Posted on 2017.08.21 by MUSICA編集部

ツアーを終えたばかりのKEYTALKから
早くもニューシングル『セツナユメミシ』が到着。
感傷と情熱を露にした新曲の深部を紐解く!

MCで喋って、自分の言葉で伝えることが
大切なんだなと思いました。
その時に思っていることを伝えるって、
凄く力があることだし、ステージに立つ以上、
そういう力強いものも必要だなって思い始めて(寺中)

MUSICA 9月号 Vol.125P.94より掲載

 

(前半略)

■まず“セツナユメミシ”は、和的なフレーズやメロディが際立つ楽曲で。歌詞も含めて、とても和の世界観を押し出した楽曲なんですけど。

首藤「この曲は、『境界のRINNE』の雰囲気を踏まえて書き下ろした曲で。おっしゃっていただいたように、和風な雰囲気と軽快なリズムで作って――そこは前からKEYTALKらしい部分ではあったんですけど、ここでもう1回新しいメロディを作ってみようと思って。歌詞も和を感じるワードを積極的に入れようと思って、そういう部分も混ぜつつ作っていきました」

■歌詞としても確かに<刹那>や<一期一会>、<蜃気楼>みたいな古風な言葉が多いんですけど、その中で<一瞬の夢 僕らは空へ向かい><未来のひとかけら>っていう歌詞も含め――首藤さんの歌詞は“ASTRO”みたいな楽曲も含め、今から未来や明日を見つめているような描写が多いと思うんですよね。

首藤「自分としては、あまりネガティヴな感じでは作ってないんですよね。単純に『いいことあるといいな』とか、『この先に綺麗な景色が広がるんだ』みたいな、どっちかと言うとポジティヴさみたいなものを表していて」

■逆に言うと、今に物足りなさを感じているとか、未来が凄く遠いものだと思っているところもありますか?

首藤「どうなんですかね………この曲に関しては、あんまり意識はしてないですね。曲によっては、『今は上手くいってない』って思って書いてるのもあるんですけど、僕が個人的にどうこうっていうよりは――要は、歌詞の主人公は僕なわけではなくて。ペルソナって言うんですかね? そういう架空の人物像を設定して書いてるんですよね。それも限りなく自分に近いところにいる架空の人物って感じなんですけど」

■第2の主人公みたいな。

首藤「そうですね。そのペルソナの周りに物語を作って、それを歌詞にするみたいなイメージです。そういう書き方はこれまでも多いんですけど、ここ最近は割と自分自身になるべく近い距離に設定する歌詞が増えてきたりはしてきてて。それこそ“ASTRO”とか“Love me”はそういう感じだったんですけど。自分としては、物語的な感じで作ってますね。この曲はそんなにストーリー性を掘り下げないようにしようと思ってて。あんまり感情面においては深い表現を盛り込まないようにしよう、と」

■雰囲気重視ってことですよね。

首藤「そうですね。書き下ろしっていうのもあったので、僕が作り込み過ぎるのはなんか違うかなって思ったので。だから、言葉の響きを優先させたいなって思ったんですよね。どっちかと言うと、1曲の歌詞をザーッと通して読んだ時に何か感じるようなものではなくて、センテンス一つひとつの美しさみたいなものを優先させたっていう感じですね」

■だからこそ、フレーズの妙はありますけど、とても歌いやすいものになってますよね。そして、小野さんの“タイポロジー”。この曲もとてもアグレッシヴで、ザクザク切り込んでいくタイプの非常に快感指数の高い楽曲なんですけど。

小野「これは、同じコード進行でどんどん調だけ変えていく楽曲を作りたくて。そういう思いつきから、ここまでの大曲になりましたねぇ(笑)。非常に気に入ってます」

八木「武正の曲って、エモーションとか叙情感のある曲と、明るい曲の2タイプがあると思うんですけど、その明るい曲のほうなのかなっていう感じは受けましたね」

首藤「うん、僕も武正の曲だなって一聴してわかる曲だなって思いましたね。明るいし、テンポも軽快で、歌のキーもちょうどよかったりして、歌ってて気持ちいいなって。ミュージシャン目線でも面白いアイディアが詰まってるし、メロディそのままでコード進行だけ変わってたりするんで、面白い曲だなって思いましたね」

■この曲もそうなんですけど、小野さんの曲ってご自分の社会に対する思いだったり――それこそ“タイポロジー”っていうタイトルもそうですけど、学術的な部分だったりも入ってきたりしていて。こういう曲になっていくのは、ご自分のどういうメンタリティがあるからなんですか?

小野「なんですかね………単純に、そういう事柄や哲学的な思想を考えたり、妄想するのが好きっていう表れなんですかね?」

■かつ、メッセージとして<他愛無い会話に忍び寄る/情報操作の罠も然り>っていう社会に対する警鐘的な部分も入ってくるわけですよね。

小野「まぁあんまこういう歌詞ってないかなって思ってるんですよね。字面だったり、雰囲気だったりもそうですけど、音楽的にも言葉的にも一聴してあんまり聴いたことない感じのものとかが好きだったりするんですよ。どうして楽曲に対してこういうアプローチになるのかっていうのもそうで、自分がいろいろ音楽聴いたりしていく中で、初めて出会うものにしたいからこうなるんですかね。自分が聴いたことがあったり、見たことがあったりしたものじゃなく、新しいものを作っていきたいっていうところへの好奇心があるので」

■はい。語感の気持ちよさだけじゃなく、そこにメッセージが乗っていくところが小野さんの歌詞のオリジナリティになってますよね。

小野「そうですね。リズム感の気持ちよさだけじゃなく、意味があるものにはしたいと思ってるので。かつ、意味があり過ぎても嫌なので――まぁ意味があり過ぎるっていうのは、メッセージ性が強過ぎて、リズムを無視しちゃうのがあんまり好きじゃないのでっていう意味なんですけど。だからこそ、そのふたつが合わさった曲になっていくんじゃないかと」

(続きは本誌をチェック!

text by池上麻衣

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.21 by MUSICA編集部

最高に粋で異色なシングルで
メジャー進出を果たすCreepy Nutsの信念を、
R-指定とDJ松永が歯に衣着せず語り尽くす!

