないですか。でもこれはそういうものじゃない。同じブログでもネットの片隅でひっそりと独白していくようなものではなくて、ちゃんとポピュラーミュージックとして人に届けていくことを前提としているものだと思う。

「人に届けようっていう意識はもちろんあるよ。音楽なんて人に聴いてもらえなければ意味がないもんだと思ってるから。だし、前に話した通り自分の名前で出す作品をサイドプロジェクトにしたくないっていうのはすげぇあったけど。でも、これがポピュラーなものなのかどうかっていうのは、自分じゃなんとも言えないな。それはわかんない。全部の楽器を自分で弾いちゃってるから、グルーヴも含めてあまりにも自分過ぎてさ。Dragonよりも全然俯瞰できてない」

■Dragonに関して言えば、単純にメンバーと一緒にやってるってことだけじゃなくて、建志さん自身がDragon Ashというバンドに対してある種の客観性も持った上で音楽を作ってますしね。

「そうね。俺はDragonでやりたいこと、やれること、やるべきことみたいな見定めがはっきりしてるから。たぶん人によってDragonに対して持ってるイメージはそれぞれ違うんだろうけど、俺としては『Dragonだからこうしよう』と思って曲を作ってるし、アレンジもしてるっていう。でも、ソロに関してはそういうんじゃないからさ。自分で『あ、やっぱ俺ってこうだよな』っていう予定調和を感じてしまうところも含め、いいところも悪いところも全部がとにかく自分らしいっていうか、ほんと自分そのものだなって感じのものだから。客観視できないよね。これまでプレイヤーとしてもソングライターとしても、ほんとにすげえいろんな音楽やらせてもらってるけど、自分だけとこんなに対話するっていうのは俺自身、初体験だし。………プロデュースとかリミックスとか客演とかいっぱいやらせてもらってる要因として、俺は求められることにも幸福に感じるのね。そこをあんまりストレスに感じない」

■求められたもの、必要とされるものに応えることにも喜びを感じると。

「そう。『こういうの一緒にやりたいんだよね』とか『こういうのやって欲しい』って言われるのも全然嫌じゃないっていうか。『カルボナーラください』って言われて作って、相手もカルボナーラ来るのわかってて食って『美味い!』って言われる感じも嬉しいし、楽しめるから」

■さらに言えば、そこで抜群に美味しいカルボナーラを出してやるぞ!みたいな心意気も自負もある、みたいな。

「そうそうそう」

■人間って、誰かに必要とされることによって自分の存在意義だったり存在そのものを自分自身でも認められたり、実感できたりもするじゃないですか。今話してくれたことには、そういう部分もあるんですかね?

「そうだね、俺が自分の存在を実感できるのはやっぱライヴだけど、でも音楽家としてのアイデンティティを自覚できる瞬間ではあるよね。要は、いろんなことにコンプレックスを抱いていて生きてきたわけでさ。いっくらギター練習しても、ナンバーワン・ギタリストとは言われないし」

■ああ、それは自分がってこと?

「そう。どの楽器をいっくら練習しても、『やっぱKjは普通に楽器弾けるもんね』みたいなこと言われちゃうし」

■ま、普通に弾けるっていうレベルではないですけどね。

「だけどさ、やっぱ俺はジミヘンにはなれないし、KenKenにもなれないんだよ。でも、そのコンプレックスが今の自分を作ってるし、結果的にひとりで全部できるようになったのもそのコンプレックスのおかげだから。歌だけで自分を表現できたらこんなことしないのかもしれないし、ギターだけで人を唸らせられたら言葉も紡がないかもしれないけど、でも俺はそうはなれなかったから。そうやって敗北感を味わってきた自分が、今こうやって全部できるようになって――今回のアルバムって、そういう自分を誉めてやれる一番わかりやすい形じゃん? 全部の作詞作曲アレンジも全部の楽器も自分でやって、この名前で出すっていうのは。で、それをちゃんと誰にでもわかる形で提示できたっていうのは自分ならではだとも思うし。そういうことができたのは、めちゃめちゃ嬉しい」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA7月号 Vol.99』

Posted on 2015.06.14 by MUSICA編集部

Mr.Children、本誌独占・『REFLECTION』
メンバー全員インタヴュー!!
新たな選択と共にゼロから立ち向かった
挑戦の軌跡、心情、そのすべて

音楽シーンを変えるためにこのアルバムを作ったわけじゃないし、
僕らの音楽が音楽として正しいんだって思っているわけでもない。
でも、この作品を評価して欲しい気持ちは、
高校生ぐらいの強い気持ちで持ってます(笑)

 

■えー……なんか、いい景色ですよ。

鈴木英哉(Dr)「ん? 何が?」

■4人でテーブル囲んでいる、この景色が。とても久しぶりなもので。

田原健一(G)「いい景色かどうかは置いといて、こちらとしても随分と久しぶりですからね」

■そっか。4人でインタヴューするのは『SUPERMARKET(FANTASY)』の時以来なもので、あれやったの2008年の暮れだから――。

鈴木「7年ぶり!? そっかぁー。インタヴューやってないもんね、最近みんなで一緒に」

桜井和寿(Vo)「あ、でもファンクラブの会報とかではあるよね」

鈴木「うん、そういうざっくばらん的なやつはあったけど。気合い入ってますよー! 自信はまったくないけど」

■ははは、そのままでいてください。よろしくお願いします。

一同「よろしくお願いします」

■これを読んでもらう時は、アルバムがリリースされて約10日後になります。どういう状況になってるか楽しみですね。

鈴木「そうですねぇ、やっとできたんでねぇ。この前、ちょうど(ツアーの)広島2日目の時に『~{Naked}』のでき上がったやつをやっともらって。完成形のやつを初めてもらってやっと実感が湧いてきた状態だから。発売されるなんて夢のまた夢のようなもので(笑)。どうでしょうねぇ」

