Posted on 2017.08.21 by MUSICA編集部

ツアーを終えたばかりのKEYTALKから
早くもニューシングル『セツナユメミシ』が到着。
感傷と情熱を露にした新曲の深部を紐解く!

MCで喋って、自分の言葉で伝えることが
大切なんだなと思いました。
その時に思っていることを伝えるって、
凄く力があることだし、ステージに立つ以上、
そういう力強いものも必要だなって思い始めて(寺中)

MUSICA 9月号 Vol.125P.94より掲載

 

(前半略)

■まず“セツナユメミシ”は、和的なフレーズやメロディが際立つ楽曲で。歌詞も含めて、とても和の世界観を押し出した楽曲なんですけど。

首藤「この曲は、『境界のRINNE』の雰囲気を踏まえて書き下ろした曲で。おっしゃっていただいたように、和風な雰囲気と軽快なリズムで作って――そこは前からKEYTALKらしい部分ではあったんですけど、ここでもう1回新しいメロディを作ってみようと思って。歌詞も和を感じるワードを積極的に入れようと思って、そういう部分も混ぜつつ作っていきました」

■歌詞としても確かに<刹那>や<一期一会>、<蜃気楼>みたいな古風な言葉が多いんですけど、その中で<一瞬の夢 僕らは空へ向かい><未来のひとかけら>っていう歌詞も含め――首藤さんの歌詞は“ASTRO”みたいな楽曲も含め、今から未来や明日を見つめているような描写が多いと思うんですよね。

首藤「自分としては、あまりネガティヴな感じでは作ってないんですよね。単純に『いいことあるといいな』とか、『この先に綺麗な景色が広がるんだ』みたいな、どっちかと言うとポジティヴさみたいなものを表していて」

■逆に言うと、今に物足りなさを感じているとか、未来が凄く遠いものだと思っているところもありますか?

首藤「どうなんですかね………この曲に関しては、あんまり意識はしてないですね。曲によっては、『今は上手くいってない』って思って書いてるのもあるんですけど、僕が個人的にどうこうっていうよりは――要は、歌詞の主人公は僕なわけではなくて。ペルソナって言うんですかね? そういう架空の人物像を設定して書いてるんですよね。それも限りなく自分に近いところにいる架空の人物って感じなんですけど」

■第2の主人公みたいな。

首藤「そうですね。そのペルソナの周りに物語を作って、それを歌詞にするみたいなイメージです。そういう書き方はこれまでも多いんですけど、ここ最近は割と自分自身になるべく近い距離に設定する歌詞が増えてきたりはしてきてて。それこそ“ASTRO”とか“Love me”はそういう感じだったんですけど。自分としては、物語的な感じで作ってますね。この曲はそんなにストーリー性を掘り下げないようにしようと思ってて。あんまり感情面においては深い表現を盛り込まないようにしよう、と」

■雰囲気重視ってことですよね。

首藤「そうですね。書き下ろしっていうのもあったので、僕が作り込み過ぎるのはなんか違うかなって思ったので。だから、言葉の響きを優先させたいなって思ったんですよね。どっちかと言うと、1曲の歌詞をザーッと通して読んだ時に何か感じるようなものではなくて、センテンス一つひとつの美しさみたいなものを優先させたっていう感じですね」

■だからこそ、フレーズの妙はありますけど、とても歌いやすいものになってますよね。そして、小野さんの“タイポロジー”。この曲もとてもアグレッシヴで、ザクザク切り込んでいくタイプの非常に快感指数の高い楽曲なんですけど。

小野「これは、同じコード進行でどんどん調だけ変えていく楽曲を作りたくて。そういう思いつきから、ここまでの大曲になりましたねぇ(笑)。非常に気に入ってます」

八木「武正の曲って、エモーションとか叙情感のある曲と、明るい曲の2タイプがあると思うんですけど、その明るい曲のほうなのかなっていう感じは受けましたね」

首藤「うん、僕も武正の曲だなって一聴してわかる曲だなって思いましたね。明るいし、テンポも軽快で、歌のキーもちょうどよかったりして、歌ってて気持ちいいなって。ミュージシャン目線でも面白いアイディアが詰まってるし、メロディそのままでコード進行だけ変わってたりするんで、面白い曲だなって思いましたね」

■この曲もそうなんですけど、小野さんの曲ってご自分の社会に対する思いだったり――それこそ“タイポロジー”っていうタイトルもそうですけど、学術的な部分だったりも入ってきたりしていて。こういう曲になっていくのは、ご自分のどういうメンタリティがあるからなんですか?

小野「なんですかね………単純に、そういう事柄や哲学的な思想を考えたり、妄想するのが好きっていう表れなんですかね?」

■かつ、メッセージとして<他愛無い会話に忍び寄る/情報操作の罠も然り>っていう社会に対する警鐘的な部分も入ってくるわけですよね。

小野「まぁあんまこういう歌詞ってないかなって思ってるんですよね。字面だったり、雰囲気だったりもそうですけど、音楽的にも言葉的にも一聴してあんまり聴いたことない感じのものとかが好きだったりするんですよ。どうして楽曲に対してこういうアプローチになるのかっていうのもそうで、自分がいろいろ音楽聴いたりしていく中で、初めて出会うものにしたいからこうなるんですかね。自分が聴いたことがあったり、見たことがあったりしたものじゃなく、新しいものを作っていきたいっていうところへの好奇心があるので」

■はい。語感の気持ちよさだけじゃなく、そこにメッセージが乗っていくところが小野さんの歌詞のオリジナリティになってますよね。

小野「そうですね。リズム感の気持ちよさだけじゃなく、意味があるものにはしたいと思ってるので。かつ、意味があり過ぎても嫌なので――まぁ意味があり過ぎるっていうのは、メッセージ性が強過ぎて、リズムを無視しちゃうのがあんまり好きじゃないのでっていう意味なんですけど。だからこそ、そのふたつが合わさった曲になっていくんじゃないかと」

(続きは本誌をチェック!

text by池上麻衣

『MUSICA9月号 Vol.125』