ツッコまれないようにしてきた人間と、
ツッコまれて失敗してきた人間だったら、
たぶん俺はいっぱいツッコまれて失敗してきた側で。
そっちのほうが幸せだと思うんです。ツッコんできた側より
ツッコまれてきた側の人間のほうが厚みがあると思うから(R-指定)

MUSICA 8月号 Vol.125P.78より掲載

 

(前半略)

■この1時間7分のラジオを挟んで、前後に曲が入っていて。今回、この2曲でダブルA面的な形だと聞いているんですけど。1曲目の“メジャーデビュー指南”という曲は――ラジオでも自虐的に言ってるんですけど、これは音楽というより「喋り」の曲になってるわけですよね。だから、一貫して自虐的な攻撃心に溢れている曲だなと思ったんですけど。

松永「これ、トラックだけは昔からあって――」

■そう、喋りとはいえ、トラックが凄くカッコいいんですよ。ジャジーだしファンキーだし、プログレのようにも聴こえるし、BECKの“Loser”的なオルタナ感もあるし。

R-指定「そう。それにどうラップ乗せるか?っていうのをずっと悩んでたんですよね。トラック自体がカッコいいから、いつか使いたいとは思ってたんですけど、『これ、ラップ乗せれるか?』って思ってて。結果として全然違うものにはなったんですけど、ウルフルズさんの“大阪ストラット”っていう曲あるじゃないですか。ずっと関西弁で喋ってる曲。SHINGO★西成さんっていうラッパーの先輩の曲でも、語りだけの曲があるんですよ。そういう関西弁のリズムって、細かくラップの譜割を考えるよりも、関西弁自体にリズムと独特の音程があるから、このトラックはそれが合ってるかもなと思って。こんだけトラック自体がカッコいいんで、それに負けないラップってなったら、もしかしたらただ関西人が喋ってるだけじゃないとトラックに勝たれへんかもなっていう思いもあったんで。で、このタイミングでメジャーデビューの曲もう1個作ろうってなった時に、じゃあこのトラックで喋る曲をやってみたいっていう提案をして、作り始めたんですけど」

松永「僕も元々喋りの曲が聴きたかったんですよね。喋りの中にもリズムがあって、途中で何ヵ所も韻踏んでたりしますし、落語のサゲみたいな感じで、話も綺麗にオチがつけられてるし。最初はメジャーのタイミングで“合法的トビ方ノススメ”みたいな曲を出そうかっていう話もあったんですけど、このタイミングでこのぐらい変なことするのもアリかなと思って」

■メジャーに至るまでの2枚(『たりないふたり』、『助演男優賞』)って、Creepy Nutsは非常に音楽的なユニットであるっていうことがひとつの魅力として伝わっていた作品だったと思うし、『フリースタイルダンジョン』のラップ人気が先行していたところに対して、自分達の中での確信とプライドがあったと思うんですよね。逆に言うと、「自分達はただのヒップホップカテゴリーの中で音楽を消化してる人にはできない音楽をやってるんだ」っていう自負もあったと思うんですよ。で、今回メジャーのタイミングでこういう作品を出してくるっていうのが凄いなと思うし、敢えて攻めてるなと思ったんだよね。

松永「完成前のラフの段階で、Rと『ただのあるあるネタにするのは違うね』っていう話をしたんですよ。最初は、『メジャーに行って、俺らがこうなったら止めてくれ』っていう羅列のラップを形にする方向で行こうかなっていう話をしてたんですけど、もしかしたら今ってあるあるは食傷気味かもねっていう話になって」

R-指定「そう。その最初やろうとしてたあるあるっていうのは、アーティストにありがちな『こういうことをし出したら止めてくれ』っていうテーマで。『胸に手を当てて、ラヴソング歌い出したら止めてくれ』とか『女性シンガーをフィーチャリングし出したら止めてくれ』みたいなことを面白おかしく書くのも面白いなと思ったんですけど、むしろそれって自分らがこれからやろうとしてることを狭めることになるなと思って。今って、当たり前にあるある視点から見る時代になっちゃってるなと思うんですよ。みんなが主観で陶酔するカッコよさみたいなんがメインだった時は、カウンターとして俯瞰の目線で粗を探すのが面白かったんですけど、今はそれを全員ができるようになってて。それを今、俺達がやっても面白くないかなって。だからこそ業界を知り尽くしてる人間の目線じゃなく、もっとざっくりした認識のメジャー観を持ってる地元の友達と、そっちに今から飛び込むんだけど業界のことをあんまりよくわかってない俺、っていう目線の歌詞のほうがいいかなと。だから、ただのアホ同士の会話なんですよ。『俺、今度ソニーからデビューすんねん』ってことを自慢げに言っちゃうアホの俺と、『メジャー行くんやったら、印税もらって港区に住むんちゃうん?』っていうテレビで観た認識しかないぐらいの友達との会話というか。もちろんその『アホ』っていう言い方は関西人的な褒め言葉なんですけど、より一般的というか、卑近な会話がいいなと思ったんですよね。ドン・キホーテ的な会話というか」

■コンビニのパーキングの駐車止め板の上にふたりでうんこ座りしながら語ってる感満載っていうかね。

R-指定「あ、ほんまそうです(笑)。『お前、メジャー行ったらめっちゃ金稼げるんちゃう?』『いや、んなことないよ』みたいな。でも、一般的な感覚やからこそ、たまにドキッとするようなことを言うんですよ。『お前、メジャーデビューしたら女優と不倫できるんちゃうん?』っていう会話が1番のサビに使われてるみたいな。メジャーデビューするっていうことは、そういうライトな層にも聴かれるっていうことやから、それをこの曲で表現してみたっていう感じなんですけど。だからこそ、いろんな業界を見てきた人として『業界はこういうふうになってて……』っていう暴き方をする曲じゃなく、地元に帰った時の友達とのゆるい会話を曲にしてみたっていう。今までは、世の中に対して俯瞰の視点で断罪していくっていう闘い方の曲が多かったんですけど、一旦断罪するっていう立場じゃなく、もっとフラットな立場でそういうものについて語ってみたかったんですよね」

■松永くんはトラックメイカーとしてのプライドももの凄く高い人だと思うし、とにかくもの凄く面倒くさい方だと思うんですよ。

松永「えっ! はははははははははははは」

R-指定「間違いないな(笑)」

■でも、ラップによって自分のトラックを汚すのもお好きじゃないですか。

松永「あー、好きっすね。まぁRさんに限ってっていうところもありますけど(笑)。あるあるがちょっと食傷気味になってるのは、あまり言葉にされていないけど、そう感じてる人は多いと思うんですよね。やり方によっては凄く面白いのは確かなんですが、意外と結構簡単にその界隈をマウンティングできる気がするし、このタイミングでまた俺らがその小賢しい感じをやるのも違うかなと。俺は田舎出身だから、この地元の友達と喋ってる感みたいなのもわかる」

R-指定「地元の友達とか家族にとってのメジャーデビューって、これぐらいの認識やもんな。そのノリが尊い。今は情報が溢れ過ぎてるから、これぐらい知り過ぎてない強さみたいなのってあるよなって思ったんですよね。だし、情報に踊らされまくってる奴より、このぐらいなんとなくでわかってる奴のほうが、実際の人生もタフやったりするじゃないですか。だから、特に今回の曲は2曲とも、マウンティング取ってあぶり出して、『わかったか!』みたいな感じにはしたくなかったんですよね。逆にメジャー行くタイミングやから、我々史上なかなか優しい曲になってると思いますね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.21 by MUSICA編集部

never young beachのメジャーデビューアルバム
『A GOOD TIME』。ロックや歌謡曲の歴史に
新たな足跡を残さんとする安部勇磨の今に迫る

僕だって楽しければいいって思ってたけど、
本気でやらなきゃ楽しいわけないんですよ。
今ちゃんとやるかやらないかで将来の振れ幅が
変わってくる、僕はそれを信じてやってます

MUSICA 9月号 Vol.125P.84より掲載

 

(前半略)

■今回一番大きな飛距離で開けたのが“SURELY”なんですけど。これは今までになかった正面突破の8ビートで、歌詞も含めて非常に真っ直ぐに歌が空を駆けるような、凄く堂々としたロックソングで。

