Posted on 2015.06.16 by MUSICA編集部

Ken Yokoyama、8年ぶりのシングルで
闘いの果てに強き笑顔を掲げたその真髄を問う

今までは裸で見せていた乳首を、
すました顔でシャツを着たまま見せるようになったんですよ!
それって凄く大胆なチャレンジだったりするんです

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.62より掲載

 

■新曲聴きました。久しぶりのシングル、とってもフレッシュです。

「わおっ!」

■どれくらいフレッシュかって言うと、チャップリンの映画『モダンタイムズ』のカヴァーである4曲目の“Smile”が一番健くんらしいくらいフレッシュだなぁと思いました。このフレッシュ感は自分でも感じてたの?

「感じてましたね。実は、今回のレコーディングで15曲録ったんですよ。そこからシングルと、アルバムに振り分けるって作業をしたんです。だからシングルだけの狙いがあってこういうふうにでき上がったっていうのは意外とないんですよね。ただ、そのふたつを分けて話すのが難しくて(笑)」

■もちろん、このインタヴューが終わったらアルバムの音源もらえて、発売日とかも教えてもらえるんでしょ?

「うっ……も、も、も、も、もちろん……教えられますよー……。鹿野さんに聴いてもらわないで、誰に聴いてもらうんですか? ねえ?(とマネージャーのほうを泳いだ目で見ながら視線を外す)」

■くくく。健くんが問題ないなら、アルバムの話も踏まえて話をしてもらっても構わないんで、いろいろ聞かせてください。

「そうですね、トコトン話しましょう! ここ2年間くらいの話なんですけど、自分のポイントを音楽そのものに向けてみたんです」

■……えっ?

「あはははは! まぁ、ミュージシャンだから当たり前のことなんですけど(笑)。実はギター変えたんですよ。今まではレスポールとか、ESPから出している『助六』っていう自分のモデルを使ってたんですけど、そういうギターから『箱もの』って言われているギターを使うようになって」

■フルアコ(フル・アコースティック・ギター)とか、セミアコ(セミ・アコースティック・ギター)とか?

「そうです、そうです。それこそGibsonとか、Gretschとか。そういうのをここ2年間くらいで弾くようになったら、やりたいことが増えちゃって。それを今回盛り込んでみたんですよね」

■そういうギターを弾くのが楽しいと思えたのは、成熟なのか、変化なのか、どっちだと思う?

「それがね、わかんないんですよ……でも、20代の頃に箱ものを手にしていたとしてもハマらなかったと思うんですよね。40代になって、いろんなものを聴いて、結局俺がやるのはこれだ!ってアウトプットをしているけど、今はそれ(箱ものギター)を受け入れられる自分っていうのが、変化なのか成熟なのかっていうのがイマイチまだわかんないんですね」

■箱ものって「渋い」って感覚に繋がっていくよね、たとえば先日亡くなったB.B. Kingが彷彿とされるような。でも、今回の4曲はギターのフレーズで言えば、2曲目(“I Won’t Turn Off My Radio”)とか、3曲目(“Never Walk Alone”)とかは凄くジューシーに聴こえてくる印象を持ちました。さっきしてくれた話と今作ってどう繋がっているんですか?

「B.B. Kingって箱ものの代名詞じゃないですか? で、箱ものを手にして弾く前はなんとなく聴けてたんですけど、弾くようになったら今度はコピーしたくなったんですよ、ブルースの神様のギターを(笑)。何故こういうフレーズを作って、どんなマインドで弾いていたのかってところまで掘り下げて、一旦着地したら、今度は自分の曲にどう落とし込むのかにトライしてみたんです。だから機材の変化で渋くなったってことはないんですよ。僕の人間性自体がそもそも渋くないから……まぁ、よくも悪くもですけど(苦笑)。なんだろうな……僕って、枯れた感じはないじゃないですか?」

■そうだね。表向きギタリストとしては、光合成バツグンだね。

「(笑)でも、箱ものがもたらしてくれたのって、自分にとっては全然別世界だったんですよ。だからそれをどう出すのかっていうのは、去年くらいはずっと悩んでいましたね」

■爪弾くギターが変わったことによって、ソングライティングも明確に変わったってことなのね。

「そうです。今までだったらナシのものも、アリになってきたんですよね」

■僕は今作を聴いていて、健くんが久しぶりに肩の荷が下りた曲を作ってきたなって感じたんです。この感覚は間違ってる?

「ああ、なるほど……でも、曲を作っている時は、今までよりも自分を追い込んでたんですよ。やっぱり今まで手を出していなかったところに手を出すのは難しかったし。……正しいたとえかわからないけど、性格俳優の人っているじゃないですか? その人が今までとは別の演じ方を身につけて、どう今までの癖と合致させようかって考え出したら、結構大変な作業だって想像できますよね? 今回はそれをやった気がするんですよね。あんま好きな言い方じゃないんですけど、努力とか、勉強とか……その辺が……あれ? なんでこんな話してるんでしたっけ?(笑)」

■いや、簡単に言うとさ、乳首が立ったら単純にシャツを脱いで見せちゃえば乳首が立ったことが誰でもわかる。でも、今回はシルクのシャツを着て、その立っている乳首を敢えてシャツの上から見せるみたいな。そういうやり方のほうが猥雑だし面白いんじゃないかって思ったんだよね?

「ははははははは! 相変わらず凄いたとえ。でもそうかも(笑)。元々それができていた人もいたけど、僕はそれを今までやってこなくて。でも、今回はそれをやってみた!  シルクを着てみた!って感じですね(笑)」

■で、シルクの着心地はどうたったの?

「まぁ、見た目にはゴージャスに見えるし、すましているように見えるかもしれませんよね。でもそれを着ている本人にとっては凄く大胆なチャレンジだったりするわけで――」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』