■結果、なかなかない非常に斬新な形のリリースで。USB盤の23曲の中には、CM4曲、テレビ番組が2曲、映画が3曲のタイアップもありつつ、直前まで一切のオンエアなく、ライヴだけでいろいろ披露していったっていうことも含め、いろんなことをお訊きしたいんですけど。まずは、ナカケイから今回のアルバムに対しての率直な想いを語ってください。

中川敬輔(B)「でき上がってからは、もう早く形として自分のところに来ないかなって思ってて(笑)。さっきのJENと同じ気持ちでした。ライヴでは去年からやってたけど、形として手に取るまでが凄い長かったんで、今回は。まぁでも、2月までレコーディングしてましたからね。……(レコーディングが)始まった頃はどこまでかかるかとか想像もしてなかったんですけど……今までの自分達のペースを考えてもこんなにかかるなんて思ってなかったし、こんだけの曲数が出てくるとも思ってなかったんで、誰が締め切りを作っていくんだろうっていうのが最初の印象でしたね(笑)」

(中略)

■田原くんはどうですか?

田原「……何言えばいいんですかね?(笑)」

鈴木「ふふふふふふふふ」

田原「俺もそういうのいろいろ言いたいけど………僕らにとっちゃ2年7ヵ月って長くて、本当にいろいろあったわけですよね。『~blood orange』のツアーが終わって、休んでる間に『デモテープを作っているらしい』っていう噂が聞こえてきて」

■どうやって人づてに伝わってくるんですか(笑)。

田原「まぁマネージャーさんあたりから(笑)」

鈴木「『あたりから』!(笑)」

田原「だって、休んでるわけじゃないですか。俺以外も休んでると思ってるわけですよ。そう思ってるから休めるわけで。でも作ってると。それも1曲、2曲じゃないらしい、と。そういう状況から始まっていくわけです」

■それって休んでる自分のコンディション的にはどういう感覚なの?

田原「いや、『~blood orange』終わって、それはそれでやり切った感じもあったわけですから」

■ツアー、凄く長かったしね。

田原「ただ、それでも(ツアーの中で)足りないものとかを感じて終わってるわけでしょ? そういう意味でも休みないわけでしょ? そういうものを探したり、自分の中に補充したりしないといけないわけだから。それでもなんとか休もうとしている矢先にですよ。……俺が何もしてない時に全開でやってる奴がひとりいる、と(もちろん桜井のことです)」

鈴木「ははははははははは! ほんと、ひとりだけフルスロットルだったもんな。こっちニュートラルなのに(笑)。……本格的なレコーディングに入る前というか、“REM”とか“放たれる”は先にできてるんで、ガシッとレコーディングに入る前に――たしか一番最初に聴いたのは“WALTZ”だったよね? 違ったっけ?」

桜井「ん? そうかなぁ」

鈴木「そうだったよ。最初に“WALTZ”みたいなのが来たから、『うっひょー!』って思って」

(中略)

■全身全霊の日々を振り返って、桜井くんはどうですか?

桜井「凄く嬉しいし、今まで以上に愛情が深い作品ですね。作品の愛情ももちろん深いけど、完成するまでに費やしてきた時間への愛情がとても深いし、Mr.Childrenっていうチームに対しても改めて大事に思いますね」

■今回、スタート地点から何が違ってたんだと思います?

桜井「ひとつは、『~blood orange』っていうアルバムが震災以降初めてのアルバムで、あれを作る時にミュージシャンのエゴとか探究とか自分が音楽を楽しむっていうことがちょっと罪悪に思えていたから――それはたぶん僕だけじゃなくて、いろんな表現者の人が同じように思ってたかもしれないんだけどね。……『~blood orange』っていうアルバムがそんな想いでできて、それが終わってツアーを回ってしばらく経って――僕らは被災者ではないけれど、それでも時間が経って少し傷みたいなものが癒えた時に、自分から生まれてくるものが自然ともの凄くマニアックなものだったんですよね。だからこその“WALTZ”とか――」

■“REM”も、言わばそういう曲だよね。

桜井「“REM”もそうだし、“You make me happy”とか“Jewelry”とか、全部そう。自分が作ってるからMr.Children的じゃないとは思えないけど、でも、シングル的なものが最初は一切浮かんでこなくて」

鈴木「あー、そうだったね」

■自分が音楽で遊びたかったからシングル的なキャッチーなものが出てこなかったのか、もしくは全然違う理由だったのか、どういう感じですか?

桜井「遊びたかったというか、やはり(震災から)時間が経って解放されたんだと思いますね。ちょっとだけ閉じ込めてあった分だけ、そこから逆に反動として遊び心とか探究心みたいなものが働いてたとは思います」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』