「これは意識してやりましたね。今までは“あまり行かない喫茶店で”とか“明るい未来”とか、ああいうリズム感のイメージがあったと思うんですよ。でも、あのリズムだけしかできないバンドになったらよくないなっていうか。そのイメージがどんどんつけばつくほど、後々やったら『なんだこれ?』ってなるだろうし、今のうちにできるぞっていうのを提示したくて。“なんかさ”も今回のリードトラックにできるかもと思ったんですけど、でもそれって、いい意味でも悪い意味でも今までの僕らと変わらないと思ったし。だから1回ちゃんと8ビートの癖のないリズムで、でもその中に僕らの癖をどれだけ出せるのかってところにチャレンジしたかったんですよね。で、歌詞も今までとはちょっと違うというか。僕自身はあんまり感じたことないですけど、僕の歌詞っていろんな人に『昭和感ありますよね』とか『ちょっと古びた日本語ですよね』みたいなことを言われるんです。だから“SURELY”ではそういうのすら一切使わずに、なるべく今っぽい言葉遣いをしたというか。それでも僕なりの柔らかさだったりは大事にして、言葉はすっごい選びましたけど。だから歌詞も凄く変えたつもりですね」

■昭和っていうか、今までは日常感の描写が安部ちゃんの手で触れられる範囲内というか、そこにある匂いとか体温を大事にした描写だったと思うんですよ。それに対して、“SURELY”はもうちょっと遠くまで飛ばすことが意識された歌詞だよね。同じような日常とか景色を共有していない人の生活にもアクセスできる言葉選びっていうか。

「だいぶそうですね。この歌詞、12ヵ月ぐらい考え込みました。こういう言葉には頼りたくないとか、この言葉を違う言葉で表現するにはどうしたらいいんだろうとか、今までの空気感に近いけど、でも違うみたいな絶妙なズレを出すためにはどうしたらいいか、すっごい考えました」

■この曲に限らず、今回のアルバムの歌詞は前を向いて次の場所へと進んで行くことに目が向いてる曲が多くて。前作はそれこそ“お別れの歌”っていう曲もあったくらい、終わりや別れが強く滲み出てたと思うんですけど、今回こういうモードになったのは、ここまで話してくれたバンドとして外へと向いてきたこと以外にも何か要因はあるんですか。

「あの時に完結したんですよね。ファーストとセカンドの時は母親が生きてたんですけど、あの時に亡くなったんですよ。否が応でもそういうのは意識しちゃうし、そうなると歌詞にもそういうものが出てきて。でも今は、母親は亡くなったんですけど、僕の周りにはメンバーだったりスタッフだったり、飼ってるワンちゃんだったり、大切にしたいものが溢れてて。それを大切にしなきゃいけないし守らなきゃいけないなっていう気持ちが強くなったというか。僕はもう両親どっちもいないんですけど、今はそういう人達が僕の家族というか、それくらい密接に繋がってるし大事にしたいという気持ちが凄く強くなってきて、それで考え方も変わったりしてきて。前はいつバンドが終わってもおかしくないと思ってたし、こいつクビにしてもおかしくないなとか思ってた時期もあったんですよ。でも今は、本当に大切にしないとヤバいというか。いつ終わるかわかんないから今本気でやらないと後悔するなって。飼ってるワンちゃんも、今10歳なんで、あと5回夏を迎えられたらいいほうだよな……とか、人間もそうですけどいずれみんな死ぬし、楽しい時間は永遠ではないし。常に終わりがあって次の楽しみに向かって行くから。だからこそ今本気でやらなきゃいけないなっていうのはより強く思ってます。終わりへの意識とか寂しいなって思う気持ちは今もありますけど、それを前みたいな書き方ではなく、もっとタフに遠くまで飛ばすためにどうしたらいいかって中で変わりましたね」

■このアルバムの最後の曲である“海辺の町”の最後の歌詞は、<トンネルを抜けたなら見たことない景色が/どこまでも広がって風に吹かれてたのさ>という言葉で締め括られるんですけど。これはひとつの終わりを表してもいるし、でも、その終わりよりも、その抜けた先の新しい景色、この先の新しい始まりっていうものを強く感じさせるエンディングになっていて。このアルバムで次の場所へと乗り出したネバヤンの、ここから始まる新たな冒険のスタートを告げていますよね。

「そうですね……まだちょっとソワソワしてますけどね(笑)」

■そうなの?

「納得はしたんですけど、納得して1周回ってまたソワソワしてきて。きっと今までの僕らと違うっていう人もいるだろうし、これで知ってくれる人もたくさんいるだろうし。何を言ってもらっても全然構わないんですけど、どういう人がいっぱいいるんだろう?っていうのは気になります」

■ネバヤンの持ってるポジティヴィティって、初期から今までずっとそうだと思うんだけど、楽天的なポジティヴィティではなく、寂しさや悲しみ、終わりっていうものをちゃんと受け止めた上でそれを笑顔に変える強さと優しさを持ったポジティヴィティだと思うんです。それが仲間内の小さなサークルではなく、より大きなコミュニティの中で発揮されるようになったのが今回の作品なんだと思う。だから変わったというよりも、本当に範囲が広がったっていう言い方が的確だと思うけどね。

「そうですね、ほんとに。なんか、人生わかんないことだらけですけど、ちょっとずつ自分の中でわかってきたこともあって。27年間生きてきて、どんどんドライになっていく自分と、どんどん好きなものをより好きで大切になっていく自分がいて。好きだからこそドライになっていくというか、助けてあげることもできるけど、それは目先の助けでしかないから厳しくなっていく、みたいなところがあるんですよね。メンバーもそうだし、聴いてくれる方に対しても、そういう助け方をしたくないんです。依存的になってしまう音楽ってあると思うんですけど、それは目先の助けでしかないので。音楽でちょっと背中を押すぐらいで、あとはその人が自分の力で自分の生活を豊かにして、自分の力で大切なものを大切にするっていうことが、その人の人生にとって一番楽しいことが起きる形だと思うんですよね。最近、イチロー選手のインタヴューばっかり読んでるんですけど、自分のことを律することができない人が他人に優しくできるわけがないって言ってて、ほんとそうだよなと思って」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.18 by MUSICA編集部

銀杏BOYZ、3ヵ月連続シングルを発表!
新たな季節を謳歌する峯田の胸中を探る

恋とロックへの憧れっていうのが俺の中にずっとあったんだけど、
いつのまにか、そこで女の子とロックが同化しちゃってるの。
ふたつが別にあるんじゃなくて、もう俺の目の前にひとつのものとしてある

MUSICA 9月号 Vol.125P.72より掲載

 

■いやいや、本当にお忙しそうで。

「それでも、ちゃんと遊んでますよ。明日から早稲田松竹で『トレインスポッティング』の122本立てが始まるんですよ。それも行かなきゃなって思ってて」

2本続けて観ると最高ですよ。そっか、全方位的にアクティヴなんだ。

「元気にやってますよ。ちゃんと寝てるし。朝ドラの撮影が終わるまで、髪型は変えられないんですけどね」

■で、そんなタイミングで銀杏BOYZ7月、8月、9月と3ヶ月連続でシングルリリースという。

「俺、去年マネージャーに言ったんですよ。『来年は音楽ちゃんとやる』って。去年、NHK1本ドラマ出て(『奇跡の人』。全8回)、その時期に今やってる朝ドラのオファーがあったんだけど、これで音楽のほうを疎かにしてたら、さすがに『あー、峯田、そっちのほうに行っちゃうのね』ってみんなに思われるのはわかってたから。もう、何も閉じず、全部をオープンにして、音楽もドラマも全部やることにして」

