Posted on 2019.01.29 by MUSICA編集部

JQの心が解放された最高傑作が生まれた!
ストレートな自己表現、着飾ることないソウルフルな歌と、
ワールド・スタンダードなポップソングを収めた新作、
『Blank Envelope』完成! これが本物のNulbarichだ!

 

撮影=畑中清孝

たぶん僕達のライヴを観てもらったら、
どれだけ着飾ってないかがわかると思うんですよ。
俺達はどのアーティストよりもカッコつけてないと思う

『MUSICA2月号 Vol.142』より引用

(前略)

■これまでのアルバムのリリース・タイミングに敢えて意味づけをするとしたら、最初の『Guess Who?』は挨拶代わりの1枚だったと思うんです。そして2018年の『H.O.T』は凄く追い風の中で出したアルバムであり、当時はまだ公に発表していませんでしたが、武道館公演も決まっている中でリリースする作品ということもあって、勢いをどれだけモノにできるかっていう位置にあったアルバムだったのかなと。

「なるほど」

■それで言うと、この『Blank Envelope』は本当の意味で真価や実力を問われるアルバムになると思いますが、ご自身ではこの作品は何を一番意識して作っていった実感がありますか。

「何事も3代目とか3枚目って、一番ムズいって世間的には言われていると思うんですけど。僕としてはタイトル通りの1枚というか――タイトルの『Blank Envelope』って、直訳すると『空っぽの封筒』っていう意味なんですけど。これを『エンプティ』ではなく『ブランク』にしたのは、『中身がない』っていう意味ではなく、『タイトルに何もない状態』、つまり『宛名がない封筒』っていうイメージでつけたからで。宛先は考えず、とりあえず自分達のすべてを詰め込むことに集約したアルバムです。本当に、これまでで一番無心に作れたアルバムかもしれない。初期の“NEW ERA”もそうですけど、Nulbarichになってから作ったものは、『これから行くぞ』っていうようなことを歌っているものが多くて。今思うと、(自分のバンドを組むのは)初めてだったので認めてもらいたいっていう欲と、自分達のやりたいことをやりたいっていう気持ちのバランスを探すような意識が、どこかで働いていたのかなって思うんです。でも、今回は本当にそういう気持ちがゼロだった。『作りたい曲を作る』っていうマインド以外はなくしていたし、楽曲の宛先を決めなかったからこそ一番自由に書けました」

■節操のない言い方をすれば、日本の中で売れなきゃいけないっていう気持ちと、でも自分のフェチな部分も失っちゃいけないっていう、そこの天秤の図り方を凄く考えながら作ってきた方だと思うんですよね。

「日本で生まれて日本で育っているんで、普通に生きてれば自然と邦楽が耳に入ってくるじゃないですか。そういう自然と邦楽を取り込んできた自分と、好きで洋楽を聴いてきた自分っていうのがセパレートされていたんで、どっかで勝手に動くスイッチがあったのかもしれないですね。でも、自分が好きなメロディを作っていく中で、こっちのほうが気持ちいいなと思うものがJ-POPっぽいものも多かったのは事実で。その上2018年は本当にインプットが多かった1年で、ツアーも規模を上げてやらせてもらったり、単独で武道館公演をやらせてもらったり、ポッと思いつきで海外で制作させてもらったり、豊富な経験をさせてもらった1年だったので。自分の中の正解、不正解の判断が少しずつ進化している感じはしました。それで表現の幅も広がったのかなと思います。今回は音楽性の幅、ジャンル感の幅が広まって、いわゆるワールド・スタンダードの音をしっかりと取り入れていったアルバムにはなったかなと思います」

■まさに。“Toy Plane”をはじめ、トラップを取り入れたソングライティングが発揮された作品にもなっています。何故そういう制作に踏み込めたんだと思いますか。

「なんでだろうなぁ。まあトラップ要素に関しては、純粋に好きだからっていうことなんですけど。でも、敢えてやってこなかったものとかも、振り切ってちゃんとやろうよっていう気持ちはありました。それこそトラップで言うと、今まではバンドで再現する時に、これやっちゃうのはどうなんだろう?とか、懸念していた部分も結構あったんです。でも、もうバンドとトラックの表現はシームレスになってきているから。ここ避ける理由はまったくないなと」

■そういう時代ですよね。

「トラック・スタイルの人達がバンドを混ぜながらライヴをするんだから、バンドもトラップやっていいでしょ?っていう。作品としては今までよりもよりグッド・ミュージックが揃ったものになったし、みんながワーっとなっているものを想像できるものにフォーカスしていったものが多いかな」

(続きは本誌をチェック!

text by黒田隆太朗

『MUSICA2月号 Vol.142』