■でもこれ、あくまでも結果的にですが、よく大手の事務所とかが戦略的にやる、ミュージシャンがドラマ出演で話題になってるタイミングを狙い澄ましてリリースを当てるってやつですよ(笑)。

「そうっすね(笑)。しかも、ドラマの中でもThe Beatlesを武道館に観に行くみたいな話があって、ちょうど銀杏も武道館公演を控えてるっていう。全部行き当たりばったりなのにね」

■最初に3ヶ月連続でシングルをリリースするって聞いた時は、とりあえずこの段階でアルバムを目指さないのは、以前みたいに煮詰まらないための方策なのかなって。

「いや、そこまで考えてない。9月にリリースする新曲は、まだライヴでもやってないけど凄く自信があって。でも、その後もさらに新曲作ってるからね。曲はどんどんできていて、そこはあんまり心配してない」

■へぇ!

「元々今年は10月の武道館が最初に決まったんですよ。俺、決まった後に初めて聞いたの、スタッフから。『峯田くん、武道館やる気ある?』って」

■え?

「『抽選当たったよ』って」

■そんな、フットサルのコートみたいな(笑)。

「そうだよね(笑)。で、『せっかく武道館やるから、その前にシングル1枚出しましょう』ってことになって。で、その後に『ひよっこ』の話が決まって。なんか、せっかくやるならシングル1枚じゃつまんないなって思って、『3枚出すから』って自分から提案したの。で、3枚も出すならツアーもやろうって、それも俺から言い出したこと」

■やる気が漲ってる。

「最初『3枚出すから』って言った時は、言いながら『結局よくて2枚だろうな』って思ってたの(笑)。でも、本当に3枚行けたからね」

■大成長じゃないですか。いや、この間のツアーの新木場STUDIO COASTの時、峯田くんがMCで言ってたことが強く印象に残ってて。「これまで自分はやりたいことをやってきたけど、これからはやらなきゃいけないことをやる。そのことに気づいた」って言ってたでしょ? それって、すっごいデカい変化だなって。

「うん。それは、何か大きなきっかけがあって言ったわけじゃなくて、前からちょっとずつ思うようになっていたことなんだけどね。今回の3枚のシングル、『エンジェルベイビー』と『骨』と『恋は永遠』は、恋とロックの3部作って呼んでるの。で、恋とロックへの憧れっていうのが俺の中にずっとあったんだけど、いつの間にか、そこで女の子とロックが同化しちゃってるの。そのふたつが切り離されたものとして別にあるんじゃなくて、もう俺の目の前にひとつのものとしてある。きっと、ずっとそうだったんだろうけど、それに自覚的になったのが今回の3枚」

■なるほど。

「『光のなかに立っていてね』を作ってた時は、まだそこまで自覚的じゃなかった。ロックというものは自分の中に既にあって、それを表現者として出して行くんだって思ってた。でも、これは進化なのか退化なのかわからないけれど、ロックは自分の外にあるんだってことに気づいたの」

■女の子と同じように?

「そう。ロックは自分の外にあって、それに向かって行くのが俺のやることなんだって」

(続きは本誌をチェック!

text by宇野維正

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.18 by MUSICA編集部

04 Limited Sazabys、シングル『Squall』リリース!
焦燥と渇きを生々しく放出した本作を機に、
再びGENに真っ向から対峙

昔だったら、こんなストレートに歌と言葉を表現するのは怖かった。
だけど歌そのものに感情を純度高く入れなきゃって思ったし、
そこで勝負していくっていう意志が“Squall”なんだなって思います

MUSICA 9月号 Vol.125P.60より掲載

 

1年ぶりに、『Squall』という3曲入りのシングルが出ます。とにもかくにも“Squall”が非常にストレートないい曲で。“monolith”がそうだったように、曲名を作品にも冠するのは、かなりの手応えを感じられてることの表れだと受け取りました。

「言われた通り、“Squall”に凄く手応えがあったので“Squall”に焦点を当てる作品にしたかったんです。これまでのシングルでは4曲入りにこだわってきたし、4曲をひとつの作品としていいものを作ろうって思ってきたんですけど――前のシングルにあたる『AIM』の4曲目に“Give me”っていうハッピーな曲を書けたことで、シングルとしての作品性っていう部分で、なんとなく完結した感があったんですよ。4曲でのバランス感は凄く得意ではありましたけど、それ自体が目的になり過ぎてもどうなんだろう?って思ったし。だから、次は4曲じゃなくてもいいかもなってなんとなく思ってて、そこで“Squall”ができたことで、ちゃんとシングルのリード曲として焦点を当てたいなって思えるような手応えがあったんです」

■その手応えは、この“Squall”のどういう部分に感じたんですか?

「武道館だったり、ハイスタやホルモンとの2マンだったり、認められたなって思えるポイントがこの1年でたくさんあったので、少なくとも自信は前よりついたと思うんですね。だからこそ、シンプルに自分達の持っているものを出せばいいと思えたし、純粋に自分達が出すものに自信が持てるようになったなって実感できた曲なんですよ。前だったらこね繰り回した部分もストレートに行けたのは、やっぱり根本的な自信がついたからで。そこは前に比べての成長だと思うんですよね。だから歌詞も一切ひねくれずに出せて。それが手応えだったし、嬉しかったんです。最低限の言葉で、だけど本当に思っていることをそのまま書き切れた実感があるんですよ」

■楽曲面では、メロディックパンクと同時に2000年代のギターロックを消化してきたフォーリミの特長がそのまま出ているのが“Squall”だと感じて。まず音楽的には、ご自身のどういう部分が出た曲だと思いますか。

「そこは、そんなに自覚的なものがなくて。今言ってもらったような要素も、世代として体感的に消化してきたなって感じで、今回もそれが自然と出てきたものなので、こういうバランスでこの要素を入れよう!とか考えたことはなかったですね。だから、この世代の僕らにとってのストレートっていうのはこういう感じだなって――感覚的なものだと思いますね」

■じゃあ、たとえば、2ビートのメロディックパンク一直線だった“climb”も、凄くストレートな曲と歌だったじゃないですか。それと今回のストレートには、どういう違いがあるんだと思います?

「どっちもストレートだし、感情が凄く正直に乗ってる曲だと思うんですけど――“Squall”のほうが悔しそうな曲だなって思いますね。どちらも悔しさがエネルギーになってる曲だとは思うんですけど、“Squall”は、まさに今順風満帆じゃない僕らだから書けた曲というか、負けの味を知ってる人がそのまま書いた曲っていう感じがするんですよ」

■でも、この1年でHi-STANDARDともマキシマムザホルモンとの対バンもして、夢に見続けたバンド達と同じステージに立てた。YON FESもさらなる定着に向けてちゃんと成功したし、武道館ライヴも即完した。そうやって着実に夢を叶えてきたと思うし、夢を叶えること自体をメッセージとして体現してこられたと思うんです。なのにGENくんが順風満帆じゃないって言うのは、どういう部分に対してなんですか。

「『夢を叶えてきた』って見れば、確かにそうだとは思うんですよ。だけど、そもそも僕らは早くから評価されてきたバンドでもなかったですし、周りを見ると、みんな早くから才能を見抜かれて評価されてた気がするんですね。だけど僕らは、少しずつ仲間が増えてきて、気づいたら先輩にも認められるようになったって感じなので、そもそも全然上手くいかなかった時期の気持ちをずっと持ってるっていう感覚が強いんですよね。なおかつ今は、確かにいい感じになっている面もありますけど、同世代のオーラルやWANIMAの台頭も半端じゃないですし、Suchmosも一気にひっくり返してきたので――僕らとしては、1位になれた記憶がまだ1回もないんです。いつも、誰かの影にいる感じがしちゃいますね。その悔しさがそのまま原動力になって出てきたのが、“Squall”だと思うんですよ」

■たとえばこの1年のGENくんの言葉の中で最も印象的だったのは、武道館での「僕らはみんなの青春になりたいわけじゃない。一生一緒にいたい」っていうMCで。フォーリミの世代には、自分達のワンマンと同時にフェスのステージでも勝ち上がらなくちゃいけない意識があったと思うし、実際、自分達の単独より先に1万人以上のキャパを経験するバンドも多かったと思うんです。で、もちろんそれだけじゃないっていう前提で言うけど、フォーリミも、フェス台頭世代として勝ってきましたよね。その上でのあの武道館ライヴは、フェスでのお客さんの数に自分達のお客さんが追いついた初めての場だったとも言えると思うんです。そこで、一過性の青春で終わらないっていう意志表示をしたのは、誰よりもGENくん自身が新しいタームでの勝負を感じてたからなんだろうなって思ったんですけど――自分では、どういう心持ちであの言葉を放ったんですか。

「うーん……まず、武道館っていうところまで行けたことによって、今はきっと、何をやっても評価してもらえるとは思ったんですよ。どんなものを出していっても、いいね!って言ってくれる人がある程度はいるだろうっていう意味での自信は生まれたんですね。だから、曲を作る上での行き止まりはどんどん減っていったし、具体的に言えば『前出した曲に似てるな』とか、『もっと新しいことしなきゃ!』っていう、自分へのブレーキみたいに作用してた気持ちもあんまりなくなっていって。そういう意味で、自分達なりの直球っていうものに正直になっていくのが次のタームだって思ったのかな。……今までは、毎回新しい武器を見つけなきゃいけないって思い過ぎてたところがあったんですけど、今は、使ったことのある武器も別に使っていいっていうモードになれて。だけどただの焼き増しじゃなくて、武器をさらに研いで使えるようになった感覚なんです。それこそ昔は時代のこととか、『どういう曲、どういう見え方が俺達には必要なんだ?』ってことも考えてたと思うし――」

(続きは本誌をチェック!

text by矢島大地

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.18 by MUSICA編集部

SUPER BEAVER、ロックバンドの王道をぶち抜く
新作『真ん中のこと』完成!
柳沢&渋谷と胸の内を熱く語り合う

昔から心動かされてきた真っ直ぐで純粋なロックバンド像を、
今オーヴァーグラウンド表現できるのは俺達なんじゃないかなって感じたし、
それがSUPER BEAVERのアイコンになっていくと思ったんだよ

MUSICA 9月号 Vol.125P.66より掲載

 

■作品を再生した瞬間、聴くバンドを間違えたかと思ったんですけど。

渋谷龍太(Vo)「ああ、ど頭ね(笑)」

■そう、初っ端の“ファンファーレ”が、ビーバー史上かつてなくガツンとしたアイリッシュパンクだったので驚いたっていう話なんですけど。で、“ファンファーレ”に限らず、アグレッシヴなリズム展開の曲が際立つ作品になったと感じていて。まず、ご自身はどういう手応えを持っている作品なのかを聞かせてもらえますか。

柳沢亮太(G)「今回はまず、ぶーやん(渋谷)から先に『ライヴを意識して、今までになかったリズムを使ってみよう』っていう提案があって、それが基盤になって始まっていった作品なんだけど」

渋谷「そうだね。今までは、楽曲が並んだ結果として『こういう作品になったね』ってわかる場合が多かったんだけども、今回はもっと、音楽的な重心を上げて、より自由にやってみた作品だと思うんだよね」

■その発想は、今のビーバーをどう捉えたところから出てきたの?

渋谷「今までは、伝えたいことをそれ相応のストレートな手段で歌にしてきたバンドだったと思うんだよね。逆に言えば、強い右ストレートばっかりを磨いてきてさ。その結果として、どのアルバムも重心が低くてドッシリ構えたものになってきたし、特に『27』っていう作品はそういうものだったと思うのね。でも、その次を見据えるにあたって『強く伝えたいことがあるなら、人としても音楽としても、感情の幅が広くて豊かなほうが、核をより強烈に伝えられるんじゃないか』って思ったのが、今回のコンセプトの始まりで」

■フックもキックもあることで、右ストレートがより一層効くっていう。

渋谷「そうそう。やっぱり、いろんな感情を持ってる人のほうが魅力的だし、そういう人が『ここぞ!』で出すストレートのほうが、より一層強烈に効くんだろうなって。それは、いろんなバンドと対バンしている中で考えるようになったことではあるんだけど――ひとつ具体名を出すと、四星球を観た時にそれを強烈に感じてね。あの人達は『コミックバンド』って自称してステージでいろんなことをやってるけど、でも、あの人達には絶対的なメッセージがあって。それを伝え切るために、散々笑いの伏線を張ってこっちをノーガードにしてきて、その最後の最後に、一番大事な言葉がドーンと真っ直ぐ飛んでくる感覚があったんだよ」

■散々笑わせた最後に、日々の悲しいことを乗り越えるための闘い方が笑顔なんだ!っていうメッセージを真っ向から叩き込んでくるよね。

渋谷「そう。パンチじゃない部分があったり、ジャンプできる部分があったり――そういう起伏の核として全力のストレートがあることが、より強さになっていくんだなって。それは音楽として何かをフェイクにするっていう意味じゃなくて、ブレないメッセージをより伝えやすくするために、特にライヴにおける音楽としての役割分担を考えるってことなんだけど。だから、久々にオリジナルCD(プレイリスト)を作って、ヤナギに『こういう発想を取り入れたい』って言って渡したんだよね」

■そのプレイリストにはどういう曲が入ってたの?

柳沢「TURTLE ISLANDとか入ってたよね?(笑)」

■また極端な(笑)。でもTURTLEを入れてたということは、やっぱりリズムに主眼があったんだ?

渋谷「そう、そう。あとはTHE ROOSTERSとかスピッツ、ズボンズも入れたし、LEARNERSも入れて。『あくまでポップにする』っていうこれまでの意識に対してロックンロールのアプローチはやってこなったし、それをヤナギに渡したのも、ロックンロールの鋭角さを出そう!ってこと以上に、リズムパターンの新しさっていう視点だったんだよね」

■今までは渋谷くんのMCを柳沢くんが咀嚼して曲にする循環があったわけだけど、今回はそれとは違うところから音楽が生まれたわけですよね。今挙げてくれたような土着的なリズム音楽や、大文字のロック的な発想からスタートしたのは、具体的にどう反映されていったと思いますか?

柳沢「まあ、それらをまったく通ってこなかったかって言われたら、そうではないんだけど、自分達の曲っていう意味では、引き出しにはない要素だったんだよね。リスナーとしても日本的なポップを好んで聴いてきたし、それが自分達の曲には反映されてきたわけだけど――その上でぶーやんが言いたかったことっていうのは結局、『この曲をそのままやってくれ』ってことじゃなくて、音楽に対する自由な発想や楽しさを取り入れようっていうことだったと思うの。それによって、元々俺らが持ってるポップス的な発想をより一層刺激してもらったような感覚があって。今までは俺が作った曲に対して『もっとこうしたほうがいい』って言い合う作業だったんだけど、今回はそれ以前に、曲の素材の段階から『どれを鍋に入れようかな』っていう意味での広がりがあったし、それが凄く楽しかったんだよね」

■たとえば、“正攻法”のBメロで跳ねたダンスビートになるじゃない? あのビートに対してギターフレーズのループが乗ることで生まれるトランス感がとても新鮮で。あそこまでアッパーに振り切るアクセルの踏み方も、今言ってくれたことが表れたものなの?

柳沢「そうだね。そもそも“正攻法”みたいにサビが2ビートになることも今までなかったし、それも、音楽として楽しいほうに振り切ってしまおう!っていう発想を持てたことの象徴だと思うんだよね。言ってくれたように、『楽しい!』の発想のエンジンのかけ方を、より一層4人で共有できたんだと思う。あのダンスビートがサビじゃねえのかよ!(笑)みたいな展開でサビに2ビートがくるのも、それが重なった結果で。今までは『これを歌いたい』っていう想いを軸にして、『どうやったらその中心をより強くできるか』の肉づけとして音楽を作ってきたと思うんだけど、それと音楽的な楽しさが同時になった、そのきっかけの作品でもあって――」

(続きは本誌をチェック!

text by矢島大地

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.17 by MUSICA編集部

原点にして根幹にある切迫感とユーモアを、
新たな音像に同居させたシングル『DIE meets HARD』。
凛として時雨の現在を3人取材で解き明かす!

聴いてくれる人には、自分が作ってる音楽は
世界の末端にあるように聴こえるかもしれないけど、
僕は一貫して世界の中心で鳴ってるものとして音楽を作ってます(TK)

MUSICA 9月号 Vol.125P.46より掲載

 

■リリースが2年ぶりになりました。空きましたね。

TKVoG)「そっか、2年ぶりでしたっけ」

■はい。それぞれのソロ活動があったのは承知していますが、やはり久しぶりだなぁとは思います。その中で、今回このシングルを作ったのはタイアップきっかけだったのか、そうじゃないのかっていう辺りから教えてもらえますか。

TK「リリースは空きましたけど、元々ずっと時雨で長い期間曲作りをしていて、曲は何曲もあるんです。その中で何かしらの作品と共にコラボレートできるチャンスがあればっていうところで常にリリースを狙ってはいたんですよね。で、今回たまたまいいお話をいただいたので、偶然このタイミングでシングルが出ることになったっていう、そういう感じで」

■それは『es or s』を出してから、方向の転換とかいろんなことがソングライティングの中にもあって、だから割と時間がかかったっていう感覚に近いのか、それともそういうことも無自覚な感じですか?

TK「凛として時雨に関しては、割ともう無自覚にやってることが多いですね。3人で何を作るかっていうところに集約されてしまっているので、『今3人の音を作るとしたらどんな音になるのか』っていうところを自分の中で繰り返し考えて、出てきたものをスタジオで録るっていう感じなんです、今も。だから前作に対してどうとか、今自分のモードが変わってしまったからどうとかっていうのもあんまり関係ないですし、自分のソロプロジェクトで感じたものとも時雨はまた別っていうところがあるので。ちょっと自分の中では、ある種、違う人が曲を作ってるような感じはありますね」

■前作はベルリンでの、初めての海外レコーディングだったじゃないですか。この作品はまた違うやり方をしてるんですか?

TK「そうですね。ずっと日本で…………残念ながら(笑)」

■前のインタヴューの時に、マネージャーの顔をチラチラ見ながら「できることならずっとベルリンで作りたいんですよね」って言ってたもんね。

TK「実はもう1回くらいはいいよって言われてるんです(笑)。隙あらば行こうとは思ってるんですけど、ずっとレコーディングしているので、この感じでベルリンへ行くともう日本に帰ってこれない感じになるので(笑)」

■ははは。表題曲の“DIE meets HARD”はタイトルからしても歌詞の内容からしても、ドラマ『下北沢ダイハード』主題歌というタイアップありきで作ったように思うんですが、この創作の原点から話をお願いします。

TK「元々ある程度デモは録り溜めてはいたんですけど、でもお話をいただいた時に、元々作ってあった曲で決まるというよりは、どういう作品にしたいかっていうお話を聞いてから作り出すことのほうがウチの場合多くて。で、ドラマの関監督は今までの時雨の活動だったり音楽を好きでいてくれてた方なんですけど、リリースのスパンが開いた作品ということもあって、関さんからは今までとはちょっと違う時雨を出して欲しいっていうオファーがあって。僕らもこういった遅めのテンポの曲ってそんなに出してこなかったし、そういうリクエストに対して自分達をどこまで作品に寄せていけるかっていうところで作ってみたんですよね。だからこの曲に関しては完全にゼロから作り始めた感じでしたね」

■凛として時雨の中での凛として時雨的じゃないものって言われて、その言語ってそもそも成立するものなんですか?

TK「僕なんかが一番それがわからないタイプじゃないですか?(笑)。でも今までにないものっていうところで、少しわかりやすいものというか……ロック感よりもディスコを思わせるグルーヴと印象的なギターのフレーズが欲しいとのことでいろいろBPMを試しながら、ちょっと重めの四つ打ちでやってみて。そういった切り口から進んでいくと、また違った観点から自分達の音を作れたんですよね」

■それを聴いた時に345さんはどういうふうに思いましたか?

345VoB)「カッコいいなと思いました。全貌を聴く前にこんな感じのものを作ろうと思ってる、みたいな話もちょっとはしてくれるので、こうなったかあ、カッコいいなって思いました」

■ピエールは?

ピエール中野(Dr)「まず、ドラム、こんなシンプルで大丈夫かな?って」

TK「不安だった?(笑)」

ピエール「うん。でも実際に曲に仕上がったらがっちりカッコよかったんで、やっぱすげぇなって思いました。あと、『ピエールフェス 2017』っていう自分のイベントの時に初めてDJでプレイしたんですけど、その時に“DISCO FLIGHT”以来初めてこんなにDJ映えする曲ができたぞって思って。凄い嬉しかったですね」

■まさにそういう曲ですよね。さらにこの曲に対して思ったのは、重く、遅く、そして摩擦が多い曲っていう。言ってみれば凛として時雨へのファースト・インスピレーションで感じた感覚みたいなものを覚えたんですね。だからこれは新しいモードとしての原点回帰的なものなのか、もしくは全然違うのか、どういうものなのかなって思ったんです。

TK「明確に原点回帰っていうモードではないんですけど、やっぱりタイアップではいかにその作品と自分達が融合するかっていうところを考えて、それこそ言葉(歌詞)も寄せていくんです。まずドラマで使用されるのが60秒っていう尺だったんですけど、僕らはその尺で作品を作ったことがなかったんですよ。これまではテレビとかでも1分半っていう尺が多くて、1分半だと割とある程度の曲の全貌を聴かせることができるんですけど、60秒で、しかもあのテンポ感になってくると、なかなか曲の表情を出せないところもあったりして。その中でちゃんとギターの印象とドラムの四つ打ちの印象とメロディと、引っかかる言葉をどう入れ込むのかっていうことが必要だったし、さらに、そこからいかにフルでもう一度聴いてみたいなっていうところまで引っ張れるかっていう難しさは結構ありましたね。けど、そういう難しさってタイアップの時にしかないんで。そうやって作品から縛られている中で自分達をどう表現するかっていうのは、凄く楽しいは楽しいんですよ。この曲では異様な言葉が散りばめられていたりしてるんですけど(笑)、そういう面は前からこのバンドにあったと思うので、今回は元々やっていた時雨のちょっとユニークな感じが、上手く作品の意図しているところと合わさっちゃった感じがありますね。なので、最近の時雨しか知らない人はもしかしたらびっくりするかもしれないですけど、元々知ってる人は『あ、またやってるな』っていう感じはあるのかもしれない」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.17 by MUSICA編集部

10周年を迎えた京都大作戦。10-FEETと、
信頼とリスペクトを交わした盟友達が築いた
10年の軌跡と10周年の軌跡を振り返る!

まさに10-FEETというロックバンドという生き様が、
この国のロックバンド達が闘い築き上げてきた絆と軌跡が、
雷雨のその向こうに奇跡を生み出した3日間――
結成20周年を迎えた10-FEETによる
開催10周年の京都大作戦。この無二のロックフェスを語り尽くす

MUSICA 9月号 Vol.125P.54より掲載

 

有泉「10-FEETの結成20周年でもある今年、めでたく京都大作戦が10周年を迎えました。台風の襲撃によって中止となってしまった2007年から考えると11年目ということになるんですが、あらゆる意味で非常にドラマティックな3日間になりまして。10-FEETというバンドのアティテュードとバンドシップ、そして彼らがこの10年のバンド人生をかけて築いてきたものが表れたメモリアル過ぎるほどメモリアルな10周年になったのではないかと思うんですが」

鹿野「いきなり結果を言うのもあれだけど、数々のフェスが天候によって伝説を作っているんだけど、やはりこの大作戦ほどのドラマを持ち得ているフェスはフジロック含めてないんだなと言うことが今年わかった気がする」

有泉「最初に記した通り、まず台風で中止になった幻の初年度があってからの、さらなる今年のドラマですからね」

鹿野「今でも覚えてる、前日にかかってきた中止を伝えるマネージャーMASAからの電話。何を覚えているかって、声が出てないのよ、MASAの。俺、『え? え!?』って2回聞き返して、やっと明日やらないっていう連絡なんだってわかったぐらい落ち込んでたんだよね。自分はその電話を受けた時、静岡のap bank fesにいたんだけど、apMASAから連絡を受けたその日が同じ台風で中止だったんだよ。でもさ、apのほうは気を取り直して、3日間あるし、どうやら最終日はできそうだから、その日に向けて集中力を高めることも含め、みんなで室内フットサルコートを借りてフットサルをしてたんだよね」

有泉「随分と余裕ですね(笑)」

鹿野「余裕ってわけじゃないんだけど、でもくよくよしてもしょうがないし、3日開催の中でできそうな日があるなら、そこに向けてエネルギー貯めたほうがいいじゃない。そういう経験値が既に数回開催してたap bank fesにはあったんだよね」

有泉「なるほど。でも、片や大作戦は――」

鹿野「そう、京都大作戦は初回でしょ? しかもその中止にした日だけの1日開催。さらに言えば、そもそもは10-FEETのバンド結成10周年を記念しての特別な企画としてのフェスだったわけだから、その日ができなくなったら、もう一巻の終わりに違いないわけで」

有泉「当初は毎年の継続開催を前提にしてたわけじゃなく、1回きりの特別企画でしたしね」

鹿野「だからもう、その落ち込みようは本当にあり得ないようで、まさかここまでのフェスになるとは、そしてその後の彼らの10年間がこんなにも大きなスケールになるとは、あの日には思いませんでした」

有泉「でも、フジロック、ROCK IN JAPAN FES.、そして京都大作戦を例に挙げて巷で言われている『初年度が台風や雨風で中止になるフェスは後に大成する伝説』というのは、その中止になった翌年、つまりは本当に開催した2008年の京都大作戦の初回大成功をもって囁かれるようになったような気がするんですけど」

鹿野「それ、僕もそう思ってる。2008年の感動の開催初回2日間が終わって何週間かして、音楽業界で『京都大作戦って凄かったんだって?』っていう噂と共に、フジロックやROCK IN JAPANの台風中止の時にはまだ囁かれなかった『初回の台風中止からビッグになるフェス伝説』が決定づけられた気がする。それほどまでに2008年の大作戦初回は、感動と圧倒的なパワーがもの凄かったんだよね」

有泉「何がそんなにも凄かったんですか?」

鹿野「10-FEET

有泉「それはもちろんそうでしょうけど……」

鹿野「いや、それに尽きるんですよ、このフェスは。それでいいし、それがいいんだよ。2008年にDragon AshKjと終演後に話していた時に、あいつが決定的な言葉を放ったの」

有泉「それは?」

鹿野「『これは俺にはできない。TAKUMAじゃないと、10-FEETじゃないと絶対に成功できないフェスだ』って。何故ならば、俺らはカッコいいし売れちゃってるけど、あいつらは俺らのようなカッコよさがないし、俺らほどヒット曲を持ってないでしょ? そういうバンドだからこそここまでいいフェスが作れたし、出演者みんなが10-FEETのために凄いライヴをやろうとするんだよ。ってあいつが言ったの」

有泉「隅から隅まで正しい意見ですね」

鹿野「そう。だからね、もう開催初年度からこのフェスは特別なフェスとしてどんどんデカくなるし進化するし話題になるってわかったんだよね、あの2008年を体験した人は」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳×有泉智子

『MUSICA9月号 Vol.125』

Posted on 2017.08.17 by MUSICA編集部

星野源、待望の新作にして敬愛する往年のソウルを
アップデートするシングル『Family Song』が到着!
彼の現在地をディープに解き明かす保存版大特集!

不安な要素は常にあるっていうのが僕達の生活であり、人生だなと思う。
幸せなだけの人生っていうのはないんだって、
ちゃんと日常を生きてる人はみんなわかってる。
だからこそ幸せを祈るんだよっていう

MUSICA 9月号 Vol.125P.12より掲載

 

■先日はツアー「Continues」を観せてもらって、本当に素晴らしいし、しかもとても意義深いライヴになっていて凄く感動したんですけど。

「本番後にそう言ってもらって嬉しかったです。遠くまで来てくれてありがとう」

■こちらこそ。で、インタヴューは今年の1月、「YELLOW PACIFIC」の公演後に行って以来になります。今回の『Family Song』は昨年の『恋』以来の新作になるわけですが、作品全体を通してとてもソウル色が強いシングルになったなと感じました。今日はじっくりお話を伺っていきたいなと楽しみにしてきました。

「よろしくお願いします!」

■まず、特に表題曲である“Family Song”はめちゃくちゃ名曲だなと思ってるんですけど、これまた素晴らしい曲である“肌”も含め、今回は『SUN』以降に放ってきたリード曲とは趣きがかなり違っていて。星野さんの中には、それこそ“桜の森”くらいからずっと、「踊る」っていうことと「日本語のポップス」を両立させるっていうテーマがあったと思うんですけど、今回はブラックフィーリングのリズムを意識しつつも、ここ最近の中では最も歌を聴かせることに重点を置いた作品になったなと感じたんです。ご自分ではどんな気持ちで制作に取り掛かったんですか?

「この感じは『YELLOW DANCER』の頃から凄くやりたかったことなんです。でも、『YELLOW DANCER』の時はできなかったんですよね。それは時間的に詰められなかったっていうこともあったんだけど、それ以上に技術だったり、自分のポテンシャルも含めてまだやれなくて。で、次のシングルの『恋』の時には、どちらかというとイエローミュージックの感覚をもっと肌で感じてもらうほうに重点を置いていたこともあって、“恋”は『YELLOW DANCER』でやった『自分の好きなブラックミュージックのエッセンスを、自分のフィルターで昇華する』っていうところをあんまり通ってなかったんですよ。カップリングはそこを通ってるんだけど。なので、そこをもう一度やりたいなという想いがありました。その中で今回のドラマのお話があったんだけど、『アップテンポではないものでお願いします』って言われたので、『よし、これは来た!』と思って(笑)。ちょうど自分がやりたいことがやれそうだなって思ったんです」

■そのやりたいことっていうのは、具体的に言うと?

「バラードではないんだけどメロディアスで、だけどしっかりビートとグルーヴがあるミドルテンポの曲。音楽が詳しくない人が聴くとメロディアスなJ-POPに聴こえるんだけど、音楽に詳しい人が聴くとニヤニヤしちゃう、みたいな。だから歌に重点を置いてる気持ちはそんなになくて、どちらかというと“Family Song”も“肌”も、リズムを聴いて欲しいっていう気持ち。リズムに凄くこだわって作ったという感じですかね」

■おーっと、これはもしや、いきなり推論を外してしまいました?(笑)。

「はははははは。でも、僕のやりたいこのリズムでイエローミュージックと名乗るためには、歌はしっかりメロディアスじゃないといけないよなっていう想いがあって。だからそこは意識しました。ミドルテンポの曲をやろうとする時に、日本のブラックミュージック・テイストの音楽の傾向としてメロディアスじゃなくなっていくところがあるなと思ってて。遅めの曲で海外のニュアンスを追求しようとすると、どうしても歌がメロディアスでなくなっていくものが多いなと思うんだけど、そうじゃないものをちゃんと作っていかないと自分のフィルターを通ったことにならないなと思うから。もしかしたら、それによって歌に重きを置いたように聴こえてるのかもしれないですね」

■ということはつまり、ご自分としては、今回はアップテンポではない、ミドルテンポの楽曲でブラックミュージックを通過したイエローミュージックというものを目指した、と。要は“SUN”や“恋”、あるいは“Week End”とはまた別のアプローチからその方向性を追求したという意識ですか?

「そうです。ただ、ひとつの見方としては別のアプローチなんだけど、一番大きいのは『テレビからこれが流れてきたら、めちゃくちゃワクワクするな!』っていうのは全部に共通してて。たとえば“SUN”だったらあの頭のアナログシンセのビーッて音も、あとイントロのギターのカッティングとかも、これがテレビから流れてきたら楽しいだろうなっていうのがあったし。“恋”もそうだった。テレビからこのテンポで二胡の音が流れてきたらヤバくない?みたいな(笑)。で、この“Family Song”も、テレビでこのイントロ流れてきたらヤバいよね?っていう気持ちで作りました。現代の日本にこの音がなったら面白い、そこに自分のモチベーションとか楽しみがある、みたいなところは共通してましたね」

■“Family Song”はイントロが鳴った瞬間に、もうモータウンというかマーヴィン・ゲイというか、60年代から70年代のモータウン~ニューソウルな感覚がバリバリに響いてきて。でもちゃんとモダン、今、みたいな。あのイントロ鳴った瞬間のインパクトはもの凄いよね。

「おー、それはよかった!(パチパチパチパチ)。そう感じてもらえたのは凄く嬉しい! この感じを出すのってすごく難しいだろうなと思ってて。なんでかっていうと、その感じって当時の録音環境とかに左右されていると、みんな思ってるんですよ。特に今あの当時の感じを出そうとした時にそうなりがちというか」

■あれをやるにはあのヴィンテージサウンドを使えばいい、みたいな?

「そう。だからヴィンテージ・エフェクトを使ったり、あるいは24(拍)でウッドブロックみたいな音がコッて鳴ってるみたいなことを取り入れたり、そういう特徴を真似することで表現しようとしてしまうんだけど、そうじゃない、そういう記号的なことじゃない形であの時代のあの音楽の感じを表現できないかなと前から思っていて。たとえば“Week End”っていう曲だったら、ディスコがやりたいんだけど、でもヴォコーダーは入れない!とかもそうだったし。そういう表層的なニュアンスを真似したいわけではなく、聴いた時のあのワクワクする感じ、パッと音が鳴った時にワーッと高揚する、その根本的な感じを表現したいんです!っていうことをちゃんとやりたかった。でもそれはきっと簡単な道のりじゃないだろうなあと」

■スタイルを真似したいわけじゃない、あの音像から呼び覚まされるこのフィーリングを鳴らしたいんだっていうことだよね。

「そうそうそう。それを見つけるには時間がかかるだろうなと思ってたから、『YELLOW DANCER』の時はできなかったんですよ。まぁ今回もツアー中だったし時間はなかったんだけど(笑)」

■ですよね。というか、むしろ今回のほうが時間がなかったのでは(笑)。

「うん、凄くなかった(笑)。どれくらい時間がなかったかというと、プリプロ(本番のレコーディング前にバンドなどで合わせ、アレンジを詰めたりしていく作業)の日も取れなくて、いきなり録音だったんです(笑)」

■え! この曲をそのやり方で作ったの!?

「そう(笑)。下地と言われるドラム、ベース、ギター、ピアノのみんなに来てもらって、集まったその日に本番の録音をしなくちゃならないっていう。本当だったらちゃんとプリプロ期間を設けてリハーサルもしたかったんですけど、そういう状況だったので、アレンジして演奏して録音したものをその場で聴いて確認して、さらに別のアイディアをみんなに伝えて、それでまた録音して、また聴いて確認して……っていうのをずっと繰り返しながら、ちょっとずつちょっとずつニュアンスを追究していくっていうやり方をしました。そうやって『どうやったら記号的じゃない形であの感じが出るのか?』って、朝までみんなで探究して――」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA9月号 Vol.125』